埼玉県内で唯一、季節杜氏のいる酒蔵 南部杜氏が造る行田の酒

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酒蔵でうまい酒が飲みたい

2018/02/19

埼玉県内で唯一、季節杜氏のいる酒蔵 南部杜氏が造る行田の酒

埼玉県下にある酒蔵の数は35。その中で行田市の横田酒造だけが、いまも外部から杜氏を呼び、酒を造り続ける。同社の代表取締役である横田保良さんと杜氏の高橋清明さんに酒造りへの思いを聞いた。

中広

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厳寒期に始まる老舗酒蔵の酒造り

朝晩の冷え込みが厳しくなる、晩秋。今年も日本酒の仕込みが始まった。

江戸時代には、忍藩の城下町として栄えた歴史ある行田市で、酒を造り続ける横田酒造。初代横田庄右衛門が、江戸の商圏で一旗あげようと、この地で造り酒屋を開いて210余年。「売り手よし、買い手よし、世間よし」と、近江商人三方よしの教えを守り続けている。

利根川と荒川の接近するこの地域は、秩父を源流とする荒川水系の伏流水が豊富。敷地内の井戸から汲み上げられる弱軟水の水は、酵母の発酵をゆるやかにし、まろやかな味わい深い酒を造る。

麹菌の活動が活発になるよう、温度と湿度を高く設定してある麹室。手作業で蒸し米をほぐし、まとめ直す

近年は技術の進歩により、1年を通して酒造りを行う三季醸造が多くなった。しかし本来、日本酒造りに最も適しているのは寒い季節。

「寒造りといって、低い気温だと発酵がいいんですよ。朝の仕込みは8時半頃に始まりますが、5時、6時から前段階の作業をしています」と説明してくれたのは、社長の横田保良さん。この時期は酒造りの責任者である杜氏を中心に、蔵人や、作業工程によっては社員も応援し、7〜8人がかりで仕込みをするそうだ。

代表銘柄の日本橋で知られる横田酒造は現在、県内にある35の酒蔵で唯一、季節杜氏がいる蔵となった。

(右)横田酒造株式会社 代表取締役 横田保良さん(左)杜氏 高橋清明さん

農閑期に酒蔵に泊まり込んで酒を造る、季節杜氏。横田酒造で長年杜氏を務めるのは、越後杜氏、丹波杜氏と並んで三大杜氏に数えられる、南部杜氏の高橋清明さんだ。

昨年まで、同社には二人の杜氏が酒造りに来ていた。しかし今年は高橋さんのみ。高齢化やライフスタイルの変化もあり、冬季に杜氏として酒造りに来る人は、年々減っている。

「今は家族や社員で造る蔵が増えました。でも、当社の酒は、長年支えてくれる杜氏に全て任せています」。

高橋さんが同社の酒を造って40年以上。毎年、良い酒を造ろうと腕を振るう高橋さんに、横田社長は全幅の信頼を寄せる。


南部杜氏が受け継ぐ我がまちの蔵の味

蔵を訪ねた日、麹室では、麹を造る製麹の作業が行われていた。横田酒造で使う酒米は、酒造好適米である山田錦、美山錦のほか、地元埼玉県産の、さけ武蔵など。同社では米の状態を正確に見るため玄米のまま取り寄せ、自家精米している。雑味の元になるぬか部分を注意深く削り、大吟醸では40%以下の大きさまで磨くというから、非常にぜいたくだ。

精米された米は蒸し上げられ、杜氏が温度を確認して麹菌を植え付けた後、麹室に運ばれる。一麹、二酛、三造りといわれるように、麹造りは酒造りの大切な工程。繁殖に適した蒸し暑い麹室の中で、麹菌が均一に付くよう、蒸し米を手早くほぐしてからまとめ、布で包む。

横田酒造の店頭では代表銘柄の日本橋を中心に、『浮城』や『陸王』など地元をテーマにした銘柄も取り扱う

「これを子ども用布団でくるんでおいて、麹の活動を助けるんです。子どものようにかわいがって育てるわけだね」と高橋さん。この後も、蒸し米が団子状に固まらないよう、一定時間ごとに切り返しを行う。2日間で勝負が決まるという、失敗の許されない作業だ。

蔵のタンクを1本仕込むのに、4日がかり。もろみと呼ばれる状態の表面には、次第にブツブツと小さな音を立てて泡が湧いてくる。目で見て、耳で聞いて、麹菌の活動を最適な状態に保つため、タンクごとの温度管理をしていくには、杜氏の経験と勘が頼りだ。

「酒造りでは、歴代の杜氏が引き継いできた横田酒造の味を、損なわないように気を使います。その上で自分の個性をにじませ、皆さんに喜ばれるお酒ができたときは、本当に嬉しいですね」。

代表銘柄である日本橋は、初代横田庄右衛門が江戸・日本橋の酒問屋で修業したのに由来。初心忘れるべからずとの思いが込められた酒は、全国新酒鑑評会で、通算21回も金賞に輝いた銘酒だ。

「横田酒造株式会社」杜氏を務める高橋清明さんは40年以上にわたり、横田酒造の酒造りを支えてきた

「さらに、五街道の起点だった日本橋にあやかり、全国へ横田の酒が広まってほしいとの願いも込められています」と、横田社長。

近年では、多くの人に知ってもらうため、デパートや空港で試飲会を実施。また、『のぼうの城』や『陸王』など、行田が舞台の物語を銘柄にした商品は、土産として喜ばれている。

酒造りに必要なのは水、米、技術。しかし、同じ材料と杜氏で仕込んでも、蔵が違えば味は変わると横田社長は話す。

「蔵の個性を知り尽くした杜氏がいるからこそ、横田の酒になるんです」。

行田の酒造と、南部杜氏が育んだ酒。口に含めばふんわりと、趣あるまちにふさわしい物語が広がるはずだ。

Yahoo!ロコ横田酒造株式会社
住所
埼玉県行田市桜町2丁目29-3

地図を見る

アクセス
東行田駅[出口]から徒歩約4分
行田市駅[出口2]から徒歩約12分
行田市駅[出口1]から徒歩約13分
電話
048-556-6111
口コミ・写真など

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