「ダメでもともと」の「ダメヤ」のカレーに魅了されるワケ/福岡

「ダメでもともと」の「ダメヤ」のカレーに魅了されるワケ/福岡

2018/10/06

「みんな料理を求めて来ているから」と顔を出したがらない店主に行列必至のカレー店「ダメヤ」の軌跡を聞きました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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出したメニューは200種以上! “料理愛”があふれるインド式カレー

牛・豚・鶏の合挽き肉を使用する「トリプルキーマ」

ほぼ、当日にしか明かされない日替わりカレーを求めてランチタイムには開店前から長蛇の列。順番が回ってくると、店内に充満するスパイスの香りを感じながらカウンターの席に着きます。周りにはまだかまだかとワクワクした表情で座るお客さんたち。一口食べれば、誰もが幾手間もかかったカレーの虜になってしまうのです。

スパイスについて丁寧に説明してくれた店主・山本正勝さん

なんだか怪しい!? アパートの暗い路地の一番奥から漂うスパイスの香り

アパートの奥にある店は、まるで隠れ家のよう

スタイリッシュなカフェ、毎夜大にぎわいの居酒屋、料亭やイタリアンまでさまざまな飲食店が立ち並ぶ薬院駅。6分ほど歩けば「ダメヤ」の入ったアパート「新川コテージ」があります。一見怪しさ満載ですが、お昼時には行列がアパートの入口まで到達するほどの人気ぶりなのです。

黙々と奥でカレーを作る店主・山本さん

キッチンでひっそりと調理しているのが店主の山本正勝さんです。口数は少なく、時折、常連さんや知り合いと言葉を交わすくらい。初めて訪れた人にとっては少し「謎」な存在。もちろん、話しかけたら気さくに答えてくれるので怖がらなくて大丈夫です。

薬院店の外には「横入り禁止」や「食べログレビュアーお断り」の張り紙
店内には撮影禁止や会計時についてなど、店からのお願いが貼られている

ラーメンのスープをいちから作る! 料理少年あらわる

山本さんが料理に目覚めたのは中学生のときでした。料理教室に通う母が持っていた数々のレシピを見て心惹かれ、その興味はどんどん広がります。ただの趣味とは言い切れません。なんと中学生の時にラーメンをスープから作っていたそうなのです。

カレー店開店を志すきっかけとなった、今は無き東京のカレー店の、スプーンを扇状に並べるスタイルをオマージュしている

映画専門の大学を出た山本さんはカメラマンとして映像関係の仕事に就職したものの、自分の代わりがたくさんいる業界だと危機を感じていました。自分から映像をとったら何が残るのか。そう考えると、得意な料理しかもう道がなかった。

そこで、大学時代からスパイスに興味を持ち研究していたこともあり、北インド料理店のインド人シェフのもとで学びながら、福岡市早良区野芥でカレー店を開く決意をしました。

店主 山本さん
店主 山本さん
「マスコミや広告映像の仕事はユーザーと距離感があり、直接声を聞くことができません。飲食店だとお客さんの声がダイレクトに伝わってくるそれが最大の魅力だと思います」
山本さんは店名のロゴやオリジナルグッズのデザインも手がける

お客さんが来ない……通ってくれる人のためにカレー作りに徹するが

「多分、ダメだろう」と思ってつけた「ダメヤ」という店名。自信は全くありませんでした。実際に、開業から1年間は1日に訪れたお客さんは平均3〜4人ほど。店を成り立たせるのも大変なくらい悲惨な状況だったと山本さんは当時を振り返ります。しかし「味は裏切らない」と、それでも通ってくれるお客さんのために、日々、味の追求を続けました。

オープンから10カ月後の来客数ノートを見せてもらうと、本当に客足が少ないのがわかる

開業して1年後、ついにスランプが訪れます。日々、スパイスに囲まれ没頭するあまり、味のバランスがわからなくなってしまうのです。自分の作ったカレーがおいしいのかどうか、お客さんも味の変化に気づいているのではないかと自信を失います。山本さんは店を閉めてしまい、気が付くと真っ先に尊敬する大阪のカレー店へ向かっていました。

大阪の北浜駅近くで30年近く続くカレー店。その一皿を口にしたときに、山本さんの心に空いたいくつかの穴が埋まり、パワーが出てきたと言います。大ベテランの店主とは面識もありませんでしたが、気づけば悩みを打ち明けていました。

店内はカウンター席のみ

店主は気遣いから自家製のらっきょうを差し出しながら「私もしんどいときはあります。細かいことは気にせず前に進んでみたら少しは楽になりました。世の中には『鈍感力』という言葉があるみたいですよ。いい言葉ですよね」。それからその足で、修業先のインド料理店の師の元に向かった山本さんはさらなる技術を習得します。

復活! 心機一転でさらにカレー作りに精を出す

尊敬する大先輩やインド人の師の励ましに支えられ、1カ月後に店を再開します。とにかく自分の味を信じるしかないと心を新たにしました。来客が少なくても、繰り返し来てくれるお客さんが支えになっていたそうです。本当にカレー好きな人たちのためにカレーを出すことができれば満足だ。そう思って店を続けました。

満足してほしいという思いが強すぎて皿からあふれるスープキーマ

山本さんの情熱が伝わり、SNSでの告知、宣伝を全くせずに口コミだけで知名度が上がります。薬院に2店舗目を出店するに至りました。「食べに来てくれるお客さんのために」と、味のブラッシュアップや「食べること」に徹した空間作りを追求し続けた結果です。

15種類前後使用するスパイスの配合や食材の絶妙なバランス。じっくり時間をかけて開発し、長いときは12時間かけて作るカレーは、山本さんの思いがたっぷりと詰まっています

羊の脳を使った「シープブレインマサラ」

最後にカレーの魅力について聞いてみるとこんな答えが返ってきました。

「カレーに使えない食材ってあまりないんです。組み合わせ次第ですが、多種多様に考えられる。だからこの研究には終わりがないんです」(山本正勝さん)

ちょっと変わったカレーとして、羊の脳を使ったカレーやウニ入りカレーなどを出したこともあるそうです。山本さんは来てくれるカレー好きのために、今後も研究を続けます。

取材メモ/人気店に上り詰めるまでの苦労話は今まで話したことがないんですって! 丁寧に昔話を語ってくれた山本さん。スパイスや食材、すべて計算され尽くされたメニューには、そんな山本さんの繊細さが表れています。

取材・文・撮影=河野彩香(株式会社チカラ)

次週、10/13(土)は全国のカレー編 第5弾を掲載!

地元人が通う、一度は行きたいカレー店。第5弾は次週10/13(土)に紹介予定! お楽しみに‼︎

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