“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第63回は渋谷「ラ・コッポラ」。
犬養 裕美子
レストランジャーナリスト
飲んでつまんで、使い勝手のいい男イタリアン
1階から外階段を上っていくと、カウンターのバールがあり、奥がレストランになっている。バーで待ち合わせして食前酒を楽しみ、メンバーが揃ったらレストランへ移動するのがスマートだけど、バールだけでもレストランに直行でも OK。ちなみに バールでも料理を楽しめるし、奥のカウンター席で飲み専門の人もいる。コンパクトながら使い勝手がいいのがいい。
この青学西門通り周辺は南イタリア料理の大人気店「ドンチッチョ」をはじめ、イタリアンがひしめく激戦区。「ラ・コッポラ」は2016年9月にオープン以来、この店が着実にファンを掴んでいるの、そんな使い勝手の良さがあってこそ。
実はここ以前は「ドンチッチョ」が経営する岩手食材のうまいもの屋だった。訳あって休業していたところ、元「スカレッタ」のシェフだった筒井力丸シェフシェフが引き継ぎ、イタリアンとしてリニューアル。
お得意の中部から北のイタリア料理を中心に、これまたイタリア全土をカバーするワインと合わせて気楽なオステリア(食堂)、ヴィネリア(ワイン酒場)に。ボリュームがあるので、二人で一皿が目安です。お二人なら二皿にシェアしてお持ちします」って、やっぱりお客ファースト!
黒板メニューには、ストッキチー二(軽いつまみ)から、前菜、パスタ、セコンドまでギッシリ。ストッキチー二は自家製オイルサーディン、じゃがいものフリット各500円など。すぐに出てくるつまみ系なので数品オーダーしてウォーミングアップ。そこで筒井シェフの腕前がすぐにわかる。
リストランテの仕事がベースにあるので、香りや食感をいかすテクニックは鮮やか。ストウブの鉄鍋で焼き上げる黒毛和牛・肩三角の稲わら蒸し100g、2000円は、ダイナミックな塊肉に藁の香りをつけた香る料理。
筒井シェフはリストランテで料理をしてきた。そのため、どのテーブルが何を注文し、ワインは何を飲んでいるか把握しながら味を決めるという。塩を控えめに、というリクエストもありますね、美味しく長くしむための配慮も欠かさない。大人の日常イタリアンの条件だ。