北海道・滝川市 強い意思で石に向かう石像彫刻師「長岡熙山」

2018/03/06

北海道・滝川市 強い意思で石に向かう石像彫刻師「長岡熙山」

北海道滝川市。滝川バイパスを車で走っていると見えてくる大きな聖観音菩薩像。国産の原石ひとつから彫られている仏像としては国内で一番の大きさ。彫ったのは、滝川で石像彫刻を営む長岡熙山さん。この道50年の長岡さんに、石彫への思いをお聞きしました。

中広

中広

地元滝川で身につけた技術と、石工の本場で触れた伝統技術

滝川市朝日町の一角にある長岡石像彫刻の工房。敷地内には大きなクレーンなどの重機があり、1メートル以上ある御影石の原石が所狭しと並んでいます。中にはそれとなく仏像だとわかるような形になっているものも。「注文が入ったらすぐに作れるよう、荒取りした状態でおいてあるんです」と長岡熙山さんは話します。

受注した彫刻像だけではなく、自身が彫りたいと思ったものも作るそうで、高さ2メートルはあろうかと思われる「アダムの創造」をモチーフにした彫刻も、横たわっていました。「ヨーロッパのものでも現代的なものでも作りたいものを何でも作る。屋号に『店』を付けないのもそのためで、暇を見ては彫っている」と話す長岡さんからは、石彫が好きな思いがひしひしと伝わってきます。

受注した不動明王。荒取りした後は墨をひき、電動ドリルで形を出していきます

現在66歳の長岡さんが石彫の世界に入ったのは昭和42年。中学校卒業を控えていたところに、父親が夏場のみ務めていた石材店の社長から勧められたのがきっかけでした。現在も広い展示場でお墓と仏壇を滝川で販売している山崎石材工業株式会社がその会社。最初は石磨きや石を切る作業から始まり、夏場の繁忙期は墓石に刻む字を彫ったり、現場での設置などに明け暮れます。仕事が落ち着く秋から冬の間に、札幌軟石を用いて灯籠作りをしながら石彫りの技術を身につけていきました。慰安旅行で石材加工技術の集積地として知られる愛知県岡崎市を訪れると、安土桃山時代から続く伝統的な灯籠や鉢物の数々に魅入られたそうです。「灯籠でも善導寺型とかいろいろあるんだけど、どれも素晴らしいからね。500年前の石屋さんがそのままそこに残っているのを見て、絶対にまた来てやろうって思った」と長岡さん。

彫りかけている「アダムの創造」。骨格をしっかりと出さなければならず、仏像とは違った面白さがあるといいます

その後、20歳で岡崎市に渡って市内の石工会社に入り、石彫の技術を磨いていきます。「昼は石を叩いて、夜は灯籠の図面をびっしり書いていた。とにかく与えられた仕事を夢中になって仕上げていた」と長岡さん。

そして28歳で御影石の原石が産出される福島県にある石材店に入り、石材施工の技能検定試験を受けて、石材加工作業と石張り作業の両方の部門で一級を取得しました。

石彫を続けるには条件の良い岡崎市と福島県で修行を積みながらも、独立の地を滝川市に決めた長岡さん。31歳で現在の長岡石像彫刻を立ち上げます。「頭がよくなかったから自信が無かったんだろうね。だから自分が生まれ育った場所じゃないとできないと思った。今はどこに行ってもできる自信あるけどね」と笑います。

原石を割るときに使う「セリ矢」。原石にドリルで穴を数ヶ所開けたところにセリ矢を差込み、上から金槌で叩くと原石がきれいに割れます

石に吞まれないよう迷わず彫る

滝川市を見守るように立っている聖観音菩薩像は、交通事故で命を失った人々の冥福を祈り、交通安全の祈願を込めて昭和63年に東公園にて建立されました。像の前では毎年「北海道交通遭難者慰霊・交通安全祈願式」が交通関係機関や遺族の方々によって執り行われています。

長岡さんが独立した証として自分の工房に観音像を建てようと、8メートルの原石を掘りすすめていたところを当時の滝川市長・吉岡清栄氏の目にとまり、交通安全の慰霊碑像として彫って欲しいとの話になったのが像を納めたきっかけ。

一つの国産原石から彫られた彫刻像としては、今も日本で一番の大きさを誇ります。台座を除いた高さは8メートルで、重さは38トン。原石を探すだけでも2年かかったたといいます。

ここまで大きな石を彫るためには「石に吞まれてはいけない」そうです。「そうじゃないと、どこから手を付けていいかわからなくなる。強い意志で向かっていかなくちゃいけない。頭に図面が入っているから、そう迷うことはないけど、一度迷ってしまったら何日かけて彫っていても進んでいない」。

石を彫る様子をデモンストレーションしてくれた長岡さん。石にも割れやすい方向の「目」があり、一番割れやすい面から割っていくそうです

石彫は天職。何百年も残る作品を作りたい

現在、岡崎市で石彫の彫刻師として活躍している弟の長岡和慶さんを石彫と引き合わせたのも長岡さん。以来、ともに切磋琢磨し、平成12年に天台寺門総本山の三井寺から、平成22年に三千院門跡から仏像を納める大仏師の称号を兄弟ともに授かり、唯一無二の彫刻師として現在に至ります。

父親(故人)が旧陸軍の近衛兵団に所属していたことから、長岡さんにとって父親は目標となる人物でもありました。

「親父が生きていたら頭上がらんべと思う(笑)。頭悪くても、石に向かっていれば何も考えずに集中できた。だから天職。目の前にある石を最大限にどう使うかというのが技量になってくる。墓石なのか仏像なのか、芸術作品なのか。どれにしても、何十年、何百年も残るような生きた作品を作りたい。そこそこ作ってお金をもらえればいいというんじゃなくてね」と長岡さんは語ります。

長岡石像彫刻 長岡

数メートルあるような大きな作品は横に寝かせた状態にし、体をねじらせながら彫っていくので、肩や背中から手先までパンパンに張るといいます。「もう年齢的に大きな作品は難しい(苦笑)。注文が入ればやるけどね。好きでこの道に入って、この道で死ぬって思っているから、死ぬまでやりたいね」と話す長岡さんの目には、少年時代から叩き上げてきた腕への自信と、死ぬまで彫り続けたいという信念が宿っていました。

Yahoo!ロコ長岡石像彫刻
住所
北海道滝川市朝日町東4丁目10-18

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電話
0125-24-3428
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

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