日本のインドカレーのルーツはここにある! 老舗3軒に潜入!!

特集

癖になる、インドカレーの奥深き世界

2017/02/14

日本のインドカレーのルーツはここにある! 老舗3軒に潜入!!

1927(昭和2)年、新宿中村屋が日本で初めてメニューに取り入れて以来、長い年月をかけて日本の国民食となったインドカレー。その歴史を語る上で、外すことのできない老舗店がある。今回はそのうちの3軒を訪れ、創業当時の貴重な白黒写真を交えながら、伝統の味をレポートする。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「アショカ」で創業当時からずっと愛され続けている「チキン バター クリーム」(2100円・税別)

【潜入する老舗インドカレー店】

1.「ナイルレストラン」(1949年創業)
2.「アジャンタ」(1957年創業)
3.「アショカ」(1968年創業)

創業当時にタイムスリップ!? 日本のインドカレーの歴史をめぐる旅へ!

今回訪れるのは、インドカレーの歴史と変遷を語ってくれた“カレーの王子様”こと、シャンカール・ノグチさんと、メタ・バラッツさんの座談会で名前が挙がった、老舗の3軒

今では当たり前に食べられるようになったインドカレーだが、日本に初めてインドカレー店が誕生した当時は、特別なお店でしか食べられない高級料理のイメージが強かったのだとか。

では、老舗3軒で創業当時からあるカレーメニューを味わいながらその歴史をひも解いていこう!

1.1949年創業「ナイルレストラン」

「ナイルレストラン」店舗の前で創業者のA.M.ナイルさんを写した創業当時の様子
シャンカール・ノグチさん
シャンカール・ノグチさん
「東銀座にある『ナイルレストラン』は、日本最古のインド料理専門店。このお店といったらなんといっても名物の『ムルギーランチ』ですね」

日本最古とな!? それは日本のインドカレーの歴史を知る上で間違いなく外せない。そう考えた取材陣は早速「ナイルレストラン」に直行ー!

東銀座駅A2出口から徒歩1分のところに店を構える「ナイルレストラン」。歌舞伎座からほど近くにあり、多くの歌舞伎俳優、タモリさんや関根勤さんなど大物芸能人も足しげく通う人気店

インドの独立運動の最中に日本へやってきた創業者のA.M.ナイルさん。インド独立のために革命家や通訳、時にスパイとして暗躍するなどインドカレーにも負けないスパイスの効いた経歴を持つ。そんな彼がインドの独立を見届けた後、オープンしたのがこの「ナイルレストラン」

店内に入ると、インド人スタッフがまるで自宅に招き入れるように出迎えてくれる心地よいアットホームな雰囲気。2階の壁一面には美しいインド画が描かれている

当時はまだ日本にインド料理専門店はなく、インドカレー自体も珍しいものだった。そんな中でこのお店が誕生したのはA.M.ナイルさんの「インド料理を日本の皆さんに伝えたい」という思いからだ。

「ナイルレストラン」3代目のナイル善己さん。本場インドでカレー修行をした経験を持ち、シャンカール・ノグチさんたちと同じく東京スパイス番長としても活動中!

終戦直後ということもあり、お店を始めた当初は海外からのお客さんが多かったのだそう。徐々に日本人の間でもここのインドカレーの味が評判となり、今では「銀座でカレーといったら『ナイル』だね!」といわれるまで、愛される存在になった。

ナイルレストランの代名詞! ここでしか味わえない大定番カレー

「ナイルレストラン」に来たら、注文必須のカレーがある。それが「ムルギーランチ」

“ムルギー”とはヒンディー語で鶏肉という意味。さらりとしたカレーの中に入っているのは7時間ほどじっくり煮込んだ地鶏のもも肉、そこに野菜炒めとマッシュポテト、そしてターメリックライスがワンプレートに盛り付けられた、創業当時から変わらぬこのお店の1番人気メニューだ。

訪れたお客さんの大半が注文するという「ムルギーランチ」(1500円・税別)
3代目のナイル善己さん
3代目のナイル善己さん
「インドの代表的な料理・ミールズをもとにしたのが、この『ムルギーランチ』なんです。当時は食材も少なく、スパイスも大変高価なものでしたから、手に入る材料の中でおいしいインドカレーを作ろうと考えられたのがこのカレーです。もともとはランチのメニューだったのですが、人気があったので夜にも提供し始めて……名前に“ランチ”とつくのはその頃の名残です(笑)」

