斬新なスイーツを作り上げるスターシェフの発想とデザインの原点

連載

My スイーツ メモリー

2018/10/30

斬新なスイーツを作り上げるスターシェフの発想とデザインの原点

人気シェフの原点とは。人生を学んだ一冊とは。作品はもちろん、スターシェフの人間的魅力を掘り下げる人気のリレー連載。2回目は繊細な技術と、男らしさを併せ持つ新進気鋭のシェフをご紹介します。

廣田祐典05

廣田祐典05

原点は母親と一緒に手作りしたあの懐かしいスイーツ

若い女性を中心に人気のパティスリー「オクシタニアル」。フランスの菓子をベースにしながらも、独創的なアイデアで宝物のようなスイーツを次々に生み出す気鋭のお店を牽引するのは中山和大シェフ。2007年に日本最大の洋菓子コンテスト「ジャパン・ケーキショー東京」で優勝の栄冠に輝き、それ以降も数々の大会で輝かしい実績を残すなど、日本洋菓子界の歴史に名を刻み続けるスターシェフです。前回の「デリーモ」江口シェフから熱い推薦を受けた中山氏が、「スイーツ」を志したきっかけを教えてもらいましょう。

中山和大

中山和大

オクシタニアル シェフ

水天宮前の近くに店を構えるオクシタニアルは

\推薦者・デリーモ江口和明さんからひとこと/

推薦者・デリーモ江口和明さんからのコメント
推薦者・デリーモ江口和明さんからのコメント
「賞をたくさん獲っている有名人&実力者ですが、趣味の筋トレ話ができる気のおけない仲間です。僕は尊敬の念を込めて『洋菓子界最後のジェダイ』と呼んでいます」

ーーお菓子作りを志したきっかけを教えてください。

中山シェフ
中山シェフ
「小さい頃に母親と一緒にするお菓子作りが楽しかったんですね。それが大きいのかな。食べ物に限らず昔から物を作るのは好きだったんです。実家は長野県の諏訪市でタクシー会社をやっていましたが、経営状態は明るくなかったんで、家を継ぐという選択肢はありませんでした」

中山シェフのスイーツメモリーは「牛乳寒天」

お母さんとよく作った牛乳寒天。諏訪市と隣町の茅野市は寒天作りが盛んで、棒寒天が安く手に入ったとか(写真はイメージです)
中山シェフ
中山シェフ
「兄弟もいたし、経済的には苦労しましたね。勉強に熱心な高校に通っていたんですが、受験優先の校風がだんだん嫌になってきてしまって。そんなときに息抜きでやっていたお菓子作りがとても楽しかったんです。学校で友達に配ると喜んでくれましたし」

高校卒業後に製菓学校へ進学した中山シェフ。当時は「仕事はコロコロ変えるものではない」という考えが一般的だったので、「製菓で一生食っていく」と覚悟を決めたうえでの進学でした。

そして始まった修行と、
師との出会い

中山シェフ
中山シェフ
「今からは想像がつかないかもしれませんが、昔は人見知りで人とろくに会話もできなかったんです。師匠からは『人付き合いをきちんとやらないとダメだ』と繰り返し言われましたね。職人は仕事で見せればいいと思っていたけどそれは違うんだって」
働き始めたの当時の1枚。まだ顔にも初々しさが残る

中山さんには師と呼べる存在がいます。それは、現在は「ラローズジャポネ」でシェフを務める五十嵐宏氏。五十嵐さんに憧れて同じ店に押しかけた中山シェフ。五十嵐さんがマンダリンオリエンタルへ移る際は、中山シェフも一緒に店を移ったように、そこには確かな師弟関係がありました。師匠との出会いは中山シェフに大きな影響を与えます。

「六本木のヒルズクラブの門を叩いたのも五十嵐さんと働きたかったから」
中山シェフ
中山シェフ
「憧れていた五十嵐シェフの下で働けるようになってからは、技術的な事よりも人間性を鍛えられましたね。たとえば落ちているゴミを見て見ぬふりしたらブッ飛ばされました(笑)」

例えば、人間は何かに集中すると周りが見えなくなることがあります。しかし、五十嵐氏はそんな中山シェフの様子を見て「それは何かに囚われて視野が狭くなっているだけ」だと一喝しました。

中山シェフ
中山シェフ
「材料の状態、スタッフの動き、調理器具の具合。お菓子作りにはいろんな要素があります。すべての状態を冷静に把握することが何よりも大事なんです」
清潔な店内と整然とした陳列。店内の隅々まで中山シェフの目が行き届いていることがわかります

デザインはデスクの上で
生まれるものではない

その後は名だたる賞を次々に獲得。順風満帆に見える中山シェフのキャリアですが、店を任されてからはこれまでと違う苦労も増えました。スタッフの管理はもちろん、シェフの頭を悩ませるのは新商品開発です。

