サウナでととのった精神科医。食べ物の旨さもととのったあああ!

連載

星野概念のめし場の処方箋【Vol.21〜】

2018/12/03

サウナでととのった精神科医。食べ物の旨さもととのったあああ!

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

星野 概念

星野 概念

精神科医

心と体の調子は影響を与えあっています。それが心身相関。とても大切なことだと思います。

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

自分にとって影響力のある友人に誘われてはじめてサウナに行ってみると、そこには未体験の心地よさが待っていました。食べ物もおいしくなるなんて、この上ないじゃないか! 今回はそんな話です。

  

【目次】
1.サウナがこんな素晴らしいなんて
2.心身相関を考えるとリラクセーションは当然大切


1.サウナがこんな素晴らしいなんて

・リラクセーションに興味はなかった

世の中には色々なリラクセーションがあり、時には心理的な治療に取り入れられたりもします。

それらを人がやることについては、とても肯定的に考えていました。心地よくなるのであれば積極的に行うべきであると。

  

でも、実際自分がそういった類のものを積極的に体験していたかというとそうではなく、消極的どころかつい最近まで皆無でした。

  

マッサージや整体に行った経験はゼロ。楽しく酒を飲んでいればそれに勝るものはないだろう、というのが隠された持論だったかもしれません。

・こいつに勧められたらやってみる友人

中学校からの同級生で、ずっと仲が良かったわけではないけど、何かの節目で再会したりしながら、今ではかなり仲良くなっている友人がいます。

彼は僕にとって、ある意味メンターみたいな人間で、これまで何度か彼の勧めに乗ったことで、文化的な扉が開けたことがありました。

  

文化的な扉が開ける時って、勧めてもらうモノやコト自体も大事ですが、受け入れるこちらのタイミングも大事で、時期尚早だと受け入れることができません。

  

彼が僕のそういったタイミングを読んでいるということはないと思いますが、なんだかいつもタイミングが良いのです。

高校時代にシティボーイズのコント8時間が収録されたビデオを貸してくれた時もそう。

数年前に寄席に誘ってくれた時もそう。

そういったタイミングを機に、僕は文化的な興味の幅を広げて、今の色々な趣味や仕事につながっていると考えています。

  

・サウナなんてキツイだけだと思っていた

つい先日もそうです。

巷でサウナがブームなことは知っていました。

タナカカツキさんの漫画『サ道』を読んで興味自体は持っていました。

でもなんとなく足を運ぶ気になれない。

だって、サウナ、すごく暑いし。

  

水風呂、冷たすぎて我慢できるはずがないし。

  

時間も結構かかりそうだし。

色々な理由で、サウナに近づくことはありませんでした。

そんな僕に、前述した友人が

「池袋のサウナ行こう」

とメールをくれました。

その日は彼と飲む約束をしていたので、そのまま飲みに行かんのかい! と当然思いましたが、彼のこういう誘いには何かあることを僕は経験上知っています。

  

正直、すごくノリノリではありませんでしたが、とりあえず行ってみることにしました。

・悪魔の実を食べたのか?

待ち合わせは東池袋

タイムズ スパ・レスタ

僕は初心者も初心者なので、入場の仕方から教えてもらいつつ、早速浴場へ。

まぁとりあえず普通の銭湯と同様に体を洗い、湯に浸かります。それくらいは僕でも分かる!

  

湯も湯で、なんだか黄色い湯の場所とか、ジョットが出ていて立ちながら入るところとか、寝ながら浸かるところとか、色々あって面白いです。

いくつかの湯に入りながらまったりしていると、その友人が

「行ってくるわ」

と言いながら、いきなり水風呂に入って行きました。

え!?

  

温度表示を見ると……

14℃!!

我々の体温、36℃とかですよ。
22℃も寒いところに颯爽と入っていくって、どんな特殊能力の持ち主なんだ! 

  

どんな悪魔の実をあいつは食べたんだ!

  

と『ワンピース』に遅ればせながらハマっていた僕は思いました。

・ついにサウナへ

水風呂から帰還した能力者の彼と合流し、いざサウナ室へ。

もう数分で、

あっつい!

