渋谷といえば飲食店がひしめく激戦区。イタリアンだけでも新旧さまざまなお店がある中、落ち着いた空間の中で食事ができ、さらにシェフの心意気が感じられる選りすぐりの5店を紹介!
Yahoo!ライフマガジン編集部
味だけじゃない! シェフの人柄が感じられる名店
“料理は目でいただく”といわれるように、五感で味わうことでより深い満足が得られるというもの。激戦区・渋谷では味のおいしさは当たり前。コスパや雰囲気だけでなく、シェフのおもてなしの心やトークが備わってこそお客さんも通いたくなるのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、ディナーのどんなシーンでも利用でき、シェフの心意気が感じられるイタリアンを厳選しました。
ディナーで行きたい! 渋谷のイタリアン5軒
1. PIZZERIA al forno(アル・フォルノ)
2. CENTO ANNI(チェントアンニ)
3.渋谷イタリアン ズッカ
4.goo ITALIANO渋谷店
5.Il Fiume(イル フューメ)
1. PIZZERIA al forno(アル・フォルノ)
味×雰囲気×人柄の相乗効果で高い満足度
2018年で11年目を迎える「アル・フォルノ」。木調のテーブルに白い壁、それを包み込む白熱灯のオレンジ色の光が、店内に温もりと優しさをもたらしています。まず真っ先に目に飛び込んでくるのは、炎がひときわ目立つ自家製本格窯です。
- 店長の佐々木さん
- 店長の佐々木さん
- 「自分のお店を始めるなら、本格的な釜で焼いたピッツァを出したいという強い想いがありました。窯で焼くピッツァは、生地のサクサク感や香ばしさ、チーズのとろけ具合などが格別です。そのできたてをお出しして、お客さんがおいしいと喜ぶ顔を見られるのがうれしいんです。また、料理のリアルタイムな感想がもらえることも大切だと思っています」
- 店長の佐々木さん
- 店長の佐々木さん
- 「ピッツァを焼き上げるのは、すべて新薪で起こした火を使っています。高温の窯の中にピッツァを入れて、500度の熱で一気に焼き上げます。この焼き方をすることで生地中の水分が保たれ、冷めてもそこまで味が落ちません。また薪の香りが残るのも特徴です」
本格釜のピッツァとロングセラーメニューを堪能
「クワトロフォルマッジ」「モンテビアンコ」のハーフアンドハーフ(1900円)
- 店長の佐々木さん
- 店長の佐々木さん
- 「『モンテビアンコ』はたっぷり野菜がのり、ヘルシーなので女性に人気ですね。『クワトロフォルマッジ』は、4種類のチーズの味をバランスよく使用しており、見た目は普通のナポリピッツァですが、食べ応えもあり一番人気のピッツァです。さらに、お好みでハチミツをかけて食べるとスイーツのような一品に変わりますので、一度で2つの味が楽しめます」
「肉々しいパテ・ド・カンパーニュ」(700円)
- 店長の佐々木さん
- 店長の佐々木さん
- 「ロングセラー商品で、粗めにカットした豚肉と鶏レバーを混ぜて固めているんです。パテと一緒に、白かぶ、みょうがのピクルス、芽キャベツなどの箸休めを添えています。ほどよい酸味と歯ごたえがあり、ちょっと味を変えたい時にお召し上がりください。このメニューは赤ワインによく合いますよ」
これもオススメ! 春にピッタリのワイン
赤ワインのラベルには、桜の花をあしらったデザインが描かれています。知人から特別に仕入れたもので、春真っ盛りの今だからこそ味わえるお酒だそう。「お客さんに楽しく飲んで、食べてもらえたらうれしいです」と佐々木さん。渋谷の立ち飲みとして有名な「富士屋本店」の系列店舗で、比較的安いコストで提供しているのも人気の一つ。年内で移転が決定しており、現在の店舗よりも広くなるとのこと。新店舗も今から楽しみです。
2. CENTO ANNI(チェントアンニ)
シチリア料理を心ゆくまで堪能
