犬養裕美子のお墨付き!江戸庶民のごちそうに舌つづみ「ねぎま」

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【Yahoo!ライフマガジン】7月の連載記事まとめ

2018/07/16

犬養裕美子のお墨付き!江戸庶民のごちそうに舌つづみ「ねぎま」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第53回は北池袋「ねぎま」。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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江戸料理の名店の味を引き継いだ、女将(おかみ)の手料理

池袋駅から東武東上線でひと駅。北池袋駅は23区内とは思えないほどこぢんまりとした駅だ。それでも駅前には数件の飲食店が並び、そのはずれに「ねぎま」の行灯(あんどん)がぼんやり見えてくる。周囲の趣とは違う、清楚(せいそ)なたたずまい。暖簾(のれん)をくぐって店内に入ると、和服姿の長橋公代さんが笑顔で迎えてくれる。
厨房を囲んでカウンター9席のみというコンパクトな空間だが、ここで味わう料理はめったに出会うことのない “本格江戸料理” だ。

「江戸前 ねぎま」の清楚な店頭。「ねぎま」の書は長橋さんが9年間勤めた「なべ家」から譲られたもの

長橋さんは、大塚にあった江戸料理の名店「なべ家」で仲居として9年勤めた。「なべ家」店主の福田浩さんは江戸時代の料理に関しての本を何冊も執筆しているその道の第一人者。その「なべ家」が2017年6月に閉店したため、長橋さんは8月に自分の店を出すことを決意した。

店内はカウンター9席のみ。予約は必ず入れてから

店名の「ねぎま」の意味をごぞんじだろうか? “ねぎま”の意味は文字通り、“ねぎ”と“ま(鮪)”をお出汁でいただく鍋のこと。
「『なべ家』でも4月から6月の間お出ししていたものですが、実は1年を通しておいしくいただける料理だと思うんです。ぜひもっと知っていただきたいと考えて、店の名前にしました」と長橋さんは語る。

江戸時代はマグロの赤身の方が好まれていたというが、その色が変わりやすいため醤油に漬ける“漬け”が一般的だった。脂肪分の多い、いわゆるトロの部分は捨てられていた(もったいない!)が、それを工夫して味わうようになったのが“ねぎま鍋の始まり”だと言われている。

ねぎま鍋(写真は2人前。マグロ、ネギ、若芽、青菜)。これを長橋さんが3回に分けて出してくれる

江戸時代は、足立区の千住あたりで栽培されていた江戸野菜・千寿ねぎと、大トロをカツオ出汁で味わっていた。
「うちではたっぷりのお酒を使いカツオ出汁を取り、しょうゆ、塩で味を調節します。ネギマグロのほかに青菜と若芽も添えています。召し上がるときは、つぶした粒胡椒を振りかけて、少しピリリと辛みをきかせています」と長橋さん。
カウンター席のみの店で、どうやって鍋を出すのか? と思っていたら、カウンターの中ですべて長橋さんが仕上げてくれる。

カウンターで丁寧にねぎま鍋を仕上げてくれる長橋さん
食べる時に粒胡椒(右上)をふりかけるのが特徴。「実はペンチで一粒一粒割ってお出ししているんですよ」。そのきめ細かな気配りが味・風味を確実にアップさせている

脂ののったマグロのカマトロ(カマの中でも特に脂がのった部分)、ハラモ(大トロの横、魚体の中でもっとも脂がのっている部位)の両方を用意しているので、その違いを味わえるのも楽しい。
ちなみにマグロはバチマグロ。いろいろ試した結果、火を入れても臭みが出ないことが素材選びの決め手となった。
青菜は水菜、三つ葉、山東菜の3種だが、冬はセリの根付き1種類のみ。「冬のセリは本当においしいですね。マグロの脂ののりも1年でいちばん多いし、ネギも甘みを増します」。
大きなマグロのブロック3切れにネギ、若芽、青菜を添えて、合計3回、鍋を楽しむ

女将の長橋公代さん。実家はホテルや旅館を経営。小さな店を出すことを目標にしてきたという。「『なべ家』は店を閉めてしまったので、器を譲り受けるなど旦那さんにも女将さんにもずいぶんよくしていただきました」

そして最後に、土鍋で炊いた炊き立てのご飯に鍋の汁をかけて出してくれる。カツオ出汁にマグロのうま味が加わったダブル出汁。サラサラとした汁かけ飯は気持ちよくおなかに収まる。
この「ねぎま鍋だけコース」(卵焼き、土鍋ごはん、香の物付き)は2900円。これに小皿料理3品がつくと3700円、さらに燻製(くんせい)盛り合わせをつけると4300円! 

燻製盛り合わせ1200円。鯖、マグロ、笹かま、チーズ。少し強めに燻製にかけているのでビールによく合う。最近はねぎまとこれをセットにしたコースが人気。4300円

吟味された素材、丁寧なサービス、そして何よりも目の前でおいしそうな湯気をあげている鍋をベストタイミングで味わえる贅沢(ぜいたく)。それをこの値段で楽しめるとは! 「やっぱり手頃な値段で食べられることが大切だと思うんです。また、来ようと思っていただける気軽さがお客様の層を広げていきますから」。

ねぎま鍋だけでなく、燻製メニューや旬の素材を使った一品料理も充実している。日本酒好きの長橋さんならではのツボを押さえたラインナップだ。

おすすめの日本酒はなんと均一価格。日本酒初心者にも先入観なく安心して楽しめる。お酒に合わせて、一品料理には心ひかれる酒のつまみが並ぶ

日本酒もなかなかのセレクト。おすすめ7種類ほどが壁に貼られているが、すべて1合900円、小500円の均一価格! 日本酒通なら「安い!」とほくそ笑みたくなる人気銘柄も。「お会計の時、違う値段だと面倒ですから」と笑う女将さんだが、かなり大胆&太っ腹! 

江戸前玉子焼き。コースの最初に必ず出されるお決まり。甘じょっぱい味つけは江戸伝統の味
小鍋・玉子ふわふわ500円。出汁の中で玉子を蒸らしてから味わう。関西風卵焼きのようにあっさりとした出汁が最後の〆(シメ)にいい
Yahoo!ロコねぎま
住所
東京都豊島区池袋本町4-3-17

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アクセス
北池袋駅[出口]から徒歩約1分
下板橋駅[南口]から徒歩約3分
板橋駅[西口]から徒歩約9分
電話
080-8739-8566
営業時間
18:00~22:30(22:00L.O.)
定休日
日曜・月曜・祝日休
口コミ・写真など

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