「伊勢慶酒おかげさま」を醸す小さな酒蔵 伊勢萬内宮前酒造場

特集

酒蔵でうまい酒が飲みたい

2018/02/14

「伊勢慶酒おかげさま」を醸す小さな酒蔵 伊勢萬内宮前酒造場

伊勢神宮内宮の門前。参拝者で年中にぎやかな おはらい町通りに、伊勢で唯一の酒蔵がある。風格ある建物が目を惹く 伊勢萬内宮前酒造場だ。客はくつろぎながら酒の味を確かめ、 店奥の酒造りの様子を垣間見ることができる。

中広

中広

年中できたての味を。四季醸造を行う市内唯一の酒蔵

伊勢独特の切妻入りの建築様式で、きざみ囲いに虫籠窓、漆喰の外壁を瓦屋根が支えた風情ある酒の蔵。「伊勢慶酒おかげさま」の酒樽が積まれた建物内に入ると、ヒノキを用いた一枚板のカウンターが迎えてくれる。内宮参道おはらい町にあって、「伊勢萬内宮前酒造場」の地酒を飲める、居心地のよい空間が広がっている。

伊勢萬は前々回の式年遷宮の年、平成五年にできた伊勢市内唯一の酒蔵で、地酒「おかげさま」の製造元だ。「日本で、一、二を争う小さな蔵なんです。夏場でも温度管理をして四季醸造を行っていますので、一年中できたての酒を味わえます」と内宮前酒造場の店長、船木浩史さん。

伊勢萬内宮前酒造場の店長の船木浩史さん。カウンター越しに、酒の話題、旅の思い出に花が咲く

大きく開かれた入口から立ち飲み客がふらりと訪れたり、仲間と腰を下ろしてさまざまな種類の日本酒を飲み比べしたりする人もいる。「ありがたいことに、ほんとに人が多いですね」と微笑みながら、船木店長は客の好みに合わせた酒をお猪口に注いでいる。

おかげさまの日本酒、米焼酎や梅酒に柚子酒、それに四季醸造を生かして「ひやおろし」や「にごり酒」などの季節限定の商品もあり、常時8種類以上が並ぶ

徹底した管理と丁寧な作業。職人の勘と経験を生かして

格子戸の奥には酒造場がある。船木店長の兄・船木健司さんが杜氏を務め、平均年齢三十代の若手と共に、日々酒造りと向き合っている。

天井高く梁が掛けられた空間に、湯気が立ちこもる。ちょうど酒米が蒸し上がったところ。風味豊かな米の香りが充満する。洗米から蒸しあげ、麹づくりに、醪の仕込みと、酒造りのすべての工程をここで行う。蔵の規模に合わせた分の材料を少量ずつ仕込むため、いつでも新鮮な酒が醸し出され、客はできたてを味わえるのだ。

「麹室とタンク室がありますが、ほかの作業は全てこの部屋です。瓶詰めはできあがった酒を小俣の本社工場まで運んでいるのですが、限定品などはこのラインで行っています」と船木店長は、部屋の中央に配置されたラインを示す。小さな規模ながらも、フル回転で蔵は動く。

蔵で作業する若手メンバー。蓄積したデータと経験を積んだ酒造りの勘を頼りに生きものと日々向き合う

酒造りにおける要の一つが、高温多湿な麹室での作業だ。「温度調整、湿度管理を常にしていますが、状態を見て、白布を念入りにかぶせたり、麹箱を載せる台を高く上げたりしています」。微妙な加減は人の手によるところが大きいため、麹をつくる日は夜通しで勤務する。

最後は醪の発酵だ。麹菌や酵母が良好な状態で作用するよう、すべてのタンクに冷却機能をつけ、日毎に検査する。ここでも経験を積み重ねた職人の勘や技術が必要となり、目で見て、香りを嗅ぎ、丁寧に櫂入れを行う。醸造は、繊細な作業が連続する。

歩合を見極めて、精米される
タンク毎に醪の成分を日々検査してデータを残し、目指す味に仕上げていく

あらゆる分野で商品を展開。職人の魂がこもった酒造り

伊勢を代表する酒となった「おかげさま」は、神々と自然の恩恵に感謝する「おかげ」の気持ちにちなんで名付けられた。神宮の森・神路山を源流とし、内宮神域を流れる清らかな五十鈴川の伏流水を井戸から汲み上げ、しっかりと磨いた原料米を仕込むことで、芯が通る、淡麗な味を実現している。

「おかげさま」の酒粕でできた甘酒。パッケージには「おかげ犬」が描かれている

内宮前酒造場の店頭で注文が多いのは、「おかげさま」の「しぼりたて生原酒」だ。瑞々しさや豊かな香りは、できたてならではの醍醐味。酵母が生きるフレッシュな味わいで、米の甘みすら感じられ、要望に応えて季節限定で瓶詰めの販売もはじめた。新年参拝で冷えた体を温める甘酒も、レトルトパックで商品化。また、おかげさまをベースに、吟醸香と南高梅の香りが共に楽しめる梅酒や、大台町の柚子果汁をブレンドした柚子酒は女性に喜ばれている。ほかにも日本酒ケーキや酒粕ジェラートなど、酒をテーマにした商品開発にも熱心だ。

第41回三重県新酒品評会(平成23年)にて吟醸酒の部で県知事賞、平成二十八酒造年度の全国新酒監評会にて金賞を受賞。その年の傾向に合わせて熱心に取り組む酒造りの姿勢は、向上心にあふれる

酒造りへ真面目に取り組む姿勢は、第41回三重県新酒品評会(平成二十三年)にて、吟醸酒の部の最高賞である県知事賞という誉れを得た。平成二十八酒造年度の全国新酒監評会にて、金賞受賞も昨年における快挙だ。伊勢志摩サミットでは、国際メディアセンターの完成記念式典で乾杯酒として「おかげさま」が使われるなど、話題に事欠かない。

酒屋の目印、杉玉がかかる

各地で日本酒イベントが催されるなど、酒や酒造りに国内外から注目を集めるが、生産量は大きく増えているわけではなく、まだまだ努力が必要だと船木店長は感じている。「お客様あっての酒蔵です。ここはお客様の声がダイレクトに届くので、それをすぐ蔵に伝えられます。何を望まれているのか、その傾向がわかるのはありがたい。たくさんの意見を、よりよい酒造りに反映させていきたいです」と話す。「最近は甘みのあるものが好まれています。日本酒を苦手と感じている若い人にこそ、しぼりたてをぜひ飲んで欲しいですね」と声をはずませた。

機械で品質管理をしても、生き物を扱う酒造りにはわずかな差が出る。それが面白さであり難しさ、そしてやりがいにもつながっている。自然の営みと蔵人の心を宿した酒が認められたことを誇りに、より良い酒造りに精進する。

一枚板のカウンターで、地酒を立ち飲み。また甘酒や酒粕ジェラートも店頭で味わえるとあって、家族連れや女性も気軽に訪れている
Yahoo!ロコ伊勢萬 内宮前酒造場
住所
三重県伊勢市宇治中之切町77-2

地図を見る

アクセス
五十鈴川駅[出口]から徒歩約24分
宇治山田駅[西口]から徒歩約44分
伊勢市駅[南口]から徒歩約47分
電話
0596-23-8800
口コミ・写真など

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