おいしいラーメン店は数あれど、思い出とリンクする一杯はまた特別なもの。本連載ではさまざまな分野で活躍する方々に、東京での思い出と「忘れられない一杯」をうかがいます。教えていただいた特別なお店と、彼らのラーメン物語。第五回目はモデルの木村ミサさんが登場!
Yahoo!ライフマガジン編集部
木村ミサが忘れられない薬膳ラーメンは、日本の要人も愛した一杯
木村ミサ
モデル
第五回目に登場いただくのは、モデルの木村ミサさん! 男女を問わず支持される理由は、その明るくほんわかしたオーラにあり。「昔からお米より麺類(特にラーメン)が好きでした」という木村さんが教えてくれたのは、本郷三丁目の台湾薬膳料理店「麺覇王(メンバーワン)」でした。
- 木村さん
- 木村さん
- 「こちらは、最近みつけた台湾薬膳料理のお店。気さくなお母さんが元気よく迎えてくれますよ!」
「麺覇王」のラーメンをひもとく
1.著名人にも評判の薬膳ラーメンとは?
2.創業32年。薬膳の奥義を聞く
3.生薬ゴロゴロ! 薬膳スタミナ麺と対面
1.著名人にも評判の薬膳ラーメンとは?
「温かなお母さんに癒されました」
1988年創業の「麺覇王」は、松岡添増(てんそう)さん、久子さんご夫妻が営む台湾薬膳料理店。一言に“薬膳料理”と言っても、餃子や炒め物など、メニューは親しみのあるものばかり。食べると体調がよくなると評判になり、元首相や著名人にも多くのファンがいることで知られています。
薬膳=「薬食同源」という考えのもと、生薬などを用いて健康維持や病気の予防、治療にも良いとされる料理のこと。
- 木村さん
- 木村さん
- 「体調を崩した際にお邪魔したら、お母さんが『早く元気になってほしいから、薬膳を多めにしたわよ』と声をかけてくださって。とっても嬉しかった!」
- 木村さん
- 木村さん
- 「お店のいたるところに『麺は残してもいいけど、スープは体にいいから全部飲んでください』って書いてあるほど、スープが絶品なんです! 木の実やキノコなど十数種の生薬がゴロゴロ入っているので、見たらびっくりするはず」
「しっかりスープを飲み干して帰ったら、本当に元気になったんですよ!」と木村さん。驚くほど体が整う薬膳ラーメンとは、いったいどんな一杯なのでしょうか? 続いては、その作り手に迫ります。
2.創業32年。薬膳の奥義を聞く
「いざという時に頼れる一杯」
店主の松岡さんは、原宿にある老舗「南国酒家」のチーフを経て、1988年に独立。キャリアのスタートはなんと62年前に遡(さかのぼ)ります。「9歳の時に両親が亡くなって、一匹狼になった。いろんなところに居候しながら働いていたから、キャリアはもう62年になります。ずっと、ただこの道一本だけ」と松岡さんは話します。
「もう歳だからさ。娘にも引退しなよって言われるけど、この組み合わせは自分にしかできない。唯一無二なんだよね。薬膳の勉強はとても大変。一般家庭では組み合わせ方が分からないから、台湾ではみんな薬局で買うの」(松岡さん)。
--「お父さんの言う通り、スープを飲み干したら、本当に風邪が治った!」と
- 松岡さん
- 松岡さん
- 「スープは全部飲んでくださいね! でないと俺怒る(笑)」
--具合により生薬を調整してくださるとか?
