精神科医が猿田彦珈琲にみたサービスの極意。それは傾聴と共感。

連載

星野概念のめし場の処方箋

2018/01/01

精神科医が猿田彦珈琲にみたサービスの極意。それは傾聴と共感。

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

星野 概念

星野 概念

精神科医

相手に「そうなんですよ」と喜んでもらうにはどうしたらいいのでしょうか。その極意をみた気がします。

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

コーヒー嫌いだった僕がコーヒー好きになったきっかけのお店が猿田彦珈琲です。店舗ごとに特徴ある猿田彦珈琲に通ううちに、僕が日々行う心理臨床とも重なるサービスの極意をみた気がしました。今回はそれをお話したいと思います。

  

【目次】
1.コーヒー嫌いからコーヒー好きへの道
2.傾聴、共感の大切さ
3.猿田彦珈琲で傾聴、共感してもらっていた。


1.コーヒー嫌いからコーヒー好きへの道

・コーヒーの扉が開けない

コーヒー&シガレッツなんて言いますが、僕は、煙草は体に合わず吸いそびれたまま大人になってしまったし、コーヒーにも長いこと興味がありませんでした。

  

そんな、絶対に伊達男になれないコンプレックスを抱えたまま、伊達男に憧れて、大好きなお菓子「トッポ」で擬似喫煙を何度したことか。

  

まぁでも、職業が職業だし、時代が時代なので、煙草は無理して吸うこともないだろうと数年前に諦めました。

  

ただ、コーヒーは違います。
イメージしてみてください。

「締め切り直前の音楽作業」

「行き詰って全然書けない執筆作業」

「夜間の当直で、救急患者さんの診察を終えた後の静かな病院での一コマ」


これらがドラマのワンシーンだとすれば、登場人物の傍らにあるのは何ですか?

そう、コーヒーです!

  

そんなシチュエーションを持つ機会に恵まれることもある僕ですが、前述の通り、長らくコーヒーには興味が持てませんでした。

  

その代わりに握りしめていたのは、

お茶……。

「おーーーい、お茶かよ!」

  

と、まるでCMのように突っ込まれそうですが、少し前までは実際に、酒以外の液体といえばお茶か水しか飲みませんでした。

コーヒーにいたっては、あんなに良い香りがするのに、
何であんなに苦いんだ? 
何であんなに酸っぱいんだ?

と、長年モノにできずにいたのです。

  

・扉を開けてくれた缶コーヒー

そりゃ、カフェに行けば時々カフェオレくらいは飲みましたが、ブラックはなかなかハードルが高い。

  

克服したいけど、お店で飲むと、そのたびに数百円かかります。

なので、苦味や酸味に耐えられる余裕がある時に、ブラックの缶コーヒーを少しずつ試してみることにしました。

  

まぁでもこれ、日本酒をワンカップだけで好きになろうとしているのに少し近いかもしれないので、今考えたら無茶です。それなのに、まさかの出会いがあったのです!

  

それは、病院の自動販売機に売っていた

「ジョージアヨーロピアン」!!

  

これはもう、他の商品と全然味が違いました。あくまでも僕の中でですが、なんというか、舌での感じ方がワインに近くて、酸っぱ過ぎないし苦過ぎない、衝撃的な味でした。今でも缶コーヒーは基本的にこれしか飲みません。

そして、その缶コーヒーには

「猿田彦珈琲 監修」

と書かれていました。

・猿田彦珈琲ってなんだ?

猿田彦と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは、古事記や日本書紀に登場するみちひらきの神、

サルタヒコノカミ

です。

  

「古事記と日本人の柔軟性」についての記事は、ちょうど1年ほど前に、中井玉寿司と紐づけて書きました。↓↓

日本人の国民性の土台に関わるとも考えられている古事記や日本書紀ですが、そこに出てくる様々な神々の中でも、ニニギノミコトの道案内をした天狗のような風貌の、みちひらきの神、サルタヒコノカミが僕は好きです。

  

好きとか嫌いとか言うことではないのかもしれませんが、毎年猿田彦神社に参拝に行くくらいなので、「猿田彦珈琲」という名前は放っておけません。

  

調べてみると、恵比寿や仙川にある珈琲屋さんだということが分かりました。

  

ジョージアヨーロピアンを監修しているということは、きっと美味しいだろうし、何より名前が気になったので、当時何度か行く機会のあった仙川の

猿田彦珈琲 アトリエ仙川

に行ってみました。

・すごく相談に乗ってくれる

1、2年前のことですが、まだ覚えています。ブラックコーヒーを飲むと決めていたものの、いざカウンターの前に立つと何を頼んだらいいのか全然分かりません。

  

