名古屋名物みそかつ「矢場とん」が地元民に愛され続けるワケ

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2018/10/05

名古屋名物みそかつ「矢場とん」が地元民に愛され続けるワケ

なごやめしの代表格、みそかつの矢場とん。しかし、2号店の誕⽣は意外にも遅く、創業から54年⽬の2001年。名古屋の名店が持つ物語とは⁉

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「名古屋名物みそかつ 矢場とん」とは

ビルの壁面には、矢場とんキャラクターの「ぶーちゃん」の姿が!

1947年(昭和22年)に名古屋・矢場町で創業した「矢場とん」。
オムライスなどの洋食を出す大衆食堂としてスタートしたが、店名は最初から「矢場町のとんかつ屋」を略した「矢場とん」だった。
数十年を経て、地元で愛される大衆食堂から全国的に知られるとんかつの名店になるとは、不思議な引き合わせである。

御神木は、樹齢300年以上といわれる木曽ヒノキ

矢場町本店には、2013年の式年遷宮の際に伊勢神宮から譲り受けた御神木が安置されている。もちろん、そう簡単に授かれるものではない。直接触れず、離れてお祈りするようにしよう。

矢場とんのみそかつは、唯一無二

秘伝のみそだれの製法を知っている職人は、わずか数名

みそだれがたっぷりかかっている矢場とんのみそかつだが、食べてみるとサラリとしていてコクがある。

「毎日飲んでも飽きない、みそ汁のようなみそだれ」

矢場とんのみそだれには、実はそんなコンセプトがあるのだ。
約1年半、熟成させた豆味噌に、豚ヒレのスジ肉で取るだしと素材も厳選。絶対にまねできないと、スタッフ一同が自信を持っている味である。

矢場町本店1階のカウンター上には、みそかつ発祥の物語が綴られている

みそかつのルーツは、戦後間もなくのころ矢場町界隈にあった屋台。豆味噌で作るどて煮の汁に串かつを浸す食べ方が自然発生的に流行し、大衆食堂だった矢場とんでも出すようになったのだそうだ。
矢場とんでは今もそのルーツにのっとり、「サラサラのみそだれをかつが浸るほどかける」というスタイルを守っている。

名店と呼ばれるまで 。
そして、100周年への想い

矢場町の人気食堂から全国区の人気とんかつ店へと変貌した矢場とん。そこには、紆余曲折の物語がある。

矢場とんの歴史と信念について語る安藤さん

話を聞かせてくれたのは、管理マネージャーの安藤英機さん。多忙をきわめる社長と現場を引退された女将さんからの信頼も厚い、矢場とん期待の星だ。

「鉄板とんかつ」(単品・1404円、定食・1836円)(画像提供:矢場とん)

ちなみに安藤さんのお気に入りメニューは、鉄板で焼けるキャベツとみそだれの香ばしさと、アツアツのリブロースを味わえる「鉄板とんかつ」だそう。

「ハレの日の外食」にふさわしい店に

矢場町本店2階には、昔の写真も展示されている

いまの⽮場とんの礎を築いたのは、1971年に嫁いできた現女将の鈴木純子さん(以後「女将さん」)さんだと言っても過言ではない。
サラリーマン家庭出身の女将さんは、男性客ばかりの嫁ぎ先を見て、
「外食はもっと特別なものであってほしい!」
「自信を持って女友達を呼べるお店であってほしい!」

という強い思いを持った。

大人気の「わらじとんかつ」専用のお皿

しかし、大衆食堂のスタイルに慣れている家族に女将さんの想いはうまく伝わらない。自分のお給料で買った瀬戸のお皿を、プラスチックのお皿の代わりに使って叱られることもあったそうだ。

パン粉も、みそだれとの相性を追求した専用の乾燥パン粉に変えた

高度経済成長期を経て時代が大きく変化するうち、大衆食堂・矢場とんの人気にかげりが見え始める。
その逆境で、食材の仕入先を変える、スタッフと密にかかわって職場環境を改善する、という努力を続けたのが女将さん。その甲斐あって、矢場とんは少しずつ女将さんが夢見たお店になっていった。

愛知万博で、ついに全国区に!

