近年、カレーの多様化が進んでいる。そんな中、注目されているのが「スパイスカレー」なる新ジャンル。そこで今回は、音楽界のカレーキングこと小宮山雄飛さんと、カレー界の新星、モデル・村田倫子さんにスパイスカレーをテーマに語ってもらった。
Yahoo!ライフマガジン編集部
↑おふたりがオススメする東京のスパイスカレー3選はこちら
“外食カレー育ち”ד家カレー育ち”によるスパイス対談
欧風カレーにインドカレー、タイカレー、スリランカカレー…。ひとえにカレーといってもそのジャンルはさまざま。ところがここ3、4年、スパイスカレーがトレンドだというではないか…。一体全体どうしてこんな事態に? カレーを愛してやまないミュージシャンの小宮山雄飛さんと、モデルの村田倫子さんを直撃してみた。
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「スパイスカレーについて聞く前にお伺いしたいです。なんでまたカレーがお好きに?」
- 村田さん
- 村田さん
- 「私のカレー愛の始まりは、3~4年前。ある媒体でカレーの連載をすることになったのが、大きなきっかけなんです。元々好きは好きだったんですけど、“普通に好き”くらいのレベルで。連載を重ねるうちに、その奥深さにどんどんハマっていってまさにカレー沼状態(笑)。でもカレーのレジェンド・雄飛さんに比べたら私なんてひよっこですよ…」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「いやいやいや、とんでもない! 村田さんの連載でカレー動向を拝見したら、めちゃくちゃオシャレなお店に行っていますよね。まさにカレーのトレンドを押さえているし、これは “カレー界の新星”が来たなって感じがしてます。ここまで好きになる前、カレーとはどのようなお付き合いを?」
- 村田さん
- 村田さん
- 「私のカレー体験ってすっごく普通で、ハマる前まではお母さんが作ってくれたもの=私にとってのカレーの味。だから家で食べるものというイメージです」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「なるほど。僕の場合は、村田さんと真逆で、カレーが出ない家庭で育ったので、外食でしかカレーの味を知らない。食べ歩くようになったのは学生時代ですが、幼い頃からカレーといえば外で食べるものでした」
- 村田さん
- 村田さん
- 「なんてうらやましいカレー体験! 私は千葉の郊外で育ったっていうこともあって、大人になるまで外食で専門店に行くことなんてありませんでしたよ。子供の頃なんて、まわりに個人店が少なくって外食はいつもファミレス。とくにサイゼリヤにすぐに行きたがる家族でしたね(笑)」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「まぁ、サイゼリヤは最高だよね。千葉発祥だし、間違いない」
2人のカレー愛のルーツをたどってみると、家派と外食派と対極的だったことが判明。ただ入口は違えど、カレー談義が始まるとぱっと明るい表情になっていく2人。今回のスパイスカレーについて、どんな思いが交錯するか気になるところだ。
小宮山雄飛、誰よりも早くスパイスカレーブームの終焉を予見?
和気あいあいとした空気の中、繰り広げられる楽しいカレー談義。話は本題のスパイスカレーに。
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「さてさて。今回のテーマは最近巷でよく聞く『スパイスカレー』です。カレーってそもそもスパイスを使ってるわけですから、その定義が気になるところですが、調べてみたところそこまで明確な定義はないようで、小麦粉を使ったドロっとしたカレーではない、さらさらとしたもので、よりスパイスの存在感が際立つもの、というものを指すようです」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「数年前から大阪でトレンドの波が作られ、最近は東京にもその波がやってきているといった感じですよね。東京にはカレーの歴史を作ってきたというべき老舗店がたくさんありますが、大阪はそうでもなかった。そんな中で、間借りのカレー屋さんやヒッピー的な思想が持つ人がいる大阪で自然発生的に生まれたのがスパイスカレーですね。ワンプレート上でカレーをあいがけにしたり、副菜をのせたりしていて1皿で何度も楽しめておいしいのが特徴と言えるでしょうか」
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「なるほどなるほど。で、そのスパイスカレーについてですね……」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「ちょっと待ってください。いきなりこの企画に冷水をかけるようで恐縮ですが、僕の予想だとこの対談がスパイスカレーのトレンドを追った最後の記事になると思いますよ。ええ、ブームは間もなく終わります」
