江の島の坂を登ったら、素敵なカフェが待っている《前編》

2018/09/01

江の島の坂を登ったら、素敵なカフェが待っている《前編》

江の島の頂上まで登るのは、なかなかハードだ。エスカレーターを使っても、最後はかなり歩かなければたどり着けない。そんな大変な想いをしても訪れてみたい、素敵なカフェがそこにある。

海の近く

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《坂の上のカフェ》は情緒あふれるレトロ空間

例えば「おすすめのカフェを教えて」と聞かれて、「それなら江の島の頂上にいい店があるよ」と教えたら、怪訝な顔をされるだろう。もっと近くて、気軽に行けるカフェだってたくさんある。でも扉を開けた瞬間から、まったく別の時間が流れているようなカフェは、そうそうない。忙しい日常生活からはぐれるような気分を味わえるなら、電車に乗って息を切らして山を登ってもいいじゃないか。

江の島の頂上ということもあり、風が吹き荒れるような悪天候のときは早じまいをしたり、休業になることも。情報はSNSでチェックしよう

大正時代の民家をリノベーションしたノスタルジックな佇まい

江の島の頂上で『㠀舎 TO-U-SHA』を営む冨永誠・絵美さんも、はじめて江の島を登り、カフェの物件を見に行ったときは、少々怪訝な気持ちだったと思う。だけどこの建物をひと目見て、ここしかない! と即、決めたそうだ。
「それまで1年半ほど、都内で数えきれないほどの物件を見てきましたけど、理想を満たす物件は見つかりませんでした。諦め半分、場所を神奈川まで広げてみたら、最初に出会ったのがこの家でした」と誠さん。
大正時代に建築された民家。90余年、江の島で風雨に耐えてきたどっしりした構え。屋根や梁など外観を残せば、中は自由にリノベーションしてもいいことも魅力だった。

おすすめは懐かしい味わいの定食だが、デザート類も充実している。黒胡麻のおしるこ594円

「物件を探しながら、どういう店にしたいかという企画書のようなものを作っていて、その条件がほとんど叶えられるのもうれしかったですね。ただ、通常は3週間ほどで終わる内装工事が、2か月近くかかったことだけは、まったくの予定外でした」。
取材中知ったのだけど、江の島は頂上までは車が入らない。軽トラが入る最も近い道でも店からは数百メートル。そこから店までは機材やら建材やら全部手で運ぶことになる。
「僕らもゴミや廃材などを何度も往復して運びました。大きな冷蔵庫は、部品に戻してから運び、店で組み立て直しましたよ。決めるのは早かったけど、そこからが長くて大変な道のりでしたね(笑)」。

モダンとレトロが共存する空間を楽しむ

田舎のおばあちゃん家のようにくつろげる『㠀舎』。江の島にたくさんいる猫たちにとっても、憩いの場所になっているようだ

店を入口から見るとカウンターあたりは、光がたっぷりと差し込み、モダンで最新型のカフェ風。だけど海を望む奥のテーブル席の方はガラリと印象が変わる。古い親戚の家にあったような机や、種類がばらばらの椅子、古めかしい木の床材。表とは一転して琥珀色の空間が広がる。
「理想の店になりましたか」と誠さんに聞くと、苦笑しながら「それは無理でしたけど、不完全な部分が残ってしまったことで、逆にバランスがとれている気がします」と。どうです、江の島の坂道を登ってみたくなったのでは?

(取材・文=海の近く編集部 撮影=位田明生)

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2016年4月創刊、葉山から湯河原まで、相模湾沿いの暮らしを楽しむための月刊フリーマガジン。毎月ひとつのテーマのもと、どこよりもディープに海辺の《オイシイモノ》を紹介しています。

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