イタリア料理といっても、ローマ、ミラノ、ナポリなど都市によって調理法や使用食材も異なりますが、こちらはシチリア島の伝統料理が楽しめます。総料理長で店長の小幡大介さんは、シチリアの雰囲気をお店に再現するため、テーブルの脚やシャンデリアもイタリアから取り寄せて使用。ちなみに店名はイタリア語で「百年」という意味で、お店が百年続き愛されますようにと名付けたそう。
- 店長の小幡さん
- 店長の小幡さん
- 「カウンターに置いているのはすべて前菜です。メニュー構成は野菜、お肉、魚をバランスよく3〜4種類取りそろえています。10年続く人気メニューや日替わりもあるので、選ぶところから楽しんでください」
「前菜の盛り合わせ」(1人前4種類700円)※写真は3人前
- 店長の小幡さん
- 店長の小幡さん
- 「イワシのマリネは新鮮なうちに締め、ピンクペッパーのピリッとした辛さが特徴です。豚のバラ肉でネギを巻いて焼く『マンジェエベービ』は、イタリア語で“食べて飲む”という意味があり、お酒によく合う一品。野菜の甘みで食べやすいトマト煮込みの『カポナータ』、そして4種類の豆とツナのサラダは、赤ワインビネガーであっさりした味付けで、特に女性に人気です」
シチリア料理は地産地消のメニューが多く、素材の味を活かすためレモンをかけて食べるのが一般的だそう。その中でも『トラパニペーストの手打ちブジアーテ』というパスタが人気とのこと。
「トラパニペーストの手打ちブジアーテ」(1400円)
- 店長の小幡さん
- 店長の小幡さん
- 「シチリアでは『ブーゼ』という編み物の棒にパスタを巻きつけ、棒を抜いてできる、らせん状のパスタを『ブジアーテ』と呼んでいます。そのパスタと、トラパニという地域で採れるナッツ『バジル・トマト・アーモンド』をペースト状にして作っているので、ナッツの風味があるトマトペーストという目新しい味が楽しめるのではないでしょうか」
「モッツァレラチーズの入ったリゾットコロッケ“アランチーニ”」(800円)
- 店長の小幡さん
- 店長の小幡さん
- 「シチリアではお馴染みのライスコロッケですね。屋台で売られており、歩きながら食べるハンバーガー的な食べ物です。揚げた状態をシチリアにある『エトナ山』という、日本でいう富士山のような山の形に見立てて三角形にしています」
ナイフで切ると、中にはサフランで炒めたリゾットが入っています。カリっとした食感が良く、サフランのさっぱりとした味が抜群においしい。中のモッツァレラチーズがコクを出しているので、しっかり食べたい時にいいですね。一緒に添えてあるトマトソースやレモンをかけると、また違った味が楽しめます。
オススメのワインはコレ!
イタリア・シチリア料理は、パン粉やアーモンド、新鮮な魚介類といった、その土地で採れたものを利用して作る郷土料理。小幡さんは、そんな温暖な気候が生んだ味と雰囲気が気に入り、日本でも多くの人に楽しんでもらいたいという想いでこのお店を始めました。味や店内装飾を限りなく再現したのも、お店に来るお客さんへのおもてなしなのです。
3. 渋谷イタリアン ズッカ
本場のもてなしを感じる本格イタリアン
お店は代官山と渋谷の間に位置する渋谷区桜丘町の、住宅の多い一角に佇んでいます。落ち着いた雰囲気が好きでこの場所で営業を開始したと話すのは、代表で料理長の秋元和仁さん。イタリアンを学ぶために留学し、日本に戻ってお店を開業。料理の味はもちろん、見た目にもこだわった本格的なイタリアンが楽しめます。
色彩豊かな芸術野菜をディナーで堪能
「グリル野菜のバーニャカウダ」(Lサイズ1800円)
- 代表の秋元さん
- 代表の秋元さん
- 「野菜は毎回決まった複数の契約農家さんから仕入れています。丹精込めて作られた野菜に敬意を表し、うちではバーニャカウダを『芸術野菜』と呼んでいます。私が直接、農家さんに出向いて色や品質の状態、味の良さを確認して仕入れました。『芸術野菜』の名にふさわしく、彩りよく並べた野菜が芸術的な要素も引き出せているのではないかと思っています」
