「予備知識ゼロで見るべし!」ナイツに聞く浅草演芸の楽しみ方

「予備知識ゼロで見るべし!」ナイツに聞く浅草演芸の楽しみ方

2018/08/17

浅草といえば、渥美清、萩本欽一、ビートたけしなど、数々の大物を輩出した“お笑いの街”。寄席小屋では連日、落語に漫才、漫談、マジックなどの演芸が見られる。でも、どう見ればいいのかわからない方も多いはず。そこで今や浅草を代表する芸人であるナイツのおふたりに浅草演芸の楽しみ方を伺った。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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漫才協会の役員も務めるナイツが
浅草演芸の楽しみ方をレクチャー

テレビ、ラジオ出演などで多忙を極める中、年間約300本舞台に立っているナイツのおふたり。浅草だけでも『東洋館』と『浅草演芸ホール』の2館で月に10〜15日漫才を披露している。

はじめて浅草の舞台に立ったのは2002年。場所は『東洋館』。所属するマセキ芸能社社長の鶴のひと声がきっかけだった。以降、メキメキと頭角を表し、数々の賞を受賞。今では一般社団法人 漫才協会の副会長を塙さん、常務理事を土屋さんが務めるなど、浅草の演芸界ではなくてはならない存在になっている。

そんな“浅草の顔”といえるおふたりが、どんな楽しみ方を教えてくれるのだろうか!?

取材当日も東洋館で漫才を披露。おなじみの言い間違いネタで観客を笑いの渦に巻き込んだ
ナイツ

ナイツ

漫才師

ナイツ直伝! 浅草演芸&街を楽しむ3ヶ条

1.寄席は何も考えずに自由に楽しむべし!
2.この人が出ていたら絶対に観るべし!
3.浅草観光は空いている時間帯を狙って回るべし!

お話を伺ったのは、
都内唯一のいろもの寄席『東洋館』

『東洋館』。つくばエクスプレスの「浅草駅」A1出口からであれば、徒歩30秒!

浅草フランス座として、昭和26年(1951年)に開業。閉館、改装を繰り返し、平成12年(2000)年の元日から『東洋館』としてオープン。

漫才、漫談、コント、マジック、紙切り、曲芸、ものまねなど、落語以外の演芸を扱う都内唯一の“いろもの寄席”として毎日公演を行っている。ちなみに、落語は同施設内にある姉妹館『浅草演芸ホール』で連日公演している。

このエレベーターで、若かりし頃のビートたけしがエレベーターボーイを務めていた

1.何も考えずに自由に楽しむべし! ナイツ流浅草演芸の楽しみ方

では、早速ナイツのおふたりに質問。

ーーはじめて浅草で演芸を見るにあたって、どういうふうな見方・楽しみ方をすればいいでしょうか?

塙宣之
塙宣之
「『東洋館』は、12時から16時半までぶっ通しでやるので、そのまま観ていただければ。好きなように見てもらうのが一番良いと思いますね」
土屋伸之
土屋伸之
「そう、何も考えずに観たほうがいい。出演者の中に知らない人もいるでしょうから、自由に楽しんで観てもらうのがおすすめですね」
塙宣之
塙宣之
「僕、はじめて『東洋館』の舞台に立つ前に一度客として観に行ったんですよ。そのとき、すごく笑った記憶がありますね。

今は定番の同じネタをやる人はわかりますけど、初見で見ると、やっぱりすごくおもしろかった。特に浅草ははじめて見に来る方が毎回必ずいるので。舞台に立つ側からしたら、常連さんに『またこのネタか』と思われても同じことをやった方がいいときもありますね」
土屋伸之
土屋伸之
「落語が好きな人は、下の『浅草演芸ホール』に行って、前座さんからご覧になるといいですよ。

