犬養裕美子のお墨付き!本物の天ぷらを安く! 江戸川橋「天仙」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン【Vol.41〜】

2018/08/17

犬養裕美子のお墨付き!本物の天ぷらを安く! 江戸川橋「天仙」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第54回は江戸川橋「天仙」。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

昼の天丼、夜のコース。どちらも驚きの値段。

ランチはかき揚げ丼1100円、海老野菜丼1200円、特製天丼1600円に定食・花1400円、月2500円。値段だけ見てもお安いと感じるが、食べればさらに感激! 
特製天丼は海老2本、野菜4種、魚介2種がぎっしりと丼に盛られ、いくら食べても減らない……。夢中でかき込むうちに気がつく。「この丼つゆ、コクが違う……」。ご主人の早川義信さんに伝えれば、にこりと笑って「これは出そうと思っても出せない味だから」。

店主の早川義信さん現在64歳。天ぷらだけでなく、ちょっとした突き出しにも工夫を凝らす。常連からは山菜やきのこなどの素材が届くこともあり、何気ない一品が好評

カウンターの揚げ場に鎮座する丼つゆ鍋の中身は、この店の歴史そのもの。開店以来、継ぎ足してきた深い味。甘すぎず、辛すぎず、絶妙なコクとまろやかさでご飯と天ぷらをしっかりと包み込んでいる。昼に行列ができるのはこんな天丼目当ての常連客が並ぶから。この丼つゆに慣れたら、他の店では物足りなくなるに違いない。

ランチの特製天丼1600円。赤だし、サラダ、香の物つき。天丼は海老2本。きす、穴子、かき揚げ、シシトウ2本、エビのすり身をつめた椎茸。天ぷらそのものがたっぷり

コース最後に超盛り上がる、かき揚げの登場

「夜はコースの〆(シメ)はかき揚げの天丼か、天茶か。やっぱり天丼のお客さんが少し多いかな」。
丼つゆの風味だけではなく、かき揚げの大きさも魅力の一つ。エビのみを使ったかき揚げだが、その大きさはソフトボール大。なんとも迫力あるまん丸な形(ご飯は大・中・小から選べる!)。「シュークリームのように揚げろ、と教わったもんだ」と早川さん。

夜のコースの最後、かき揚げ丼(中)。エビだけのかき揚げも潔い。ゆずの皮で香りを添えて
夏の魚・はも。関東では扱いの少ない素材だが、早川さんはオープン時から使っている。山椒塩をピリリときかせて。600円
銀杏と絹さや300円。野菜はそんなに多くはない。季節感が出るものをチョイス。銀杏のホクホクネッチリした食感とサクッとした絹さやの食感が交互に楽しめる

早川さんが池袋、銀座で修業後、独立したのは29年前。当時の夜のコースは3800円から、それが今でも4500円からという手頃な値段
「最初に海老を2本お出しするんですが、必ずお客様の前で活けをさばいて、頭と足を先に、それから身を揚げます。これが『天一』のやり方。知っている方は『この値段は安すぎる!』と驚かれて、またお見えになりますね」と女将さん。そんな間も揚げ場を一人で仕切る早川さんは黙々と鍋に集中している。

黙々と鍋に集中する店主・早川さん

揚げたてをすぐに客の前に運び、食べ方や素材の説明を担当する女将さん。歯切れのいい接客も気持ちがいい。
早川さんは「変わったことはしていない」というが、天仙オリジナルのメニューもある。ハマグリの身と三つ葉を貝殻に詰めて揚げた「ハマグリ」はお好みで楽しめる一品(入荷による。800円)。

大きなハマグリの中身を刻んで三つ葉といっしょに揚げた「ハマグリ」800円。早川さんのオリジナル。仕入れの都合があるので、予約時に相談を

今、天ぷら屋は極端に安い店と極端に高い店の二極化が進んでいるように感じる。ネタも魚に限らず、肉や野菜も揚げる店が増えている。いわば天ぷら革命の時代なのかもしれない。その中で「天仙」は早川さん夫妻が淡々と昔と変わらない仕事を守り続けている。
江戸川橋の駅のすぐ近くにありながら、ビルの地下という立地なので少しわかりにくい。それでも来年30年を迎える「天仙」は、今の時代に本物を伝える“真っ当な店”なのだ。

カウンター8席、テーブル席は6席、広々としたテーブル席は小人数での会食に向く
昔懐かしい気分にさせてくれる門構えの店が迎えてくれる
Yahoo!ロコ天仙
住所
東京都文京区 関口1-23-6 プラザ江戸川橋B1

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アクセス
江戸川橋駅[1b]から徒歩約1分
神楽坂駅[2]から徒歩約11分
護国寺駅[6]から徒歩約12分
電話
03-5261-2751
営業時間
11:30~13:30(L.O.)18:00~21:00(L.O.)
定休日
日曜・祝日休(土曜が祝日の場合営業)、8月13日~16日は夏季休業
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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