“アナログレストラン”とは犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地の良い空間とサービスが楽しめ、かつ良心的な値段。つまり人の手と手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第6回は神泉「かしわビストロ バンバン」。
犬養 裕美子
レストランジャーナリスト
鶏料理とワインで、バンバン盛り上がる!
渋谷駅のお隣り、井の頭線神泉駅といえば、かつてラブホテル街と言われた円山町のど真ん中にある。ここ数年、渋谷駅再開発の影響で飲食店も急増し、街の雰囲気はガラリと変わった。といっても駅の北側は、未だに “なんとな~く怪しげな空気”が漂っている。
駅から約1分、あえてこんな人気のない方向に歩を進めると、この店は現れる。半地下のテラス席も店内もワイワイとにかく大賑わい。「かしわビストロ バンバン」はやけにテンションの高い穴場なのだ。
オーナーシェフ高城直弥さん(35歳)は10年ほど前、世田谷代田で立ち飲み「世田谷バル」を開いてバルブームの火つけ役となった。
2010年には渋谷・桜丘に「リゾットカレースタンダード」(リゾットカレーとは、イタリアンとカレーをフュージョンした高城さんのオリジナル)をオープン。
料理もワインもほとんどが525円均一、ボトルは2500円均一。独自のおもてなしで大人気となった。2014年4月にオープンした「バンバン」はその発展形。高城さんの生まれ故郷・滋賀県高島市の近江黒鶏を使った鶏料理とワインが売りの店だ。
安いだけじゃない、質の良い素材が大人に受ける
名物の地鶏のかしわ焼き(たれ)880円は、近江黒鶏を秘伝のタレに漬け込んで、おいしさを引きだしてから炒める一品。
漬け込むことで肉がやわらかくなり、炒めることで香ばしい香りも楽しめる。かみしめると、甘じょっぱいタレと肉の旨味がなんとも懐かしい味が広がる。もちろんワインによく合うが、ハイボールにもぴったり。
「うちの角ハイは生のレモンたっぷり使うんで、女性の方に人気ありますね」(高城さん)
ジョッキ450円だが2倍の大きさの大ジョッキはプラス250円の700円。どうも、この店にくると食べすぎ、飲みすぎてしまう…。といっても一人4000円もあれば十分と財布にも優しい。リピート率高いのも納得できる。