築地市場で働くプロが選ぶ揚げ物系丼はコレだった!

特集

食の小宇宙“丼”をもっと知りたい&食べたい!

2017/02/16

築地市場で働くプロが選ぶ揚げ物系丼はコレだった!

世界最大級の水産市場として知られる築地市場。日本中からのうまいものが集結する食の聖地で働く人々は、普段からうまい丼を食べているはず。「いったいどんな丼なのか?」−−その謎を探るべく丼特集取材班は、夜が明けたばかりの築地市場へと向かった。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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市場内の大商店街「魚がし横丁」へ

東京都内にある11か所の中央卸売市場のうち、最も古い歴史を持つ築地市場。魚貝などの水産物や、野菜・果物など青果物を取り扱う総合市場で、特に水産物部門は世界最大級の規模を誇る。

夜が明けたばかりの築地市場正門前。市場内通路は歩道ではなく通路のため、ターレットや、搬入車両が通行する。立ち止まったり多人数で横に広がって歩くなどは避け、安全に十分気をつけたい

築地市場で働く人や仕入れ業者だけでなく、一般来場者でも買い物や飲食が楽しめる市場内の唯一のエリアが「魚がし横丁」(正式名:東京都中央卸売市場築地市場関連事業者営業所)だ。

地図中央のオレンジ色のエリアが「魚がし横丁」。周囲はプロが働く本物の市場。車と荷物が優先なのはもちろん、立入禁止の場所には絶対に入らないように注意したい

大江戸線「築地市場駅」を降りるとすぐに、築地市場正門が見えてくる。そこから市場内を軽快に行き交うターレットに気を配りつつ、トンネルのような建物の下を左に抜けると「魚がし横丁」にたどり着く。

朝5時前にはすでに行列ができている店も

「魚がし横丁」は、寿司、天ぷら、和食、喫茶店などの飲食店をはじめ、長靴や刃物などプロユースの品を扱う約140の店舗が集まる大商店街。長屋のような形をした合計11棟の建物からなり、店舗によっては早朝4時ごろに開店するので、市場らしい美食を求め夜明け前から多くの市場関係者や国内外の来場客でにぎわっている。


天房「本日の天丼」1200円

小さなエビにこだわりあり

取材班が最初に目をつけたのは、天ぷらの店「天房」。周囲の寿司店には国内外の来場者が列を作るなか、「天房」には築地で働く男たちであろう、眼光鋭い男たちが次々と吸い込まれていく。間口およそ一間の店構えからは「うまいものオーラ」をビシビシと感じる(ような気がする)。

天房の一番人気「本日の天丼」は芝エビを中心に旬の魚介類がたっぷり
間口約一間の店頭には開店前から河岸の男たちが並ぶことも

取材班が店に入ると、先客たちは一心不乱に天丼をかきこんでいる。壁の目立つところに張ってあるメニューの「本日の天丼」(1200円)のようだ。朱色の文字で大きく「おすすめ!!」とあるのでさっそく注文してみることに。

季節によって天タネは変化するが、芝エビは定番

店主の鈴木訓夫さんによると、天タネはその日のおいしいものを選りすぐって提供。しかし、基本的に芝エビは欠かさないのが天房のスタイルだそうだ。

ーーなぜ築地に集うプロの皆さんは天丼を選ぶのでしょうか?

天房・鈴木訓夫さん(以下、鈴木さん)
天房・鈴木訓夫さん(以下、鈴木さん)
「仲卸も買出しに来る飲食店さんも、『魚の鮮度は自分のところが一番』という自負があるせいか、生の魚よりも火を通した天丼が好きだっていう方は多いです。それに、仕入れに来た場合、お腹がすいていると余計に買っちゃうから、仕事前にしっかり食べたいということで、こってりした天丼をかき込んでいくのかもしれないですね」
新鮮なタネが銅製の天ぷら鍋で次々と揚げられていく

なるほど、目利きが物を言う生の魚を使った刺し身などは、自分たちが一番良く知っているというわけだ。そうこう言っているうちに「本日の天丼」が着丼。ではさっそくいただきます!