寄席ってネタ帳というその日に出た人のネタが書かれた台帳があるんです。後から出る師匠はそれを見てどのネタをやるか決めます。落語家さんたちは被りを避けて最後までやられるので、そのあたりも気にして最初から最後まで見るのもおすすめです」
おふたりの出番後、東洋館の楽屋にて話を伺った

おふたりが口を揃えておっしゃったのが、「自由に観てもらうのが一番」ということ。

自由でいうと、飲食。寄席によっては公演中の客席での飲食が可能だ。『東洋館』もご多分に漏れず。しかし、一生懸命ネタをやっているみなさんの前で食べるのは若干気が引ける。そこで質問。

ーーどこまで気にして飲食すればいいのでしょうか?

土屋伸之
土屋伸之
「まあ、ですね(笑)」
塙宣之
塙宣之
「客席の音ってめちゃくちゃ聞こえるんですよ。やる方からしたら気になりますけど、邪魔にならない程度ならOK。

ネタ中でもガチャガチャしているところと、聞かせるところがあるので、タイミングを見て、ここ!という場面ではおとなしくしていただけるとうれしいですね」
土屋伸之
土屋伸之
「ほかのお客さんもいるので、せっかく来ていただいて楽しんでもらえなかったらかわいそうなので気をつけてもらいたいです。

客席ってこっちからびっくりするくらい見えてるんですよ。でも、食べている行為はそんなに気になりません。自分がお客さんだったら一杯飲みながら観たいと思いますし。そういうのが楽しみで来ている人もいると思いますよ」
『東洋館』の名をもじった羊羹「東羊羹」(1個150円)。おみくじ付きで大吉が出れば、『東洋館』の御観覧券がもらえる!

2.この人が出ていたら絶対に観るべし! 浅草で見られるナイツおすすめの芸人

寄席での見方・楽しみ方に加えて、ナイツのおふたりに浅草で見られるおすすめの芸人さんを教えていただきました。まずはおふたりがおすすめする落語家さんから伺った。

塙さんおすすめの落語家:瀧川鯉昇さん
土屋さんおすすめの落語家:昔昔亭桃太郎さん

塙さんおすすめの瀧川鯉昇(たきがわ りしょう)さん(左)、土屋さんおすすめの昔昔亭桃太郎(せきせきてい ももたろう)さん(右)
塙宣之
塙宣之
「瀧川鯉昇師匠は、まず顔が抜群におもしろい(笑)。どんなに客席が騒いでいても、それにのっからず、ゆっくりした自分の間で話し始めるんですよ。内容も超おもしろい。落語の間を楽しむなら、鯉昇師匠!
土屋伸之
土屋伸之
「昔昔亭桃太郎師匠は、まくら(本題の前の小ばなし)からずっと冷静にぼやくんですよ。でも独特のかわいい喋り方をするので許せちゃう。それがすごくハマりますね。しかも、ロカビリーを踊り出したりして変なこともやる。見ていて、おもしろいと思いますよ」

オススメいただいたおふたりとも落語会の階級で一番上の「真打」に位置し、寄席でも最後に登場されることが多い。ぜひ『東洋館』と同じ施設内にある『浅草演芸ホール』で見ていただきたい。

さて、続いては漫才師をお聞きした。それぞれ2組挙げていただいた。

塙さんおすすめの漫才師:
宮田陽・昇、おちもり

塙さんおすすめの宮田陽・昇(みやたよう・しょう)さん。左が宮田陽さん、右が宮田昇さん
塙宣之
塙宣之
「僕たちより少し上ですが、ほぼ同世代。常に新しいネタを取り入れる時事ネタは、構成もしっかりしていておもしろい。15分があっという間に過ぎていきます。長尺の漫才を見るんだったら、宮田陽・昇さんを見ていただくといいかもしれないですね」

