野生肉がとびきりうまい! 現役猟師が営む福岡のジビエ酒場

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旅先で夜ごはん。〜札幌・名古屋・大阪・福岡〜 【秋の味覚】

2018/11/09

野生肉がとびきりうまい! 現役猟師が営む福岡のジビエ酒場

魚や野菜のイメージが強い福岡だが、肉のおいしさだって負けてはいない。ハンター歴33年の猟師が営む「博多奥堂(はかたおくのどう)」で、秋の味覚「ジビエ」を堪能!

Yahoo!ライフマガジン編集部

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秋の旬グルメ! 九州の絶品ジビエに出会う

鴨ガラで取る出汁で味わう、良質な鴨や猪のしゃぶしゃぶは格別

狩猟によって仕留められた野生鳥獣の食肉を、フランス語で「ジビエ」という。人気は年々高まっており、豊かな自然に囲まれた九州は、北海道や甲信越地方に負けないジビエの産地でもある。今回はジビエが注目される数十年前から、福岡でそのおいしさを伝え続けている博多の“元祖ジビエ酒場”へご案内したい。

築75余年の町家を改装した隠れ家

元は店主の実家で、「畳屋」だったという古民家を改装

訪れたのは、歴史ある寺院が立ち並ぶ博多の寺町「御供所町」エリア。日本最古の禅寺といわれる「聖福寺」のほど近くに、今年開業14年目を迎える「博多奥堂(はかたおくのどう)」はある。

博多町家を改装したという店舗は、まさに“うなぎの寝床”
元々は建築設計士である店主・野村さんが、自ら店舗設計を手掛けた店内

細長い通路を抜けて目に飛び込んできたのは、焼酎の酒瓶がズラリと並ぶカウンター、天井桟敷まである広々としたフロアだ。さらに階段を上がった2階には、床の間を据えた座敷まであり、細長い入口からは想像できないカラクリ屋敷のような空間に心が躍る。

ハンター歴33年のベテラン猟師がお出迎え

一見強面…だが、とても気さくで優しい店主の野村昌弘さん

店を営むのは、生まれも育ちも御供所町、山笠の勢水(いきおいみず)を浴びて育った店主の野村昌弘さん。生粋の博多っ子であり、ハンター歴33年の現役猟師という顔を持つ。

「鴨の生ハム」(800円)は、舌先でじわりと溶ける甘い脂身もたまらない

名物は何と言っても、野村さん自身や仲間の猟師が仕留めるジビエを使った料理だ。ジビエといえば「高級食材」や「クセや臭みが気になる」というイメージが浮かぶ方もいるかもしれない。しかし、ここではそんなジビエのイメージが覆される。

「蝦夷鹿のロースト」(4日前に要予約・2000円)。蝦夷鹿は、北海道で活動する仲間の猟師から仕入れ

ジビエ料理は1品800円とリーズナブル。さっきまで生きていたのでは!?と思いたくなるほど、濃く美しいピンク色に艶めくのは「鴨の生ハム」。低温で火入れし、4時間以上かけて仕上げる「蝦夷鹿のロースト」は、噛むほどに奥深い旨味が押し上げてくる。

クセや臭みはほぼ皆無。頭を的確に仕留め、仕留めた直後も適切に処理を施し、調理前にも丁寧な下処理を施す。ジビエを知り尽くす猟師が営む店ならではのおいしさだ。

趣味が高じて猟の世界へ 命をいただくことへの思い

お酒も大好きな野村さん。オススメの焼酎は、「初心者お断り」と書かれた芋100%で作る「小鶴」

元々建築設計士として活躍していたものの、趣味が高じてハンターの道へ魅せられたという野村さん。

店主の野村さん
店主の野村さん
「幼い頃からモデルガンが好きで。ハンターの道に目覚めたのは、店舗改装を頼まれた友人からお礼にエアガンをもらったのがきっかけでした。そこから本格的にのめり込み、20代の頃に鉄砲所持の免許を取ったんです」。
何か飛んでる!?と思ったら、壁に飾られたキジの剥製でした
店主の野村さん
店主の野村さん
「その後師匠と呼べる人にも出会い、夏は罠猟、秋から春にかけては猟犬を連れ猪や鹿を追う銃での捕獲にも同行して、猟を学びました。当初は自分で飲食店をやろうとは思っていませんでしたが、師匠が作ってくれたジビエ料理があまりにも絶品で!
カウンター奥の壁面には、野村さんが仕留めた立派なエゾ鹿のハンティングトロフィーが!
店主の野村さん
店主の野村さん
「きっちりと頭を仕留め、血抜きや内臓処理などを的確に施した野生肉はこんなにもおいしいのだと驚きました。それから、この美味しさを広めたいという思いが自分の中で強くなりまして。40代後半で建築設計士を辞め、自分や仲間が獲るジビエを看板にした『博多奥堂』を立ち上げたんです
やっぱり怖そうに見えるが、とっても温かな人柄の野村さん