豆の種類ごとの味の違いなんて知らなかったので、戸惑ってしまい

「酸味があまりなくて、苦味もなくて、あれ? だったら何があるんですか」

とか意味のわからないことを口走った記憶があります。これでは、注文ではなくて、なぞなぞです。

  

でも店員さんは

「酸味が苦手なんですね」

と優しく確認してくれます。でも確認されて気がついたのですが、酒で考えれば酸を感じる味は好きなはず。

「あ、いや、酸味は要りますね」

  

要るんかい! と突っ込まれても仕方のない流れですが、

「酸味はある程度大丈夫なんですね。苦味はどうですか?ない方がいいですか?」

「いや、まぁまぁですね」

  

こう書いてみると、なんだか嫌がらせをしているようですが、本当に混乱していたんです。でも、こんな形ですごく話を聞いてくれて、コーヒーを選んでくれました。

    

結果、すごく自分に合うコーヒーにめぐり逢い、仙川に行く度にこのお店を訪れることになりました。

  

猿田彦珈琲 アトリエ仙川では、コーヒーの他にも、窓の外を向いて座る一人席や、階段の手すりのような部分がそのまま小さなテーブルになった席など、お店自体に工夫が凝らされているような感じがしました。

コーヒーカップも、持ち手が大きくて素敵なデザインだし、さすがサルタヒコノカミを連想させる(そのままですが)店名を名乗るだけあるな、と唸りながら通いました。

  

・そして「要塞」を要する店舗へ

そんな猿田彦珈琲に、新しい店舗ができたことを知りました。その名も

猿田彦珈琲 調布焙煎ホール

何やら、焙煎機4台が置いてあるとかで、日本酒で言えば精米機が置いてあるようなものだと考えるとワクワクします。

  

いざ行ってみると、圧巻!

ガラス張りの空間の中に、要塞のような焙煎機が4台、そして、中で人が働いています!

実際に焙煎している姿、そして、なんだかブレンドみたいな作業をしていそうな姿が観察できるのです。

  

しかもガラスには、中で働く人たちの写真とプロフィールが貼られています。これがまた「霊長類ヒト科」とか書かれちゃったりしていて。

  

もう、動物園みたいだ!!

  

パンダも好きで、みに行きたいけど、混んでいそうだしまぁ映像でも良いかって思います。

でも、焙煎は実物にかぎります。なぜなら、香りや音も素晴らしいから。しかも、数日前にここで焙煎された豆で淹れたコーヒーを飲むわけです。この五感を刺激するライブ感よ!

  

このように、コーヒーのことなんてろくすぽ知らない僕にさえ、焙煎を語らせてしまうほど、

「コーヒーをつくる人々園」

とも言える生体展示の景色は斬新でした。

  

いくら観察しても、もう全然飽きません。もはや着席せずに、ずっと観ていたい。

  

そんな矢先、店員さんが来て席に案内してくれました。そして、レジではなくその場で注文。

店舗によって置いてある豆が違ったりするようで、また話をじっくり聞いてもらわないと注文が決められません……。

「えっと、酸味が…、苦味が……」

  

結局混乱しながらの意味不明な注文になってしまうのですが、やはり最終的に素晴らしく好みなコーヒーを持って来てくれました。

  

これって、こちらの話をしっかり聞いてくれて、こちらの気持ちを分かってくれていないと難しいことだと思います。

  

さらに、この店舗には本がたくさん。
選書もポップかついぶし銀で素晴らしく、その日は、

茨城のり子の詩集、植田正治の写真集、
勝山晋作の「アウトローのワイン論」、
友人でもある濱田英明(濱ちゃん)の
写真集「Haru&Mina」などをゆったり眺めながら、焙煎の音と匂いに囲まれて至福の時間を過ごしました。

  

気づくと僕は、ブラックコーヒーが好きになっていました。

この、苦手だと思っていたものが、お店との出会いでグーーッと嗜好品化する感じ、先ほどリンクを貼った中井玉寿司との出会いで日本酒にハマっていった時に似ています。

これからも絶対に行くだろうな〜。

  

2.傾聴と共感の大切さ

・傾聴

傾聴とは、

「耳を傾けて話を聴くこと」

と言えます。

  

