愛され続けて40年以上! 福岡市天神の老舗喫茶「風街」

特集

出張先でほっと一息。ごはんがおいしい喫茶店〜札幌・名古屋・大阪・福岡〜

2018/11/30

愛され続けて40年以上! 福岡市天神の老舗喫茶「風街」

出張で福岡に訪れる人向けに、福岡のグルメ情報をピックアップ。今回は福岡市天神の地で40年以上続く喫茶店「風街(かぜまち)」をご紹介します。オープンまでのエピソードや店名の由来、ネットでも話題になった“あの人の来店”について聞いてみました!

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

40年以上にわたって天神の地を見守り続ける喫茶店「風街」

福岡市天神、昭和通り沿いに位置。ビルの1階にあしらわれた赤レンガの外壁が目印だ

1976(昭和51)年の創業以来、老若男女を問わず愛され続ける喫茶店「風街」。1996年にはビルの建て替えに伴い移転リニューアルしているものの、壁にレンガをあしらうなどで前店舗の雰囲気はほぼそのままに残されている。

1階にはテーブル席をメインに、カウンター席も用意。店に入ってすぐの左右のスペースにもテーブル席がある(写真は店の奥側から撮影)
テーブル席のみで構成する2階の様子。大通り沿いの大きな窓から自然光が入るため、1階に比べると店内は明るい

この人に話を聞きました!

右からオーナーの森公英さん、息子さんで2代目店長の智正さん

御年68歳、今も現役で厨房に立っている森公英さん。写真を撮らせてください、とお願いすると「おまえも一緒に写れよ(笑)」と智正さんを巻き込む、そんなおちゃめ一面をもつオーナーの森公英さんに「風街」オープンまでのエピソード店名の由来ネットでも話題になった“あの人の来店”について聞いてみた!

「風街」誕生のきっかけは、23歳のときの一人旅にあり!

老舗喫茶の醍醐味(だいごみ)ともいえる立派なカウンター。スツールは補正しながら20年以上使用している年代物

学生時代はクラスのにぎやかし役で、自らの学生証の顔写真の上にピテカントロプスの絵を貼り付けるような子供だったと語る森公英さん。高校までは福岡で過ごし、大学進学を機に上京するものの当時は学生運動の最盛期。入学後わずか半年もしないうちに大学がロックアウト(閉鎖)してしまったという。

そんなことが3年ほど続いたあとで大学を中退。その後ふらりと行った北海道への一人旅が、「風街」誕生の大きなきっかけとなった。特に重要なエピソードが、釧路市で今も営業している喫茶店『仏蘭西茶館(フランスさかん)』との出合いだ。

ピザパンやサンドイッチ、コーヒーなどはカウンター越しのキッチンスペースで準備
オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
洒落(しゃれ)た喫茶店が釧路にあってね。寡黙な店主と、笑顔が印象的な奥さんがいて。店主さんとはあいさつするだけで話したことはないんだけど、店の雰囲気がすごくいいなあって。それまでは『いったい俺はどうなるんだろう?』と、どうする・どうしたいということがなかったんですけど。“こんな仕事ならできるかも”“これをやりたいな”と思ったんです」

旅先でやりたいことを見つけた森さんは、すぐに喫茶店開業に向けて走り始める。北海道から福岡に帰ってきて早々に、当時福岡ビルの地下にあった喫茶店「ばらの木」にツテを使って潜り込んだ。そこで3年間修行し、独立したその年に喫茶店「風街」をスタート。修行中も4~5回ほど釧路へは足を運んでおり、そのたびに「仏蘭西茶館」を訪ねたそうだ。

2階に設置された大きめの本棚には新旧の人気漫画がずらり。1階にも本棚はあるが、そちらには主に雑誌が並んでいる

ちなみに、当時の天神といえば1971年にダイエーショッパーズ福岡店1975年に大丸福岡天神店が開業しており、街が本格的ににぎわい始めたころ。「風街」がオープンした同76年には、天神地下街や天神コア、岩田屋新館といった福岡市の代表的な商業施設も開業している。いわゆる「第1次天神流通戦争」時代だ。

そんな背景も手伝ってか、当時の天神一帯では今以上にたくさんの喫茶店が営業していたそうだ。

店名の由来と、“あの人”の来店について

店の外壁に飾られた「風街」看板。不自然にカットされている真相は記事最下部の「取材メモ」に!

