そばの魅力は香り、風味、食感? 偏愛家二人がマニアックに語る

特集

シンプルなのに奥深い! そばをおいしく味わう秘訣を伝授!

2018/07/27

そばの魅力は香り、風味、食感? 偏愛家二人がマニアックに語る

そばを盛り付けただけの「せいろ」。和食のなかで、これほどシンプルな料理もめずらしい。だからこそ奥深いともいえる、そばの世界。シンガーでありながら、無類のそばマニアである高遠彩子さんと、エッセイストで「江戸ソバリエ協会」理事長のほしひかるさんに、その深遠な魅力について聞いてみた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

高遠彩子さんおすすめの店「手打蕎麦 まるやま」(代田橋)の「二種せいろ」(1500円)

\対談するのは、この二人!/

高遠彩子さん

高遠彩子さん

シンガー

ほしひかるさん

ほしひかるさん

「江戸ソバリエ協会」理事長

\こちらの店で対談しました/
代田橋「手打蕎麦 まるやま」

昔は出前などもおこなう、いわゆる「街そば」、街のそば屋さんだった。手打ちそばの店となった今も、いい意味で敷居の高さを感じさせない、和やかな雰囲気だ

江戸時代・元禄年間創業と伝わる「長寿庵」から、のれん分けを許された初代。2代目の丸山重光さんは、先代のよさを引き継ぎながら、15年ほど前、手打ちそばの店へと舵を切った。自家製粉の田舎、せいろそばも素晴らしいが、店主が和食店で修行を積んだだけあって、つまみも出色。本格的でありながら、庶民的な店の佇まい。女将の接客も心地いい

「鴨焼き」(1750)円。甘い脂、肉汁がたまらない。ここは昼から一品料理で一杯やれる、そば好きのパラダイスだ

そばの一番の魅力は、香り?

そばの登場とともに、テンションが上がる高遠さん。まずは、そばをそのまま味わい、次につゆにつけて、たぐる

本職はシンガーでありながら、Eテレ『美の壺』のそば特集に出演したり、そばへの愛を綴った書籍を刊行したり(ちなみに帯には、*春風亭昇太さんの推薦コメントが)。「よく、そば評論家と間違われるんです」と苦笑いする、高遠彩子さん。しかしそばを目の前にした彼女の姿が、その理由を物語っている。「手打蕎麦 まるやま」の「二種せいろ」が出てきた瞬間から、「うふ、うふ」「やったー」と歓喜する姿。しかも奇声に近い!?喜びの叫びだ。

「手打蕎麦 まるやま」の「二種せいろ」。左の田舎そば、右のせいろそばともに、外一(10割のそば粉に、1割の小麦粉)。荒めに自家製粉しているため、そばの風味が強い
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「初対面の方が、そばを前に奇声!?をあげておられるのを拝見して、少々、戸惑いましたが(笑)。本当においしそうに召し上がっておられるの。これはそば屋冥利に尽きますね」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「私、そばの佇まいが、好きすぎて。せいろにそばを盛るだけで、なんでこんな美しいの?って感心させられます。そばが運ばれて来た瞬間、その枯山水にも匹敵する究極の美に心打たれ「そばと二人きり」。恍惚の世界に入ってしまいます。そばを見つめているとそばへの賛美の言葉が脳内に溢れて止まらず、私のそばブログの文章を見た方に、官能的と言われてしまったこともあるんです」
話しながらも、そばをたぐり続ける高遠さん。取材中も、「おいしい」の声が止まらない
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「なるほど。言われてみれば、そばは官能的なものかもしれません。高遠さんはどんな理由から、そばに興味を持たれたのですか?」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「大学に入学して、バイトで稼いだお金で外食するようになったら、いつの間にか、そばに夢中になっていて。手帳には、おいしいそば屋の情報ばかり。中高年向けの週刊誌を買って、そばの記事をスクラップしでいました。学食には行かず、1日3食そば屋も、当たり前で」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「ずいぶんと早い、そばデビューですね。『江戸ソバリエ協会』の受講生にも、女性が多いですが、さすがに大学生というのは少ない」
「梅とみょうがの冷やかけ」(1300円)は夏季限定。外一らしい、しっかりしたそばの味わいを楽しみながらも、さっぱりといただける
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「実は当時、パンにもはまっていて。そばとパン、本能の赴くままに買い漁っていたら、炭水化物ばかりの食事に(笑)。さすがにこれはまずいと思って、そばを選んだんです。パンもいいけれど、そばの持つ複雑な香りの方に惹かれてしまって」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
小麦は10種、そばには110種の香り成分が含まれているといわれます。さすがシンガーの高遠さん、当時から感性だけでなく、嗅覚も秀でておられたのですね」
せいろを平らげ、次は冷やかけに箸を伸ばす。そばの前では常に笑顔が絶えることがない
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「私、やっぱりそばの一番の魅力は香りだと思うんです。そばの香りが漂うと、嬉しいのメーターはだだ上がりで、MAXの状態に。『私とそばの間に0.1mgの空気も介在しないで!』と思いながら、まず香りを必死に吸い込みます(笑)」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「僕は、つるつるとした食感やコシに惹かれて、そばの虜になりました。もちろん香りも嗜みますが、その部分での偏愛ぶりでは、高遠さんに負けてしまいますね(笑)」
この日の「二種せいろ」は、田舎そば(左)が北海道産のそばの実を、せいろそば(右)が千葉県産の新そばを自家製粉して手打ちしたもの
ほしひかるさん。高遠さんのそばへの並外れた愛情に、感心しているご様子
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「今日は『読者の方のお手本にならないと!』と、つゆにつけて食べていますけど。本当は何もつけず、そのまま食べたいんです。つゆなしでも、せいろ5枚は食べられちゃいます。とにかくそばの香り、風味を楽しみたくて」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「そばを嗜みはじめた当初から、せいろのそばの魅力に気づいていたというのが、高遠さんの素晴らしいところ。はじめは、かけそばや、せいろでもつゆをたっぷりつける人が多いのですが。その審美眼があったからこそ、シンガーでありながら、そばに関する書籍も刊行されておられるのでしょう」
目の前のそばは完食。引き続き、そばの魅力を語り出すと、話が止まらなくなる高遠さん
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「ほしさん、あまり褒めすぎないでください。私、調子にのっちゃいますから。そばへの偏愛が凄すぎて、友人に『そば粉を鼻の下に張っておけ!!』と、からかわれることもあるくらいなんです(笑)」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「はは、そば粉を鼻の下に(笑)。これは本当に、そばの申し子としか言うしかないですね」

