EXILE・橘ケンチが考える「みんなが集まれる場所」とは

EXILE・橘ケンチが考える「みんなが集まれる場所」とは

2017/12/14

12月15日(金)〜28日(木)の2週間、「三省堂書店 池袋本店」の書籍館4FイベントスペースにEXILEのパフォーマー・橘ケンチが「たちばな書店」をOPENする。彼がリアル店舗をプロデュースする真意とは。本人に話を聞いた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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本を通して、みんなが集まれる場所を作りたかった

人気ダンス&ボーカルグループ・EXILEのパフォーマーである橘ケンチ。ファンの間では彼のことは“読書家”として知られている。ことし6月にネット書店「たちばな書店」を開設したケンチが、12月15日(金)〜28日(木)の2週間、池袋の三省堂書店に特設イベントとしてリアル店舗をOPENさせる。

橘ケンチ/EXILEのパフォーマー。J Soul Brothersを経て2009年にEXILEに加入。ネット書店「たちばな書店」を主宰するほか、日本酒にも造詣が深い

「EXILEとしての活動で、ツアーで全国いろんな場所に行くじゃないですか。あたりまえの話ですが、地方の都市にもたくさんの人が住んでいて。そういうところにもライブを届けたいとずっと思っていたんです」

今回のインタビューの冒頭、なぜネット上に「たちばな書店」を開設したのか、その理由を尋ねると彼はしばらく考えた後にそう話し始めた。

インタビュー中、質問に一つ一つ丁寧にこたえるケンチ

「自分たちの活動を紹介する際、たとえばプロモーションでテレビに出させていただいたりする機会は沢山あるんですけれど、こちらから一方的に情報を出し続けている今までのやり方は、『この時代に合ってないんじゃないか?』って最近ずっと思っていて」

EXILEとファン、お互いが両方の情報を出し合えるフェアな空間を作りたかったという。

「ネット上なら自分にも場所を作ることができる」

「海外ではプロモーションよりもコミュニケーションが主体になっていて。発信する側と受け取る側の関係がフェアで、お互いがいろんなことを共有、共鳴しながら、共に成長していける。そんな関係がいいなとアーティスト活動をしながら思っていたんですね。でも僕が行ける場所には限りがあるし」

そこで彼が考えたのは、誰もがアクセスできるネット上にその場所を作ることだった。

「僕は本が好きだったので、本を通してみんなが集まれる場所を作りたいなと思って。僕個人の力でも、ネットならそれができる。それでことしの6月に『たちばな書店』を立ち上げたんです」

ことし6月にオープンしたネット書店「たちばな書店」の中で、ケンチは自分のオススメの本について紹介している

「たちばな書店」には投稿フォームがあり、投稿者は自分の好きな本と書評を自由に書き込み、投稿することができる。

「『たちばな書店』は、みんなが『ボクはこう思います』『ワタシはこう思います』とフェアな立場で意見を言える場所です。彼らが自分の好きな本に添えてくれる書評を読んで『ああ、こういう価値観もあるんだ』という風に、ここでいろんなことを教えていただいています」

ケンチ流の本屋の楽しみ方

普段持ち歩くカバンの中には常に数冊の本を入れているというケンチは、時間があるとよく本屋に足を運んでいるという。

今回、自宅の本棚の中からオススメの本を持ってきていただいた(記事後半にてこれらの本についても紹介)

「僕は建築が好きなので、空間的なモノが好きなんです。暇さえあれば本屋に行って店内をぷらぷら眺めたりしています」

本屋の棚に並ぶたくさんの本の中から、たまたま手にした本から受ける偶然の出会いにも本屋に通う魅力を感じている。

「仕事柄、いろんな方と出会うことも多いんですけれど、そういう時はその人たちの本がなぜか目についたりとか。無意識に手に取った本をパラパラめくっていると、最近出会った方の連載を偶然発見したりして。勝手にシンパシーを感じています(笑)」

「本屋はいろんな発想やアイデアを与えてくれる」

お気に入りの本屋について尋ねてみると、代官山の蔦屋書店と六本木のABC(青山ブックセンター)にはよく行くのだそう。

「自分にいろんな発想とかアイデアを与えてくれる本屋が好きですね。インディペンデントのようなこだわりのある本屋も好きですし、地元の人に長く愛されていて『やっぱり本屋ってこういうことだよな』と原点を教えていただけるような、昔からある町の本屋も好きです」

