亀有で楽しむ“こち亀”聖地巡礼さんぽ【東京商店街グルメ#4】

亀有で楽しむ“こち亀”聖地巡礼さんぽ【東京商店街グルメ#4】

2018/11/14

商店街は日常生活の場であると同時に、街歩きも楽しませてくれる包容力を持っている。そこで、最近では海外の旅行者にも注目されている東京エリアの商店街をシリーズでご紹介。第4回は東京の東北の端にある、葛飾区亀有の「ゆうろーど」を食べ歩いた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「ゆうろーど」ってどんなとこ?

「ゆうろーど」は「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」の作中にも頻繁に登場する商店街。写真はアーケード部分を描いた扉絵やコミックスの表紙(写真左・153巻、右・118巻)

警察官とは思えない破天荒なお祭り男“両さん”こと両津勘吉が活躍する漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)」。作品の舞台である亀有出身の作者・秋本治氏によって、1976年から2016年まで40年もの長きにわたり描き続けられてきたが、作品に度々登場するのがJR亀有駅南口に面する駅前商店街の「ゆうろーど」だ。

「ゆうろーど」はAからEまでの5つの街区で構成されるが、B街区のみアーケードとなっている

その歴史は古く、1897年に開業した亀有駅周辺にできた商店が起源。1930年に亀有駅から水戸街道へ抜ける亀有新道が開通すると、「亀有銀座」と呼ばれる商店街が自然発生的に生まれ、1933年には「亀有銀座商店街」として組織化された。

1950年代の「ゆうろーど」。お好み焼きの店「嵯峨野」の前身「びっくりや」の店先で撮影されたもので、画面左奥が亀有駅方面になる(写真提供:嵯峨野)

亀有は常磐線の貨物、中川の水運などに恵まれたため、昭和初期には大工場が集まって“企業城下町”を形成。地元亀有だけでなく、千葉県の人々からも「上野まで出かけなくても買い物ができる街」として大いに賑わった。1970年代には宅地化が進み、工場が地方に移転することで現代的な商店街へと変遷。1989年に「ゆうろーど」という愛称がつけられた。

現在の商店街には下町らしい飾り気のない店が多い

ここ数年で最も大きな転機となったのが、国民的な人気漫画となった「こち亀」の存在。駅周辺や商店街には「こち亀」キャラの銅像が多数建てられるなど、連載終了後も“聖地巡礼の地”として注目され続けている。そこで今回は、作中の人気キャラクターである両さんや中川、麗子たちが闊歩する「ゆうろーど」で、“こち亀聖地”のお店を食べ歩いた。


\食べ歩いた3店はここ/
1:「葛飾 伊勢屋」
2:「嵯峨野 亀有店」
3:「うなぎ川亀」
コラム:全部見せます!こち亀銅像巡り散歩


“3度目の正直”が亀有を変えた

スポット1:「葛飾 伊勢屋」

大きな赤い看板が目印の「葛飾 伊勢屋」

1965年創業の和菓子と食事の店「葛飾 伊勢屋」。お団子や大福などの和菓子のほか、食堂スペースではラーメンやあんみつなどの食事や甘味が楽しめる。2代目の店主である佐藤尚吾さんに話を聞いた。

――「ゆうろーど」と「こち亀」のつながりを教えてください。

葛飾 伊勢屋店主・佐藤尚吾さん
葛飾 伊勢屋店主・佐藤尚吾さん
「ちょっと話が長くなるけどいい?」
「三次元化された両さん」と言いたくなるほど両津勘吉に似ている伊勢屋の佐藤尚吾さん。店舗も佐藤さんもたびたび漫画に登場する

――望むところです!

