目指すは“リーズナブルな高級料理店” それって、何?

目指すは“リーズナブルな高級料理店” それって、何?

2016/06/02

“アナログレストラン”とは犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービスが楽しめる。かつ良心的な値段。つまり人の手と手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第5回は 東高円寺「川陽(SEN YO)」

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

予約をする時は、丸鶏のパリパリ揚げの注文も忘れずに

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ビルは環七に面しているが、入り口はビルの角。昼は麻婆豆腐定食(900円)目当てに行列ができることも

東高円寺駅から環七沿いの店まで徒歩7~8分。周囲にここ以外店が見あたらない。ところが予約の時間に入ってびっくり。20席の店内は予約でほぼ埋まり、すでにテーブルの上には料理が並んでいる。

家族連れ、車いすのお年寄りもみんな楽しそうに食べている。幅広い年齢層が利用する店らしく、メニューに並ぶ値段はどれもリーズナブル。前菜3種盛り合わせ(1人前)880円、焼き立て広東叉焼1200円、重慶よだれ鶏900円…。

しかも侮れないのは腸詰や干肉など自家製がやたら多いこと。さらに点心の欄にも精鋭メニューが並ぶ。パリッパリの海老春巻き1本400円、上海小籠包2個480円。四川風水餃子2個360円。おなじみの肉や海鮮料理は大海老のマヨネーズ和え1200円、交雑牛イチボ 黒胡椒ソース炒め2300円などなど、どれもこれも食べたくなる料理ばかり。

極めつけは「予約料理」だ。丸鶏のパリパリ揚げ一羽4200円(5人以上)、半羽2100円(2〜4人前)! 原ヒレからもどしたフカヒレの姿煮4800円、吉浜産40頭サイズ干しアワビの広東風煮込み4500円! このラインナップを見た瞬間、予約したいメニューに目が泳いでしまい、決めなければいけないオーダーがまとまらなくなり困った。

丸鶏のパリパリ揚げ。ハーブ鶏を一晩半かけて下味をつけて、熱い揚げ油をかけてパリパリに揚げる。2日前までの要予約。運がよければ半羽予約の残りがあることも
四川麻婆豆腐1150円。さわやかな辛さと痺れ感。後口がすっと消える

どのメニューも、ここが最高!と言われる料理に仕上げる

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店主の山田昌夫さん。銀座「福臨門酒家」に4年、中国は香港の北、深圳で1年修業したという。2011年11月に独立

店主の山田昌夫氏(36歳)に「おすすめは?」と聞くと「どの料理も最高のものを目指していますから」と言葉少なではあるが自信のほどが伺える。例えば “パリッパリの海老春巻き”。

一口目は、パリッパリの春巻の生地に感激するが、山田氏がこだわっているのは中身の海老。「普通包丁でたたいてプリプリ感を出すでしょ。うちは包丁使わないんです。手の甲で押してすりつぶす。すっごく力もいるし、時間もかかる」。こんなこだわりが、すべての料理に隠されている。「高級料理といわれるフカヒレや鮑も、うちならびっくりする値段。しかもほかの店に負けない味を堪能してもらえるよう、仕込みに時間をかけます」。

これがエビ春巻きでしょうか?

フカヒレを原ヒレから戻して使うのに3~4日、丸鶏のパリパリ揚げも仕込んでから1日半。加工した素材を仕入れることができる状況で、すべて自分で準備することの意味は何か? それはもう、味と値段のため。敷いてはお客のために他ならない。だから、予約してこそこの店の真価を味わえる。私はまだまだ新参ものだが、次はフカヒレを狙おうと心に決めている。

中国アアンチョビ炒飯1200円。ここでは香港と同じく炒飯にパラパラの細い米、ジャスミンライスを使用。ハムユイ(イシモチの干物)の独特の香りが食欲をそそる
食事だけでなく飲み物も充実。ワインはイタリアワインを中心に山田さんが飲んで選んだものを用意。自家製サングリアは赤白用意。各500円

川陽(SEN YO)

住所:東京都杉並区和田3-18-9
電話番号:03-6382‐5320
定休日:火曜、金曜の昼(その他臨時休業あり)
営業時間:11:30~14:00、18:00~21:15 LO(土日祝17:30~21:15 LO)
予算:食べて飲んで一人5000円

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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