他店にはないうまさの活アナゴ。冬は「しゃぶしゃぶ」で/福島

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【特集・第2回】地元人が推薦! グルメ甲子園 〜 鍋 編 〜

2018/12/30

他店にはないうまさの活アナゴ。冬は「しゃぶしゃぶ」で/福島

初めて店を持つことになった時、「他店にない料理を」と考えた。試行錯誤の末にいきついたのがアナゴ料理だったという店主に話を伺った。(「シティ情報ふくしま」)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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切り身の食感はさながらフグ。口の中に脂のうまみがじゅわっと広がる

開店から27年がたつ。JRA福島競馬場の職員たちが、開店当時この店の存在を口コミで広めてくれた。休日は、森藤さんも「少しだけ」競馬を楽しむと言う

JR福島駅東口から徒歩5分。繁華街に暖簾をかかげる「森ふじ」は、森藤(もりとう)勉さんが1人で切り盛りする店だ。

外からは店内の様子が分からないので、初めて入る人は少し勇気がいるかもしれない。15歳から割烹料理店で修業を積み、33歳で自分の店を持った森藤さん。少しでも言葉をかわすと、おだやかな語り口に心がなごむ。

「穴子しゃぶしゃぶ」の注文は3人前から受け付ける(1人前1800円)

寒くなってくると「穴子しゃぶしゃぶ」の注文が増える。骨でだしをとった熱々のスープに身をくぐらせると、すぐにふわっと白くなる。つけダレはポン酢で。白身魚らしい淡白な味わいながら、脂ののったうまみが口の中に広がる。新鮮な切り身なので、このまま刺身として味わうことも可能だ。肝まで味わえる楽しみは、活アナゴならでは。

身をさばいても動くのをやめないアナゴの生命力

活アナゴを毎日とりよせ、開店前に下ごしらえする。東日本大震災後は相馬沖でとれなくなり、宮城県または岩手県沖で水揚げしたアナゴを使う
店主 森藤さん
店主 森藤さん
アナゴの旬は初夏ですが、身が締まってくる秋冬も格別な味わいです。うちでは、70〜80センチまで育った太いアナゴを使うので、一年を通して脂がのった状態の料理を提供できます。新鮮なものを使うと、火を通す料理もふっくらと仕上がります」
背開きにおろした後も、切り身が動いている。森藤さんは自己流で工夫を重ね、さばき方のコツをつかんでいった

「刺身」と「しゃぶしゃぶ」は小骨が少ない頭側から使うので、1本から取れるのは、せいぜい3〜4人分。尾側は「棒寿司」などになる。アナゴは生命力が強く、腹を裂いてもしばらく身が動いて包丁が入りにくい。しかし、その日に締めないと、あっという間に臭みが出てしまうそうだ。冬場など時化が続いて活アナゴの入荷がないと提供できない日もある。

皿の模様が透けて見えるほどの透明感が美しい
「穴子刺」(1500円)は、コリコリとした食感

脂ののった「穴子白焼」を年配の人がおかわりすることも

ぱりっと香ばしい「穴子白焼」(1500円)。身がふっくらしてクセがなく、食が進む

一年通して人気なのが「穴子白焼」で、ほぼ毎月食べに来るなじみ客もいるという。お通しと日本酒1合(800円〜)を合わせて、1人前の予算は約3000円ほど。「最近、食が細くなって」と話す年配の夫妻が久しぶりに来て、「穴子白焼」をおかわりして完食、満足げに帰っていく姿を見た時は「料理人として幸せな気持ちになった」と森藤さんは話す。

醤油と砂糖でシンプルに味付けした「穴子タレ焼」(1500円)

アナゴの脂には、うまみが凝縮されている。それを堪能できるようにと森藤さんは付け合わせにもこだわる。

例えば「煮穴子」にはキュウリ、「穴子刺」にはナガイモ、「穴子白焼」にはダイコンの漬け物ハリハリ山椒漬を合わせるのが定番。どれも、さっぱりした口直しだ。焼酎や日本酒も“アナゴに合うこと”を基準に選び、「会津中将」や「国権」などの地酒も置いている。

一つのことを極めた人だから、会話にも味がある

店内に貼られた手書きのお品書き。「穴子丼」(1500円)、「へしこのチャーハン」(800円)などの食事メニューもある

森藤さんは摺上川ダム湖に近い福島市茂庭の出身で兄弟は7人。「早く稼げる人になりたい」と望んで、中学卒業後に料理人の道に進んだ。若い頃は、都会に出て見聞を広めたいと思うこともあったが、家族を思いすべて受け入れ今に至っているそうだ。3人いる息子さんのうち2人は、「東京の有名店で料理人を任されている」とうれしそうに教えてくれた。

ビルの立ち退きに伴い、現在の場所に移転したのが12年前。国道13号の少し西側、菓子店の隣りにある

料理人である息子さんに頼まれて、柚子と味噌で作る珍味「柚べし」を東京に送ることもある。「お父さんの話を聞いたら来てみたくなって」と東京から「森ふじ」に来てくれたお客さんもいたそう。「おいしかったよ」という言葉を励みに、45年の間、料理を極めてきた森藤さん。決して饒舌ではないが言葉の一つ一つが不思議なほど温かくて、誰かに薦めたくなる。

女性の1人客も居心地のいい店。仕入れの都合もあるので、複数で訪れる場合は数日前までに電話予約を
カウンター7席の他、奥に小上がり2つ、テーブル席一つ。満席になることもあるので、予約が安心

取材メモ/煮ても焼いても、生でもおいしいアナゴ。「アナゴ料理でいこう! と思った理由は……たまたまだね」と言う森藤さんは、目の付けどころが良かったようです。目といえば、アナゴは「目の健康にいい」とされるビタミンAが豊富。それだけでなく、食べた翌朝はほんの少し肌の調子が良かったので、美容にも効果がありそうです。

取材・文=齋藤真弓 撮影=小野寺裕子

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