留学時代に学んだ思い出の一品
「トリフペーストと生クリームのリゾットマッカレ」(1500円)
- 代表の秋元さん
- 代表の秋元さん
- 「イタリアで2年間、さまざまなお店で修行しました。中でも『マッカレ』というお店で実際に提供していた、このメニューには思い入れがありますね。現地では、来店するお客さんが必ずといっていいほど注文する人気メニュー。クリームベースのリゾットの上にトリュフペーストがのり、それを混ぜながら食べます。うちでは日本人向けに味付けを調整しています」
「フルーツトマト丸ごとのせペペロンチーノスパゲティ」(1300円)
- 代表の秋元さん
- 代表の秋元さん
- 「高温のオーブンでフルーツトマトを丸ごと焼くと、酸味や水分が飛び旨味だけが凝縮されるんです。これにイタリアの唐辛子を使った辛いスパゲティーと、トマトをペースト状にして一緒に絡めて食べます」
秋元さんオススメのワイン
- 代表の秋元さん
- 代表の秋元さん
- 「テラス席はゆったりとした作りなので、景観だけでなく暖かくなれば外での食事も楽しめますよ。渋谷駅からはちょっと歩くので、わざわざ足を運んでくれているお客さんに、少しでも喜んでもらえたらと桜を飾りました。桜の種類は八重桜やソメイヨシノ、ケイオウ桜など、毎年4月中旬ごろまで飾っています」
代表の秋元さんは本場イタリアンの味を習得し、帰国後は日本人好みのテイストで料理を提供しています。その味が受け入れられ今も多くのお客さんを虜に。本格料理を出すことに頑なになるのではなく、すべてのお客さんを満足させたいというもてなしの精神。その気持ちが、芸術野菜や桜といった見た目の癒しも届けています。
4. goo ITALIANO渋谷店
イタリア20州の本格料理をディナーで楽しむ
宮益坂上の交差点から宮下公園へと下る途中にある「goo ITALIANO渋谷店」。路面店ということもあり、ランチ・ディナーを問わず幅広い年齢層の方が多く来店します。「まだ知らない、広まっていないイタリアンを伝えたい」と話す店長の小原一記さん。カルボナーラやティラミスといった定番メニューはもちろん、日本では馴染みの薄い郷土料理は、ディナーでゆっくり味わいたいところです。
インパクト大! 希少性の高いチーズを使った看板メニュー
「水牛モッツァレラ 生ハムとルッコラ」(2400円/125g)
- 店長の小原さん
- 店長の小原さん
- 「お店のオススメは、前菜として出している水牛のモッツァレラチーズです。水牛からごくわずかしか取れない希少なチーズを、こぶし大くらいの大きさで提供しています。日本ではトマトとバジルと合わせたカプレーゼで食べるのが主流ですが、現地イタリアでは生ハムとルッコラを使った珍しい食べ方でした。当店では現地の食べ方で提供しています」
「フッジローニ チキンと野菜のラグーソース」(1280円)
- 店長の小原さん
- 店長の小原さん
- 「日本では珍しいフッジローニというショートパスタを使っています。カンパーニャ州にある、通称“パスタの町”として知られる都市・グラニャーノで作られているパスタで、昔ながらの伝統製法により、長時間低温でゆっくりと乾燥させています。ゆで時間が15分と通常のパスタよりも長く、ゆであがりは非常にモチモチとした食感が楽しめます。こちらはランチでも提供しています」
「フォカッチャ・ディ・レッコ」(1380円)
- 店長の小原さん
- 店長の小原さん
- 「北イタリアのリグーリア州・レッコという村の伝統的な名物ピッツアも珍しい料理の一つです。ナポリピッツァとは違った種類で、生地にイーストを使用しません。小麦粉と水で薄く伸ばした生地の中に、ストラッキーノというチーズを挟んで焼き上げます。日本人好みの味で、これを目当てに来るお客さんも多いです」
これもオススメ!
