犬養裕美子のお墨付き!今こそガツン派フレンチ「スクレ・サレ」

連載

犬養裕美子のアナログレストラン【Vol.41〜】

2018/11/30

犬養裕美子のお墨付き!今こそガツン派フレンチ「スクレ・サレ」

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第60回は新宿「スクレ・サレ」。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

蘇る王道のフレンチ。懐かしくてうれしい味!

荒木町にあったフレンチ「スクレ・サレ」が再開した、と風の便りに聞いた。

調べてみると、2012年7月に店を閉めてから5年近く、2017年4月に新宿御苑近くの、花園小学校北側にオープンしていた。

さっそく出かけてみると、店の様子が以前とはガラリと違う。四角いフロアにカウンター9席、テーブル10席。以前のように小ぶりのテーブルが並ぶというインテリアではない。シェフと対面で食事をするという濃いカウンター席もあるけれど、一人でひっそり食べたいという場合も利用しやすい壁向き席もある。

店名の「スクレ・サレ」の意味は「甘じょっぱい」。料理の基本だ
中西貞人シェフ。ちょっと強面のシェフだけど、料理の話になると自然に熱がこもる

そしてメニュー。コースは5名以上で予約の場合のみ5000円で用意してくれるが、基本はアラカルトだ。

「前の店は、値段も雰囲気もビストロ。だけど、料理はグランメゾンでやるようなテーブル取り分けのデクパージュをやっていた。誰もやらないことをやりたいってえいうのがうちのやり方だった」(中西貞人シェフ)

それが可能だったのはフランスで修業時期を共に過ごしたサービスの伊東さんがいたから。以前のスクレ・サレはその両輪があって走っていたが、伊東さんは病に倒れ、帰らぬ人となってしまう。

「今までどおり、というわけにはいかなくなって、少し充電期間が欲しくなって一旦店をクローズしました」(中西貞人シェフ)

以前から来てくれと声をかけてくれた店を手伝ったり、ホテルの厨房に入ったり。「オーナーシェフとして常に店のことを心配してきたけれど、店をやめたら気楽に働けるのが楽しくて、気が付いたら5年もたっていた。そろそろ自分の店を出さないと」と考えていたところ公園の前のいい物件に出会った。

花園小学校と靖国通りの間、花園東公園に面した場所。なんとなくパリ10区の雰囲気
中西シェフと菜摘子さん。菜摘子さんは当時フランスの大学に留学中。中西シェフ、伊東さんと同時期の“フランス仲間”だ

新しい店舗の中西さんご自慢の厨房は、一人で調理することを基本に考えて作られている。

「このコンベクションが二人分の働きをしてくれるんで助かるよ」

サービスは前の店でもいっしょにやってきた奥さまの菜摘子さん。(肉を切り分ける)デクパージュなしの、新しいビストロは2017年4月に二人でスタートさせた。

ていねいにきちんと書かれた黒板メニューは中西シェフの手書き

黒板に書かれたアラカルトメニューを上から下へ、ス~っと見ていく。リードヴォーのサラダ2,300円、お肉のテリーヌ1,500円、サーモンマリネの皮ガリ焼1,800円、お肉のオードブル盛り合わせ2600円…フランスのビストロ料理定番がズラリとならんでいる。

私は悩みに悩んでサラダ“リッシュ”2900円を選んだ。これなら、フォアグラのテリーヌ、砂肝、鴨の胸肉の燻製が少しずつ味わえるから。

サラダ“リッシュ” 2900円。フォアグラは極薄にカットされているので、口の中で、きれいに溶けていく。テリーヌと違う食感

メインはどうしよう。牛ほほ肉の赤ワイン煮3,500円、アンガス牛Lボーンステーキ4,000円、鴨もも肉のコンフィ2,700円…これもまたフランス料理を代表する基本メニューだ。

前菜が肉系だから、メインは魚料理も魅力的。しかし中西貞人シェフの顔を見ていると、やはり肉が浮かんでくる。骨付き仔羊のロースト3,200円でどうだ! 

中西シェフは「足りなかったら、食べてから追加すればいいから」とアドバイスしてくれるが、私にはわかっている。二人でシェアするにも手強い量だということを。

何しろ中西シェフは四谷「北島亭」の北島素幸シェフ門下の一番弟子。北島シェフの驚愕のボリュームが受け継がれているであろうことは間違いない。

骨付き仔羊のロースト3200円は、肉4本に付け合わせの野菜がたっぷり
仔牛肩バラの煮込み2,800円。ヌイユ(パスタ)ときのこも添えてあり、一皿で完結するごちそう料理

最近、ベテランシェフのレストランが移転したり、改装する話をよく聞く。そのほとんどが10年前後を一区切りとしている。自分のスタイルを貫いて新しいスタイルに変化していくのは自然なこと。それはその店ならではの個性が支持されているからこそ可能なのだ。いいレストランとは、そこに集まる人全員の宝物なのだと、つくづく思う。

スクレ・サレ

住所:東京都新宿区新宿1-24-7ルネ御苑プラザ1F
電話:03-6457-8664
営業時間:ランチ12:00~15:00(土・日のみ)、
ディナー18:00~23:00(月~土) 
休:月曜 

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

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犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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