旅行で福岡に訪れる人向けに、福岡のグルメ情報をピックアップ。今回は全国の有名店が集うラーメンの祭典で優勝した経歴を持つ「大重食堂 今泉店」をご紹介します。福岡・博多のラーメン=とんこつとは限らない! 地元でも話題の“旬のラーメン”に迫ります。
Yahoo!ライフマガジン編集部
“世界一”で話題のラーメン店「大重食堂 今泉店」
博多一風堂の創業者・河原成美さんを総合プロデューサーに迎え、2012年から開催されている「WORLD RAMEN GRAND PRIX(ワールドラーメングランプリ、以下WRGP)」。その第4回大会(2017年)において頂点に輝いたラーメンを食べられる店が福岡市今泉にある。
ビッグカメラの隣に建つ「西鉄今泉ビル」。「磯貝」「寿司処いずみ田」といった福岡の有名店をはじめ、定食屋や小料理屋、鉄板焼き屋などが入居するこちらのビルの1階で「大重食堂 今泉店」は営業している。
この人に話を聞きました!
“世界一のラーメン”を生み出したのは、和食や洋食、エスニック店での修業を経て2011年に福岡市警固にオープンした創作料理店「BigHeavy Kitchen(ビッグヘビーキッチン)」の店主・大重洋平さんだ。
長い時間煮込む必要のあるフォンやブイヨン作りを効率化するため、「鰹節」や「鯖節」のように牛や豚といった動物系の“節”を作り、それをサイフォンで抽出するという方法を取り入れはじめた。
ラーメンを作るきっかけは“ダシのおいしさを広めるため”
「節×サイフォン」の抽出によるダシのおいしさを知ってほしいという思いから、このダシを使ったラーメンをランチ限定で2017年7月より提供スタート。当初は5種の“節”を使っていたが、試行錯誤の結果、現在と同じ7つの“節”にすることで味がまとまった。
ちょうどそのタイミングで、WRGPの情報が大重さんの耳に飛び込んできた。知人に「出てみたら」と言われたこと、第4回大会にのみ設定されたテーマが「600キロカロリー以下で日本を感じられる一杯」だったことから参加を決意(大重食堂のラーメンは1杯450キロカロリー以下)。するとなんと、初出場で初優勝に輝いた。
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「審査委員特別賞とかはあるかもね、なんて話はしていたんですけど。優勝したと聞いたときは、素直に驚きました。『えっ?』って(笑)。ちなみに僕は優勝の現場には居合わせてないんですよ。中洲店でお留守番していました(笑)」
WRGPで優勝したことにより一気に存在が知れ渡り、その一杯を求める人で店は連日盛況。ランチのみ、しかも30杯限定ということもあり、次第に“食べたいけど食べられない”という声が増えてきた。
そこで“純らーめん七節の専門店”として、昼から夜まで限定数なしでラーメンを提供する「大重食堂 今泉店」が2018年5月に誕生した。
これが“世界一”のラーメンだ!「純らーめん七節」(850円)
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「スープのベースは、『平戸のあご』と『羅臼昆布』からとったダシに“かえし”を加えたものになります。そこに自家製の7つの節『牛節』『豚節』『鶏節』『ふぐ節』『鰹節』『真鯖節』『鰯節』の一番ダシを、サイフォンを使ってあわせていきます」
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「火入れの時間が短すぎると十分にダシが出ず薄い仕上がりになって、逆に長すぎるとエグみが出てきたりスープが焦げたりしてしまいます。火の強さにもよりますが、うちは1分がベストな火入れ時間なんですよね。麺の湯で時間も同じくらいなので、サーブまではそこまで時間がかかりません」
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「『どんなラーメンですか?』と聞かれたとき、僕はよく『染みる一杯』と答えています。例えば、“二日酔いに染みる一杯”だったり、“疲れた体に染みる一杯”だったり。ダシをきかせたラーメンだからこそ、そういうときでも食べられるものになっていると思います」
替え玉もいいけど、せっかくなら二杯目は“ダシ茶漬け”で
福岡・博多のラーメンにつきものである「替え玉」もいいが、せっかくならダシを効かせたスープならではの“二杯目”を楽しみたい。そこで「日の丸ごはん」をオーダーし、“ダシ茶漬け”でシメるのが大重食堂流!
ラーメン店の店長になることは予想していなかった
――“食券”が木札だったり、備え付けのやかんでお冷を注いだり、遊び心満載ですよね。テーブルの天板が畳、というのも独特です。
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「まず『やかんでお冷』というアイデアがあって、次に『それならコップは湯呑が合うよね』となり、『雰囲気を合わせるなら天板は畳だ!』という順番で決まっていきました。もとが居酒屋ということもあっての遊び心というか(笑)」
――中洲店にあった鶏料理の居酒屋さんで働いていて、その後自分がラーメン店の店長になるとは思っていましたか?
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「まったく、想像もしていませんでした(きっぱり)。そもそもうちには、ラーメン店で働いた経験のある人間が一人もいないんですよ(笑)」
――丁寧(ていねい)かつ元気な接客もなんとなく居酒屋さん的というか。この雰囲気はほかのラーメン店とはまた違いますね。
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「グランプリを獲得して以降は、同業者やお客さんから『ラーメンについて学びすぎないでほしい』とか『“料理屋のラーメン”を提供し続けてほしい』といった声もかけられますね」
――そこはお店の個性だと思うので僕も同意見です! 最後に、福岡市警固の「ビッグヘビーキッチン」が「純らーめん七節」のお店に生まれ変わるという情報について、現時点で決まっていることを教えてください。
- 店長の新西勝利さん
- 店長の新西勝利さん
- 「警固にある本店は年内いっぱいまで営業して、その後は来年からラーメン店として生まれ変わるための準備期間に入ります。いつから再開するのか、ラーメン一本で行くのか、ちょっとした一品料理も出していくのか、などの具体的な部分については未定です。なるべく早くオープンしたいとは考えています。本店の準備期間中も、今泉店は変わらず営業していますよ!」
取材メモ/取材前は「コーヒー文化が根付く福岡だからサイフォンなのかな」と勝手に思っていたのですが、そうではありませんでした(サイフォンでダシを抽出する方法はすでに存在するそうです)。ちなみに、ダシガラで作る「節ふりかけ」 は毎日大量にできるため、小分けしたパックで無料配布されています。気になる人は、入り口にぶら下がった“ざる”を見落とさないように!
取材・文=廣田祐典(シーアール) 撮影=長崎辰一
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