- 松岡さん
- 松岡さん
- 「はい。風邪で声が出ないという人が、知り合いに『早く麺覇王に行け!』と言われて来て『もっと早く出てくればよかった。本当に治った!』と言ってたよ」
--口コミで評判になったと
- 松岡さん
- 松岡さん
- 「薬膳については説明すると長くなるし、難しい話になるから、説明不能! 食べて体感してほしいんです」
--あと、気になっていたんですが「麺覇王(メンバーワン)」ってユニークな名前ですよね
- 松岡さん
- 松岡さん
- 「屋号は『金龍飯店(きんりゅうはんてん)』。『唯一無二の薬膳』→『ナンバーワン』→『メンバーワン』という愛称になったの。覚えやすいでしょ」
「薬膳スタミナ麺に入っている生薬を教えてください」とうかがうと、「全部は出せない。62年のキャリアがパーになっちゃうからね(笑)」と話しながらも、一部を見せてくださいました!
--「お母さんの言葉に心が温まった」とも話されていました
- 松岡さん
- 松岡さん
- 「お客さんが来ても、お客さんとは思わない。みんな家族。なんでかって? 例えば偉い社長さんでも、それぞれ悩みあるでしょう。でも“社長”だと、なんか(体調が悪いなんて)話しにくいじゃない。家族に話す気持ちで、ってことだよ。だからいろんな人が来るんだと思う」
途中「生薬と煮込んだ薬膳味付玉子(130円)も人気ですよ」と久子さん。「おいしいでしょう。ラーメンが来る前に、食べながら待つんです。そうすると、口の中が生薬の香りになっちゃうの」(久子さん)。
すると「奥さん、かわいいでしょ」と松岡さん。「やめて〜」と話す久子さんに「おばやんのかわいさ、娘さんのかわいさがある。誰もが歳をとる。そうでしょ?」。そんなやり取りにも癒されました。
3.生薬がゴロゴロ! 薬膳スタミナ麺と対面
「麺と具材を絡めながら食べてみて」
薬膳スタミナ麺は、辛さをA(辛くない)とB(普辛い)、C(辛)の三段階から選べます。今日は風邪ひきにおすすめというBとCの間の辛さでオーダーしました。
中華料理といえば、お玉を駆使したダイナミックな調理シーンをイメージしがちですが、松岡さんのスタイルはいたってシンプル。目分量ではなく、一回一回お玉に材料を取りながら作っていました。「作る時にパフォーマンスはしないの。もう真剣よ!」と松岡さんの目が光ります。
素材を炒めたら、スープを加えて煮詰めます。一杯一杯をこんなにも丁寧に作っているのかと、驚くばかり。「煮るうちに、生薬のエキスが出てくるの」(松岡さん)。
煮出したり具材として入れるなど、生薬ごとに使い分け。「具材は全部食べなさい。固いところは残していいからそれ以外は全部! 絶対効果あるよ」(松岡さん)。
ピリリとしたスープは、鶏や豚の旨味と共に、生薬の香りが鼻を抜けます。「薬膳」と言えどクセは強くなく、独特の心地いい香りです。松岡さんが「麺は残してもいい」と言っていたのも納得。具材やスープに麺を合わせると、2人でシェアしてもいいほどのボリューム感!
食べ進めるうちに、じわ〜っと体が温まっていく。動物ダシと生薬の香りが染みた具材も一つ一つがおいしく、お箸が止まりません! 多くの人を虜にしてきた薬膳ラーメンは、思わず人に勧めたくなる、そんな一杯でした。
\おまけ/木村さんのソウルフードはあのご当地ラーメン!
地元・群馬にいた頃は佐野らーめんをよく食べていたそう。「地元に帰ると必ず食べてから帰る、私のソウルフードです。上京してからは、なかなかあの青竹手打ち麺に出会えなくて……!」(木村さん)。
取材メモ/薬膳は疲労回復のほか、新陳代謝の活性や美容にも効果があると言われています。風邪を引きずっていて本調子ではなかったライターも、薬膳スタミナ麺をいただいて、次の日からぐんと元気になりました。紹介した一杯のほか、牛スジ麺もおいしいですよ♪ ちょっと疲れたな〜と感じたら、ぜひ食べてみてください。恐るべし、お父さんの薬膳パワー!
取材・文=金城和子、撮影=阿部ケンヤ