佐藤さん
佐藤さん
「じゃあさ、ラーメンでも食べながら聞いてもらおうかな」

――喜んで! まるで両さんが派出所で食べていたような正統派ラーメンですね。

佐藤さん
佐藤さん
「1965年の2月1日の創業以来ずっと変わらない味で、昔の常連さんが数十年ぶりに来ては『未だに同じ味だね』なんて言って食べてくれるんだよね」

\お腹がすいたらこれ/
「和風らーめん」(460円・税別)

縮れ細麺にチャーシュー、ナルト、メンマ、海苔、そしてスープは醤油味と中華そばの王道の味わい

――開業の日づけまで覚えているんですね。

佐藤さん
佐藤さん
「私が生まれたのがその1週間後なの。無計画な親だよね(笑)。門前仲町にある『深川 伊勢屋』で修行した父親の運助(うんすけ)が、休みの日にバイクでウロウロしていたところ、ここ亀有駅前の賑わいが気に入ったんだって」

――どういう人が商店街を利用していたんですか?

佐藤さん
佐藤さん
「当時はコンビニもファストフードもない時代。近所には戦車を作っているような大工場や中小の下請け工場があって、伊勢屋はそういった“企業城下町”で暮らす庶民に日常の食事を提供する店で、商店街は彼らに生活用品を供給することで発展しました」
伊勢屋の和菓子や赤飯、稲荷寿司などは、近隣住民の日常を支えていた

――当時はずいぶん売れたでしょうね。

佐藤さん
佐藤さん
「売れたのなんのって、盆暮れ正月の忙しい時期には、売上金を入れる一斗缶からはみ出すお札を足で押えながら団子を売っていたほど(笑)。当時の商店街の混雑は凄まじく、人混みを狙ったスリが多発したので、スリ専門の刑事が常駐していたんだって」

――「こち亀」の初期にはスリのエピソードもありましたよね。お店を継いだのはいつごろですか?

佐藤さん
佐藤さん
「和菓子も扱う製パン会社に3年勤めた後、1990年に店に戻りました。バブル景気が弾ける直前で、なおかつ、コンビニやファストフード店が台頭し、残念ながら『伊勢屋にお昼ご飯やおやつを買いに行こう』という時代は過ぎ去っていたんだよね」

――家業を継いだ直後に転換期が訪れたと。

2代目の挑戦:第1弾
「運助け豆大福・塩大福」

今でも豆大福と塩大福は伊勢屋の人気商品(各1個120円・税別)
佐藤さん
佐藤さん
「扱う商品が生モノなので、翌日に持ち越せないのが和菓子屋の弱点。我々の夢は、店の包装紙を見ただけで喜んでもらえるようなおみやげ向けの定番を持つことなんです」

――「群林堂の豆大福」や「三原堂本店のどらやき」のような?

佐藤さん
佐藤さん
「そのとおり! そこで、親父の名前にあやかって『運助け豆大福・塩大福』を発売。当時は企業イメージを積極的に構築するCI(コーポレート・アイデンティティ)活動が盛んで、『じゃあウチもやるか』ってことで、剪画(せんが)作家の石田良介氏にキャラクターを創作してもらいパッケージングしたわけ」

――反応は?

佐藤さん
佐藤さん
「これがサッパリ売れなかった。味はめちゃくちゃおいしいし、『運助けのご利益があるよ』ってことで売り出したんだけどなぁ」

2代目の挑戦:第2弾
「お花の茶屋まんじゅう」

新基軸第2弾は地元の歴史的ヒロイン「お花ちゃん」を盛り込んだが……
佐藤さん
佐藤さん
「その次は、牛乳を使ったお菓子の『お花の茶屋まんじゅう』。亀有のすこし南に『お花茶屋(おはなぢゃや)』という場所があって、かつて鷹狩に訪れた徳川の8代将軍・吉宗が体調を崩した際、『お花さん』という茶屋の娘の介抱で治ったという逸話が地名の由来。そのエピソードを書いた栞を添えた自信作」

――“おもたせ”に良さそうです。

佐藤さん
佐藤さん
だがしかし売れないんだなこれが。伊勢屋のファンを作るための名物を打ち出さねばならないのに2度も失敗してしまった」

\甘味もうまいぞ/
「クリームみつ豆」(480円・税別)

甘味の定番は、しみじみうまいクリームみつ豆(480円)

――このクリームみつ豆もおいしいですねぇ。そろそろ「こち亀」の話になりそうですか?