ーー天ぷらはサクサクのふわふわで、優しい味わいのタレとよく合う。米も柔らかで、天ぷらの食感と見事に調和しています。

鈴木さん
鈴木さん
「昔はターレなどを使わずに汗をかいて運搬していたので塩辛い味つけでしたけど、今は塩分控えめです。タレは毎日仕込んで一晩寝かせ、甘すぎずあっさりと仕上げています」
取材当日は九州・有明海産の芝エビを使用

ーー特に、小さなエビの食感と香りが気に入りました。

鈴木さん
鈴木さん
「芝エビといって、ウチの天丼には欠かせない天タネなんです。成長が早いエビで、小さすぎても大きすぎてもうまくない。食べごろサイズがそろう産地の最高の物を仕入れるようにしています。プロが多いので、その分素材は良いものでないとすぐにバレちゃうんです(笑)」

こってりしすぎていないので、朝から揚げ物系丼の王様である天丼を食べたくなるのも頷けるおいしさ。築地周辺に勤める会社員もよく訪れるそうで、出勤前に天丼を食らう「エクストリーム出勤」をしたくなる名店であった。

天房

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。


小田保(おだやす)
「えび丼」1300円

エビフライをトンカツスタイルの卵でとじた謎の一品
築地市場内6号館の中央付近にある「小田保」

エビフライを卵でとじてもいいんです!

「朝4時から開いてる小田保さんでもプロの方をよく見かけますよ」という、天房のご主人のナイスな情報をもとに、さっそく「小田保」に向かう取材班。トンカツ専門店の「小田保」は天房と同じ、築地市場内6号館の5軒隣と激近! さっそく入店してみることに。

丼メニューのセンターを張る「えび丼」

店内には、一般客の善男善女にまじって、長靴を履いた人もちらほら。おそらく市場関係者に違いない。彼らの多くがかきこんでいる丼からは、エビの赤い尻尾がチラチラ見えている。壁に貼ってるメニューから察すると、どうやら「えび丼」のようだ。センターに貼ってあるので自信の一品なのだろうか。

ーーご主人、この「えび丼」は市場で働くプロにも人気ですか?(直球)

小田保・田中克之さん(以下、田中さん)
小田保・田中克之さん(以下、田中さん)
「そうですね、朝ごはんとしてはエビがちょうどいいのか、仕事前に『えび丼』をさっと召し上がっていく方は多いです」
「えび丼」に使われるホワイトえび。とにかくデカイこのエビが二匹も使われる

ーーそもそも、なぜエビフライを丼にしようと思ったのでしょう?

田中さん
田中さん
「15年ほど前に、常連客のリクエストがきっかけで生まれました。揚げ物職人として、たいていの食材を揚げては卵でとじてみましたが、そのなかでカツ丼に肩を並べるほどうまかったのが、ホワイトエビのフライを使ったこの『えび丼』だったわけです」
揚がったエビ二匹をぶつ切りにして、割り下で煮、卵でとじる

ーー尻尾の部分だけ卵でとじていないのはなぜですか?

田中さん
田中さん
「尾っぽのキレイな赤みがくすんでしまうんです。それに尾の好きな人にとってはパリパリ感が大切ですから」

ちょうど一口大に切ってあるエビフライをまずは一口。プリッとしたエビ独特の食感と甘味があって、カツ丼とはまた違うバランスのよさを感じる。カツ丼よりあっさりした卵とじ丼を食べたいという気分にぴったりだ。

衣にしみた丼ダレとエビのプリプリ感が!

ーー確かに煮ていない尾の食感は最高です! 丼ダレとの相性も抜群でグイグイいけちゃいます!

田中さん
田中さん
「タレはカツ丼と同じ物を使っています。醤油をベースにみりんを効かせ、あっさり軽めに仕上げることで、こってりしすぎずに軽い食感になるんです。市場の人はみんな忙しいから、丼を勢いよくかきこんでいきますよ」

小田保

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。


大至急食すべし丼がそこに

市場ならではの活気ある景色とともに、こだわりの丼を楽しみたい

というわけで取材班の健闘の結果、市場内には少なくとも河岸で働く人々を唸らせる2種の揚げ物系丼の存在を確認できた。また、牛丼チェーン大手「吉野家」の第1号店がここにあることも、丼ファンにとっては見逃せない。

今、築地市場は移転問題に揺れているが、世界中からの来場者をも魅了する「魚がし横丁」を、日本人の我々が体験しないのはもったいないこと。寿司、ラーメン、喫茶などはもちろん、丼もイケてる食の聖地への巡礼をぜひ満喫してほしい。


取材メモ/「魚がし横丁」のお店はどこもおいしいだけでなく、アットホームな気配りも感じることができました。間近でプロが働く市場であることを肝に銘じつつ、世界に誇る食の聖地を楽しんではいかがでしょうか。

取材・文・撮影=杉山元洋

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