古くから食事を混ぜて味わう文化のあるインド。「ムルギーランチ」もその流儀に則ってカレー、具材、ライスをまんべんなく混ぜてからいただこう。するとスパイシーなカレーにキャベツの甘みとマッシュポテトのクリーミーさが絡み合い、まろやかで奥深いクセになる味わいとなるのだ。

混ぜる前に鶏もも肉の骨をお店のスタッフさんが目の前で手際よく取り除いてくれる。筋肉質な地鶏を使いながらもしっかりと煮込まれているので、ほろほろ解けて旨味もたっぷり

「子供の頃から通ってくれたお客さんが、大人になり今度は自分のお子さんを連れて食べにきてくれるのが、とてもうれしいですね。」と語るナイル善己さん。そんなお客さんのためにもずっと変わらないままでありたいと、カレーは創業当時から“同じ味を守ること”にこだわっているのだそう。多くの人々の思い出の味であるカレーは、2代目のG.M.ナイルさん、そして現在は3代目のナイル善己さんと、世代を超えて引き継がれている。

Yahoo!ロコナイルレストラン
住所
東京都中央区銀座4-10-7

地図を見る

アクセス
東銀座駅[A2]から徒歩約0分
東銀座駅[A8]から徒歩約1分
銀座駅[A6]から徒歩約2分
電話
03-3541-8246
営業時間
11:30~21:30、日祝11:30~20:30
定休日
火曜日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

2.1957年創業「アジャンタ」

今のアジャンタの前身となった1957年(昭和32年)阿佐ヶ谷にオープンの「カレーと珈琲の店・アジャンタ」
シャンカール・ノグチさん
シャンカール・ノグチさん
『アジャンタ』は、南インドカレー人気の元になったお店。ここで修行して独立した日本人のシェフ、いわゆる“アジャンタ・チルドレン”もたくさんいますよ(笑)」

というわけで、続いて取材陣が向かったのは麹町にある1957年創業の「アジャンタ」創業者であるジャヤ・ムールティさんの家庭の味を楽しめる南インドカレーの老舗だ。

ジャヤ・ムールティさんは、もともと料理人ではなく電気技師として日本の会社で働いていた。このお店が誕生したのは、そんな彼が自宅で作ったチキンカレーのあまりのおいしさに、日本人妻のスジャータさんが感動したのがきっかけなんだそう。

現在の「アジャンタ」は麹町駅から徒歩1分ほどの場所にある。お店の前に立つと、すでにもうカレーのいい香りが〜

最初は阿佐ヶ谷に「カレーと珈琲の店・アジャンタ」をオープン。その後、より本格的なインド料理レストランを開きたいと、「純インド料理店アジャンタ」九段下に移転オープンした。それから1985年(昭和60年)に再び場所を移し、現在の麹町「アジャンタ」の姿となった。

こちらは店内2階の様子。オフィス街にあるので、ランチ時には近隣の会社に勤めるサラリーマンを中心に多くのお客さんであふれかえる

「うちはあくまでムールティ家の家庭料理を出すお店。たくさんの種類のスパイスを使った凝りに凝った味というよりも、飽きのこないシンプルな味のカレーですね」と笑顔で語ったのは2代目のアナンダ・ムールティさん

「アジャンタ」2代目のアナンダ・ムールティさん。小さい頃からここのキーマカレーを食べて育ってきたという彼にとってこのお店のカレーはまさに家庭の味だ

素朴さゆえのこだわりが光る 南インドの辛口チキンカレー

そんな「アジャンタ」で、創業当時から人気のメニューが、この「チキンカレー」。中に入っている具材は骨付きチキンとタマネギだけというなんともシンプルな1皿。南インドカレー特有のサラリとしたルーをご飯にかけてほおばると、スパイスの辛さが口の中をスーッと吹き抜けていく、爽やかで刺激的な味わいのカレーだ。

「チキンカレー」(1620円・税別)。付け合わせには自家製の浅漬けタマネギ「アチャール」と「マンゴーチャツネ」
2代目アナンダ・ムールティさん
2代目アナンダ・ムールティさん
「カレーのスパイスは粉末ではなくスパイスの実をそのまま使っているのです。お店を始めた頃には日本でまだまだスパイスが手に入りづらくて……そのため漢方薬局で購入したりと、食材の確保は大変だったようです」
厨房では大鍋でカレーが煮込まれていた。「アジャンタ」のカレーにはスパイスをたっぷり使用するため、他のインド料理店から来たシェフは驚くのだとか

