オススメの料理やお肉の説明、素材の話はもちろんだが、実は話題のほとんどは「人」について?
Yahoo!ライフマガジン編集部
和牛のことをもっと知ってほしい、そんな想いがいっぱい詰まった店
かつて能登で親族が始めた焼肉屋で手伝いをしていた少年が大人になり、金沢の隣町で始めた「スタミナ軒」。使いやすさとクオリティの高さで10年来愛されている店。
今回紹介するのはその姉妹店「徳三」なのだから期待しても大丈夫。そんな軽い気持ちで取材に出向いたのだが……。
この店が愛されるポイントはそこだけじゃなかった!
- 店長 橋本さん
- 店長 橋本さん
- 「焼肉店は、自分たちにとってはコレしかない、唯一無二の存在。この仕事を『和牛道』『焼肉道』と捉え、その道を邁進したい。それが守らなくてはいけないものであり、務めなんです」
開口一番、このような言葉が出た。
- 橋本さん
- 橋本さん
- 「お客様には、肉のことをもっと分かってほしい。特に和牛のことを。なぜ美味しいか、なぜ体にいいか、ちゃんと理由があるんです」
等級はもちろん、牛の性別により品質に違いが出ることや、肉の部位の味が変わることなどを教えてくれた。特に輸入牛と国産牛の違いや、和牛のこと。ブランド牛の特徴などは専門家ならではの細かい視点が盛り込まれている。さすが牛のことなら聞いてくれ、というだけある。
この店長、熱血!
しかしよく話を聞いていると、どうやら単に知識が豊富なだけではなかった。周囲に対し、感謝の気持ちを普段から抱いている。人として美しい。
- 橋本さん
- 橋本さん
- 「生産者を敬う気持ちを決して忘れてはいけないです。いくらカッコいい店を作って、偉そうなことを言っても生産者の方が頑張って、いい食材を用意してくれなければ、自分たちは何もできないんです」
普段関わっているのは、通常よりも出荷まで日数をかけるような生産者が中心
栄養が行き届き、ストレスフリーな環境で育った牛でなければいい肉にはならない、ということを知っているのだ。畜産業の中でも、特に手間暇をかける生産者はその仕事が割に合わずやめていく人が多いという。
その苦労を徹底して守っている生産者がいる。だからお客様に提供する段階で手を抜いてはいけないのだ。
- 橋本さん
- 橋本さん
- 「牛をはじめとする生き物に命をもらって、自分たちが商売してるということを忘れてはいけないんです」
自信を持って勧めたいから、自分が買い付けにも携わり、納得できない場合は仕入れ先自体も探す
もちろん全てではないが、一頭買いも織り交ぜているとのこと。経営の視点ではデメリットもあるが、必要な部位を確実に入手できることや他の部位を無駄なく自由に使えることなどメリットも多いとか。
例えば店の人気メニューにカレーやハンバーグがある。これを作れるのは、自由に使える材料があるから。ロスなく最適な部位を最適な料理に使えることは大きなアドバンテージだ。
実際に食べてみれば驚く。言葉が適切ではないかもしれないが、専門店レベル。しかもお手頃価格。
- 橋本さん
- 橋本さん
- 「提供しているものに自信があります。だから、お客様が他の店に行っても、必ずといっていいほど戻ってきてくれます」
ふと頭に浮んだ下世話な疑問。「手頃な価格で提供しているお食事メニューで、お客様がおなかを膨らませると良くないのでは?」との問いを一蹴。
- 橋本さん
- 橋本さん
- 「美味しいものを食べてほしいんだから、用意できる一番いいものを用意する。それでお客様に喜んでいただけるならなんでもいい。お食事メニューかどうか、売れるか儲かるかなんて関係ない」
変なこと聞いてごめんなさい。
お店のルール(?)に「子供連れの方が最優先」。これには理由がある。親が食べたいものを食べてお酒を飲むのに子供が付き合わされて我慢させるようなことがあってはいけない、というのだ。
だからお店のスタッフは、どんなに忙しくても小さな子供の相手をしてくれる。店には洗浄消毒までしてあるオモチャが多数用意してある。でも、このルールは他のお客様にも守ってもらうよう協力を仰ぐ必要はなさそうだ。お店に来ているお客様はみんなもう分かっているから。
- 橋本さん
- 橋本さん
- 「先日のお客様の例をひとつ。お店のオープン以来の常連さんで、驚いたことに95歳。ここで焼肉を食べると体の調子がいいのだとか。だから定期的にいらっしゃいます」
家族にも勧め、一緒に来る。みんな上機嫌ということです。
「食」は「人を良くする」と書く
美味しいものを食べると嫌なことを忘れて頑張れる。店を訪れて最初に感じたことだが、スタッフ同士の距離感が非常に近い。単に仲がいい、というのとも少し違う。
よく見ていると、なんだかお客様もスタッフとの距離が近い気がする。来ているお客様は、家族連れはもちろん、仕事関係の人同士だったり、カップルだったりとさまざま。でも、それぞれの関係がとても良好な気がする。なんだそういうことか。食は人を良くする。
取材メモ/和牛のことをもっと知ってほしい、美味しいものを食べてほしい、お店でくつろいでほしい、そんな想いが詰まった店。
取材・文・撮影=otto
次週、11/10(土)は全国の焼肉編 第4弾を掲載!
地元人が通う、一度は行きたい焼肉店。次週11/10(土)は茨城、長野、三重などのこだわりの店主が営む焼肉店を紹介予定! お楽しみに‼︎