激辛ラーメンにまつわる、精神科医の苦くてからい恋の思い出

連載

星野概念のめし場の処方箋【Vol.21〜】

2018/08/13

激辛ラーメンにまつわる、精神科医の苦くてからい恋の思い出

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

星野 概念

星野 概念

精神科医

激辛がなぜクセになるのか。それは辛味の知覚のされ方に秘密がありました

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

夏!暑くて暑くて汗ばかりかいていたら、激辛ラーメンにハマった過去を思い出しました。なぜ辛く(からく)て辛い(つらい)のにハマってしまうのか。そして、なぜ過去の僕の恋は苦く、辛い(からい)思い出になってしまったのか。今回はそんなお話です。

  

【目次】
1.蒙古タンメン依存症疑い
2.激辛がクセになる理由


1.蒙古タンメン依存症疑い

・汗が止まらない

メチャクチャに暑い!

普段は病院にいるので、一日中炎天下という環境ではありませんが、駅から病院まで自転車に乗るだけで全身の汗が止まらなくなります。

みなさん、どうか熱中症に気をつけてください。

  

こんな汗だくな毎日を過ごしていると、学生時代に激辛ラーメンに激ハマりしていた頃を思い出します。

・中本が止められない

僕が激ハマりしていたのは

蒙古タンメン中本

です。

今や、コンビニでカップ麺が並びに並ぶほどの有名店ですね。

激ハマり期は医学部6年生の時で、かれこれ10年以上前です。

医学部6年生といえば国家試験に向けての受験勉強真っ最中。毎日問題集を解いたり、暗記をしたり、それはもう辛い辛い(つらいつらい)受験生活でした。

  

その辛さ(つらさ)へのご褒美として友人たちが始めたのが、「蒙古タンメン中本 上板橋本店通い」でした。当時は店舗数が少なく、さらに発案者が板橋出身だったので、なんと車で往復3時間かけて彼らは通っていたのです。

僕はラーメンを食べる習慣がなかったのではじめのうちはそのツアーには参加せず、同じ境遇の何人かと

「3時間もかけてラーメンなんてバカなことをするもんだな」

なんて言いながら酒盛りをしていました。

でも、3時間飲酒し続けるのと、車で往復してラーメンだけ食べて帰ってくるのとでは、勉強へのダメージが違うことに徐々に気づきます。

だって酔っ払うじゃん!

  

結局、酒盛りはやめ、時間を持て余した我々は、3時間中本ツアーへの合流を余儀なくされることとなりました。

そしてこれが辛い辛い(からいからい)受験生活の始まりでした。

  

・なぜだかクセになってやめられない

行く前は、きっと行っても一度きりだろうとふんでいました。なぜなら、それまでラーメンにハマったことは一度もなかったからです。

注文したのは、オーソドックスな初心者向けメニューとされている

蒙古タンメン

何度も通っている手練れの友人たちは

「まぁ野菜も多いし、辛さも控えめだからちょうどいいっしょ」

と言います。

そんなこと言われたら油断しますよね。
調子に乗って3口くらい一気に食べると、、

かっらっっ!!

  

全然、もう、超辛いです。舌が熱くて、麺を噛もうとすると痛みすら感じます。汗がどんどん噴き出してきて、ポケットティッシュを1袋使い切りました。食べ終わり、

「もう絶対来るものか!」

そう決意しかけた瞬間、

あれ、なんでだろう、また食べたい……

  
  
  

それが素直な気持ちでした。

結局それから僕はツアーの常連になりました。蒙古タンメンよりも辛いメニューに手を出す勇気は全くありませんでしたが、毎回

かっらっっ!!→もうやめたい
→と思ったけど、また食べたい


というサイクルを繰り返し、蒙古タンメンに激ハマりしていきました。

  

・ジャンヌダルクのために

ある日、主に男だけで行っていたツアーに女性が参加することになりました。しかも僕が密かに好意を抱いていた女性です。

女性があの辛さ(からさ)と辛さ(つらさ)に耐えられるのか??

「キツかったら無理することないよ」

なんて、頼れる先輩ぶりながらお店に到着。当然すすめるのは蒙古タンメンです。

「野菜も多いし、辛さも控……」

「わたし、一番辛いのにする」

「いやいや、蒙古タンメンでさえ
かっらっっ!!ってなるから」

「そうなんだ。でも辛いの好きだから大丈夫。一番辛いのにするね」


男衆が必死で止めるのも聞かず、彼女は困難に立ち向かう女戦士のように、最も辛いメニューである

北極ラーメン

を迷わず注文しました。

  

冷静にみれば、ただただ思いっきりの良い人ということになりますが、もともと好意を抱いていた僕には、彼女が気高い女戦士、ジャンヌダルクに見えました。

そして、ジャンヌの前に、最強の敵であり最辛のメニューである北極が運ばれてきます。

すかさずジャンヌは勢いよく、地獄の海のように真っ赤なスープをすすりました。

あ!