僕のような心理臨床を行う人間にとって、相手のお話を「傾聴」するということは最も大切なことの一つであり、全ての業務の足がかりとなるのが、この「傾聴」です。

悩みを抱えて来た方の悩みを知るには、まず話を聞かないと始まりません。

これ、考えてみると至極当然な話で、相手は自分ではないわけですから、たとえ似たような体験をしていたとしても、感じ方は千差万別です。

だから、どのようなことがあって、どう考えて、どういう感情になったのか、じっくり聞いてみる必要があるわけです。

でも、そうしないと詳しく理解ができないのを分かっていながら、話の途中で意見を言いたくなったり、自分の考えを押しつけすぎたりしそうになるのが人間の性というものでもあります。

  

だから、話したいことがあるのに、普段から満足には話せていないという人は、意外と多いはずです。

そんな現実もあるので、まずは何も言わず、じっくり相手の話に耳を傾けることは、相手にとって嫌なことではないだろうし、必要なことなのです。

  

・共感

傾聴しているうちに、「あたかもその人のように」、相手の世界観や考えや感情を感じられるようになることが多々あります。

  
  
  

これは、相手の感情に巻き込まれて揺さぶられるのではなく、相手の気分や真意を正確に感知するという状態です。

これを「共感的理解」と言います。

  

「共感的理解」ができると、相手の考えや感情が分かるので、「辛いですね」とか「悲しいですね」とか、共感を示すことができるようになります。

誰しもに多かれ少なかれ経験があると思いますが、共感を示されると分かってくれた気持ちになりますよね。

  

この「傾聴」、「共感」の過程は、人との対話を充実させていく際に、必要不可欠なものであると言えます。

3.猿田彦珈琲でも傾聴、共感してもらっていた

前述した通り、猿田彦珈琲を訪れた際、僕は、どう注文したら良いのか全然分かっていませんでした。

  

右往左往して、うまく自分の好みを伝えられない、でも美味しいコーヒーにありつきたい僕の話を、店員さんはしっかりと傾聴してくれたように思います。

  

そして、きっと「共感的理解」のような状態、「この人はこんなコーヒーが飲みたいんだな」という理解をもとに、コーヒーを出してくれました。

まるで

「これですよね?」

  

というように。

それが

「そう、まさにこれなんです!」

  

というコーヒーだった時、僕はなんだか自分のことを分かってくれた気になりました。

選んでくれるコーヒーで共感を示してくれたようで、とても嬉しかったのです。

  

・すべてに共通するサービスのコツかも

この過程が、普段自分が心理臨床で行なっっている、傾聴→共感的理解→共感を示す、という流れで相手との距離をほぐしていくのに重なりました。

  

それで気づいたのは、猿田彦珈琲を含めた僕が好きな飲食店、居酒屋もBARも、すべてに共通しているのは、相手との対話や雰囲気から相手を理解して、「これだ!」というものを提供してくれるサービスマンがいるということでした。

  

そりゃ、好きになりますよね。

・猿田彦な季節

さて、やってまいりました、2018年!!

あけましておめでとうございます。
今年も何卒よろしくお願い申し上げます。

  

僕にとっては、猿田彦神社を詣でる、猿田彦な季節がやってきたということでもあります。

  

そんな猿田彦な季節にぜひ、猿田彦珈琲、特に調布の「コーヒーをつくる人々園」な生体展示を体験することをオススメします。

今年も、みちひらいていきましょう!!

  
Yahoo!ロコ猿田彦珈琲 アトリエ仙川
住所
東京都調布市仙川町1-48-3

地図を見る

アクセス
仙川駅[出口]から徒歩約2分
つつじケ丘駅[南口]から徒歩約14分
千歳烏山駅[西口1]から徒歩約22分
電話
03-6909-0922
営業時間
月~金 07:00~22:30 土,日 10:00~22:30
定休日
無休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

Yahoo!ロコ猿田彦珈琲 調布焙煎ホール
住所
東京都調布市小島町2-61-1 トリエ京王調布 C館 1階

地図を見る

アクセス
調布駅[北口]から徒歩約4分
布田駅[北口]から徒歩約13分
京王多摩川駅[出口]から徒歩約14分
電話
042-444-2632
営業時間
月~日 10:00~21:00
定休日
不定休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

星野概念(ほしのがいねん)

精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

権田直博(ごんだなおひろ)

画家

この記事を書いたライター情報

星野 概念

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精神科医

総合病院に勤務し、日々精神医療に従事する傍ら、執筆や音楽活動を行う。

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