また野村さんは、国や県から要請される「有害鳥獣捕獲」の仕事を受ける「福岡有害鳥獣対策猟友会」の一員でもある。

店主の野村さん
店主の野村さん
「実は、福岡県は鳥獣による農業被害が全国でもトップクラスなんです。そして悲しいことに、捕獲された鳥獣の多くは埋設や焼却され、食肉として消費されるのはごくわずか。人間の都合でいただく命に対してとても失礼だし、こんなにおいしいジビエを処分してしまうなんてもったいないですよね」
仕留めた猪の中から出てきた銃弾。記念として大切に保管している
店主の野村さん
店主の野村さん
「だから『博多奥堂』を通して、ジビエのおいしさをもっと伝えたいんです。スーパーやお肉屋さんで奥さんたちが、今夜は豚肉にしようか、猪肉しようか?と迷えるくらいに普及するのが理想ですね」。
よく訓練した猟犬2頭と共に狩猟に出かける野村さん。写真は16年に野村さんが一撃で仕留めた体長約150cm・約150キロの猪

狩猟解禁シーズンは秋から春。厳密な狩猟期間は県ごとに定められており、福岡県の銃による猪や鹿の狩猟期間は11/1〜3/15までだそう。よって『博多奥堂』では11月下旬ごろから、糸島をはじめとした福岡の山で野村さんや仲間の猟師が仕留めた猪の料理が楽しめるようになる。

鴨のダシで味わう名物 しゃぶしゃぶは必食!

「合鴨しゃぶしゃぶ」(1人前2500円、写真は2人前)は、年中味わえる人気メニュー

今回は「天然の猪しゃぶしゃぶ」に負けず劣らず人気の「合鴨のしゃぶしゃぶ」をいただいた。

店主の野村さん
店主の野村さん
「鴨肉は鮮度や質の良さはもちろん、これくらいに薄くスライスするのがポイント。厚みがありすぎるとサッと火が通らないし、火を通しすぎると硬くなる。薄造りでないと繊細で上品な口当たりが楽しめません」
ポン酢も自家製。最初に少しダシで割るのが、野村さんオススメの食べ方
店主の野村さん
店主の野村さん
「また、うちはカツオや昆布は使わず、鴨のガラで取るダシが自慢です。カツオや昆布のダシは鴨の匂いを強調してしまうようで、どうも合わないんです。また、このダシに特製の「かえし」を加えて蕎麦つゆを作って食べる、締めの「せいろ蕎麦」(550円)も格別ですよ」
鴨肉の色は一瞬で変わるので、目を離さないように!

白ネギが浮かぶ鍋に野菜や豆腐を加え、合鴨の身をそっと鍋へ。箸で掴みしゃぶしゃぶすること、ほんの4、5秒。赤ちゃんの頬のように、薄ピンクに色づくくらいが食べごろだ。

合鴨で白ネギをたっぷりと包み、口の中へ…

柔らかな身を噛むと、じんわりとした甘味と旨味が広がり、もう至福。ダシが染みた野菜も格別で、箸が止まらなくなる。

「博多奥堂」にはその他、数量限定の「エゾ鹿のユッケ」や「エゾ鹿の刺身」「天然猪のマタギ焼き」「猪のソーセージ」など、絶品のジビエ料理がめじろ押し。合鴨以外のジビエは、仕入れ時期や数量が変動するため、数日前に問い合わせ、予約をして味わおう

入口には特大の山笠ポスターが! 野村さんは博多祇園山笠・東流の重役でもある

猟師として活躍しながら、家族と共に店を切り盛り。「福岡有害鳥獣対策猟友会」の取り組みとして若いハンターの育成にも力を注いでいる野村さん。「命の大切さ、ジビエの本当の美味しさを、これからも伝えていきたい」と、力を込める。

「いただきます」と、心からの感謝を胸に、ぜひ博多のジビエ料理を味わってほしい。

取材メモ/狩猟の話を伺いジビエを食べ、改めて生き物、食べ物への感謝がこみ上げました。また日本酒、ワイン派の私ですが、ここでは野村さんオススメの“クサイ(だがそれがいい)”芋焼酎を、ワイルドに味わいたいと思いました。

構成=シーアール 取材・文=森絵里花(écris.m) 撮影=恵良範章

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