支援活動を行っているカンボジアでの鈴木純子さん(画像提供:矢場とん)

1980年代に先代女将からバトンを受け取った後も女将さんは経営努力を続け、矢場とん人気はさらに盤石に。
2001年には名古屋駅のエスカ地下街に初めての支店を出店、2005年の愛知万博で「なごやめし」の知名度が上がったのをきっかけに、「矢場とん」の名は全国に知られるようになった。

カンボジアとの縁、
人材育成も兼ねた支援活動

学校建設にとどまらない交流もある(画像提供:矢場とん)

実は矢場とんは、会社全体でカンボジアの支援活動を行っている。女将さんがカンボジアへ旅行した際に、学校へ行けない子どもたちを見かけたことがきっかけ。
それが心に残っていたため、2007年の60周年に「10年間でカンボジアに学校を5校建てる」というプロジェクトを打ち立てた。

スタッフが支援活動の実態を目にする研修旅行の機会もある(画像提供:矢場とん)

興味深いのはその資金の集め方。スタッフにとって支援が他人事にならないよう、「まかない一食ごとに100円支援する」という方法を採用したのだ。
これは、「食べ物を出す店としてスタッフを空腹にはさせない」という信念と、「食事に苦労しないのは当たり前ではないことを感じてもらう」という人材育成を兼ねた形だ。

矢場町本店には、カンボジア支援活動の記録が展示されている

プロジェクト達成後もまかないで100円という支援は続いており、女将さんの息子・拓将さんが社長となってからも「矢場とんは情でつながる会社である」という想いは変わっていない。

100周年を迎えるときに、どれだけ仲間がいるか

これは、スタッフに向けて拓将さんが繰り返し口にする台詞だという。
矢場とんを自分の仲間だと思ってくれるスタッフや取引先、お客さんをどれだけ増やせるか……挑戦は続く。

平日ランチも行列必至! 矢場とん

矢場とんは平日の昼間でもかなりの行列。公式サイトでは名古屋市内8店舗の行列時間を確認できるので参考にしよう。

看板メニューは、わらじとんかつ!

「わらじとんかつ」(単品・1296円、定食・1728円)

矢場とんの看板メニューは、串かつから一枚肉のロースとんかつ、そして「わらじとんかつ」へと変遷してきた。ロースとんかつの2倍ほどもあるビッグサイズで、とんかつ2枚ではなく大きな一枚肉であることで感動が大きくなる。

南九州産、冷凍していない生のロース肉なのでそのおいしさは間違いなし。平日でも、本店だけで1日500〜600枚は出るという人気ぶりだ。

お客さんの声から生まれる、矢場とんのメニュー

「みそかつ丼」(みそ汁付・1188円、みそ汁とキャベツ付・1296円)

「わらじとんかつ」も「鉄板とんかつ」も、お客さんの希望や提案から生まれたメニュー。
そしてこの「みそかつ丼」も、「ごはんの上にみそかつを乗せてほしい」という声から生まれたものだ。ごはんとみそかつという組み合わせは定食と同じなのに、丼も欲しいと思ってしまう気持ち、なぜかわかる気がする。

じっくり味わいたい、矢場とんのみそ汁

定食にすると、ごはんとみそ汁が付く。「みそ汁」の単品は162円

矢場とんのみそかつに添えられるみそ汁は赤だしではなく、白味噌だ。といっても関西風の西京味噌ではないので甘さは控えめ、そして味噌に負けないだしの風味。ハッとするほどのおいしさなので、みそ汁もしっかり味わいたい。

取材・文・撮影=一番ヶ瀬 絵梨子(日本プリコム)

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