  

サウナ室の中には1周12分の特殊な時計が設置されていましたが、極度の近視のためあまりよく見えません。

  

時間の流れが見えないと「あと何分我慢してみよう」ということもできないので、あつさを我慢する指針を得るのが難しいのです。

  

結局5分ほどで我慢できなくなり小走りでサウナ室から出ました。

  

そして、出る時にその友人に言われたように、シャワーで体を流してから地獄の水風呂へ、決死の突入。

  

突入といっても、まずは足の指。

  

つめてェ!!
(小文字の「え」だけ小さいのはワンピースの影響です)

  

そして、くるぶしまで。

  

つめてェ!!

  

これを少しずつやりながら、慣らしていったら、なんと全身水風呂に入れました。

  

確かに冷たい。冷たいけど、なんか入っていられる。しかも心地よい。

これは『サ道』で知ったことですが、冷たい水がサウナで火照った体の温度で中和されて、体のまわりにうす〜い温度の膜ができている現象です。この現象こそ
「温度の羽衣」です。

  
  
  

しかし、この羽衣、他に人が入ってきて水風呂に波が立つとすぐに崩れてしまい、再び、

つめてェ!!!!

  

数分で水風呂を出て、少し休んでまたサウナ室へ。

  

水風呂でキュッとしめられた毛細血管が開いていく感覚が面白い。

こうして、サウナ→水風呂→休憩を3回ほど繰り返した後、設置されていたデッキチェアで放心状態。

  
  
  
  

これがとんでもなく心地よいのです。

これがいわゆる

「ととのったあああああ」

で表現されるサウナトランスというやつです。

  

・なんだかご飯がおいしい

多分、こういったサウナ体験は色々なところに書かれているし、既にサウナに詳しい先輩サウナーの皆さんにとっては当然のことだと思います。

これに加えて、この日僕が体験したのは、サウナ後のご飯がなんだかおいしい気がするということです。

  

サウナの後、友人とともに向かったのは池袋の

豊田屋

という居酒屋。チューハイがうまいというので、何度か行ったことがあるお店でした。

汗をたくさんかいたので、水分補給に気を配っていたとしても酔いが早そう。

  

でも、ととのった後で気分も良いので、飲むのも食べるのも止められません。

しかも、なんだかこれまで食べたことがある同じお店のメニューなのに、なぜだかこれまでよりおいしい!

感覚までととのったということでしょうか。

・そしてわたしはサウナーとなった

それ以来、サウナ欲が止むことがありません。

  

まずは近所の、サウナが評判らしいお店を順番に訪れて、いくつか自分の好みの場所を見つけました。

そして、都内からは割と離れている勤務先の病院の近くでも検索してみたところ、自転車で数分圏内の場所にスーパー銭湯を見つけたのです。

それからは、終業後にそこに寄って、ととのえてから帰ったり、午後から勤務の時には午前中にととのえてから外来診療に臨むこともあります。

サウナは人を裏切らない!

  

2.心身相関を考えるとリラクセーションは当然大切

今回のサウナ体験、まずはそこまで乗り気ではないところから始まっています。

その後サウナでととのい、これまで得たことがないような未体験の心地よさを体感しました。

もちろん、気持ちもこの上なくリラックスしています。

身体的に心地よいと、心理的にも楽になったり嬉しくなったりするというのは、考えてみたら当然のことですが、これはつまり身体的な状態と心理的な状態は相関しているということです。これこそ心身相関。

  

そして、身体的にも心理的にも心地よくなるという相関を経て食事をしたところ、おいしさの感受性まで影響を受けたように思えました。

これが科学的に味覚にどう影響を与えたかどうかは、今のところ僕には分かりません。

でも、自分の体をいたわってあげることで、気持ちも前向きというか、調子が良い方向に向くらしきことを今回体感しました。

この連載は、一応飲食を紐付けた連載ではありますが、飲食を楽しむためにもこれからはリラクセーションをもっと探していきたいな、と思えました。

  
  

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

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精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

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画家

この記事を書いたライター情報

星野 概念

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精神科医

総合病院に勤務し、日々精神医療に従事する傍ら、執筆や音楽活動を行う。

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