精神科医は新宿のニュースポットに、<br />
よりあい所の良さを見た

連載

星野概念のめし場の処方箋【Vol.21〜】

2018/10/30

精神科医は新宿のニュースポットに、
よりあい所の良さを見た

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

星野 概念

星野 概念

精神科医

さまざまな人に開かれた「曖昧な場所」ってこれからもっと必要だと思います

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

ポケモンgoをやりながら新宿を歩いていたら、見たことないオシャレなスポットでビュッフェをすることに。そこで見た光景が素敵で、なぜか、よりあい所の良さを見出した気になりました。今回はそんな話です。

  

【目次】
1.ポケモンgoからオシャレビュッフェへgo
2.よりあい所が必要だと思う


1.ポケモンgoからオシャレビュッフェへgo

・ポケモンgo、おもしろい

遅すぎにも程があると言われそうですが、ポケモンgoにめちゃめちゃハマっています。

  

街中で携帯を見つめながら、ちっちゃい手裏剣を投げるような動作をする人を時折見かけて、この人たちは何をしているのだろうと思っていましたが、あれはポケモンをつかまえるためのボールを投げていたんですね。

あまりゲームをやらないので相対的には分かりませんが、本当によく作られたゲームです。

・レイドバトルついでに公園散歩

ポケモンgoの良いところはたくさん歩くことだと思います。

   

歩いていて、ポケストップを回すと、ここにこんなものがあったのか、と驚くことも少なくありません。

  

その日も大きめのバトルが新宿中央公園の近くで行われていたので、新宿駅から10分強歩き、お昼のバトルに参加しました。

バトル後は達成感とともに公園内を散歩。

・NEW CITY HOTELがない!

新宿中央公園のあたりはなんとなく好きで時々散歩します。

中沢新一『アースダイバー』で、新宿中央公園に隣接する十二社熊野神社をつくった鈴木九郎の娘が大蛇になり、あたりが池になった、

  

なんて話を妙に覚えていて、この辺りはかつて湿地帯だったのかもしれないなぁなんて思いを馳せながら歩くのです。

  
  
  
  

意味不明! と思うかもしれませんが、僕のささやかな趣味です。

そして今はポケモンgoが大きな趣味です。

新宿方面から歩いて、新宿中央公園を抜けると十二社(じゅうにそう)通り。そこを隔てたところにある、古びてノスタルジックな感じがするNEW CITY HOTELも好きな場所の一つでした。

その日も、眺めて帰ろうとしたら……

  

ない!!

  

NEW CITY HOTELがなくなって、なんだかオシャレな内装に様変わりしています。

  

・生まれ変わったNEW CITY HOTEL

そこは

THE KNOT TOKYO Shinjuku

という名前に変わっていました。

少し中に入ってみると、ベーカリー、数種類の紅茶が飲めるティースタンド、作業がものすごく進みそうな電源付きの長机、なんだかオシャレな絵画、そしてレストランがありました。

聞いてみると、レストランでのランチはビュッフェスタイル。

先ほどのアースダイバーの湿地帯の感じは全然ありませんが、ビュッフェなんて超楽しそう!

  
  

思いつきでビュッフェに飛び込んでみることにしました。

・ビュッフェ、すごく良い

もう!

店内は広いし、オープンテラスになっていて新宿中央公園の緑を楽しめるし、出されている食事もオシャレで面白い。

急にどうしちゃったんだ、NEW CITY HOTEL!!

  

なんだか、歴史とかに詳しくて、物静かだけどいい奴という感じだった人が、夏休みあけたら急にオシャレになっていて、
「いやぁポートランドに行ってきてさ」
とか言われた気分。

特に、ハムやローストビーフの種類が充実していたり、パンが何種類もあって、バルミューダで焼けるのでやたら美味しかったのが印象に残りました。

他に、サラダも充実しているし、デザートの種類も豊富で楽しかったです。

それから、同じフロアのティースタンドから、確か8種類ほどの茶葉の紅茶をどんどんいれてくれたりしてもうお腹いっぱい胸いっぱい。

・お客さんもいろいろ

こんなオシャレなスポットなので、オシャレな人たちで溢れた、ものすごく入りにくい場所かと思ったのですが、そこまで極端ではなく、僕としては居心地もとても良かったです。

