【讃岐はだか麦本舗/香川県善通寺市】稀少な品種を未来に伝える

2018/05/13

【讃岐はだか麦本舗/香川県善通寺市】稀少な品種を未来に伝える

古くから四国や九州の一部で栽培されてきた大麦の一種、四国・讃岐のはだか麦。この大変希少価値の高い穀物を後世に伝えるために立ち上がったのが讃岐はだか麦本舗です。廃れつつあった伝統的な穀物を、現代の食生活に合った、はだか麦にしかできないことを目指した商品開発によって再生させました。

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懐かしい風景を未来に残したい。故郷の姿と「はだか麦」への想い。

うどんよりも長い歴史を誇る讃岐の「はだか麦」。希少な品種をグラノーラとして再生

目になじんだ風景や、懐かしい故郷の味。ずっとそこにあると思っていたのに、いつの間にか失われていた――。日々世情が移り変わる現代では、そんな悲しい喪失がいたる所で起きています。

四国・讃岐の「はだか麦」。聞き慣れない名前ですが、古くから四国や九州の一部で栽培されてきた大麦(六条大麦)の一種です。香川県・愛媛県・大分県で国内産の9割を占めるという、大変希少性の高い穀物。外皮を指で摘まむと実がポロッと出てくるのが特徴で、食物繊維は玄米の3倍かつ白米の20倍と非常にヘルシー。噛めばプチッとはじける食感が楽しく、独特の風味と香ばしさがクセになります。

この「はだか麦」を後世に伝えるために立ち上がったのが、『讃岐はだか麦本舗』です。1888年(明治21年)創業の香川の老舗企業・高畑精麦が母体で、廃れつつあった伝統的な穀物を現代の食生活に合ったグラノーラとして再生させました。原材料は、香川産の「はだか麦」と国産フルーツのみ(ぶどう・みかん・いちご)。味つけは甜菜含蜜糖・オリーブ油・天然塩のみで、どれも厳選しています。普通の麦は外皮が硬いため、十分にパフ化することができずグラノーラには向きませんが、外皮が簡単に取れる「はだか麦」なら美味しく食べられるのです。

また、昔ながらの丸麦や押麦も販売しており、手軽なレシピとともに普及に努めています。「白米に入れて炊くだけ」というイメージが強い麦の食べ方を革新して、その消費量を増やしたい、という心意気。「どう食べればいいの?」「本当に身体にいいの?」という疑問を解消して、その良さを広めています。食べ方は非常に簡単で、茹でていつものレシピに足すだけ。とてもハードルの低い食材であることを伝えようとしています。

故郷の食文化を守りぬく。地元の老舗としての使命感。

昔ながらの丸麦や押麦も販売。白米に加えれば栄養価と繊維質がアップ

『讃岐はだか麦本舗』を立ち上げた高畑実代子氏は、こう語ります。「高畑精麦に入社する前は、東京で音楽に携わっていたんです。出身地の香川に帰るつもりは全くなかったのに、諸事情でUターンせざるをえなかった。それで父の会社に腰を据えたものの、『いつかはまた東京に出て行きたい』と思っていました。ですが、そんな考えを変えてくれたのが、どんどん失われていく故郷の風景だったんです」。

子供の頃から慣れ親しんでいた、一面の麦畑。それが道路になり、住宅になって、どんどん減っていきました。更に生産者の高齢化も重なって、若手の参入もままならない状態。『はだか麦』の知名度の低さや、日本人の麦離れによる採算性の低さが大きな壁となっていました。「このままでは生まれ育った故郷の風景が失われてしまう!」と、高畑氏はそう危機感を抱いたといいます。
「香川県は『うどん県』とも呼ばれていますが、『はだか麦』を育ててきた歴史の方がずっと長いんです。私の子供時代の通学路は1.2kmほどありましたが、その一面が『はだか麦』の畑に囲まれていました。『はだか麦』がそよぐ風景の美しさや、なんともいえない空気感。それに感動を覚えていたのに、どんどん失われていった。普通の麦ではなく『はだか麦』だったことは入社後に知りましたが、やはり特別な思い入れがあったんです」と高畑氏。更に高畑精麦は、香川産の「はだか麦」の約6~7割を買い上げていました。「弊社が『はだか麦』の生命線を握っている、といっても過言ではない状況です。これは本気で向き合わないといけない、と責任感を持ちました」と高畑氏は言います。

