犬養裕美子のお墨付き! 親子居酒屋、代々木公園「甚六」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン

2018/01/25

犬養裕美子のお墨付き! 親子居酒屋、代々木公園「甚六」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第44回は代々木公園「甚六」。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

オープンして44年。
親子2代が淡々と続ける居酒屋

甚六。長男、という意味だが、お人好し、のんびり屋の意味も。店主の永谷敏行さん、一成さんも長男

あ、これは! 奥渋通りを(東急本店と代々木八幡を結ぶ商店街)を歩いていて、目に入った看板に「ハッ!」とする。それは懐かしい「甚六」の文字だ。でも、なぜここに?「甚六」は表参道にあったのだけど……。
懐かしい理由は、私が仕事をしていたオフィスのとなりに「甚六」があり、この店に週2~3回は通っていた。表参道周辺のファッション、デザイン関係者の大御所も通う伝説の“深夜食堂”だったのだ。

ワインバーがひしめき合う奥渋通りのど真ん中、居酒屋は逆に目立つ? 火曜から金曜は朝5時まで営業しているので、深夜飯にも人気

ドアを開けて階段の下をのぞき、「久しぶり!」とあいさつしたら、厨房のマスターと目があう。「やっぱり! 全然変わらないわ」と懐かしい顔を確認してうれしくなる。が、マスターは怪訝な顔。「忘れちゃったのかな?」と思って階段を下りてびっくり。なんと、カウンターの中になじみのマスターが2人いる! 私が最初にご主人と間違えたのは息子の一成さんだったのである。

右が永谷敏行さん、今年の3月で70歳! 左が息子の一成さん。親子喧嘩は日常茶飯事、でも仲良しです!

お父さんの永谷敏行さんは今年で70歳になるというが、以前と変わらず厨房に立っている。聞けば、表参道のビルを取り壊すことになり、2年前にこの場所に移転してきたという。それにしても、今年で創業44年。親子2代の居酒屋は立派な“老舗”に違いない。

店内はカウンター7席、テーブル14席。表参道の頃からの常連さんだけでなく、周辺の新しい常連さんも増えてきた

メニューは何年も変わらない、変えられない。
時間をかけて出来上がった黒板メニュー

この店のスゴイところは、黒板のメニューを見ればすぐわかる。ぎっしりと並んだ料理。その1つひとつが、この店らしいきちんと手間かけた料理だ。

じっくり見ていると全部食べたくなる、名作ぞろいの黒板メニュー。魚、肉、野菜、〆(シメ)のご飯もなんでもそろう

私の覚えていたメニューNo.1はタコキムチ550円(税別 以下同)。茹でたタコと大根、キュウリをキムチであえたもの。ピリカラ味がまだ珍しかった昔から、この刺激的な味はビールに欠かせない1品だった。

名物、タコキムチ550円。ピリ辛の味わいが抜群のバランス!

いか団子800円、ねぎま(まぐろと豆腐とねぎの煮つけ)750円など、どの料理にも永年通う常連のお気に入りメニューなので、はずすことができないとか。

春菊とちくわのナムル650円。春菊の独特の香りが生きている、和と韓国風の味わい
レンコンのはさみ揚げ600円。揚げ物も一工夫。シャキシャキの食感が心地よい

料理の仕込みは親子2人でやる。夜9時になると父の敏行さんは上がる。その後は息子の一成さんが1人で調理とサービスを引き継ぐ。すべてのメニューを作れるようになるまでどのくらいかかったの? 「5年くらい、ですかね」と語る。

ペッパーチャーハン800円。これが〆に大人気。パラパラの仕上がり、ピリリのペッパー風味
アルコールもビール、日本酒、焼酎、ワインなどなんでもそろう。日本酒はスポットでおすすめ銘柄が加わる

敏行さんは、手取り足取りは教えない。一成さんもいちいち聞かない。到達点はわかっているから、そこまでの道のりを自分なりに組み立ててきたそうである。そこに、レシピで再現するのとは違う、味の伝承が下されてきた気がする。
新しいメニューはないけれど、2人で毎日アップデートしていく。久しぶりに食べたタコキムチは、やっぱりビールと最高の相性。私にとって涙の出そうな「甚六」の味だった。

次は3代目が控えているのだろうか?
Yahoo!ロコ甚六
住所
東京都渋谷区富ヶ谷1-14-11

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アクセス
代々木公園駅[2]から徒歩約4分
代々木八幡駅[出口2]から徒歩約5分
渋谷駅[3a]から徒歩約13分
電話
03-3467-0633
営業時間
月,土 18:00~24:00(L.O.22:30) 火~金 18:00~29:00(L.O.27:00)
定休日
毎週日曜日、祝日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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