地産地消で北海道を応援! 母の味にほっこり和む札幌の居酒屋

特集

旅先で食べたいご当地の食材。地産地消グルメ

2018/12/07

地産地消で北海道を応援! 母の味にほっこり和む札幌の居酒屋

一度口にすると懐かしい気持ちになる家庭料理。「ゆるり家」はそんな優しい味が評判を呼ぶ人気店だ。リピーター続出中の料理には、食材や客に対する店主の思いが込められていた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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店主家族のこだわりやアイディアがいっぱいの空間

おしゃれで居心地の良い店内。広々としたカウンターテーブルの奥には、テーブル席(2名席2つ、4名席2つ)が用意されている

全国最大の食料生産地域である北海道では、安心・安全な農産物や海産物を消費者に普及しようとさまざまな取り組みが進められている。生産者自らが食材の加工・販売までを一体的に行い、新たな付加価値を生み出す6次産業化にも積極的だ。

そんな道産食材をふんだんに使用し、多くの客を魅了する料理を提供しているのが、すすきのにある「ゆるり家」だ。毎日でも食べたいと思うような、心がほっこりする家庭料理が客の胃袋をつかんで離さない。

地下鉄すすきの駅の3出口を出ると、目の前に国道36号線(通称サブロク)が見える。この通りを左手に進み、1つ目の信号を右折
バーやホテルを通り過ぎたところの交差点。ここを渡り、写真右側のコンビニが入っているビルの7階を目指そう

家族の喜ぶ顔こそが料理人を続ける店主の原点

店主の佐古ゆう子(さこゆうこ)さんは西積丹の漁業のまち、岩内町の出身。幼い頃から親しんできた地元のホテルで料理人になりたいと思い、本格的に料理の世界に足を踏み込んだ。

「父が漁師で母も勤めていたので、私が兄弟のために料理を作っていたんです。にこにこしながら『おいしい!』って食べてくれることがうれしくて、料理っていいなと思いました。生きていく上で一番必要で、一番幸せな気持ちになれるのかなって」

自らホテルのドアをたたき「ここで使ってください!」と申し出たという行動派の佐古さん

しかし、料理の世界は甘くなく、当時は指導などなく、見て覚えるのが当たり前。周りに負けないよう必死に覚え、夜は同じ地元の板前料理店でも働いたという。1カ月間1日も休みがないこともあったと佐古さんは当時を振り返る。

札幌に出てからは、若い女性というだけでホールに立たされ、料理は仕込み程度しかさせてもらえなかった。それでも料理以外にやりたいことが無かった佐古さんはへこたれることなく、社員食堂や居酒屋でさらにキャリアを積んだ。

家族の熱いハートがゆるり家のエッセンス

メニュー表は娘さんの力作!店を思う気持ちが見て取れる

苦労を重ねた分、店を持つことに消極的だった佐古さんが開店を決意したのは、家族の熱烈な後押しがあったからだ。家族会議では、店を出すはずの佐古さんだけが猛反対というおかしなことになっていたそう。

開店後の今でも家族の熱烈な応援は続いている。旦那さんは自分の仕事の後に店を手伝い、娘さんは就職した今もアイディアマンとして協力。息子さんもアルバイトとして店で働き、利酒師の資格まで取得した。

お客さんの心をつかもうと娘さんが考えたメッセージ付きのキャンディ
よく見るとキャンディにはカラフルな紙が巻かれ、心のこもったメッセージが書かれている
店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「単身赴任で北海道にいて、うちの店に来てくれたお客さんが、元の職場に戻ってから『北海道に行ったらゆるり家に行け』って広めてくれているみたい(笑)。そんなお客さんや家族に本当に恵まれたんです」

料理人歴30年以上の店主が選びぬいた道産食材をいただく

ゆるり家で使用されている食材は、佐古さんが自分の目で見て仕入れたものしか使わない。特に漁師町で幼いころから新鮮な魚を見て育ってきた彼女の魚の目利きは鋭く、店の人に勧められたものは買わないのだとか。

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「札幌に出てきて間もないころ、ある店に朝イカが出ていたんです。それを見て『いつの朝とれたイカですか?』って純粋に疑問だったので聞いたら、店の人にすごく怒られました(笑)。だから自分の目しか信じられないんです」

また、使いたい魚介や野菜が天候などの理由で手に入らない場合は、そのメニューを店に出さないと決めている。いつも店で出す料理を「おいしい」と言って食べてくれる人の期待を裏切るようなことはできないと佐古さんは熱を込めて語った。

\大地が育んだ優しい味/

おいものバター煮(550円)

ジャガイモの甘さとバターのまろやかな風味が感じられる一品。とても優しい味わいに仕上がっている。ジャガイモをほぐしながら、煮汁も一滴残さずにいただきたい

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
弱火で4時間、煮立たせずにじっくり煮込みます。ジャガイモは一度に7〜8個しかゆでられないので、1日に作れる数には限りがあるのですが、これを楽しみに来てくださる方もいらっしゃいます」

