犬養裕美子のお墨付き! シンプルの極み、恵比寿「ル・コック」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン

2018/04/09

犬養裕美子のお墨付き! シンプルの極み、恵比寿「ル・コック」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第47回は恵比寿「ル・コック」。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

料理人の理想 “何も飾らない”究極の味

「いつか比留間シェフのように、サーモンだけで勝負したいよな~」。「ル・コック」のテーブルで前菜の自家製スモークサーモンの皿が出てくると、若手シェフが尊敬の念をこめて言ったこのセリフをいつも思い出す。

スモークサーモンはフレンチの前菜の定番中の定番。素材の見極め方、塩の効かせ方、スモークの強さなど、料理人のレベルが如実に表れるコワイ料理だ。
比留間シェフのサーモンには、誰もが目を見張り、味わった後、最終的に目を丸くするという次第。皿の上にはサーモンとサワークリームだけの直球勝負。そのしっとりした身を口に入れると燻製の香ばしさ海の潮、サーモンの脂がおだやかに広がる。コクがあるのに、すっきりとした余韻がきれいに消えていく。
これこそが素材、塩加減、燻製の具合、提供の温度、すべてのバランスがそろってこそかなう“パーフェクト・スモークサーモン”
トマトとシブレットを混ぜたサワークリームをのせて味わえば、また違う味の世界が楽しめる。

最近のフレンチは少量多皿、見た目だけで味わう料理が多くなったが、この一皿はしっかりおなかも満足する量だ。一つだけ不満があるとしたら、食べ始めたばかりなのに「今度、いつ来よう」と思わずにはいられないこと。

自家製スモークサーモン、サワークリーム添え1200円。この日のサーモンはノルウェーのオーロラサーモン。脂がしっとりしているため使っている。細かく刻んだトマトとシブレットがサワークリームに混ぜてある

比留間光弘シェフは19歳でフランスへ修業に。パリの星付きレストランを中心に8年半へて帰国している。日本では会員制レストランのシェフを3年間勤め、用賀で独立。その後、10年営業してから永住覚悟で再びパリへ。移住の予定がかなわず帰国した。そして、恵比寿でレストランを再開して10年がたった。

マダムの真由美さんと二人でマイペースに営業しているが、とにかく料理人からのリスペクトは絶大。フレンチだけでなくイタリアンのシェフたちも、比留間シェフの料理に学び、癒やしをもとめて通う。

アマダイのソテーはウロコの部分がカリッと香ばしく、ステーキも表面はカリカリに焼き目がついている。まさにお手本となる、丁寧な技術で仕上がったものが客の前に登場する。「魚とは、肉とは、どう焼くべきかという答えがここにある」
パンもデザートも、そして最後のカフェについてくるミニャルディーズも、すべてがさりげなく完璧なのだ。

アマダイのソテー、そら豆と芝エビのクリーム3200円。和食のウロコ焼きと同様に、ウロコを香ばしく揚げるように焼く。これだけでも十分おいしいが、そら豆と芝エビのクリーム煮をソースに見立ててフレンチに着地
シストロン産仔羊のロースト4400円。メインの肉は国内外のものを厳選。仔羊は昨年、16年ぶりに輸入が再開したフランス・プロヴァンスのシストロン産仔羊をセレクト。脂が甘くやわらかい
食後の飲み物についてくる焼き菓子。これがどれもすばらしい出来栄え。特に右のメレンゲ・ココのサクサク食感は夢のよう。お土産に買うこともできる

このクオリティなのに、この値段!
もの静かな常連が多いわけ

「どこかおいしい店を教えて」と聞く人に、この店は簡単には教えられない。でも、あれこれ行っているけど「最近、いい店ないわね」という人にはとっておきとして、教えることにしている。

華やかなフレンチを思い描いていると面食らう。間口は小さいし店内は細長い。2人用が4卓、仕切りがあって丸テーブルに3人席(ここはほとんど知り合いしか座れない)。キッチンは奥にあり各席からは見えない。マダムも料理を持ってくる、ワインを注ぎにくる以外は下がってしまう。
要は自分たちでワインを楽しみ、会話で盛り上がれる人でなければ、少しだけつらい時間になる。ただ、料理が出れば、そんなことはすぐに忘れてしまうけれど。

入り口はガラスドア
ドアをあけるとニワトリたちがお出迎え。「ル・コック」は雄鶏のこと
2人卓が4卓。ここがメイン。4名なら2卓、6名なら3卓で対応

メニューはアラカルトコースも両方ある。
初めてであれば前菜、魚、肉、デザートのおまかせ8000円をおすすめする。次はプリフィクス5000円、慣れたらアラカルトで。
いろいろな注文の仕方をしていくうちに気づくはず。「この内容でこの値段、安い!」

私が人をもてなす時、切札にこの店を選ぶのは、ここで熟成肉の肉卸・中勢以の牛ステーキをお願いすることもできるから(応相談)。最高の肉を最高の技術で食べさせてくれる、心強い味方なのだ。

にこにこシャイな比留間光弘シェフといつも物静かなマダムの真由美さん
Yahoo!ロコLe Coq
住所
東京都渋谷区恵比寿西2-7-2ウィンズビル1F

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アクセス
恵比寿駅[2]から徒歩約4分
代官山駅[北口]から徒歩約5分
恵比寿駅[西口]から徒歩約6分
電話
03-3770-1915
営業時間
12:00~12:30(L.O.) 18:00~21:00(L.O.)
定休日
不定休 要予約
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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