10月末で閉店。酒場詩人の吉田類が、古巣の渋谷・富士屋本店へ

10月末で閉店。酒場詩人の吉田類が、古巣の渋谷・富士屋本店へ

2018/08/15

ことし10月末、渋谷の名酒場『富士屋本店』が約45年の歴史に幕を閉じる。多くの人が閉店を惜しむなか、「吉田類の酒場放浪記」でお馴染みの酒場詩人・吉田類さんが同店を訪れた。そこで一杯お供させてもらいながら、ここの魅力について伺うことに。※『富士屋本店』は8/19(日)まではお盆休み

Yahoo!ライフマガジン編集部

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酒場詩人・吉田類さんが東京きっての大衆酒場『富士屋本店』へ

まずは類さん来店の様子を動画で!

\吉田類さんにお供して、ちょいと一杯/

ことし10月末で閉店の知らせを受け、約3年ぶりに『富士屋本店』を訪れた類さん

2018年10月末、再開発に伴い、渋谷の名酒場『富士屋本店』が閉店する。残り約2カ月とあって、近ごろは惜しむ声を多く耳にするが、酒場詩人の吉田類さんもその一人。今日は一報を聞き「久しぶりに行こうかな」と話す類さんにお供させていただいた。※8/19(日)までは『富士屋本店』お盆休みなのでご注意を

吉田類(よしだ・るい)/高知県出身、酒場詩人。今年15年目を迎えるBS-TBSの人気番組『吉田類の酒場放浪記』のほか、日本各地で酒場や旅をテーマに講演する
開店から約45年、この光景もあと2カ月ほどで見納め。現時点で正確な閉店日は不明だ(撮影=阿部ケンヤ)

類さんが思う『富士屋本店』の魅力とは?

店内を見回し「寂しくなるねぇ」と類さん。この時、店内のモニターでは『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)が放送中。以前この番組でもここを訪れたのだそう

「地下に降りたとたん、酒飲みのカオスというか、この混沌たる状況が目に飛び込んでくるんですよ。この光景を見たら、お客さんの多さとその活気に驚くと思う」と類さん。「半世紀はこのスタイルを守っているからね。2018年まで、よくぞこの形で残っていてくれました」と話す。

「類さんは立ち呑みがブームになる前からウチの店に来てくださっていましたね」と、名物女将のヨシ江さん

まずは瓶ビール(500円)から! 女将のヨシ江さんと思い出話に花が咲く。「取材で来られて、メジャーでカウンターの長さを計っていたこともありましたね。後にも先にも、そんなことをしていたのは類さんだけですよ」と言うヨシ江さんに、「ははは。カウンターの長さは立ち呑みの要だからね。それにしても寂しくなるねぇ」と類さん。

「タコとビールさえあれば、もう最高なんだ」と、まずは「地ダコの刺身」(350円)を注文。類さん、ワサビをたっぷりといていました
改めて「ヨシ江さん、久しぶりだね」と類さん
カウンターの上には季節の素材が並ぶ。取材時の7月は、旬のゴーヤと万願寺とうがらしが。類さんも女将さんに勧(すす)められ、「ゴーヤチップス(じゃこ入り)」(350円)を追加することに

「初めて来たときは、独特の世界に驚いた」

乾杯したところで、まずはここ『富士屋本店』の成り立ちについて聞いた。「もとは酒屋から始まったお店で、東京の立ち呑みの中でも歴史がある場所。地上にあった店先での立ち呑みが徐々に本格的になり、地下にここができたんですよ」と類さん。

昭和情緒あふれる、飴色の壁や味のあるカウンター。類さん曰く「ある意味、戦後・昭和の雰囲気を引きずっているところも魅力の一つ」(撮影=阿部ケンヤ)
類さん
類さん
「店に入った瞬間に圧倒されますよね。初めて来たときはこの独特の世界に『こんな呑み場所があるんだ』と驚きました。この空気感はどこにもないし、ここが消えたら無くなるわけですよ。同じものを再現することはできないから」
「『板垂れ』と言うんですが、板に書いてあるメニューも最近では珍しい」(類さん)
「ここは大衆酒場によく見られるコの字がつながったカウンター。周りの人の顔がよく見えるんですね」(類さん)
類さん
類さん
「東京にはたくさんの立ち呑みがありますが、その中でも地下にあるというのは大きな特徴ですね。さらに駅のすぐ側なうえ、この安さ!」

60ほどある品はほとんどが2〜300円代。レシピはすべて、ヨシ江さんによるものだ。わざわざ赤羽まで買いに行くハムや刺身用の魚を使う揚げ物など、素材にもこだわりが。「最近は、立ち呑み自体が少なくなっているという寂しさもありますね」とも、類さんは話す。

メニューのほとんどが2〜300円代。「安いけど、おいしいんですよ」と類さん(撮影=阿部ケンヤ)
類さん
類さん
立ち呑みは、一種の日本風のパブとも言える。顔見知りじゃない人と同じ空間を共有できる“パブリックな場所”なんですね。この賑わいの中で、知らない人同士がすぐ隣で呑むという独特の世界。ある意味健全な酒場なので、こういう店が無くなるのはほんとうに惜しい」
途中、居合わせたお客さんたちとの撮影大会がスタート! 店内で話しかけられた全員と記念撮影していました
するとなにやら、類さんに話しかけるヨシ江さん。この話の内容は、記事の最後で紹介

「若い人も、こういう場所を求めている時代」

もう一杯!

近ごろは閉店のニュース受け、18時を過ぎると階段に列ができることもしばしば。サラリーマンのほか、若者の顔も目立つ。

「列ができるなんて、それだけ惜しむ人が多いんですよ。それに、今は特にこういった場所が求められているんだろうね。若い女性にしたら冒険だと思うけど。日常にない酒場だからこそ、おもしろさがあるんじゃないかな」(類さん)

たびたび列ができるが、さすがは安くて早い『富士屋本店』。そう待たずに入れます(撮影=阿部ケンヤ)
平日の早い時間から満員の店内を見回しながら「やっぱりみんなお別れに来ているんですね」と感慨深げな類さん
類さん
類さん
「今まで大衆酒場にスポットを当てて、いろんなお店を巡ってきました。そういう意味では、ここは自分の古巣の一つ。なんとなく気楽に来られる、こういう場所があるのは有り難いことですよね」

「ここ『富士屋本店』をはじめ、大衆酒場自体が減っていくにつれ昭和の時代も遠のいていく。ひょっとしたらオリンピックや街の整備で、昭和のよき趣を残した酒場が一気に姿を消していく可能性もあります。ぜひ最後にこの味を体験して、こういう場所があったということを記憶しておいてほしいですね」(類さん)

この後もお客さんとの撮影大会は続きました。もちろん、お酒も続きます
ヨシ江さんが類さんに話しかけていたのは類さんにサインのお願いでした! 店内にも一枚も飾ってあるので、ぜひ見に訪れてください

取材メモ/類さんが来店すると「類さん!」「あっ、師匠!」と、みなさん驚いた様子! 撮影後も呑みは続きましたが、賑わいのなか、ゆったりとその様子を眺める類さんの横顔が印象的でした。当たり前だったそんな情景もあと2カ月ほどですね。呑んでいるとつい、いつまでも続いてほしいなと願ってしまいます。

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取材・文=金城和子、撮影=Yahoo!ライフマガジン編集部(一部除く)

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