そば以外の料理に浮気する瞬間

「手打蕎麦 まるやま」の玉子焼き(700円)。そばつゆで味付けされた、まろやかな甘辛さ。日本酒が進むつまみだ
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「ところで高遠さんにとって、居心地のいいそば屋って、どんな場所ですか?」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「私は『せいろ』だけ食べ歩く“はしごせいろ”が基本。『そば湯』が酒、つゆがつまみなんです(笑)。だから一品料理も、『そばがき』や『そば刺し』など、そばそのものを食べてばかりです。けれど、こちら『手打蕎麦 まるやま』さんのように、家庭的な雰囲気で気の利いたつまみを提供されると、ついそば以外に、浮気しちゃいます。飲んだらすぐ、顔が真っ赤になっちゃうのに、日本酒も進んでしまう。お酒は好きなんですよ、すごく」
「蕎麦がきのさつま揚げ風」(1250円)。柿の葉をかたどっている
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「なるほど。では、どんなつまみがお好きなのですか?」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「もつ煮のように、そばつゆの味わいを楽しめるものが好きです。あとは『手打蕎麦 まるやま』さんでいえば、『穴子天ちらし』。この穴子の肉厚さを見てください! 野菜の天ぷらがいただけるのもいいですよね」
「穴子天ちらし」(2150円)。穴子だけでなく、季節の野菜の天ぷらもたっぷり
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「そばが茹で上がるまでのあいだ『玉子焼き』や『天ぷら』、『鴨』のようなそば屋のつまみで酒を飲む。江戸時代から続く食文化が、今、脚光を浴びています。そば屋へ行けば手頃な値段で和食が体験できると外国人観光客に注目されているのです」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「そうなのですね。ならば私は、せいろそばを世界遺産にしてほしい。そばだけでなく、器を含めたストイックなまでの眺めの美しさ。 ざるやせいろの上に盛られたその景色は、究極の美の世界です。世界中の人に知ってもらわなきゃ、本当にもったいない」
そば好き二人の対談も、いよいよ佳境に
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「今後こんなそば屋に登場してほしい、というのはありますか?」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「これは仕込みの問題などで難しいでしょうけど、通し営業のそば屋がもっと増えれば嬉しいです。あと手打ちのお店も。よく『おいしい店を見分けるコツは?』って聞かれることがあるのですが、まずは『個人経営の手打ちのお店を探すべし』と思うので」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「そばファンを増やすという意味では、最近、つゆの味わいを生かしたステーキを出す店なども出てきました。そういうお店側の努力がファン獲得に繋がるといいですよね」
対談のあとに記念写真。二人のそばトークには、新たな発見に満ちていた
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「ところで高遠さんは、自分でそばを打つ、そば屋になりたいと思ったことはないのですか?」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「それがないんですよ。私 、“女ったらし”なそば好きなんです。毎日、いろんな子(せいろそば)を可愛がりたくて。そばに関しては、浮気症なんです(笑)」
ほしひかるさん
ほしひかるさん
「高遠さんらしい、そばへの愛情表現ですね(笑)。高遠さんのように、独自の言語表現でそばを評論する方が増えれば、そばの未来も明るいはずだ」
高遠彩子さん
高遠彩子さん
「そうですか(笑)。私こそ、そばへの愛を直球でぶつけられて楽しかったです。今日は、本当にありがとうございました」
代田橋駅側の歩道橋を渡って、甲州街道の北側に。「手打蕎麦 まるやま」の看板が目に入ってくる
店主・丸山重光さんと女将さん。気取らず優しく、温かな接客がいい
Yahoo!ロコ手打蕎麦 まるやま
住所
東京都杉並区和泉1-2-3

地図を見る

アクセス
代田橋駅[北口]から徒歩約3分
笹塚駅[北口]から徒歩約10分
明大前駅[出口]から徒歩約13分
電話
03-3321-1478
営業時間
11:30~14:30(LO)、18:00~20:30(LO) / 水曜11:30~14:30(LO) / 土・日曜11:45~14:30(LO)、17:45~20:30(LO) ※売り切れ終いの場合あり
定休日
毎週木曜日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

取材・文/岡野孝次 撮影/大本賢児 協力/『蕎麦春秋』

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

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