「風街」と聞くと、約50年前に活動していた日本のロックバンド・はっぴいえんどを思い出す人もいるだろう。彼らが1971年に発表した音楽アルバム『風街ろまん』に影響を受けたからこの店名なんだ、という説が地元にもネット上にも浸透しているのだが、うわさは本当なのか。この機会にと尋ねてみると、事実はうわさとほんのちょっとだけ違うものだった。

オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
「店名をどうしよう、ってときにたまたま音楽雑誌で松本隆さんが書かれた『風街』のコンセプトに関する考察というか、文章が載っていてね。その文章を読んで、内容にいたく感銘を受けました。その後は『風街』という言葉が頭の中をぐるぐる回り続けていて、『もう風街しかない!』と拝借した次第です」
フードやドリンクのメニュー表が手書きなのもなんだか味わい深い。セットものには簡単なイラストも添えられている
店独自のフリーWi-Fiが利用できることを知らせるボードも手書き。電波の入りが悪い席もあるそうなので注意

そんな“風街”という言葉の生みの親である松本隆氏は、2018年5月に自身のSNSアカウントに「福岡の風街カフェに来てみた」と当店にこっそり来店していたことを投稿。「店員さんはぼくを知らないみたい」という内容がファンの間で話題になった。

オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
「実はそれ以前に、細野晴臣さんが来てたってのも聞いたことがある。そしたら今年、松本隆さんにも来店いただいて。今回も私のいない時間帯のことだったのであとから知ったんですけど、とてもうれしかったですね
現在は店が忙しいランチタイムのみ厨房に立っている森さんは、毎日15:30には店を出てしまう。松本隆さんが来店したのは夕方ごろなのだとか
オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
「SNSのコメント欄に『風街って店名なのに松本隆さんのことを知らないなんて』みたいな書き込みもあったみたいですが(笑)。対応したスタッフが知らなかっただけで、もちろん私は知ってますよ!もしお会いできたら……まず土下座します(きっぱり)。『風街』という名前を長いこと使用していることを謝りたい(笑)」

「松本隆さんに会えるなら…」という話から、森さんと松本隆さんに関する“ちょっと不思議な縁”についても聞くことができた。

オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
大村雅朗っていう、松田聖子の『SWEET MEMORIES』(1983年リリース)の作編曲も担当した作曲家がいたんだけど。実は俺の従兄弟(いとこ)なんです。40代で亡くなっちゃったんだけど、彼がまだ福岡にいたころは『風街』にもしょっちゅう来てたんだよ。松本隆さんともいろいろと仕事をご一緒していたようなので、かげながら応援していました」

「風街」で食べたい!人気&定番メニューベスト3

創業時からの一品や、遅いランチにも便利なセットメニューまで。「風街」の人気&定番メニューをピックアップ。福岡の老舗喫茶ならではの“喫茶ごはん”を楽しんで!

\創業当時から続くトラディショナルメニュー!「モーニングセット(450円)」/

プレーントーストにサラダ、卵焼き、コーヒーが付く「風街」の朝の定番。パンは昔から変わらず「タケシタベーカリー」(福岡市博多区)のものを使い続けている。※11:00まで注文可能

\お気に入りの味を見つけよう!「パスタブランチ(Aセット800円~)」/

10種からソースを選べるパスタにサラダ、ドリンク付き。ドリンクは400円のものから自由に選べ、400円以上のものでも差額分を払えばOK ※11:00~17:00に注文可能