「本棚に並ぶ本の中から毎日気分で本を選ぶ」という

ケンチの心に残る一冊

現在はEXILEからの派生ユニット「EXILE THE SECOND」としての活動などで多忙な日々を過ごしているが、時間を見つけては本屋を訪れている。

「時間があるときは、最低一時間くらいは本屋にいます。最初から本を手に取ることはあまりせず、店内を歩きながら心を落ち着かせていますね。そうすると妙に気になる本に出合うんです。「なんだろうこれ?」みたいな。そういう本って、内容だけでなくタイトルとか装丁とかもすごく気になるんです」

「悩んでいるときは本屋にいくんです」

そんなケンチが、ある日手にとった本のタイトルは「拒絶される恐怖を克服するための100日計画」。この本はネット書店の「たちばな書店」のコーナー「ケンチの心に残る一冊」の中でも紹介している。

「あの本はまずタイトルがポンと目に入ってきて。多分、凹んでる時だったんですよ。悩んでいる時で。悩んでいる時はよく本屋に行くんです。本屋に行くと、その時の自分の気持ちとか興味があるものがわかるんですよね。“心の健康診断”みたいなものかもしれないですね」

本の話を始めると、その本にまつわる彼のそのときの心情など、いろんなエピソードが飛び出してくる

2週間限定でリアル「たちばな書店」を池袋にOPEN

「本を通して誰もが自由に自分の意見を言える場所」としてネット上に立ち上げた「たちばな書店」はEXILEのファンのみならず本好きの間でも評判となり、日に日に投稿者の数が増えていった。

そして、6月に開設してからわずか半年あまりの12月15日(金)〜28日(木)の2週間、「三省堂書店 池袋本店」の書籍館4Fイベントスペースに「たちばな書店」が登場する。

「今回のために、『たちばな書店』の中で紹介している本の中から約100冊の本を選びました。僕は本が好きだけど、本を読む空間も好きなんです。本を並べつつ、自分が思い描く“本を読むのに適してるアートな空間”も作りたくて。それを今回の会場で表現しようと思っているんです」

「今回のリアル店舗では、紙の可能性を表現したい」

会場ではネット書店の「たちばな書店」に投稿していただいた人々の書評と共に約100冊の本が並べられる。それらの本はもちろんだが、リアルだからこそ体感できる彼が考える空間にも注目したい。

「空間も手作りです。今回は、本にちなんで“紙の可能性”というものを表現したくて。三省堂さんの会場は壁も床もベースが赤なんです。事前に現地に行ってみて、女性的で、花とか植物とかそういうものが合うんじゃないかなと思って。英字新聞を使って自分たちで花を作ったり、そういうもので空間を飾る予定です。美大生のバイトの方とかと一緒に作業しながら作っています」

イベントに合わせてオリジナルの本も制作

このインタビューは都内のとあるオフィスで行ったのだが、インタビュー中に「ここには連日通いつめていたんです」と教えてくれた。イベントに合わせて作った本『REMEMBER SCREEN』の制作作業のためだったという。彼はその様子を自身のインスタグラムにも投稿していたのでご存知の方も多いだろう。

「僕はアート的なカルチャーが好きなんですが、雑誌『月刊EXILE』の連載で6年分くらい撮りためた素材があったので、それを自分たちでコラージュしたりして、再構成した本を作りたいなと思って」

『REMEMBER SCREEN』 A5サイズの7冊セットをオリジナルケースに封入。168P(1冊24P)

気心の知れた仲間たちと「大人の図工」のようにワイワイとアイデアを出しながら作ったのだという。

『REMEMBER SCREEN』は絵、文字、コラージュなどケンチのいろんなアイデアが詰まっている

「映画のオマージュとして22作品分の撮影をやっていたので、それを元にオリジナルストーリーを7つ考えて、7冊の小冊子にしたんです。1冊につき3つの作品がコラージュされています。僕と編集者とカメラマンとスタイリストとずっと同じチームでやっていたので、みんなに相談して話し合って作りました」

『REMEMBER SCREEN』今回のイベント会場で購入可能。全国書店でも発売される

会場には自ら演奏したピアノ曲が流れる

自らの信念とする「フェアでみんなが集まれる場所」をリアルの空間として用意するために、ケンチは気心の知れた仲間たちと一緒にイベント会場を手作りし、オリジナル本の制作を手がけた。そしてもうひとつのアイデアとして、イベント会場では彼が演奏するピアノをベースにして作った音楽が流れる。