佐藤さん
佐藤さん
「待たせてゴメン。そんなある日、妻の実家がある岐阜県の駅で出会った方に亀有から来たと話すと『両さんの街だ!』と驚かれ、『公園の前に派出所があるの?』『両さんみたいな警官は本当にいるの?』と、盛り上がっちゃった」

2代目の挑戦:第3弾
「両さんどら焼・小豆」(写真左:160円・税別)
「両さんどら焼・栗どら」(写真右:200円・税別)

佐藤さんの努力の結晶の「両さんどら焼」の登場は、亀有が「こち亀の聖地」として愛されるきっかけの一つとなった
佐藤さん
佐藤さん
「恥ずかしながら『こち亀』は、社会人になってからはあまり読んでなかったの。駅のキオスクに最新のコミックスがあったのでその場で買って読んだらゲラゲラ笑えるし、現代の亀有の風景が裏通りまで緻密に描かれていて改めて驚かされたわけ」

――生まれ育った街が国民的人気漫画に描かれるなんて、なかなか経験できません。

佐藤さん
佐藤さん
「それが1997年のこと。見知らぬ人とも『亀有=両さんの街』と盛り上がれるこの作品こそ、わが街のおみやげにふさわしいと思い、さっそく集英社に商品化のお願いに行ったんです」
どら焼のほか、派出所の仲間たちも描かれた「両さんサブレ」(540円・税別)、「両さんめんこ焼」(640円・税別)も商品化した
佐藤さん
佐藤さん
「ところが『こち亀』は当時、毎週アニメが放送されるような超人気作品。手作りの街の和菓子屋がキャラクターを自由に使うのは難しいと、集英社の方が店までいらして丁重にお断りされました」

――そう簡単にはいかないんですね。

佐藤さん
佐藤さん
「まあ当然だよね。でも割とショックで寝込んだりしているうちに、この話が秋本先生の耳に入って『地元のお店ならいいんじゃない?』と、ご許可をいただけたので、1998年の7月に販売を開始しました」
北海道産小豆を、厳選したザラメ糖で甘さ控えめに炊き上げたあんこが、しっとり系の生地とよく合う(「両さんどら焼・小豆:160円・税別)

――このどら焼は漫画の中で両さんたちが買いに来てましたよね(笑)。

佐藤さん
佐藤さん
「そうなんです。1999年に掲載された『フリマでひと儲け!!の巻』で取り上げてもらったんだけど、漫画の欄外に店の電話番号も紹介されてたからもうタイヘン」
両さんたちが伊勢屋に訪れ佐藤さんと会話する「フリマでひと儲け!!の巻」は、コミックスの114巻に収録

――当時の少年ジャンプの発行部数は約400万部だそうですが、実際に電話はかかってきました?

佐藤さん
佐藤さん
もうジャンジャンよ。受話器を取ると子供の声で『伊勢屋さんって本当に亀有にあるの?』なんて聞かれるわけ」

――イタズラ電話ですね。

佐藤さん
佐藤さん
「『そうだよ』って返事をすると、受話器の後ろで大勢の子供の爆笑が聞こえる(笑)。そういう微笑ましいイタズラもあったけど、1日に20個しか売れなかったどら焼が、多い日だと3000個も注文が入るように。粋な秋本先生らしい地元商店街への応援だと感動しました」
「両さんどら焼」の箱を包む包装紙。派手すぎないように工夫したのだとか

――地元への愛を感じます。

佐藤さん
佐藤さん
「2005年ごろ葛飾区では亀有の活性化のため、『駅前に亀のモニュメントでも作るか』という計画があった。で、そのころ赤飯を買いに来た秋本先生と『亀有には来た記念に写真を撮れるスポットがないですね』と世間話をしたことがあったの」

――アニメや漫画の“聖地巡礼”が注目され始めていました。

佐藤さん
佐藤さん
「鳥取県境港の水木しげるロードにある妖怪のブロンズ像の話をしたら、秋本先生が『それいいね』と言ってくれて、2006年2月に亀有駅の北口に『両津勘吉像』を建立することができた。11月には駅の南口に2体目ができ、3体目は商店街に作りたいねと話していたら、秋本先生が『こんなポーズはどう? 執筆中の漫画の大切な場面なんだ』と、3人の子供の画を見せてくれたんです」
2008年11月に行われた「少年両さん像」の除幕式に参加した麻生太郎首相(写真左・当時)は「月曜に両さんを読んで笑えないと今週は疲れているんだなと健康のバロメーターにしている」と「こち亀」への愛を披露

――商店街にある「少年両さん像」のデザインですか?