\ボリュームたっぷり!「マヨツナブロッコリーピザパン(コンボ1000円)」/

ブロッコリーの食感が残る程度に焼いたピザパンは耳までやわらか。ポテトフライ、レタスサラダ、細麺のパスタ付き。※平日は13:00以降、土日祝は11:00以降に注文可能
オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
オープン当初はトーストとコーヒーしか出していませんでした。今では定番のパスタは、実はビルを建て替えて以降からのメニューなんですよ。カルボナーラやペペロンチーノはありませんが、自家製のクリームソースをベースに作る『カレーパスタ』は他店ではあまり見かけない一品かもしれません」

居心地がいいと言ってもらえたらうれしい

1階に飾られた絵は、福岡出身のミュージシャン・山部善次郎氏の作品。以前は別の絵を置いていたが、「個展に出す」という理由で代わりに持ってきたこの作品と入れ替えたそう。彼もこの店の常連なのだとか

――学生のころから喫茶店がお好きだったんですか?

オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
「コーヒーは飲んだことなかった(きっぱり)。『ばらの木』で働いていたときに親父が店に来て、コーヒーと一緒に砂糖とミルクが入った容器を出したら『これ全部入れるとや?』って言われたことがあるんだけど(笑)、それくらいコーヒーになじみのない家庭だったんです。福岡市須崎にあったロック喫茶『ぱわぁはうす』とか、ジャズ喫茶とかには行ってたけどね。コーヒーについては『ばらの木』で一から学びました」
グアテマラやコロンビアなどの豆をあわせたコーヒーはネルドリップで抽出。一度の抽出で約20杯分を作るとのこと

――そうだったんですね。この赤レンガの壁にはこだわりがあるんですか? 例えば釧路の喫茶店がこんな感じだった、とか。

オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
「たぶん『仏蘭西茶館』もこんな感じだったと思います。赤レンガというか、焼き過ぎレンガの造りが好きで。看板の『ムッシュ・ムニエル』についても名前を知る前からお気に入りだったし、言ってみれば自分が惹かれたもののコラージュみたいなものなんです。それで居心地がいいと言ってもらえたら、店主冥利(みょうり)に尽きます」
「PASTA」の表記があることから、リニューアル後に作られたことがわかるもう一つの看板。左下にはコートを来てたばこを吸う「ムッシュ・ムニエル」の姿がある

――今年で43年目ということで、「いつまでは続けたい」といった目標はあるのでしょうか?

オーナーの森公英さん
オーナーの森公英さん
「今後のことはわからんです。でも、できる限り店の灯りは点(とも)していたいですね。朝起きても店に行くことしか頭にないし。労基署には内緒だけど、1日5~6時間ながら1年365日のうち350日は働いてるしね(笑)。足を捻挫したときも松葉杖ついて厨房に立ったし、親が死んだときも店は休みにしなかった。まあ、この情熱はいつもあるわけでもないんだけど(笑)。(やる気が)アップする日があれば、ダウンする日もありますよ」
Yahoo!ロコ風街
住所
福岡県福岡市中央区天神3-3-7 応順ビル1・2F

地図を見る

アクセス
天神駅[4]から徒歩約2分
西鉄福岡駅[ソラリア口]から徒歩約5分
赤坂(福岡県)駅[5]から徒歩約7分
電話
092-712-3093
定休日
不定休
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

取材メモ/記事中で保留にしていた「風街」の看板のエピソードを書きます。もともとは「風街珈琲店」の5文字で掘ってもらったのですが、しばらくして「やっぱり店名は『風街』だ、『珈琲店』はいらない!」と森さんが自分で看板を切断。「風街」の文字だけの看板になればいいと思っていたものの、いざ切ってみると右側のぶつ切り感が変だということに。仕方なく、切り離した看板の右端(文字のない部分)をさらに切り取って横に添えて今の状態になっている、とのことでした!

取材・文=廣田祐典(シーアール) 撮影=高尾正秀

「〜札幌・名古屋・大阪・福岡〜」他エリアもチェック!

\あわせて読みたい!/

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

SPECIAL

SERIES