「もともとこのイベントをやるときに音楽が欲しいなと思っていて。人の声が入った歌ではなく、環境音楽的なものが欲しいなと思っていて。僕は昔、ピアノをやっていたこともあり、ピアノの音が好きなんです。それで本とピアノが合うんじゃないかと思って」

イベント会場でピアノの音を流したいと考えた彼は、愛飲する日本酒がきっかけで交流を続けているという友人に相談をした。その人物は、「Yahoo!ライフマガジン」でも連載をしている精神科医の星野概念氏だ。

精神科医・星野概念氏。Yahooライフマガジン連載「めし場の処方箋」でも人気。今回のインタビューに同席していただいた

「音楽活動もされている精神科医の星野概念さんと食事をしている時に、彼がとある酒蔵用に作った曲を聴いて『欲しかったのはこんな感じの曲だ』と思って。今回の会場用に曲を作ってもらえないかと相談したら快諾していただいたので、それから2週間くらいしてスタジオで録音しました。実はピアノを弾いてレコーディングしたのは今回が初めてだったんですよ」

インタビュー中、「今日、曲ができあがったので聴いてもらおうと思って」とPCを操作し始める星野概念氏

スタジオではベートーベンの「月光」、エリック・サティの「ジムノぺディ」、映画「戦場のメリークリスマス」で有名な「Merry Christmas Mr. Lawrence」などを演奏したのだそう。それらの音を組み合わせてできたオリジナルの曲が会場に流れる。

「ファンや、応援してくれている人の中には、僕がピアノを弾いていたことを知っている人はいるとは思うんですけれど、実際に聴いたことがある人はいないと思うので、今回はそこの部分も楽しんでいただけるんじゃないかと思います。『たちばな書店』ではそういうトライアルなこともできるからいいですね」

二人の出会いは雑誌での映画対談。しかし、対談が始まって5分で話題がお互いの好きな日本酒の話に変わり意気投合。それからたまに飲みに行く仲に

その収録後、ケンチは毎日ピアノを弾くようになったのだそう。

「レコーディングに向けて練習をしているうちに「やっぱりピアノが好きなんだな」と思って。それから毎日弾いてます。『戦場のメリークリスマス』の『Merry Christmas Mr. Lawrence』は結構弾けるようになりました(笑)」

「日本酒の勉強もしているんですよ」とケンチ。それを隣で聞いていた星野概念氏が「全部英語なんですよ」と教えてくれた
鞄の中のテキストを見せていただくと、全ページ英語で表記されていた。「英語の勉強にもなると思って」(ケンチ)

EXILEとは自分にとっての「道」

前述の通り、「たちばな書店」中では「ケンチの心に残る一冊」というコーナーがあり、その中で彼はある本の紹介している中で「EXILEとはグループでありながら、道なのではないかと思うようになりました」と書いている。

「EXILEというグループは最初、音楽グループから始まっているんですけれど、2009年に僕が入って14人になって、そのあとさらに新メンバーが入って。だんだん普通の音楽グループという概念がだんだんなくなってきていて。アメーバのような生命体というか、有機物みたいな感じがしてきているんですね。EXILEは概念的には社会組織、社会有機組織だったりするところはあるんですけど、哲学的には自分の中ではどんどん一つの思想のようになってきていて」

本の話をしている間、満面の笑顔

今回の取材中、それまで大好きな本について語るときは笑顔を交えつつ穏やかな表情をしていたケンチ。インタビューの終盤、「EXILEは自分の中では生きる軸みたいなもの」と語ったとき、その視線はこれからも自分が歩んで行くその先を見据えているかのようだった。

「メンバー全員には『EXILEといえばこれだ』というようなルールは特にないんですけれど、自分の中で感じる『EXILEってこういうことだよな』というものはあって。これからも死ぬまで、(胸に手をあてながら)ここにそれを持ちながら生きて行くんだろうなって気がしていて。そういう意味で、音楽グループっていう枠組みを超えて“自分が歩いて行く道”っていうものになってきているんだなって年々強くなっているんですよね」

2016年よりグループとしての活動が制限されていたEXILEは、メンバーそれぞれの充電期間を経て、いよいよ2018年に再始動する。

「2018年はEXILEとしてまた活動を再開します。これからも音楽とダンスで派手にパフォーマンスを繰り広げます。それに止まらずに、僕にとっての本のように、メンバー各自がいろんな活動を通して、それぞれがさらに色濃くなっていく。年が経つごとにそれがにじみ出て行くんじゃないかなと思います」

