精神科医が大好きな中華屋でふと思った「その気」になる仕組み

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1月の連載記事まとめ

2018/01/29

精神科医が大好きな中華屋でふと思った「その気」になる仕組み

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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人をその気にさせる理論もあるし、理論はなくとも、美味しければ注文する気には自然になりますね。

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

僕が餃子に目覚めるきっかけを頂き、今でも月1回は必ず行きたい大好きなお店、幡ヶ谷「您好(ニイハオ)」で先日も食べていたら、人をその気にさせる仕組み、つまり餃子を頼みたくさせる仕組みがあるかもしれないと気づきました。今回はそんなお話です。

  

【目次】
1.素敵な町の中華料理屋と餃子
2.人をその気にさせる理論
3.幡ヶ谷「您好」もその気にさせる


1.素敵な町の中華料理屋と餃子

・餃子はもはや国民食??

餃子。

  

全ての人にとって好物、というわけではないと思いますが、餃子が嫌いという人に出会ったことがありません。

Yahoo!ライフマガジンをみてください。
餃子だけで名連載が成立してしまうほど、餃子の楽しさ、おいしさは皆を魅了するものなのです。

  

・実はそんなに好きじゃなかった

とはいえ、僕はニンニクが得意ではないこともあり、自分から進んで餃子を食べに行く習慣はありませんでした。

  

昔、母親が「今日は餃子で〜〜す!」と、
ジャジャーン!みたいなテンションで発表した時も、イェェェェ!!と盛り上がった記憶は一度もありません。

  

そんな、餃子に対して消極的、いわば餃子については少数派だった僕ですが、数年前に、少なくとも月1回は食べに行きたいと思えるお店に出会いました。

  

そのお店は幡ヶ谷にある

「您好(ニイハオ)」

というお店です。

  

・町の中華感

もう今や、色々なところで紹介されているお店で、知っている方もいると思うのですが、基本的に非常に素朴なお店です。

  

店内がすごくオシャレとか、すごくキャッチーな哲学(オーガニックなもので統一されているとか)があるとか、面白い仕掛けがあるとか、そういったフックはほとんどありません。

つまり、町の普通の中華料理屋さんだということです。

  

強いて言えば、店長さんはとても真面目で実直な感じの方なのですが、言葉遣いなどが少し変わっていて、そこは個人的に好きなポイントです。

  

どんどん人気店になっていて、電話をしても予約が取れない時もあるのですが、その電話でも

「すみません、今日の夜はもう怖くて予約が取れません。いやもうホント怖くて。申し訳ありません」

  

と言われることがたまにあります。

一体、何が怖いのか!?

  

一度、お店で席を共にしていた人と

「予約の時に、怖いっていう理由で断られる時があるんだけど、面白くない?」

  

と話していたら、それが聞こえたのか、わざわざ席まで来てくれて

「ホントに怖いんです。申し訳ありません」

  

と言っていました。

他にも、前はメニューに餃子の個数が8個と書かれていたのですが、大体お皿には9個とか10個とか乗っていたり(今は9個と書かれています)。

飲み物のメニューで、グラスワインのところの説明に

赤(自然派ワイン、山田さん推薦)

と書いてあるのですが、

どこの山田さんなんだ!

とどうしても突っ込みたくなって店員さんに聞くと

「えっと、、ワインの、、人」

  

と、明らかに把握できていなかったり。

こういった、ギャグなのか?と疑いたくなってしまう素朴さがまた、非常にたまらないのです。

  

・幡ヶ谷ニイハオは餃子だけじゃない

餃子で有名なニイハオですが、実は冷菜や炒め物、ご飯ものなどもとても充実して美味しく、注文する時にいつもすごく迷います。

  

ピータン豆腐、棒々鶏、マーボー豆腐、アスパラと貝柱のあんかけ、ナスと角煮の炒め、チャーハン各種、ゴマソバ、ラーメン
などなどなどなど。

こう書くと、餃子屋というより、町の中華料理屋という印象を持つのも無理ないと思いませんか?

  

・餃子を頼みたくなる秘密

でも、ニイハオに行くと、必ず餃子を頼みたくなります。

もちろん、餃子の評判がとても広まっているからというのが大きな理由だと思うのですが、実は他にも理由があることについ先日気がつきました。

  

ニイハオには、餃子の調味料としての醤油とかラー油とか酢が置かれていません。

でも、席に着くといつの間にか、目の前に特製の餃子のタレが入った小皿が置かれていたのです。

  

恐らく、「いらっしゃいませ」の挨拶の一環でその小皿が置かれています。

今まで気がつかなかったから、もしかしたらその時だけだったのかもしれませんが、そんなタイミングでタレが入った小皿を置かれれば、餃子を頼みたくなるのは当然です。

  

町の中華屋だけど餃子が顔、というイメージがそういう風に形づくられているとしたら面白いと思いませんか。

  

・そして餃子をいつも食らう

カウンターに座ると、餃子を仕込んでいるのがライブでみられます。

まな板に、なんか丸い、かわいい、餃子の皮になる運命の団子のようなものが並べられ、

  

親指で押されながら広げられ、

  

割と大ぶりでザクザクな具で作られた餡が入り、

  

丸い小ぶりな餃子が量産されていきます。

  

これが本当に美味しい!