動き出したら出会いがあった。志を同じくするチームが結集。

誠実な生産者たちの手で、故郷の風景とはだか麦が育まれる
20~30代の若手も参入している。はだか麦の未来を担う

そんないきさつを経て、『讃岐はだか麦本舗』を企画。「商品開発もブランディングも何もかもが未経験でしたが、とにかく手探りで始めました」と高畑氏。

まずは基礎を学ばないと、と奮起して六次産業化のセミナーに参加。そこで講師を務めていた人物の話に大きな感銘を受け、「この人と仕事がしたい!」と思ったそうです。「迷いに迷いましたが、思い切って電話をかけてみました。大変親切に対応して頂きましたが、その方に仕事を依頼するための資金がなかった。そこで農商工連携ファンドの補助金に応募してみたんです」と高畑氏は話します。

結果は見事に採択。喜び勇んでその方に正式に依頼すると、「じゃあ一緒にやりましょう」と快諾してもらえました。「その方にブランディングして頂き、販路開拓の担当者も紹介して頂きました。デザイナーも良い人が見つかって、計4名の『はだか麦プロジェクトメンバー』が動き出したんです」と高畑氏は言います。

「『はだか麦』にしかできないこと」を目指して。

小洒落たレストランメニューにもマッチ。ヘルシーかつアクセントにもなる

「『はだか麦』は希少な品種ではありますが、麦製品自体は市場に溢れています。そこに後発のブランドとして出ていくからには、図抜けていないといけない。東京の第一線で活躍しているプロジェクトメンバーの協力を得て、その目線まで高めていきました」と高畑氏は言います。

これまで高畑精麦で出していた製品とは一線を画す、小粋なパッケージ。更に「『はだか麦』にしかできないこと」を目指した商品開発と、「地域の財産を未来に残したい」という確かなポリシー。それらを訴求力のあるビジュアルとコンセプトに高めたことで、雑貨店などの思いがけないお店でも扱ってもらえるようになりました。

また、老舗の精麦会社ならではの技術を生かし、麦製品としては画期的な『玄麦』まで販売。「これも『はだか麦』ならではの商品です。普通の大麦は外皮が硬くて取れにくいので、玄麦には向かないんです」と高畑氏。

麦ご飯を作る際にお勧めなのは、はだか麦3:白米7の比率。食後の血糖値の上昇を緩やかにする、コレステロール値を下げる、便秘を解消するなどの麦の機能が、最大限に働くバランスだそうです。

「精麦業(せいばくぎょう)」という仕事と「精麦(せいばく)」の技術。

弘法大師誕生の地・総本山善通寺の伝統行事「大会陽(だいえいよう)」の「はだか祭り」をイメージして作られた

「精麦業(せいばくぎょう)というのはすごくマイナーな仕事ではありますが、その存在と行っていることを知って頂きたい。なぜなら、讃岐の麦の歴史を伝える技術だからです」と高畑氏。香川県は二毛作をしており、夏に米を収穫した後に、水田を麦畑に作り変えています。そのため精麦(せいばく)の機械も専用のものはなく、米用の機械を工夫して流用しています。米を精米するように大麦を削って、その優れた特性と風味を引き出す。小麦を粉に挽く「製粉業」と間違われることが多いそうですが、全く違う技術なのです。
「長年培った技術で、『はだか麦』をより美味しく食べやすく加工しています。麦の需要が今後広がっていけば、より麦の特性に合った専用の機械も開発できるかもしれない。そんな希望も抱いています」と高畑氏は話します。

価値あるものを、適正な価格で。

鮭とイクラの親子炊き込みご飯。プチプチした食感がアクセントに

「ものを買うこと、消費することについての価値観は色々ありますが、近年は『安い』『簡単に手に入る』といったことが重視されすぎているように思えます。でも、それを基準にしていると本当に良いものは残っていきません。採算がとれる価格にして、生産者に還元する。『はだか麦』とその作り手を守っていくために、一時のブームでは終わらせない取り組みを目指しています」と高畑氏は語ります。

この商品にはどんな価値があって、なぜこの値段になるのか。売り手がその理由を示して、消費者にも納得して買ってもらいたい。『讃岐はだか麦本舗』はそんな理想も持っています。
「現在は通販と卸売のみで販売していますが、10月には直営所をオープンさせます。同時期に行う『はだか麦』の収穫祭をきっかけに、更なる情報を発信してお客様とのコミュニケーションを増やしていきたい。同時にオンラインショップもリニューアルする予定です」と高畑氏は言います。丸麦・押麦・玄麦からなる『麦シリーズ』を一新して、グラノーラの新シリーズも発売。「はだか麦」の消費を増やして、故郷の風景と資産を未来に伝えていくために、『讃岐はだか麦本舗』の奮闘は続きます。

(写真提供:株式会社 高畑精麦)

一面の麦畑を未来に遺したい。故郷の味も脈々と伝える
Yahoo!ロコ株式会社高畑精麦
住所
香川県善通寺市吉原町2392-1

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電話
0877-62-2323
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

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