ケンチの考える本の魅力とオススメの本

小説、写真集、旅ガイドなどの持参した本を紹介しながら「本については雑食で、なんでも読むんですよ」とケンチ

「本を読んで『この言葉いいな』と思ってるんですけど、割とすぐに忘れてしまうことも多いんです。でも何かをしていたりしているときに、急にポンとその言葉が頭の中に出てくる。その度に本って面白いなって思います。言葉が自分の心の引き出しに貯蓄されているみたいなものだと思います」

左上から時計回りに「海色の壜(びん)」「未来いそっぷ」「地球の歩き方」「中川道夫 上海紀聞」「日本酒テイスティング」 「談談妄想」「服部みれい詩集 だからもうはい、すきですという」(撮影 :編集部)

持参してくれた7冊の本をケンチが紹介

『田丸雅智 海色の壜(びん)』
「この人はショートショートを文学的に世の中に広めようという活動をされていて。創作活動もしながら普及活動もしている方です。ショートショートだと翔べるんですよね。現実離れしている作品が多いので。映画もそうなんですよ。ショートフィルムとか見ると、2時間の映画にはない、なんでもありなアイデアが入っているので刺激をもらいますね。クリエイターの人にはショートショートはいいんじゃないかと思います」

『星新一 未来いそっぷ』
「星新一さんは大人になってから読んだんです。この本はイソップの昔ながらのあったかい物語を少しひねって風刺っぽくするところがおしゃれだなと思って。星新一さんは生涯の作品数が多いですよね。ピカソとかもそうですよね。やっぱり天才っていうのは生涯の作品数が多いんだなと思います」

『地球の歩き方』
「僕は旅行に行くのが好きなこともあり、『地球の歩き方』が結構家の本棚に並んでいるんです。昔、初めてアメリカに行った時も、LAの号を買って宿はどこが安いかとか全部自分で調べていたので。その土地のリアルを知ることでできるじゃないですか。旅は観光したいというより、現地の生活を体感して馴染みたいと思うタイプなんです。全く行ったことのない国には免疫みたいなものになるかと思います」

『中川道夫 上海紀聞』
「これは昔の上海を撮影した写真集です。最近、上海に行く機会が増えていて不思議な街なんですよね。すごい発達しているんですけど、同時にその逆もあって。年間3億人くらい観光客が訪れる「バンド」という場所があって、川を挟んで片方は近未来都市みたいで、もう片方は昔の西洋建築をみることができて。そんな異空間感が面白いですね」

『北原康行 日本酒テイスティング』
「これは僕が日本酒にハマり始めた時に買った本です。「東北のお酒は華麗で洗練されている」という風に、この本はソムリエの方によるティスティングの視点で書かれています。日本酒の味を早く理解したいと思っている時期に購入した本ですね」

『谷尻誠 談談妄想』
「建築家の谷尻誠さんの本です。今日は谷尻さんの本の中で紹介しようと思っていた本と違う本を持ってきちゃったけど(笑)、この本もとても面白いです。先日、谷尻さんの事務所に遊びに行った際に『ツルモク独身寮』が置いてあって、その話で盛り上がりました」

『服部みれい詩集 だからもうはい、すきですという』
「これはブックブックディレクターの幅 允孝さんに薦めていただきました。これを読んでいると曖昧なものの美学みたいなものがあって。服部さんの世界観を垣間見られるようなものがあって、それを自分に生活に投影すると『あ、これも詩になるのかな』と思ったり。この本の中に、ある蕎麦屋での出来事を描いた詩があるんですけど、情景が浮かぶようで面白いと思いましたね。本棚からパッと本をとって読むんですけれど、詩の気分って日も結構あるんですよね」

\会場ではオリジナルのトートバッグも発売!/

「本を入れていただけるトートバッグです。『HAPPY』や『GLORY』とか、僕が本を読んで連想した言葉とか、受けた感情とかの言葉を僕がピックアップして、それらを組み合わせて作りました」(ケンチ)

「たちばな書店」イベント
三省堂書店池袋本店×たちばな書店


日時:12月15日(金)~12月28日(木)
10:00~22:00
※12月19日(火)のみ15:00閉場

会場:三省堂書店 池袋本店 書籍館4階イベントスペース(入場無料)
住所:東京都豊島区南池袋1-28-1

取材・文:秋吉健太(Yahoo!ライフマガジン) 
撮影:福田栄美子

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