寄席のネタは基本10分、トリ・トリ前あたりは15分となっている。これだけの時間の漫才は、テレビではなかなか観られません。これも寄席ならではといえるでしょう。

塙さんオススメのおちもりさん。左が森佳樹さん、右が越智悠介さん
塙宣之
塙宣之
「今年、漫才協会主催の『漫才新人大賞』で優勝したコンビです。勢いもあるし、おもしろいし、このままスターになってほしい。まだまだネタの打率は低いですけど、毎回新しいネタに挑戦してるので、今からお客さんに見てもらって応援してもらいたいですね」

2012年にコンビを結成し、2016年に漫才協会に入会した若手。今から寄席で観ておけば、ブレイクしたときに自慢できること必至。よく覚えておきましょう。

続いて、土屋さんおすすめの漫才師さんをお聞かせください。

土屋さんおすすめの漫才師:
母心、オキシジェン

土屋さんおすすめの母心(ははごころ)さん。左が嶋川武秀さん、右が関あつしさん
土屋伸之
土屋伸之
「母心はツッコミの腕が抜群ですね。若手も師匠も含めて、漫才協会で一番上手いと思います。それをぜひ観に行ってほしい。ボケもすごくパワフルで、絶対にウケる。若手のなかで一番安定感があって、すべったところを見たことがないです」

2014年に『漫才新人大賞』で優勝したコンビで、現在は「漫才協会若手五つ星」というユニットとしてイベントも実施している注目株だ。

土屋さんおすすめのオキシジェンさん。左が三好博道さん、右が田中知史さん
土屋伸之
土屋伸之
「5、6年前に漫才協会に入ってから、これまでのネタを封印し、しゃべりだけの漫才になりました。『東洋館』で見てても、爆笑の数がすごく多い。漫才がどんどん上手くなってきたので、外から漫才協会に入ってよかったコンビのひと組だと思っています」

こちらも「漫才協会若手五つ星」の1組。前述の母心同様、新たな浅草のスターとなれるか注目しておいて損はありません。

今挙げていただいた芸人さんたちのように、一度だけでなく何度も観ているうちに、漫才の成長を実感できるのも寄席で観る楽しみ方のひとつといえるでしょう。

ーーでは、ネタを見るときにどういうところを見るとより楽しめるでしょうか?

土屋伸之
土屋伸之
「お客さんと劇場に合わせて、無意識のうちにテンポや声の張り方を変えてると思うので、そういうところを見るといいと思います」
塙宣之
塙宣之
「そうそう、『東洋館』で観てから違うところで同じ芸人さんを観るとまた違った見方ができると思いますよ」

なお、おすすめいただいた漫才師のみなさんを『東洋館』で観られるのは、毎月1日〜19日に行われる「漫才大行進」という寄席公演のみ。カレンダーをチェックしてお出かけを。

3.浅草を観光するなら、王道のコースでも空いている時間帯を狙って効率良く回るべし!

『東洋館』での浅草演芸の楽しみ方を教えていただいたところで、もうひとつ質問。

ーーせっかく浅草に来たのなら、観光もしたいのですが、どのように動けば浅草の街を満喫できるでしょうか?

塙宣之
塙宣之
「朝、浅草寺に行って、11時半に東洋館に来てもらって16時半に終わったら、花やしきへ行く。どこかで夜ご飯を食べて帰るのが、割といいコースじゃないですか」
土屋伸之
土屋伸之
仲見世通りが一番混んでるから、なるべく早く行くべき。午後に行ったらすごい人混みですから。花やしきは夕方の方が空いているし、その周り方が一番いいかもしれないですね」
塙宣之
塙宣之
「浅草は、朝早くからお客さんを受け入れる体制ができていますから。あと、夜に行くなら西浅草。『東洋館』から国際通りを挟んだ向こう側を指すんですけど、バーとかがあるんですよ。そういうところに行くのもいい。浅草はいろんなパターンで楽しめると思いますよ」
じっくりと言葉を選んで話してくださった塙さん

絶妙なコース設定に加えて、オシャレなエリアまで教えていただき、ありがとうございます!