中山シェフ
中山シェフ
「商品開発は本当に大変です。定期的に生み出さなくてはいけないのでね。でも、そこらへんのお店で買えるようなものは絶対に作りたくない。ここにしかないものを作りたい。オリジナリティを常に意識しています」
「毎日が産みの苦しみです(笑)」
中山シェフ
中山シェフ
「日々の生活の中で、新メニューのアイデアは常に探してますね。僕は何をしてててもお菓子のことを考えているんです。心の中にいつもお菓子作りがあるんでしょう」

輝かしい結果を残してきた中山シェフは、「どうやってデザインを思いつくのか」と聞かれることも多いといいます。

中山シェフ
中山シェフ
「デザインは考えるのもではないというのが僕の持論なんです。直感だったり、今まで生きてきたものの蓄積だったり、街を歩いていても目に入ったものからインスピレーションを得ることもある。デザインは机の上で生まれるのもではない。刺激を受けてこそ羽ばたくものなんです」
オクシタニアルを代表する「モラン」をはじめ美しくユニークなケーキが並ぶショーケース

人生の大事なことを
学んだあの漫画

中山シェフ
中山シェフ
「若い人には、本でも漫画でもいい、いろんな世界に出会ってほしい。僕が一番影響を受けた『カイジ』という漫画には人生の大事なととが詰まっていると思っています。『大人は大事なことを教えてくれない』とか、読みながら『そうだそうだ』って頷きました。僕も本当に大事なことは言わないです。自分で気づいてほしいから」
事あるごとに「カイジを読め」とスタッフに伝えているという中山シェフ

「漫画を読んだ方はわかると思うんですが、人生は勝たなきゃダメなんです。というと語弊があるかな。でも、勝つための努力をしなくてはいけない。読んでない人は、ぜひ手にとってほしいですね(笑)」

それではオクシタニアルの
看板メニューをいただきます

真ん中に見える「ショコラオランジュ」を作っていただきましょう

「ショコラオランジュ」はオクシタニアルの人気メニューの一つ。本物のオレンジと見紛うばかりの鮮やかなオレンジ色のコーティングの艶が印象的な作品です。

オレンジのムースとミルクチョコのムースでできたベースにオレンジ色のチョコレートを噴きつけ模様を作り出します
次にナパージュでみずみずしさと艶を出します。ナパージュとは砂糖とペクチンでできたジャム状の液体の艶出し材料のこと
中山シェフ
中山シェフ
「ナパージュするとベースに含まれているカカオバターが水分を弾くんですね。それによってキラキラした質感が表現でき、本物のオレンジのようなみずみずしさが出るんです」
最後にオレンジ色のチョコを貼り付けます
中山シェフ
中山シェフ
「僕が修行を始めた2000年代初頭は、ケーキの周りにチョコを貼る飾り付けが流行っていたんですが、田舎から出てきた僕にはそれが新鮮でカッコよく見えて好きだった。逆に最近はこういうのを見なくなったので面白いかなって」
「ショコラオランジュ」(486円・税別)の完成。オレンジの輪切りをイメージしたデザインが南仏を思わせます

オレンジのムースの甘酸っぱさと、その中から顔を出すミルクチョコのムースの優しい甘さが、口の中で一つになって奏でるハーモニーはまさに絶品の一言。軽い口当たりでいくらでも食べられそうです。


スイーツを作り続ける
意味とは

「技術的にはかなり不器用」と謙遜する中山シェフですが、「手先が器用じゃないから愚直に同じことを続けることができた。簡単にできたらすぐにやめていたかもしれない」と笑います。

中山シェフ
中山シェフ
「結論ね、負けず嫌いなんです。そして、どうせ作るなら自分らしさを出したい。それに尽きます。作品を見た瞬間に、『あ、中山のところのだ』と言ってもらえるようなものを作りたいんです」
「作品はその人の生き様。その人がどうやって生きてきたかそのもの」

ーー最後に今後の夢を教えてください。

中山シェフ
中山シェフ
「お金を稼ぐことも、有名になることも、どちらも僕にはピンとこないんです。男の成功とは何かって考えたときに、僕は社会に必要とされることなんじゃないかって思うんですね。現在、洋菓子連合会の技術指導員をやっているんですが、若い人材をもっと育てたいという使命がある。そのために必要とされるよう、これからも頑張りたいと思っています」
中山シェフの物語溢れるスイーツを求めて今日も多くのファンが訪れることでしょう
 
Yahoo!ロコオクシタニアル 東京本店
住所
東京都中央区日本橋蛎殻町1-39-7

地図を見る

アクセス
水天宮前駅[6]から徒歩約0分
人形町駅[A2]から徒歩約2分
人形町駅[A5]から徒歩約5分
電話
03-5645-3334
営業時間
月~日 10:00~19:00
定休日
毎年01月01日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

取材・文/キンマサタカ(パンダ舎)
撮影/原 幹和

この記事を書いたライター情報

廣田祐典05

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