西新宿地区って、元々は湿地帯だったこともあり、色々な人が住んでいる印象です。

  

それに加えて、この場所はホテルでもあるので、外国から来た方々もいる。

そのせいか、店内はものすごくオシャレですが、場としては、様々な人に対して開かれている印象でした。

  

一人で食べにきて、そのままくつろいだり、作業をしたりする人。

楽しそうに食事する、ママさんたちの集まりと思われる女性たち。

アジア系の外国のご夫婦。

カップル。

友達数人で遊びに来ている若者たち。

などなど。

スタッフの方々も気さく、且つ、丁寧で、それぞれのお客に合わせた対応をしていたように見えました。

・最も記憶に残った姿

そんな中で最も記憶に残ったのは、シルバーカーを使いながら歩行するご婦人が一人で来ていたことでした。

  

あんなオシャレな空間にシルバーカーが置かれている光景を、僕は初めて見ました。

この場合、スタッフの方がビュッフェのサポートをするのは想像できますよね。

でも、そのご婦人が食事中、または食後、頻繁にスタッフさんと談笑しているのです。しかもこの談笑は20分くらいに及んでいます。

どちらが話しかけたのか、とか、何を話していたのかまでは分かりませんが、二人ともとても楽しそうに見えました。

これらは全て僕の受けた印象なので、勝手に良い話にしているだけかもしれませんが、なんだかほっこりした気分になり、とても心地よかったのです。

  

2.よりあい所が必要だと思う

僕は今回、ランチビュッフェを食べながら、人々の地域でのふれあいについて考えていました。

  

例えば近年、精神医療は、これまでの精神科病院への長期入院をやむなくされていた方々も含めて、施設内ではなく地域で一緒に暮らしていけるようにしようという流れになっています。

これだけ書くと当たり前のことのようですが、ここには深い歴史があり、日本の精神医療もやっとこういった流れになったという感じなのです。

・地域で暮らすために必要なこと

施設内ではなく地域で暮らす場合、何が大切かというと、恐らく居場所ではないでしょうか。

家族がいる、とか、仕事がある、などのことが心の居場所になることは間違いないので、それらは様々な方向から考えられています。

・なんとなく居られる場所

それと同じように、物理的になんとなく居られる場所があるといいのかもしれないとも思います。

これは精神医療の対象になる方だけではなく、全ての人にとってです。

昔と比べて、将棋とか囲碁の会館なども見かけることが少なくなったような気がします。

  
  

誰でも入りやすい開かれた場所って、つくるのがなかなか難しいのだと思います。

その場所には何もなくてもいいけど、何かがないと場所が成立しない。

  

会員制のような所があってももちろんいいけど、もっと出入り自由な雰囲気をまとうのって、場所を無償で開放するようなものだから簡単には実現させられないのかもしれません。

でも、今回、
THE KNOT TOKYO Shinjukuでその片鱗を見たような気がします。

こういう、ある意味曖昧な場所がもっと増えれば良いのにと思いました。全てがオシャレである必要もなく、本当によりあい所という趣の場所があっても素敵です。

  

きっと、出来たばかりの
THE KNOT TOKYO Shinjukuは、これから様々なメディアで取り上げられるでしょう。あれだけオシャレですから、イケてるスペースという紹介のされ方を多くすると思うのですが、それとは別に、今回垣間見たよりあい所のような感じが培われ続けて欲しいと願います。

そしてそんな願いをこめて、ポケモン達と一緒にまた行きたいと思います。

  
  
  
  
  
  

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

星野概念(ほしのがいねん)

精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

権田直博(ごんだなおひろ)

画家

Yahoo!ロコTHE KNOT TOKYO Shinjuku
住所
東京都新宿区西新宿4-31-1

地図を見る

アクセス
都庁前駅[A5]から徒歩約5分
西新宿五丁目駅[A1]から徒歩約6分
新宿駅[7(都営線)]から徒歩約11分
電話
03-3375-6511
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

この記事を書いたライター情報

星野 概念

星野 概念

精神科医

総合病院に勤務し、日々精神医療に従事する傍ら、執筆や音楽活動を行う。

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