東京のスーパー銭湯&日帰り温泉グルメがおいしく進化中!

東京のスーパー銭湯&日帰り温泉グルメがおいしく進化中!

2018/10/24

少し前までカレーに丼ぶりが定番だったスーパー銭湯&日帰り温泉グルメ。今はさらにレベルアップし、十割蕎麦や地場食材のブッフェなどを売りにする施設も増えている。中には会席料理を用意する施設も。温泉に詳しいライターと、味が評判の日帰り温泉の料理長が、首都圏の温泉グルメについて考察する。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

\こんなふうに、おいしく進化中!/
1.古民家で会席料理
2.料理人も腕をふるう
3.温泉旅館に近い味を
4.地場素材をおいしく提供
5.健康志向も取り入れて

\この2人に対談していただきました!/

東京・板橋の日帰り温泉施設「さやの湯処」の『お食事処 柿天舎(してんしゃ)』料理長・永田泰之さん(左)と、温泉と宿に詳しいライター・野添ちかこさん(右)

\ここで対談しました!/

東京・板橋「さやの湯処」。掛け流しの温泉だけでなく、古民家を再生した食事処「柿天舎」も人気
枯山水(かれさんすい)庭園に面した「柿天舎」の様子。名物は十割蕎麦だ

昔はあまり選択肢がなかった、スーパー銭湯&日帰り温泉の食事。それが今や、確実に手札が増えている。中でも特に、東京の日帰り温泉グルメを牽引していると呼び声の高い、板橋区「前野原温泉 さやの湯処」。温泉宿に詳しい野添ちかこさんと足を運び、永田泰之料理長と東京の温泉グルメについて語っていただいた。

野添ちかこさん。「柿天舎」には2室しかない個室(要予約)が対談の場

1.古民家で会席料理

野添さん
野添さん
東京の日帰り温泉とグルメと言われた時に、真っ先に閃いたのが『さやの湯処』さんでした。よく来訪しては、お湯に浸かって十割蕎麦をすすっています。せいろ630円とは思えないクオリティですよね。私の専門は地方の温泉宿の取材なのですが、古民家再生の先駆けともいわれる、建築家・降幡廣信(ふりはたひろのぶ)さんが手がけたお宿は素敵なところが多いです。こちら『柿天舎』(してんしゃ)さんの建物も、降幡さんの手によるものですよね」
「柿天舎」の蕎麦の産地を示す館内の表示板
永田さん
永田さん
「はい、その通りです。実はここはオーナーの生家で、しばらく使われていなかったんです。この場所で日帰り温泉施設を開業するとき、食事処として再生することになりました。『さやの湯処』というと、源泉掛け流しと、食事処の和の空間、蕎麦という印象が強いんですが、『柿天舎』の料理はここ数年、より進化を遂げています」
和食店で修行を積み、『柿天舎』では料理長を務める永田さん
野添さん
野添さん
「まだ進化の最中なのですか? ちなみに永田さんは、いつからこちらの料理長に?」
永田さん
永田さん
「3年前からです。その頃にはもう、うちの十割蕎麦は完成していました。しかし2005年のオープンの頃は、カレーやおにぎりに凝ったり、夜限定でラーメンや冷やし中華を出したり、試行錯誤の連続だったそうです。何年もかけて、十割蕎麦を名物にすることができました」
6000円の会席コースから刺身、前菜、天ぷらと蕎麦。会席コースは要個室予約、個室でのみオーダー可能
野添さん
野添さん
「そういえば、伺う前に会席コースにも力を入れておられることを知りました。ずっと前から、メニュー化されていたのですか?」
永田さん
永田さん
「いえ、個室を増築した6年前から。そこから『柿天舎』の進化が始まります。『さやの湯処』のコンセプトは『ほ~っと和の気分』なので、旬の食材を使用した会席料理を始めました。実は私が来るまでは、通常の海鮮メニューはネギトロ丼とカツオのタタキしかなかったのです。しかし今では、刺身5種盛りも出せるように。料理人は私を含め5人います」
6000円の会席コースから。この日の刺身は平目、海老、秋鮭、鮪中トロ。毎朝、旬の鮮魚を豊洲の新市場から仕入れる

