分子料理=モダンガストロノミーの美しすぎる世界!

特集

2016年注目のトレンドグルメ

2016/04/29

分子料理=モダンガストロノミーの美しすぎる世界!

モダンガストロノミーという言葉をご存知? ざっくり言うと、瞬間スモークや真空調理など、まるで科学実験のような最新テクニックを含むさまざまな料理法で作る、目にも舌にも美味しい現代美食のこと。今回は、そんな調理方法を使って、自然をモチーフにした料理を表現するお店「セララバアド」へ!

Yahoo!ライフマガジン編集部

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海外の最高峰レストランで修業したシェフがオープン!

東京・代々木上原駅から徒歩8分、閑静な高級住宅街に建つレストラン「セララバアド」。取材班を迎えてくれたのは、優しいオーラに包まれた橋本宏一シェフ。

モダンでカジュアルな店内は、木目調の家具が温かい雰囲気。オープンキッチンなのでシェフの華麗な料理風景も眺めることができる

実は橋本シェフ、スペインの名店「El Bulli」(エルブリ)など、クリエイティブな料理に定評のある世界最高峰のレストランで修業経験のある、すご腕。帰国後は、マンダリンオリエンタル東京タパスモラキュラーバーの料理長をされていたそう。高まる期待感!

「モダンガストロノミーは海外で食べると普通に料理だけで2万円以上する。もっとカジュアルに安価で食べてもらいたいという想いもあって、セララバアドをオープンしました」(橋本シェフ)

これって、魔法? いままで見たことも、食べたこともない料理たち

メニューは季節ごとに変わる1コースのみで、紹介するSpringコースは13品も楽しめる。さっそくコースの中からオススメの数皿を、目の前で作っていただけることに。そして、ここから、橋本シェフの“魔法”にかけられた。

鯛茶漬け

プルプルとスプーンのなかで揺れる、この食べ物の正体は…?

「これはゼリーですか?」とついつい聞いてしまうのも無理のないビジュアル。だが、その後に橋本シェフから飛び出した言葉は信じられないものだった。

「いえ、鯛茶漬けですよ」(橋本シェフ)

…姉さん、事件です。

繊細に盛りつける

聞き間違えかと思い、橋本シェフを追及すると…「この透明な玉は、梅こんぶ茶を分子料理の代表的なテクニックを使って液状化したもの。人工イクラを作るのと同じ技術です。口に入れたとたんに割れて中からお茶が飛び出しますよ」とのお答え。

ということは、もしやその隣の玉は…? やはり昆布締めにした鯛だった。お茶と鯛、スプーンの上の二つの玉を一口でスルリと食べてみると、口の中が、しっかり濃い味の鯛茶漬けワールドに!

これは間違いなく、鯛茶漬けだ‼︎ この世の中にこんなに美しくてミニマムな茶漬けがあろうとは。

枯山水

続いて、橋本シェフが取り出したのは、中から白い煙がボワッとたちあがる一台のマシーン。緑色をした何かをくぐらせ始めた…。

「科学実験のよう」と表現されることも多いセララバアドの料理。だが、それだけではない!

「これは、液体窒素を使って瞬間冷凍できる料理器具。アンチョビパセリバターは空気をたくさん含んでいてすぐ溶けてしまうので、こうして少しでも長く楽しんいただけるよう瞬間冷凍して、温度を下げているんです」(橋本シェフ)

冷やされたアンチョビパセリバターは、小さな小箱の中に、なんと“苔”として盛りつけられることに。

完成! その名も「枯山水」。右手前に写っているのが、瞬間冷凍されたアンチョビバターである

料理の名は枯山水。透明の小箱の中を、日本庭園の様式である枯山水に見立て、季節をプレゼンテーョンする人気のシリーズだそう。

敷き詰められた白石は岩塩黒い石は表面を焦がしたジャガイモ。そして、庭の苔はさきほどのアンチョビバター。同時に食べると、ホクホクのジャガイモ、アンチョビの香りとほどよい塩味が口の中で、上品なハーモニーを奏で始めた。

秋には“枯れ木”を、夏には貝殻やボトルレターを枯山水に飾る遊び心に満ち満ちたメニュー。また季節が巡ったら食べに来なくてはと思わせる逸品だ。

春の高原

またもや、見慣れないマシーンをキッチンの上に取り出した橋本シェフ。

「これは、エア―ポンプです。ローズウォーター、クランベリージュース、蜂蜜に、レシチンという乳化剤を加えてマシーンに空気を送ると、すごく泡立つんですよ」と解説いただいているうちに、みるみる泡が生成されてきた。

ローズウォーター、クランベリージュース、蜂蜜が、エアーポンプの中で泡泡に!
長野県の清水牧場チーズ工房から仕入れたチーズをエスプーマ(ムース)にし、皿の中に搾りだす
泡と、エディブルフラワー(食べられる花)を盛りつけたら「春の高原」の完成!よく見ると、皿の上には花に魅せられてやってきた小さな蝶々が! これは林檎で作られていた