佐藤さん
佐藤さん
「そう。そのエピソード『やってきた3人組の巻』は、2008年11月に完成した『少年両さん像』の除幕式が行われる週の月曜日の少年ジャンプに掲載された、少年時代の両さんと仲間が2008年の亀有にタイムスリップする話でした」

――除幕式には、首相就任直後の麻生太郎氏も駆けつけニュースになりました。

「やってきた3人組の巻」のシーンを切り取った「少年両さん像」には、秋本治氏の地元商店街への思いが込められている
佐藤さん
佐藤さん
「以前麻生さんが『こち亀を読んで笑えないときは疲れている証拠』とお話しされていたので『もしかして除幕式に来てくれるかな?』と思い、ダメ元で招待状を送った。でもその後すぐ総理大臣に就任したので、こりゃ無理だと諦めていたら、除幕式の3日前に『行ってもいい?』と電話が来たので急遽ご参列いただいたの」
伊勢屋スマイルが眩しいスタッフのみなさん
佐藤さん
佐藤さん
「銅像は『未来には夢がある』と話す少年の両さんが、別れの握手を差し出すラストシーンを三次元化したもの。漫画で描かれた商店街のまさにこの場所に銅像が設置されるなんて、本当にシビれるよね」

葛飾伊勢屋

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。


秋本先生も愛した名物を食す

2:「嵯峨野 亀有店」

「少年両さん像」の向かいの2階にある「嵯峨野」

次にやってきた「嵯峨野 亀有店」は、下町グルメの代表とも言えるお好み焼きやもんじゃを楽しめるお店。

店を切り盛りする父・吉田栄さん(写真左)と息子の正輝さん
吉田栄さん
吉田栄さん
「お好み焼きは29種類、もんじゃは25種類あります。もんじゃはさらに40種のトッピングを追加することができます」

――そんなにあるんですか! 迷ったときのオススメを教えてください。

吉田正輝さん
吉田正輝さん
『両さんもんじゃ』はいかがですか? 汁が通常のもんじゃの2倍で、豚肉、生エビ、生イカ、コーン、そば、切イカ、桜エビ、紅しょうが、揚げ玉、刻み海苔、チーズといった具材が入っています」

\名物もんじゃの焼き方はこう/
「両さんもんじゃ」(1550円)

両さんの眉毛をイメージした刻み海苔がトレードマーク

――すごいボリュームですね! 焼き方が難しそうです。

吉田正輝さん
吉田正輝さん
「もんじゃに『こうしなきゃいけない』というルールはないんですが、基本的な焼き方で作ってみますね」

ステップ1
ウスターソースを入れて具材に軽く火を通す

この段階では完全に火が通らなくてもOK
吉田正輝さん
吉田正輝さん
「まずは丼にウスターソースを5〜6杯入れます。お好みですが薄めがオススメです。混ぜたら具材だけを鉄板にのせ、コテで広げて軽く火を通します」

ステップ2
具材で土手を作る

生地の汁が流れ出さないよう大きめに

――やはり「土手」は必須なんですね。

吉田栄さん
吉田栄さん
「昔の駄菓子屋さんなどでは、1枚の鉄板を何組かでシェアするスタイルが多かったので、ほかのグループに食べられないよう“陣地”を作るという習慣ができたようです。子供たちが自然と編み出した技ですよね」

ステップ3
生地を2〜3回に分けて入れる

「両さんもんじゃ」は汁が多いので、様子を見ながら2〜3回に分けて生地を土手の中に流し込む

ステップ4
残りの生地を入れて混ぜる

フツフツと沸いてきたら混ぜ合わせて全体に火を通す

ステップ5
チーズをふりかける

散らしたチーズがおいしそうに溶けたら完成!
吉田正輝さん
吉田正輝さん
「チーズが溶けたら完成です。女子高生のグループは、一人ひとり小さな土手を作ってゆっくり楽しんでいるので賢いですよね」

――いただきます! 多彩な具材から出たダシが効いていておいしい。食べる場所によって味変するのも楽しいです!