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「えぇ!(なんてこと言うんだ、この人は……) というかブーム終わるの早すぎませんか?」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「あっさりと終わりますねぇ。カレー道を突き詰めると香り。要はスパイスなんです。つまり、スパイスというものを使っていればカレーになるわけで、大元はスパイス料理なんですよ。なにが言いたいかというと、これを食べる人がカレーだと判断したらカレーになるんです」
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「はぁ、それはその通りだと思うんですが…そのこととブームの終わりとどう関係が…(汗)」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「あのですね、今、カレー界はとことんまでボーダレス化が進んでいるんですよ。言い換えれば、ものすごい多様化しているということ。そんな中で、『スパイスカレー』みたいにカレーをジャンル分けしている段階ではないんですよ! 今後カレーは、枠や概念に収まりきらない新しい料理になると確信しています! それがカレーの未来です(断言)」
- 村田さん
- 村田さん
- 「でも、それすごくわかります。カレーって知れば知るほど、自由な料理ですからね。そういうジャンルみたいなものはどんどんなくなっていくと思います」
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「そんな村田さんまで! で、その“カレーの未来”ってやつは、いつ来ますか?」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「まぁ、あと30年はかかりますね」
- ライフマガジン編集部
- ライフマガジン編集部
- 「長っ!(笑)」
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「それを考えると、このスパイスカレーブームもまだまだ続くかも(テヘペロ顔で)」
雄飛&村田コンビが推薦する 東京のスパイスカレーの名店を発表!
ということで、そろそろカレーを愛する2人がおすすめするスパイスカレーの名店を知りたいところ。しかし、2人にベスト3を決めてもらうべく事前にアンケートを取り、ふたりで9店のお店をピックアップしてもらったが、なんと1つもかぶらないではないか…。というわけで、喧嘩しないで話し合っていただき3店をセレクトしてもらうことに。
1軒目 旧ヤム邸 シモキタ荘(下北沢)
「東京でこの味を食べられるというのは嬉しい!」(雄飛さん)
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「スパイスカレーブームをけん引した大阪の店の、東京進出店ですね。純粋に、東京でこの味を食べられるという嬉しさがあります。味はもちろん、インテリアを含めお店の雰囲気も素敵です」
- 村田さん
- 村田さん
- 「そうなんです! ラムや海鮮とかキーマカレーの種類もユニークで、訪れる度に新しくて楽しい発見がありますよね」
2軒目 SPICE POST(代々木公園)
「カレーはこうでなきゃダメという固定概念にとらわれない店」(雄飛さん)
- 雄飛さん
- 雄飛さん
- 「元々和食をされていたご主人のお店。だからこそ、カレーはこうでなきゃダメといった固定概念にとらわれない。ただただおいしいを追求し、ご主人の料理のセンスをもってして作られたカレーはおいしくておもしろい。それにお客さんの声にこたえるがあまり、開店時間が早まるという姿勢も素晴らしいですね」
3軒目 ケララの風Ⅱ(大森)
「南インドのカレー文化を日本に持ち込んだ“パイオニア”の店」(村田さん)
- 村田さん
- 村田さん
- 「店主のお父さんは、南インドのカレー文化を日本に持ち込んだパイオニア的存在の人。ご夫婦でお店をやられていて、お邪魔するとずっとしゃべってくれるんですよ。アットホームな空間だけど、味は本場さながら。お客さんはインド人ばっかりで、あまりのおいしさにインド・ケララ州の地元紙に載るほど。大森まで行く価値が間違いなくあります!」
対談ではこの3店の他にも「spicy curry 魯珈」(大久保)、「FISH」(六本木)、「Bangera s Kitchen」(銀座イ)、「紅茶屋さん」(大宮)、「カレー スーパースター」(自由が丘)といったスパイスカレーの名店の名前が挙がった。
「今回はこの3店だったけど、その日の気分や体調によって行きたいお店が変わる。そこがスパイスカレーの魅力」だと、2人して口を揃える。向こう30年はトレンドが続いていく予定(?)なので、ぜひチェックしてもらいたい。
取材・文=船橋麻貴
撮影=野呂美帆(対談写真)
撮影=谷田貝一也、川村将貴(料理)