犬養裕美子のお墨付き!割烹イタリアン「あつあつリ・カーリカ」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン【Vol.41〜】

2018/05/12

犬養裕美子のお墨付き!割烹イタリアン「あつあつリ・カーリカ」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第49回は学芸大学「あつあつ リ・カーリカ」。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

ほどよい距離感で楽しむカウンター割烹
でも、料理はしっかりイタリアン

東横線沿線は住みやすい街として人気を集めていたが、中でも学芸大学は「おいしい街」として注目されている。駅前はチェーン店も多いが、東口商店街の一角が整備されて「学大十字路」と名付けられた通りには、小さくても意気のいい店が増えている。
実は、この私、学芸大学(西口)育ち。実家には時々帰るが、恥ずかしながら東口がそんなことになっているなんてこれまで知らなかった!

学大十字路の一角にある長屋風物件1階角。カウンター席12席に、立ち飲み6名分のスペースあり

考えてみればその兆候はあった。2015年9月に隣駅の都立大学にオープンした「カンティーナ カーリカ・リ」を初めて訪れた時のこと。そもそもこの店の始まりは2013年に学芸大学にオープンした「リ・カーリカ」が、予約が取れないほどの人気になり、2店目を出したこと。わがホームタウンにそんな店ができたのを知らなかったなんて衝撃。しかも驚いたことにオーナーシェフの堤亮輔氏はかつて駒沢公園近くの店でシェフを務めていた時に会っていた! 

堤亮輔オーナーシェフ。「3店目は気楽に毎日でも来られる店にしたくて。ちょっと和風のテイストも入っています」

その時の私の印象は、「お調子者に見えるけど(失礼!)、実は慎重な努力家では?」。“繊細なリストランテ料理”を出しながら、最後のドルチェがえらくお茶目だったことを覚えている。皿の上にバナナが1本! 皮をむくと中身はパンナコッタ。「これ、面倒なんですよ」と言いながらていねいに仕上げていたことを思い出す。

“あつあつ”の店名通り、目の前で出来上がる料理が最速でカウンターに出される。ちなみに呪文のようなキーワード「リ・カーリカ」「カーリカ・リ」は「充電する」という意味

その堤シェフが独立して自分の店を出しただけでなく、わずか5年の間に3店にまで広げていたのだ
「店を増やすことは目的ではないんですけどね。スタッフが育って、それぞれの能力を発揮できる場所が増えていっている感じ。といっても、スタッフのために店を増やしているわけでもありません。みんなが無理せず、楽しく働けるように環境を整えるのが僕の仕事かな」。
人手がたりないのが当たり前となってしまった飲食業界。そのために、はやっているのに閉店せざるをえない店も増えている。そんな難しい時代だからこそオーナーにはセンスのある店づくり、システム造りが求められる。

木のぬくもりが感じられる店内

イタリアンをベースに自由自在に変化する

「最初の店は、直球のイタリアン、2店目はワインを飲む店、3店目は日常的に使って欲しいので、少し和を意識した店づくりや、料理だったりします」。

3店になってからは、仕入れの方法も変わった。週2回車で三浦半島に出向き、野菜や魚や肉など仕入れにまわるという。3店舗あるからこそ量を増やしてリーズナブルな価格で仕入れられる。そして、同じ素材でも各店のシェフが自由に自分の料理に落とし込む。「“リ・カーリカ”は客の年齢もやや高め。だから少々値段は高くても質の良いものが求められます。逆に“あつあつ”は、客層が幅広いから安くておいしいが優先されます」。

メニューはほとんど毎日変わる。旬の素材をシンプルに仕上げるのが“あつあつ”流。ほとんどが1000円以下

実はこの“あつあつ”をすすめてくれたのは、私のワインの師匠、T氏。「学芸大学にいい店があるよ。料理は安いけど気が利いている。ワインのチョイスもセンスがいい」。行ってみたら、自らもワインバーを経営していたT氏がこの店を気に入った理由がよくわかった。わずか8坪弱の空間には、ノスタルジックな居酒屋の雰囲気が感じられ、壁に下がったフライパンや重ねた皿が、そのままインテリアの一部になっている。「ただいま」と言ってしまいそうな、くつろぎの場なのだ。堤シェフが思い描いた店はまさにそんな「昔からの居酒屋」だという。

フライパンや鍋を下げた壁は見せる収納。実用的であり、おしゃれな収納のお手本にもなる

「“リ・カーリカ”が予約しないと入れない店になってしまったから。“あつあつ”は気軽な立ち飲みだけにする予定だったんです」と堤シェフ。ところが、お客のほうが「ちゃんと座って食べたい」という。「お客さんの要望に応えるのが仕事ですから。料理を評価してくれるのはうれしい」。けれど、それにはやっぱり予約を取らざるを得ない。堤シェフの悩みはつきない。

料理のコンセプトは店の雰囲気に合わせてちょっと和風。しかもほとんどが1000円以下。旬の素材を使った、ワインのあてになるつまみから、パスタや肉もあるし、近所の祐天寺にある人気のイタリアンジェラートの店「アクオリーナ」のものまである。じっくりメニューを見れば見るほど、オーダーが決まらない!

新玉ねぎのパンナコッタ600円。新ものの玉ねぎはやわらかくて甘い。上にのせてあるのは、桜エビのピューレ
ローストトマトのブルスケッタ600円。三浦で仕入れるトマトは甘みも酸味も十分。セミドライにするとさらにうま味が凝縮。天然酵母の自家製パンとの相性も抜群
筍(タケノコ)とレバーのソテー1200円。新鮮なレバーと旬を迎えた筍に、木の芽のペーストのさわやかな香りを添えて。これもイタリアンだけど素材は和

ワインはグラス700円~1300円、赤白各8種類ほどあるので、好みのタイプを言って選んでもらうか、料理に合わせておまかせするか。「3店分のワインは種類でいったら何百にもなります。でも、各店の店先には料理に合わせたワインを置いてあるので、スタッフと話しながら選んでもらえば」と堤シェフ。

今回紹介した料理に合わせたグラスワインはこれ。

左から、「ナンド・レブーラ」1000円、「ランゲ・ネッビオーロ」1000円、「アウグスト」800円

玉ねぎのパンナコッタには、真ん中「ランゲ・ネッビオーロ」、すっきりした赤。トマトのブルスケッタには、右の「アウグスト」、果実味のしっかりした赤。レバーと筍には、左の「ナンド・レブーラ」、スロバニア国境近くの個性的な白だ。

日本のイタリアンはいつからこんなに優秀になっちゃったんだろう! こんなにレベルの高い内容で、この値段。「今後の展開は?」と聞いたら「考えているのはお惣菜屋。“デリ・カーリカ”とかね」。なるほど、ネーミングから入ってますね。女性スタッフが元気いいのも、ここのグループの個性。期待しています!

右から、服部新さん、オーナーシェフ・堤亮輔さん、森田研人さん。みんな笑顔でお出迎え
Yahoo!ロコあつあつ リ・カーリカ
住所
東京都目黒区鷹番2-20-4

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アクセス
学芸大学駅[東口]から徒歩約1分
祐天寺駅[東口]から徒歩約13分
都立大学駅[出口]から徒歩約21分
電話
080-4858-2233
営業時間
月~日 18:00~25:00(L.O.)
定休日
不定休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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