直木賞作家・荻原浩さんと行く渋谷から15分の都心のイチゴ農園

特集

今が旬! イチゴ狩り&イチゴスイーツ

2017/02/04

直木賞作家・荻原浩さんと行く渋谷から15分の都心のイチゴ農園

直木賞作家の荻原浩さんが、グラフィックアーティストから家業のイチゴ農家を継ぐ主人公の葛藤とその家族模様を描いた『ストロベリーライフ』。主人公と同じくアーティストを目指しながら家業のイチゴ農園を継いだという農家が世田谷にあると聞いて、荻原さんと訪れてみました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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直木賞作家も驚いた! 渋谷から15分のイチゴ農園

作家の荻原浩さんが直木賞受賞後の第一作目として手掛けたのはイチゴ農家をテーマに描いた長編小説『ストロベリーライフ』。執筆にあたり、多くのイチゴ農家を取材されたという荻原さんも、ミッション系のスクールや高級住宅が立ち並ぶ世田谷の中町にイチゴ農園があるのは意外とのことで、今回の訪問が実現!

世田谷の住宅街にイチゴの園が!

約一年ぶりにイチゴ農園を訪問したという荻原さん。都心にある農園に興味津々
完熟苺を知るまでの恵介は、苺は酸っぱい果物だと思っていた。でも本当の味はそうじゃない。最初に酸味を感じるようではだめなのだ。甘さのあとにほのかな酸味が追いかけてくるのが良い苺だ

引用元:『ストロベリーライフ』

主人公である恵介が、家業のイチゴ農園を引き継ぎ、初めて自分で育てたイチゴをハウスの中で食べる場面。一部が白いうちに摘み取ってしまうスーパーなどの販売物と違い、そう、イチゴ狩りなどで食べられるイチゴは完熟なのだ。

荻原浩さん
荻原浩さん
「みずみずしく真っ赤に色づいたイチゴは、香りも味も違います。それに冬でもハウスの中は温かいですから、出かけるにはもってこいですよね」

昨年、直木賞受賞後の第一作として最新長編小説『ストロベリーライフ』を上梓。ご自身も趣味で野菜の栽培をされており、農家にリスペクトがあったということで、農業をテーマにした作品を手掛けたかったそう。

一枝から7〜8個のイチゴができるよう調整する。真冬でも温かいハウスの中ではイチゴが元気に色づいている

そこで荻原さんがテーマとして選んだのがイチゴだった。

荻原浩さん
荻原浩さん
「一見オシャレな作物ですけども、実作業は大変なんだろうということで取り上げました。親戚にイチゴ農家がいたこともあり、いろいろな農園を紹介いただきました」

しかし23区内でも都心な世田谷区の中心部に、こうしたイチゴ農家があることは驚きだったようだ。

世田谷の住宅街に突如あらわれる直売所。フレッシュなイチゴ以外にも、ジャムやアイスクリームも販売している

閑静な住宅街を歩いていると、突然ビニールハウスが現れ、イチゴ直売の看板が目に入る。ここは世田谷のイチゴ農園「世田谷いちご熟」。開口一番、荻原さんが漏らした「本当にあるのですね!」という感想はもっともである。

そんな作家を出迎えてくれたのは、イチゴ農家に転身し今年4年目という若き作り手『世田谷いちご熟』の廣田隆一さんだ。

廣田さん(右)の絵画作品を手にアート話にも花が咲く

廣田さんは小説の主人公恵介と同様、全くの別業種から家業の農業を引き継ぐ形で、イチゴ栽培を始めた。「農業を始めるにあたって、他の野菜よりも経済的に立ち行きやすそうと選んだのがイチゴでした。世田谷でイチゴ狩りができたら面白いと思ってとイチゴ農家に転身した」と廣田さんは語るが、そのイチゴ愛は、相当に深い……。

イチゴとアートの関係

園内には廣田さんの絵画作品が飾られている

「見てください。このイチゴの絵」と廣田さんが荻原さんに見せたのは、廣田さん自身が描いた作品だという。イチゴの本格栽培を始める前に、実や葉、花などを絵画にしたそう。さらに、最近はイチゴ栽培をテーマにアンビエントな曲を作曲したり、夜のハウス内で壁面に映画を投影するイベントなどを開催。アート活動にも勤しんでいる。

作中の恵介もイチゴ栽培を志す中で、グラフィックデザイナーの経験を生かし、自身の農園ロゴや、ホームページ、イチゴのパッケージのデザインをしている。

荻原浩さん
荻原浩さん
「農業は大変な仕事です。でもどんな大変な仕事でも、逃げ道というと言葉は悪いですが、ほかのこともできるのが生きていく希望になると思うのです。そして何だかやっていくうちに、逃げ道が逃げ道でなくなって、本道としてうまくいくこともあります」

主人公の恵介は、本業のデザインが息詰る中で、新たな希望としてイチゴ栽培を手掛けた。その結果として実家の農園を引き継ぎ、自身の手で一部を観光農園化する過程で、デザインや広告会社で培った手腕が発揮できる環境になっていった。

廣田さんもイチゴを入れるパッケージをデザインするなどアートな才能を随所に発揮している

廣田さんも「僕は農業もエンターテイメントだと思っています。遊びを入れたくて、自分のアート活動などすべてを一緒にできたのが、今のイチゴ栽培です」と笑顔で応える。

イチゴの摘果といって一株から適正な粒数にする作業も、YouTubeで音楽を聴きながら夜にヘッドライトで照らしながら行うことも多いそうで、そうした単純作業に没頭することで、いろいろな考えやアイデアが思い浮かんでくるんだとか。

大変な作業をお客さんの喜びに変える

「摘み方にもコツが要ります」と荻原さん
それぞれのパックには規定の重量がある。詰め終えるたびに秤に載せて確かめるのだが、母親はほぼ一発で計量をパスさせていた。恵介には神業としか思えなかった

引用元:『ストロベリーライフ』

イチゴを一般市場に出荷する場合のパック詰めはハードな作業の一つだが、廣田さんは新しい感性で向き合う。

「僕は一人で切り盛りしているので、パック詰めになかなか時間が割けません。でもお客さんに摘んでもらうと、新鮮なものが選べてしかも“狩る”という喜びもあるようで。1パックでもいいので、近所の八百屋にいく感覚で摘みに来てもらえれば」(廣田さん)。

先っぽが一番甘みがある。まずはそこをかじり、それから横かじりすると平均的な味がわかる。こちらの直売では1g=3円として、収穫&販売を行っている

荻原さんが世田谷のイチゴを実食!

荻原浩さん
荻原浩さん
「世田谷育ちは洗練された味わいだなあ(笑)。プロの方にこれがいいよと教えてもらうイチゴは本当においしいですよね!」

紅ほっぺとあきひめを栽培しているが、廣田さんの一押しは紅ほっぺ。特に真っ赤に熟したものがおいしいそう。

完熟のおいしいイチゴを仲立として、二人の話はオリジナル品種や栽培方法、農園の活用法などさまざまに広がり、話は尽きなかった。

荻原浩 著『ストロベリーライフ』1600円(税別)。イチゴ農家を描いた直木賞受賞第一作の最新長編小説。 明日への元気がわいてくる人生応援小説

世田谷いちご熟
住所:世田谷区中町4-32-1
電話:03-3701-5171
営業時間:水〜金10:00〜14:00、土日10:00〜16:00
定休日:月火

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※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材•文=土屋智弘/撮影=齋藤ジン

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