\サイドメニューも多彩/
「エビとエリンギのアヒージョ」(600円)
「バゲット」(60円)

鉄板の上に乗せておけるので温かいまま楽しめる
吉田栄さん
吉田栄さん
「『お好み焼き屋でアヒージョ?』って驚く方も多いんですが、女性のリピーターが多いです。地元出身のCHEMISTRYの川畑要さんに出したら『こじゃれたおいしいもの作っちゃいましたね』と好評でした」

\コミックス155巻に登場/

2階にある嵯峨野の特徴を捉えたカット。となりの郵便局も描かれている

――このお店も「こち亀」に登場していますよね。秋本さんから何かお話があるんですか?

吉田栄さん
吉田栄さん
「155巻に収録されている『甦れ!!御用聞き!!の巻』に描いていただきました。以前、秋本先生に亀有の資料として、商店街の古い写真をお貸ししたことがあったんです」
吉田正輝さん
吉田正輝さん
「しばらくしてこのエピソードが出て驚いたんですが、ある日秋本先生に会った時に『写真の恩返しになったかな』って言われて嬉しかったよね」
1950年代に商店街で撮影された写真たち。こういった資料が「こち亀」に緻密なディテールを与えているようだ
吉田栄さん
吉田栄さん
「嵯峨野の前身は『びっくりや』という甘味処で、近くで生まれ育った甘い物好きの秋本先生も通ってくださっていたそうで、今川焼きなどあんこモノが人気でした。その製法を受け継いだあんこをつかった『あんこ巻き』(500円)はいかがですか?」

\デザートも鉄板焼きで/
「あんこ巻き」(500円)

もんじゃとお好み焼きの中間くらいの濃さの生地を薄く伸ばす
8割ほど火が通ったら端にあんこを乗せる
あんこがはみ出さないように注意しながら優しく巻く
巻き上がったら食べやすい大きさに切る
吉田正輝さん
吉田正輝さん
「黒蜜を添えてあるので、好みでかけて召し上がってください」

――シンプルですがあんこの優しい甘みが最高です! 温かいデザートもなかなか良いものですね。

店内には貴重な「こち亀」カードが。これを見た秋本さんが「全種類はウチにもないなぁ」と驚いたのだそう
吉田栄さん
吉田栄さん
「台湾では『こち亀』は『烏龍派出所』という名で愛されていて、国際線の機内誌で『ゆうろーど』が紹介されたこともあって、外国のお客さんも多いんです」

「自分が生まれたときから両さんと商店街は一体でした。故郷の街のストーリーが終わってしまうのは大きな衝撃でしたが、今でもファンの方々が訪れてくれるので嬉しいですね」と話す吉田正輝さん。海外からの旅行者も引きつける嵯峨野は、「こち亀聖地巡礼」になくてはならない下町グルメスポットのなのだった。

嵯峨野

口コミ・写真など

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音の職人が仕上げるウナギの味

スポットその3:「うなぎ川亀」

おいしそうなウナギの匂いを漂わせる重厚な店構えも見どころ

「ゆうろーど」で70年以上の歴史を誇る老舗の持ち帰りウナギ専門店「川亀」。店先でかば焼きを仕上げている4代目店主の仲林孝行さんに話を伺った。

――孝行さんで4代目になるそうですね。

川亀4代目・仲林孝行さん
川亀4代目・仲林孝行さん
「私の祖父が初代なんですが、早くに亡くなったので曽祖父が2代目となり、父で3代目、私で4代目というわけです。ちょっとややこしいですね」
亀有銀座商店街振興組合の理事長を務める3代目の仲林和夫さん(写真左)と、4代目若旦那の仲林孝行さん(右)

――ウナギ一家と言っても過言ではないです。

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「それが、自分はレコーディング・エンジニアという音楽業界の人間だったので、ウナギ屋を継ぐとは全く考えていなかったんです」
店先では丁寧に焼き上げられる職人技を見ることができる