他にも、日本のキーマカレーの発祥となった「キーママター(キーマカレー)」や激辛の「マトンカレー」と、創業当時から変わらぬ味を楽しむことができる。これらのカレーはすべてメニューごとスパイスの配合を変えて作るため、素朴でありながら手間暇がかかっている。

聞けば、この味を求めて毎日のように訪れるお客さんもいるとのこと。日本でいうところのみそ汁のように、毎日食べても飽きないのが家庭料理ならではの魅力だ。

Yahoo!ロコ純印度料理 AJANTA
住所
東京都千代田区二番町3-11 ニューテシコビル

地図を見る

アクセス
麹町駅[5]から徒歩約0分
半蔵門駅[5]から徒歩約7分
市ケ谷駅[3]から徒歩約7分
電話
03-3264-6955
営業時間
10:00~翌4:00(L.O) [日曜] 10:00~23:00(L.O)
定休日
無休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

3.創業1968年「アショカ」

かつての「アショカ銀座店」を写した様子
バラッツさん
バラッツさん
『アショカ』伝統的な北インドのムガル帝国の宮廷料理を日本で最初に紹介したお店。高級ホテルのレストランで食べられているようなインド料理を、日本に定着させたのがここなんですよ」
西新宿駅から地下直結のヒルトンホテルB1にある「アショカ」は、銀座店の創業から16年後の1984年(昭和59年)にオープンした

もともと銀座のインド政府観光局があるビル2階に店舗を構えていた「アショカ」。現在は銀座店が閉店し、この西新宿の店舗のみで営業を続けている。

店内にはインドの絵や置物が飾られていて、なんとも格式高い雰囲気が漂う

「アショカ」の店名は、かつてインドを1つにまとめた王様の名前から付けられた。

日本で最初にインドの釜・タンドールを作ったことでも知られ、今では日本のインドカレー店の定番メニューとなったナンタンドリーチキンも、実はこのお店が発祥なのだとか。

取材時もタンドールの中では「チキンティカ」や「マトン ボディ カバブ」などを焼いているところだった
笑顔で撮影に応じてくれたスタッフの皆さん。写真右端が「アショカ」代表のB.S.バルマさん

クリーミーで優しい 日本人好みのオリジナルカレー

ここでぜひ味わいたいのが、銀座店の創業当時からの人気No.1メニュー「チキン バター クリーム」。一見シチューのような見た目だが、一口いただくと口の中にカレーのいい香りが広がる。スパイスの風味はしっかりとしつつ、バターソース生クリームのおかげでコクがありまろやか。辛いものが苦手な人にもオススメだ!

タンドリーチキンが入った「チキン バター クリーム」(2100円・税別)。タンドールで焼いた「ナン」(578円・税別)も一緒にいただきたい
B.S.バルマさん
B.S.バルマさん
「銀座にお店ができた頃は、『インド料理は辛くて食べられない』という日本人の方も多かったんです。そこで当時のシェフが日本人の舌に合うようオリジナルで考えたのがこのメニューです」

ここでしか食べられない「チキン バター クリーム」の味を求め、わざわざ遠方から訪れるお客さんも多いとのこと。

「インドカレーは『アショカでないとだめ』といってくれるお客様のためにも、この味はずっと守り続けたい」と語るB.S.バルマさん。銀座で始まった「アショカ」の味と歴史は、新宿に場所を移し、これからも続いていくのだ!

アショカ
住所:新宿区西新宿6-6-2 新宿ヒルトピア B1F
電話番号:03-3344-4588
営業時間:11:30〜15:00(L.O.14:30)、17:00〜22:30(L.O.21:30)
定休日:無休
 
※新宿ヒルトンホテルの地下1階にあります。

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

取材メモ/老舗3軒をめぐってみて、日本のインドカレーの歴史の長さを改めて実感。この取材でインドカレーにどハマりしてしまい、それから週2ペースでカレーを食べ続けています。ついついクセになる味……それが日本にインドカレーが根付いた最大の理由なのかもしれません!

取材・文=秋山ももこ(mogShore)、撮影=岡本卓大、yuko


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