  

しかも、恐らくニンニクが入っていない!

結局、水餃子も焼餃子も、時には揚餃子も頼み、その上で他のメニューも食べるので、いつもお腹が爆発しそうになります。

  

それが、「いらっしゃいませ」と同時に置かれるタレから始まるストーリーだとしたら……。

何事もまずは一歩めから。

ニイハオでは、タレがはじめに出ることによって、「まずは餃子を是非」と一歩足を踏み出させてくれていることになります。

  

2.人をその気にさせる理論

心理学では、人の応諾、つまり「はい」と言ってもらうための理論がいくつかあると言われています。それを総じて

応諾獲得方略

と言います。読んで字のごとく、

応諾を獲得するための方略

ということですね。この方略のいくつかをご紹介します。

  

【1】 段階的要請法

「フット イン ザ ドア テクニック」

とも言われます。

セールスマンがドアにまずは足だけ挟んで

「お話だけでも聞いてください」

  

なんて言いながら、少しずつ契約を取りつける、といったイメージです。

つまり、小さい要求の応諾をまず得て、そこから「段階的」に大きい要求の応諾を得る方法です。

  
  
  

小さな依頼でも一度応諾すると、人って

「自分は協力的な人間なんだ」

という認知が形成されて、それに沿っていく傾向があると言われています。

それで断りにくくなってしまうんですね。

【2】 譲歩的要請法

「ドア イン ザ フェイス テクニック」

とも言われます。

例えば友達に

「5万円貸して」

  

「え、そんな大金やだよ」

「じゃぁ5千円」

  

「うーん……、ま、いいよ」

といった感じで、応諾を得る、「フット イン ザ ドア テクニック」とは逆のイメージの応諾の得かたです。

セールスマンの例えで言えば、まず顔を入れてしまえ、ということになります。

相手が断ると予測される、要求度の大きい依頼をして、相手が断った後、要求度を低下させて、再度依頼するのです。

こちらが「譲歩」しているように見えるので、相手も譲歩せざるをえない気分になるわけですね。

【3】 応諾先取り法

「ローボール テクニック」

とも言われます。

まず、相手が応諾するような望ましい条件を呈示して、応諾を「先取り」します。

ローボール、つまり低い球で取りやすいよ、と言ってキャッチする気分にさせるわけです。

  

その後、何らかの理由をつけて好条件を取り去ってしまうのですが、相手は一度応諾する意思を表明しているので取り消しにくくなるという仕組みです。

  

・そりゃ、その気になるけれど

この【1】〜【3】の応諾獲得方略、心理学辞典にも載っている社会心理学領域のお話ですが、こうして理論的なものになると、何となくエグみを感じますよね。

特に、【3】の応諾先取り法。これ、何度読んでもひどいです。

ほぼ詐欺……。

3.幡ヶ谷「您好」もその気にさせる

・美味しいならばよろこんで!

幡ヶ谷「ニイハオ」で、「いらっしゃいませ」と同時に置かれる餃子のタレ。

これは間違いなく、策略的なものではないと思いますが、かなり斜めから見るとしたら、先ほどの「フット イン ザ ドア テクニック」にも見えてきます。

  

まずタレをそれとなく置き、メニューの頭に餃子があれば(あるのですが)、だんだん餃子が頼みたくなる。

ただ、もちろんそれだけではありません。

何はなくともあの唯一無二の餃子

  

小ぶりでかわいいモチモチの皮と、それに包まれた餡を噛みしめる幸せを、お客全員がイメージしてお店に来るわけですから、タレもメニューもその期待に応えていると言った方が的確かもしれません。

どちらにしても、美味しいならば、よろこんで、「注文」という名の「応諾」をしたいではありませんか!

  

・「餃子」の2文字が未来を明るくする

パラダイス山元 著 『読む餃子』

には、「餃子」という2文字から

【「食べて」「交わる」と「子ども」ができる。】

【溢れんばかりの愛情を皮で包み込んだカリっとよく焼きの餃子は、少子高齢化の日本に歯止めをかける切り札です。】


という、下ネタに片足、いや両足くらいを突っ込んだ一節が冒頭に登場します。

  

でもなんだか分かる気がします。

餃子を食べると元気になるような気がする。

  

その中でも、素朴さ、突っ込みどころ、圧倒的な美味しさなど色々な要素を包みこんだ、まるで餃子のような町の中華料理屋さん

「您好(ニイハオ)」

を、僕はおすすめしたいです。

さぁ! 

レッツ 餃(ギョウ≒go)!!

  

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

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精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

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画家

Yahoo!ロコニイハオ
住所
東京都渋谷区西原2-27-4

地図を見る

アクセス
幡ケ谷駅[南口]から徒歩約3分
代々木上原駅[東口]から徒歩約10分
初台駅[南口]から徒歩約13分
電話
03-3465-0747
営業時間
月~金、祝前日: 17:00~23:30 (料理L.O. 23:00)土: 17:00~23:00 (料理L.O. 22:00)
定休日
日、祝日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

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