2.料理人も腕をふるう

野添さん
野添さん
「そうなんですか! 料理人が5人も。一般的にスーパー銭湯や日帰り入浴施設の場合、郊外の温泉宿とは違い価格を抑えなくてはならないから、プロの料理人がいるイメージがありません。こちらは和食の料理人がいるから、料理がおいしいのですね。また、蕎麦も『挽きたて、打ちたて、茹でたて』が信条と聞いています。全てを料理人がやるのは難しいと思うのですが、どのように質をキープされているのですか?」
枯山水庭園をバックに対談は続く
永田さん
永田さん
「近隣から勤めるパート従業員が40人ほどいます。大半は勤続年数が長く、また家庭の主婦も多いので、包丁も使い慣れている。もちろん会席料理は、肝となる白だしをひくところから料理人が行いますが、逆に一般のお客さまへの調理はパートスタッフが的確に対応するので、こちらもコースに集中できます。すごく頼りになる存在なんです」
6000円の会席コースから、11月の前菜。左奥から時計回りに、柿と茸の胡桃和え、吹き寄せ揚げ、丸十、林檎と酢〆小肌の市松、いくら霙和え、長芋豆腐
野添さん
野添さん
「お蕎麦は、どなたが担当なのですか? 料理人の方?」
永田さん
永田さん
「料理人ではないですが、長く蕎麦打ちを担当している専門のスタッフがいます。近くの業者さんが玄蕎麦(げんそば)を石臼(いしうす)で挽きぐるみ(蕎麦の実を取り分けないで、三番粉まで挽き込む)にして、毎朝持ってきてくれるのですが、それを即、水回しして、手でこねます。延し(のし)から先の工程は機械ですが、できた蕎麦は必ず6時間以内に提供します。1日200食以上は出るので、朝、夕、夜の3回仕込む。だからうちは蕎麦が品切れしたことはないんです」
6000円の会席コースの蕎麦は「柿天舎」で一般向けに出しているものと同じ十割蕎麦
野添さん
野添さん
「蕎麦屋は基本、売り切れ終いの商売ですが、こちらではいつ来ても食べられるというわけですね。手間を省くところは省いているから、せいろ630円で提供できるんですね。スーパー銭湯や日帰り温泉の場合、一旦入場したら途中で外出できないため、価格を高めに設定する施設も見受けられます。『さやの湯処』さんは、かなり良心的ですね」
永田さん
永田さん
「うちはかえしも自家製ですし、天ぷらも揚げたてです。メニューも季節ごと年に4回、大きく入れ替わるので、いろいろ食べられて嬉しいと、お客さまにも喜んでいただいています。趣のある古民家の空間にふさわしいよう、季節の移ろいを大切にして料理に向き合いたいと思っています」
枯山水の苔(こけ)庭。全国から集めた銘石を配している

3.温泉旅館に近い味を

野添さん
野添さん
「なるほど、四季の変化を盛り込みたいという思いの結晶が、会席コースなんですね。ちなみにお客さんの反応はいかがですか?」
永田さん
永田さん
「個人のお客様は法事や記念日に、また、企業さまの宴会にも利用いただいています。入館料も頂戴しているので、入浴もしていただけます。都内にいながら、加水なし、薬剤なしの源泉掛け流し天然温泉に浸かって、古民家で会席料理も食べられる。『東京にいながら、郊外の温泉に出掛けたみたい』と仰る方もいます」
永田料理長は40名以上のスタッフを統率する
野添さん
野添さん
「私も『さやの湯処』さんは、そこを目指しているのかな、と考えていました。天然温泉に入って、古民家で庭を眺め、蕎麦をすする。それだけで 郊外の宿に出掛けた気持ちになる方もいるでしょう。温泉入浴も魅力的だけど、この空間で食事したいという動機だけで訪れる方も多いはず」
庭の手入れの担当者が摘み取った草木を前菜などに飾りで添えている
永田さん
永田さん
「そうなんです。郊外まで足を運ばなくとも、温泉で一泊したような気持ちになっていただきたいというのが我々の願いです。『柿天舎』の大広間を利用している一般のお客さんにも、そんなふうに感じていただきたい。加えて要予約の会席料理を通して、もっとくつろげる空間を提供したいと考えています」
「柿天舎」の大広間。営業中は湯上がりに庭を見ながら、蕎麦や酒を楽しむ人でにぎわう
野添さん
野添さん
「素晴らしいですね。東京の日帰り温泉やスーパー銭湯でも、永田さんのような料理人がどんどん増えていくと嬉しいです。気軽にお湯に浸かりに立ち寄れて、しかもおいしい食事ができる。そんな場所が、もっと増えて欲しいですね」