春の高原のお花畑をイメージして考案されたその名も「春の高原」。オープン前に、橋本シェフが訪れた長野県の山奥にある清水牧場チーズ工房と、その周辺の景色からインスピレーションを受けたという。

「お花畑なので、ローズウォーターと、蜂蜜で泡を作りました」(橋本シェフ)

いただくと、泡なのにしっかり甘い香りと味がして、華やかな春の喜びが口の中で弾けた。泡とクリームチーズのふわっとした食感はすぐに口の中から消え去り、一瞬、春の幻を見ていたような、せつない気持ちが残った。

春の大地

続いて、まさかの“切り株”を、ポンと置いた橋本シェフ。その上に“地面“を作り、大胆にも春の山菜をズブズブと突き刺していく。まさに、春の大地から、植物が生命力の限りに芽吹かんとするイメージ!

フキとアボカドで作った味噌の上に、ライ麦パンとブラックオリーブで作った“土”を重ねて
春の山菜やマイクロラディッシュを“土”の上に盛りつけていく

「うちの料理は、よく科学の実験みたいだとくくられることも多いのですが、モダンガストロノミーはあくまで料理テクニックの一つであって、それ自体が『セララバアド』の目的ではありません。僕が表現したいのは、大地や自然、季節の情景。どちらかというと科学的というよりはナチュラルなものなんです。テクニックは、それらを自由に表現するための方法にすぎません」と真剣な眼差しの橋本シェフ。

コースの料理は、自然をモチーフにしたものがほとんど。橋本シェフの言葉がするりと心の中に入ってきた。

タラの芽、ノビル、つくしなど春の山菜そのものの味を引き立てる、味噌味の“土”。サクサクした食感のライ麦パンがアクセントに

ヤマメ 芹 ホワイトアスパラ

さて、お次の料理だ。目の前でモクモクと立ちこめ始めた煙。一瞬、火事かと慌てたが、もちろんそうではない。ヤマメ、芹、ホワイトアスパラ、温泉卵を美しく盛った透明の器に、スモークマシーンで煙を送り込み、蓋(ふた)を閉め密封。

なんと瞬間薫製をしているというではないか。

瞬間薫製中!

「薫製って、主に保存食を作るために用いられる料理方法なんですけど、ここでは、香ばしい薫りを楽しむためのひと手間。煙と薫りがフワッと立ちのぼるとお客さんがワッと喜んでくれる、演出でもあります」と橋本シェフ。

瞬間薫製した直後に、蓋を空けると、煙とともにさらに香ばしい薫りが!

確かに、この煙と薫りはたまりません! 通常の薫製であれば、もっと奥まで火が通り、塩が強くきいているのだが、これは瞬間薫製。ヤマメに生っぽい食感が残っていて、うまい。まさに、食のエンタテインメント。

いただいた後も、鼻孔の奥に、薫りがしばらく残るので、余韻に浸っていられる

春の大地 パートⅡ
(デザート)

最後はデザート。「チョコレートと貴醸酒ってすごく合うなぁ」という橋本シェフの発見から誕生したスイーツだ。

まずは、チョコレートと、貴醸酒という甘めの日本酒で作ったムースを皿にのせ
なにやら茶色いものたちを盛りつけてゆく

チョコレートと貴醸酒のムースの上に、バニラで甘く似たゴボウと、メレンゲを乾燥させたチップを盛りつける。その上から、ガトーショコラやココアのビスキュイ、ナッツなどを砕いて混ぜたフレークを振りかけ、最後に、ミントの葉を置くと…、大地の割れ目から新しい命が顔を覗かせた「春の大地」がお目見え!

最後に生姜のアイスクリームを添える

口にしてハッとするのは、スイーツらしからぬ、ゴボウのコリコリした食感。まるで大地に隠れた根っこを食べているみたい。ちょっと固めにボイルしてシロップで煮たゴボウはまるでナッツのようでもある。濃厚なチョコが日本酒の薫りと相まって、なんとも贅沢な気持ちになった。

メニュー表は、レーザーカッターを使って作られている

「あまりにもデジタルが入りすぎると食べ物として冷たいイメージになってしまうので、その辺はバランスを見ながらですけど…、でも常に、自然や季節の情景を表現するための新しいツールや調理方法を模索していきたいですね」と語る、飽くなき食のエンターテイナー・橋本シェフ。

いま注目している“料理道具”は3Dプリンターだという。これから先、いったいどんな新しい世界を見せてくれるのか、楽しみでならない。

取材・文=城リユア(mogmog gizmocchi)撮影=松本順子

※掲載の内容は2016年4月時点の情報に基づきます。
※2019年7月に店舗(住所、電話番号、営業時間など)、メニュー、料金の一部情報を更新しました。

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