日本には47都道府県があり、その土地その土地の郷土料理が存在します。小原さんは、イタリアでも同じように20州ある地域でさまざまな料理があり、当店ではまだ知られていないイタリアンや、地元の楽しみ方を探し、皆さんに提供したいと話します。フッジローニやフォカッチャ・ディ・レッコ、インパクトのある水牛モッツァレラなど、これからも本場の味を届けてくれるはずです。
パスタマスターが「goo ITALIANO」で熱く語る春パスタの魅力
5. Il Fiume(イル フューメ)
ディナーで訪れたい! 癒しの空間でワインに合う料理を
店内に入ると、イタリアのリゾート・ポジターノを彷彿とさせる壁画が印象的な「イル フューメ」。全体的に白を基調としたシンプルで明るい印象は、店長である江川絵梨子さんの女性らしい細やかな心配りの賜。その想いは、お一人様からグループまで来店客の居心地を大事にしているのだと話します。料理はシンプルかつボリュームのあるトスカーナ料理を提供し、イタリアンの奥深さが感じられるはず。
ワインに合わせた前菜は厳選素材を使用
「前菜6種盛り合わせ」(1800円)
- 店長の江川さん
- 店長の江川さん
- 「前菜6種盛り合わせは、その日の仕入れなどで内容も変わり、ワインと相性が良くて、体にも優しい料理を提供しています。中でもマリネにした魚介類と甲殻類のジュレと、ワカメで和えたメニュー『一口のおたのしみ』はスペシャリテとして出しています。他にもなかなか手に入りにくい北海道産の高級ジャガイモを使用した『インカの目覚めのクロケッタ』も舌触りがよくワインに合うんですよ」
「一口のおたのしみ」は、鮪、イカ、甘えび、ズワイ蟹、イクラ、タコの風味と、甲殻類で作ったオリジナルジュレがよく絡みます。状態のいい旬の鮮魚や三浦野菜を使用したトスカーナ地方の前菜が並びます。
「渡り蟹とトマトクリームのリングイネ」(1680円)
- 店長の江川さん
- 店長の江川さん
- 「前菜を召し上がっていただいたあとにオススメしているのが『渡り蟹とトマトクリームのリングイネ』です。渡り蟹は他の蟹に比べて旨味がよく出るのでダシを取って使っています。渡り蟹の見た目も味も楽しんでいただけると思います」
「Tボーンステーキ」(6250円/600g)
2018年4月からは新たなお肉のメニューが登場。国産牛であり、部位を選んで食べることができます。炭火焼きでじっくり焼き上げ、お肉に合ったソースをつけて食べる。国産牛の旨味とほのかに広がる炭火の香りが高級感を醸し出します。三浦野菜や三崎漁港から取り寄せる安心安全な食材を使用し、空間作りや料理に対するひと手間を惜しまないシェフの心意気が感じられました。
- 店長の江川さん
- 店長の江川さん
- 「都会の喧噪を忘れ、落ち着いた雰囲気でお食事をしてもらえる空間作りを心がけています。総席数は50席。テーブル席やソファー席、8名用の個室も完備しており、カウンター席も用意しています。おひとり様からパーティー利用まで対応可能ですよ」
取材で「シェフが作る料理がおいしいのは当たり前。それに+αお客さんが喜んでもらえることを提供していきたい」と話してくれた、その言葉が今も心に残っています。おいしい料理にシェフの気遣いを入れることにより、お客さんは感動し、また来店したいと思うもの。ディナーのさまざまなシーンで利用できるイタリアンを試してみよう。
取材メモ/同じイタリアンなので、メニュー構成も似ていると思いきや、初めて目にする料理ばかりで、イタリアンの奥深さを知りました。中でもシチリア料理の歴史や料理誕生の背景が分かった「CENTO ANNI」は、現地に行って料理を食べてみたくなりました。
取材・文・撮影=小西啓介(LOCOMO&COMO)
\まだある!渋谷で夜を楽しむディナースポット/