  

早速、めちゃめちゃムセてる……

激辛を食べてる途中にムセるというのは、辛味物質カプサイシンによる粘膜の反応なので、なかなかそのダメージを取り返せません。ジャンヌは、食べ始めて2分で致命傷なほどムセてしまいました。

  

「よし、俺のと取りかえよう」

思わず反射的に、ジャンヌの北極ラーメンの器と自分の蒙古タンメンの器を入れ替えてしまいました。我ながら思い切ったものです。恋心とか、見栄とかってホントに怖い!

そして、もちろんなんでもないように食べる。

内心、舌が焼き切られているのではないかと錯覚するほど、熱くて痛かったけど

  

「ふーん、結構辛いね」

くらいの感じで水も飲まずに食べ続けました。

  

でもまぁ、尋常じゃない汗と、辛(つら)すぎて顔面の皮膚が震えていたと思うので、もはや異形の雰囲気は隠しきれていなかったと思います。

  

後日、この救出劇による僕のポイントアップはいかほどのものかと、彼女からのアクションを待っていました。例えば

「この間はありがとう。今度は辛くないのを2人で食べに行きたいな」

  

とか。
でも、そんなおとぎ話のようにうまく事は運びません。

彼女には普通に彼氏がいて、彼氏と2人で中本に行った、ということを間接的に聞いた以外のことは何も起こりませんでした。

  

北極ラーメンを食べた後も激辛ラーメンへの渇望は続きましたが、そのじんわりと苦い、そして辛い(からい)恋の傷口がなかなかふさがらず、僕の短くとも濃厚な、激辛ラーメン通いは幕を閉じました。

アーメン。

  

2.激辛がクセになる理由

・味覚ではない!?

「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」、日本の独特なものと言われる「旨味」も含めたさまざまな味。それらは味覚を感知する脳への回路により知覚されます。

しかし、トウガラシに含まれる成分、カプサイシンによる「辛味」は実は違うのです。

  

この「辛味」は、痛みを感じる痛覚や、温度を感じる温覚の回路で知覚されます。

  

つまり、辛味は痛み、と極論的に着地できるということです。

  

あくまでも極論的に。

  

・痛ければ和らげる

痛いとどうしますか?

それは痛みを和らげますよね。つまり鎮痛です。

  

脳では、痛覚が強く刺激されると、そのキツさを和らげるためにβ(ベータ)エンドルフィンなどの、脳内麻薬様物質を分泌します。

つまり、

トウガラシたっぷりの辛いものを食べる
→辛い!と強く知覚する
→脳では「痛い!」とか「熱い!」と解釈される
→脳内麻薬様物質が分泌される


という一連の流れがあるということです。

脳内麻薬様物質は、鎮痛し、快感に近いものをもたらすので、食べている最中は辛く(からく)て辛い(つらい)のに、その後にまた味わいたくなるわけです。

  
  

・改めて蒙古タンメンを食べてみる

こう書くと、トウガラシの辛味がなんだか良くないもののようですが、全くそんなことはありません。

大事なのはバランスなので、学生時代の僕らのようにそればかり食べるというのはオススメできませんが、時々スリルを味わうように食べてみるのは良い刺激になりそうです。

しかも、改めて蒙古タンメンを食べてみると、友人たちが言っていたように、確かに野菜の旨味などが感じられました。

ただ一つ言えることは、激辛からの苦しみを救ってあげたくらいでは恋は成就しないということです。

これぞ、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というやつですね。


は??

  
Yahoo!ロコ蒙古タンメン中本 上板橋本店
住所
東京都板橋区 常盤台4丁目33-3 浅香ビル 2階

地図を見る

アクセス
上板橋駅[北口]から徒歩約0分
ときわ台(東京都)駅[南口]から徒歩約16分
東武練馬駅[南口]から徒歩約18分
電話
03-5398-1233
営業時間
月~日 10:00~26:00
定休日
無休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

Yahoo!ロコ蒙古タンメン 中本 新宿店
住所
東京都新宿区西新宿7-8-11 美笠ビルB1F

地図を見る

アクセス
新宿西口駅[D5]から徒歩約2分
新宿(東京メトロ)駅[B16]から徒歩約4分
西武新宿駅[南口]から徒歩約5分
電話
03-3363-3321
営業時間
11:00~24:00
定休日
無休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

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精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

権田直博(ごんだなおひろ)

画家

この記事を書いたライター情報

星野 概念

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精神科医

総合病院に勤務し、日々精神医療に従事する傍ら、執筆や音楽活動を行う。

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