――ウナギどころか料理関係ですらなかったんですね。

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「数年前から親父が体調を崩してしまい、7年ほど前には生死の境を彷徨ったほど。当時店の職人は親父だけだったので、自分ができる作業を手伝うことで、家族や従業員のために店を開け続けたんです」

――自然な成り行きで老舗を継いでしまったわけですね。

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「継ぐという意識も、老舗の看板を守るという気概もなかったけれど、親父を励ます気持ちから『俺が店を開けるからウナギの仕事を早く教えてくれ』と話をしたことを覚えています」
店の2階は音楽家としての孝行さんの作業スペースとなっている

――新しい技を体得するのは難しくなかった?

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「子供のころから土用の丑の日などの繁忙期に手伝いをしていた程度の素人だったし、当時20代後半でしたので、技をすばやく吸収する柔軟性は衰えていました。なので、プレーヤーとしての感覚を総動員して、トライ&エラーを繰り返すほかなかったですね」

――3代目やお客さんの反応はいかがでしたか?

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「周囲が普通に受け入れてくれたおかげか、最初の1年でなんとか一通りこなせるようになりました。親父も『お前が考えた結果ならそれでいい』というスタンス。ある程度形になってからの努力も大事なので、停滞しないように改善しています」
ウナギのほか、佃煮なども扱う

――4代目として変えた部分もある?

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「親父の時代と違いウナギはより高価な食材に。消費量が減った分、1串に対してより丁寧な作業ができるようになった。ウナギはかば焼き一つとってもさまざまな調理手法がありますが、親父の積み上げた技に異なるアプローチをすることで、できるだけ早くその高みにたどり着きたいですね」

\198巻に登場/

「川亀」の店頭が描かれたシーンには3代目和夫さん夫婦も登場した

――「こち亀」には3代目の和夫さんも登場していますね

3代目・仲林和夫さん
3代目・仲林和夫さん
「秋本先生が漫画の資料にするためお祭りの衣装を借りにきたんだよ」

――漫画にはまったく同じシーンが描かれています。

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「町会の柄も再現されていたのですごいと思いました。商店街の人間はボーナスが出る度に両さんに借金を返してもらおうと奮闘するお約束も楽しいですよね(笑)」
商店街の人々は、夢中で道路に絵を描く秋本さんを見守っていたという
仲林和夫さん
仲林和夫さん
「秋本さんの実家はこの近所にあったんですが、チョークで地面に上手な絵を描いているおとなしい子だと商店街でも評判だったよ」
仲林孝行さん
仲林孝行さん
「『こち亀』は物心ついたときから読んでいたジャンプに掲載されているので、国民的な人気があるすごい作品だという実感がなかったんです。だけど、北口に最初の銅像ができたとき、音楽関係ということでイベントの手伝いをしたんです」

――ニュースにもなったあの大混雑に仲林さんもいたんですね!

仲林孝行さん
仲林孝行さん
「駅前にファンが大勢押し寄せたので、ロータリーにバスが入って来れずにあわてて閉鎖したんです。用意したスピーカーではアナウンスも全然届かない状況。『本当にすごい漫画なんだな』ってやっと理解できたので、南口の銅像の除幕式には強烈にデカいスピーカーで挑みましたよね(笑)」
食べ歩きにはかば焼きを細切りにした「うなぎ短冊串」(写真上・1本324円)や、ウナギの頭を叩いて焼き上げた「かぶと焼き」(写真下・1本162円)がオススメ

「老舗は減ったけれど、この商店街を気に入って外から入ってきてくれる店もある。自分も業種という意味では新参者なので、知恵を出し合って商店街の新しい魅力や存在感を発信していきたいですね」と孝行さんは商店街の未来を語ってくれた。

うなぎ川亀

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というわけで、「ゆうろーど」の食べ歩きもお開き。両さんたちの銅像や、下町らしい気さくな食べ物、それに誰もが知る不朽の名作「こち亀」ゆかりのおみやげという、「観る、食べる、買う」の三拍子揃った「ゆうろーど」は、思い出づくりができる商店街なのだ。

【商店街コラム】
全部見せます!亀有駅周辺の「こち亀像」全15体を踏破!