4.地場素材をおいしく提供

話題は、東京の日帰り温泉&スーパー銭湯全体の食の話へ
永田さん
永田さん
「ところで私も仕事上、『あそこは料理がおいしいらしい』と耳にした日帰り温泉やスーパー銭湯には、足を運ぶようにしています。全国の温泉を取材しておられる野添さんから見たら、今の東京の日帰り温泉&スーパー銭湯の食事には、どのような面白さがありますか?」
千葉県舞浜にある「SPA&HOTEL舞浜ユーラシア」のレストラン「オーキッド」の「産直野菜のグリル焼き 冷たいバーニャカウダソース」842円
野添さん
野添さん
「地方の温泉宿だと、食事の楽しみは地場の名産品です。最近は千葉や埼玉など首都圏の日帰り温泉やスパ施設でも、地元の素材をアピールする施設が増えてきました。千葉・舞浜の『SPA&HOTEL 舞浜ユーラシア』のレストラン『オーキッド』では、南房総で揚がった鮮魚の刺身、県内の契約農家から届いた新鮮野菜を提供。卵も九十九里のものを使用しています」
こちらも「オーキッド」の「館山漁港鮮魚と漁師なめろうの贅沢盛合せ(2〜3人前)」2700円
永田さん
永田さん
「うちは板橋区に立地しているので、例えば地場の魚を使いたいと思っても、なかなか難しい。その土地ならではのおいしさを盛り込んで料理を提供できるのは、日帰り温泉やスーパー銭湯にとっても強みになりますね」
レストラン 「オーキッド」は本館5階にある
野添さん
野添さん
「また埼玉の『杉戸天然温泉 雅楽(うた)の湯』も、ブッフェレストラン『irodori(イロドリ)』で、地元・杉戸町産のお米や野菜を使っています。カボチャのプリンなどのスイーツもあって、特に女性に好評。地元の料理上手なお母さんたちが調理したかのような、手作り感ある味わいもいいです」
こちらは「SPA&HOTEL 舞浜ユーラシア」の天然温泉の露天風呂

東京ディズニーリゾート近くに立地する「SPA&HOTEL 舞浜ユーラシア」。地下1700mから湧き出る天然温泉に、スパも兼ね備え、もちろん日帰り利用も可能だ。レストラン「オーキッド」には千葉県産食材を使ったメニューも多く、県産のブランド牛「里見伏姫牛(さとみふせひめぎゅう)」を使った一品や、南房総から届く魚のなめろう、さんが焼きなど千葉の郷土料理もある。地酒も充実している。

「SPA&HOTEL舞浜ユーラシア」は「東京ディズニーリゾートの近くにある

5.健康志向も取り入れて

「綱島源泉 湯けむりの庄」の健康増進丼御膳1080円(税抜)。納豆やオクラなどが、ご飯の上にこんもりと
野添さん
野添さん
「あとは昨今の健康志向が、日帰り温泉やスーパー銭湯のメニューにも表れています。神奈川の綱島や宮前平(みやまえだいら)にある『湯けむりの庄(しょう)』では、豆乳、にがりで作った自家製豆冨や『健康増進丼御膳』などのヘルシーメニューが。また秋はサンマやカボチャ、柿など季節の食材を使ったメニューも登場します」
「綱島源泉 湯けむりの庄」の露天風呂。「炭酸琥珀湯®」は美肌効果があるとされる
永田さん
永田さん
旬の食材は栄養価が高いことも多いので、理に適っていますね。加えて野添さん曰く、メニュー名も凝っているということなので、見た目も含め、僕も参考にさせていただきます」
こちらも「綱島源泉 湯けむりの庄」でいただける「マグロとアボカドの菜園丼~本日の健康米使用~」1080円(税抜)

「綱島源泉 湯けむりの庄」には、源泉かけ流しの岩風呂、スチーム塩サウナ、岩盤浴などがそろう。医療分野でも活用される「中空糸膜」を通して天然温泉に炭酸ガスを溶かしこんだ「炭酸琥珀湯®」は、炭酸浴で美肌効果が得られると評判。また食事処「心音(ここね)」は、作りたての味わいをライブ感覚で楽しめるショーキッチン。自慢の釜戸でふっくらと炊き上げたご飯、自家製豆冨も人気だ。

神奈川県横浜市・綱島は昔から温泉が湧く土地。周辺にも日帰り温泉が点在する
永田さん
永田さん
「こうして見ると、各施設とも、創意工夫を重ねておられますね」
野添さん
野添さん
「はい、近場の日帰り温泉のおいしい進化は、嬉しい限りです」
永田さん
永田さん
「私も負けないよう、頑張らねば」
野添さん
野添さん
「そうですね。四季折々のお料理を、これからも楽しみにしております」
東京のスーパー銭湯&日帰り温泉のグルメを総括する対談。2人ともおつかれさまでした!

取材メモ/以前は「いい湯に浸かりたいな」と思って日帰り温泉に行っていたけど、いつしか「湯上がりに、あそこで蕎麦をすすりたいから、スパ銭に行こう」とも考えるようになった。やっぱり食事がおいしくなっているからかと、取材を通して自分の心変わりに納得した次第です。

取材・文=岡野孝次/撮影=原 幹和(「さやの湯処」撮影分のみ)

「東京の温泉」特集はこちらもチェック

\まだまだ温泉&スパ銭気分なあなた/

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

おすすめのコンテンツ

連載