ーーおふたりは、『東洋館』での初舞台から16年経ちますが、よく行く店はありますでしょうか?

塙宣之
塙宣之
「たまに師匠方に『翁そば』『水口食堂』に連れてもらってました。今もそこから行動範囲は変わっていないですね」
土屋伸之
土屋伸之
「観光地だから王道のところがオススメですね。たけしさんが行きつけにしていた『捕鯨船』に行くのはいいんじゃないですか。パッと見て空いてたら入っちゃった方がいいですよ」
塙宣之
塙宣之
「僕らにとって浅草は職場みたいな場所。オフィス街の感覚なんです。だから、そこでゆっくり食べないんですよ。浅草で美味しい店をよく聞かれますけど、ネットで調べて行ってくれと言ってますよ」
土屋伸之
土屋伸之
「もちろん、ヤホーでね(笑)」
テレビと同様、柔和な表情でお話くださった土屋さん

【さいごに】ふらっと暇つぶし感覚でお気軽に! 年中無休でやってるからまずは一回来てみて

寄席、芸人、街、魅力を存分に語っていただいたおふたりに、最後にもう一度楽しみ方をお聞きした。

塙宣之
塙宣之
「『東洋館』は16時半までと、そんなに遅くまでやっていないので、まずは一回来てもらえれば」
土屋伸之
土屋伸之
『東洋館』も『浅草演芸ホール』も年中無休。行けば絶対やってますから。ちょっと暇つぶしの気持ちでいいので、ふと空いたら、特に平日。比較的空いていますから、一回行ってみてほしいなと思いますね」
塙宣之
塙宣之
「ほかの演劇や映画だったら、2時間くらい観なければいけないじゃないですか。寄席は3、4時間あっても基本は10分刻み。コンビや芸人ごとにひとつの作品になっているから、そんなに疲れないんですよね」
土屋伸之
土屋伸之
「そう。それは映画ではなかなかできないこと。ハズレの作品だったら2時間地獄ですから(笑)」
塙宣之
塙宣之
「一回寄席に来て、自分なりの見方を見つけてもらえれば、楽しいんじゃないですか」
土屋伸之
土屋伸之
「最初にも言いましたけど、誰が出るかわからないで行くのが楽しいと思います。いつ行っても必ずお気に入りの人がひとりは見つかると思うので」
塙宣之
塙宣之
「お気に入りが見つかったら、今度はその人を見に来て、ここが前と違うな、成長したな、と観る。そういう人はいっぱいいらっしゃると思いますよ」
出番後のお疲れのところ、お話くださったナイツのおふたり、ありがとうございました!

ここまでナイツさんのお話を読むと、『東洋館』さんに行きたくなったはず! では、どのようにして入ればいいのか。

原則、チケットの予約は受けておらず、当日11時半から現地でチケットを販売。通常、大人が2500円、学生2000円、4歳以上の子どもが1000円。14時以降は割引もあるので、現地にてご確認を。

東洋館のロビー。お菓子やおつまみに加え、芸人さんのCDや書籍も販売している。自販機でジュースやビールも買える

チケットを購入したら、好きな席に座ればOK。全部で202席あり、満員の場合は立ち見での鑑賞も可能。実際、お盆時期だったこともあり、取材日も立ち見客が大勢いた。

後部の座席でも出演者との距離が近いのも寄席ならでは。ぜひ一度生でご覧あれ。

取材メモ/塙さんの多大な量のボケ、それに的確に突っ込んでいく土屋さんのツッコミ。10分が一瞬で過ぎ去っていったおふたりの漫才は圧巻でした。その後、失礼ながらはじめて観るコンビもいましたが、そちらもすごくおもしろかった。生で観られたのは少しでしたが、とても有意義な時間でした。またゆっくり観に行きたいなぁ。

取材・文=ナンバケン(リベルタ) 撮影=田中和弘

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Yahoo!ライフマガジン編集部

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