亀有駅北口には派出所のモデルになったとされる交番の姿も

亀有には「亀有公園」はあるものの、公園前に派出所はない。しかし、「ゆうろーど」のある亀有駅周辺には15体の銅像が建立され、聖地巡礼で訪れたファンを魅了してくれる。商店街散策と同時に楽しみたい合計15の銅像を、徒歩で回りやすい順番で一気にご紹介!

その1:「両津勘吉像」
(亀有駅北口正面)

2006年に最初に完成した銅像。亀有駅北口を出たバスロータリーの前でファンを出迎えるように立っている

両津勘吉像

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その2:「薔薇と麗子像」
(亀有駅北口駅前交番横)

亀有駅北口交番の横にある可憐な坐像は、秋本・カトリーヌ・麗子を立体化したのもの

薔薇と麗子像

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その3:「ダブルピース両さん像」
(区立亀有公園内)

亀有公園内にある像は両さんらしいポーズを決める陽気さが魅力

ダブルピース両さん像

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その4:「ひとやすみ両さん像」
(区立亀有公園内)

こちらも亀有公園内のベンチで休む両さん。隣に腰掛けて記念撮影もできる!

ひとやすみ両さん像

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その5:「敬礼両さん像」
(亀有血液センター入口前)

ちょっと真面目なお仕事モードの両さんも登場

敬礼両さん像

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その6:「両津勘吉祭り姿像」
(亀有リリオパーク入口前)

ここからは駅の南口に移動。亀有駅南口交番前にはお祭り姿のハイテンションな両さんが

両津勘吉祭り姿像

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その7:「ようこそ亀有へ両さん像」
(亀有駅南口交通島内)

南口のバスロータリーでは、リラックスした両さんと記念撮影ができる

ようこそ亀有へ両さん像

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その8:「サンバ両さん像」
(亀有中央商店街・靴の東洋前)

マラカスを手にしたラテン系な両さんもお見逃しなく!

サンバ両さん像

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その9:「少年両さん像」
(ゆうろーどポケットパーク内)

漫画のワンシーンを見事に切り取った少年時代の両さんと仲間たちは「ゆうろーど」のポケットパークで会える

少年両さん像

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その10:「本田像」
(亀有信用金庫本店前)

オートバイにまたがると豹変する本田速人巡査の銅像は、あえて降車時の気弱な性格を再現している

本田像

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その11:「ワハハ両さん像」
(旧亀有名画座跡地前)

大きな口を開けて豪快に笑う両さん

ワハハ両さん像

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その12:「少年よ、あの星を目指せ!両さん像」
(亀有香取神社境内)

「こち亀」に頻繁に登場する亀有香取神社の境内にある像。社務所では両さんの絵馬も入手できる。(2019年1月まで神社境内の整備工事のため見学不可)

少年よ、あの星を目指せ!両さん像

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その13:「中川像」
(リリオ弐番館入口前)

シュッとした漫画のイメージそのままの中川圭一巡査

中川像

口コミ・写真など

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その14:「麗子像」
(亀有地区センター内)

駅南口前の「亀有リリオ館」の7階の亀有地区センターの入り口にある「麗子像」は唯一室内にある銅像だ

麗子像

口コミ・写真など

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その15:「ようこそ こち亀の街へ! 両津・中川・麗子がお出迎え!像」(亀有駅南口正面)

駅南口正面には秋本治氏の発案により、カラーで製作された最新の銅像が登場。よく見ると足元のプレートには大原部長の姿も

ようこそ こち亀の街へ!両津・中川・麗子がお出迎え!像

口コミ・写真など

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取材メモ/亀有は柴又にも近いため、「こち亀」&「寅さん」の下町聖地巡りの“はしご”を楽しむ方もいるそうです。

構成・取材・文・写真=杉山元洋

次回、11月28日(水)は「谷中ぎんざ・よみせ通り」を公開予定!

人気の街散歩エリアの代表格を散策します

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