\とろけるホタテ!?/

ホタテベーコンのバター焼(1粒500円)

刺身用のホタテを使用しているというホタテベーコンのバター焼。表面は軽くあぶっているだけで、中身はレア! とても好評で、ゆるり家のコースメニューのすべてに含まれている。

カットして断面を見ると、中がレアだということがよくわかる!とてもやわらかいので、一口でパクッといくのがおすすめ
店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
軽く火を通すだけで、生で食べるよりも甘さが増すんです。このサイズのホタテが手に入りにくくて、店で出すのは赤字も覚悟なんですが、お客さんがおいしいって言ってくださるので、がんばっています!」

\店主自身も大好きな一品/

ゆるり家グラタン(700円)

グラタン好きの佐古さんが、自分好みの味に仕上げたという「ゆるり家グラタン」。香ばしく焼けたチーズがグツグツと煮立ち、スプーンを入れると適度な硬さのあるクリームがねっとりと持ち上がる。

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「ホテルのレストランで働いていたころ、見よう見まねで作ったのですが、その通りの味にならず、結局自分でレシピを作りました。チーズの味が強すぎるのが苦手なので、自分のグラタンに合うチーズを厳選しています」

旬の食材を使った月替わり・週替わりのメニューは、お客さんを飽きさせないので、足繁く通う常連客にも大人気だ。

マスター(佐古さんのご主人)と同級生の常連客
マスター(佐古さんのご主人)と同級生の常連客
「オープン当時から通っています。料理がとにかくおいしい! 素材を活かした優しい味は毎日でも食べたいです。月替わりのメニューも発想がおもしろくて毎月楽しみなんです」

\もちろんお酒も北海道産/

おたるワイン(360ミリリットルボトル 各1400円)
竹鶴ピュアモルト(1杯750円)、ブラックニッカ(1杯450円)、純米吟醸 柴田(1合900円、5勺450円)、雪ふるる 純米吟醸(1合700円、5勺350円)

ビール、ワイン、ウイスキーなど、アルコール類はすべて北海道のお酒を提供している。「隠し酒」なる日本酒もあるが、銘柄は店に行ってからのお楽しみだ。ちなみに酒器は小樽の北一硝子のもの。

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「お酒類の担当は主人なんです。『北海道はお米も水もおいしいから、お酒もおいしいんだ』って、北海道産にこだわっているんですよ」
ゆるり家ブレンドこーひー酎(1杯500円)

いろいろな豆で何度も試作した自家製のコーヒー焼酎は、佐古さんのご主人が作ったもの。これを気に入りボトルで買って行く人もいるそう。ラベルのデザインを手がけたのはもちろん娘さんだ。

ちなみに、ゆるり家は全席禁煙。予約を受けた際に必ず伝えているが、「たばこが吸えないなんて」と言われることもあるそう。それでも禁煙を貫くのは、ダシの繊細な香りを楽しみながら食事をしてもらいたいという、佐古さんの料理人としての思いがあるからだ。

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「鶏そうめんっていうメニューを持ち運ぶと、店内にダシの良い香りが広がるんです。そうすると次々に他のお客さんからオーダーが入ります。香りって本当に大事なんですよね」

身近な食材を使う理由は店主の父の言葉にあった

料理人としての30年以上のキャリアを持つ佐古さん。和洋中と全てのジャンルを経験してきた彼女が、なぜ今手作り創作料理を作り、客の心をつかんでいるのか。

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「父に『高いお金出して、高い食材で作った料理がおいしいのは当たり前。おまえは誰でも手に入る食材でおいしい料理が作れる料理人になれ』って言われたんです。それが今につながっているんだと思います」
普通の主婦でも手に入れられる材料で作るが、ここの家庭料理が特別なのは、やはり佐古さんのキャリアがあってのこと

実際、ゆるり家でも特別な食材や調味料は一切使っていない。素朴なものでも「おいしい!初めて食べた!」と喜んでもらえる料理が自分らしいのだと話してくれた。それにしても、ここまで北海道産の食材にこだわるのはなぜなのだろうか。

店主 佐古ゆう子さん
店主 佐古ゆう子さん
「農家さんや漁師さんが大変な思いで一年一年を乗り越えているからこそ、料理人として道産食材を使って北海道を元気づけたいと思うんです。同じ北海道に住む人間として、できる範囲で応援し続けます」
店の出入り口には、国産品や地場産品を積極的に使っていることを証明する緑提灯が掲げられている

大手の居酒屋チェーン店やバーなどがひしめき合うすすきので、思いが詰まった家庭料理をいただける「手作り創作 ゆるり家」。旅先で食べる母の味に、ちょっぴりホームシックになってしまうかもしれない。

取材メモ/旅行に行くと、ついハイカロリーな名産品でおなかを満たしてしまいがちです。胃を疲れさせてしまうことが多いので、ゆるり家のようにやさしい家庭料理が食べられるお店はありがたい存在ですね。

取材・文=小林かほり(みんなのことば舎)、撮影=若松和正

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