昭和の面影残す福岡の酒場街 九州の地酒と肴が楽しめる名店へ

特集

出張先で味わう! ご当地の地酒&グルメ〜札幌・名古屋・大阪・福岡〜

2018/12/28

昭和の面影残す福岡の酒場街 九州の地酒と肴が楽しめる名店へ

九州・福岡といえば焼酎…だけじゃない! 良質な米と水を有する九州は、東北や関西にも負けない日本酒の宝庫だ。今回はそんな九州の銘酒と、酒呑みのツボをグイグイ刺激する肴がそろう、福岡屈指の名酒場へご案内。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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国内外で高評価! 進化が止まらない九州の酒

気鋭杜氏(とうじ)の台頭や酒造りの技術・設備の向上により、近年目覚ましい進化を続けている九州の日本酒。酒処として知られる福岡、佐賀はもとより、焼酎文化が強い熊本や長崎にも国内外より注目される酒を醸す酒蔵がある。

世界最大規模のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のSAKE部門をはじめ、国内外で高い評価を得ている酒蔵も数多い

九州の風土や素材を生かして造られる酒の味わいは、千差万別で実に個性豊か。福岡市内には九州の酒をそろえる酒場が年々増え続けているが、中でも今回ご紹介する『酒肆(しゅし)ちろり』は、福岡における日本酒酒場の先駆け的存在だ

目指すは、ノスタルジックな酒場街

木造2階立ての建物は、昭和25年に建てられた当時のまま

訪れたのは、福岡市の中心部・天神の隣町である「渡辺通」にあり、西鉄薬院駅や「ホテルニューオータニ博多」に程近い「三角市場」。近代的なビルが立ち並ぶ通りにありながら、この場所だけ時が止まったようにレトロな雰囲気を醸している。

かつて三角地帯(現在、サニー渡辺通店が建つ一帯)にあったことから「三角市場」との名が付いた

「三角市場」の前身は、渡辺通1丁目の道路が二股に分かれた三角地帯に発生した戦後の闇市。敗戦の翌年、引揚者や戦災被害者らが集まり露店を開いたことから始まり、昭和25年には現在の場所(渡辺通2丁目)へ移転。市場、マーケットへと発展していった。

すりガラスになった看板と、軒に下がる杉玉を目印に

時が進むにつれて市場としての機能はなくなったが、現在は福岡を代表するうどんの老舗「因幡うどん」やおでん、モツ料理、焼肉などの酒場が並ぶ小さな飲食街として賑わいをみせている。
そして、そんな「三角市場」の正面入口から入り、突き当たりの場所にあるのが『酒肆ちろり』だ。

ここは天国?酒好きによる、酒好きのための店

地元の常連や出張客はもとより、酒蔵や飲食店などの同業者も集い、夜な夜な賑わう名酒場

縄のれんをくぐり、小さな戸を引いて中へ入る。「いらっしゃいませ!」。朗らかな声で店主の小吉唯幸(こよし ただゆき)さんが迎えてくれた。
店内はカウンター7席のみという、とびきりの小バコ。19:00までに入店できる場合のみ予約可能だが、以降は来店30分前に電話して空いていれば席を取ることができる。あっという間に席が埋まってしまうため、早めの来店が吉。

「ちろりのおでん」や、名物の「カニ味噌貝焼き」。これだけで酒が3、4杯はいける

品書きには小吉さんが厳選する九州・山口の銘酒と、全国の銘酒が名を連ねており、それに合うアテや一品料理もズラリ。左党心を刺激するメニューの数々に顔のゆるみがとまらない。酒好きの店主が作る逸品は、メニュー名だけでも破壊力抜群だ。

始まりは1本の日本酒から

もともとはサラリーマンで、出張や休みの度に全国を飲み歩いていたという小吉さん

料理と酒好きが高じて、30歳の頃に“自分の店を持ちたい”と一念発起。脱サラをして調理師学校へ入り、市内の店でも経験を積むなど飲食の道へと飛び込んだ小吉さん。しかし驚くことに、当初は日本酒の店にしようとは考えていなかったそうだ。

店主の小吉さん
店主の小吉さん
「日本酒は20代の頃から好きで飲んでいましたが、ここまで深みにハマったのは香川県の銘酒『悦凱陣(よろこびがいじん)』がきっかけでした。開けてから1カ月も経った『無濾過生原酒』が冷蔵庫に残っていて、ふと飲んでみたら抜栓したての時よりもうまみがぐんとのって、おいしさが増していたんです」
なじみの杜氏(とうじ)が福岡の蔵に在籍していた頃は、毎年蔵仕事や仕込みの手伝いに出向いていたそう
店主の小吉さん
店主の小吉さん
『無濾過生原酒』とは、ろ過をせず、火入れもせず、加水もしていないフレッシュな酒のこと。よって、通常は“開けたら早めに飲みきる”イメージ。しかしその1本は保管状態が良かったのか、うまく熟成したんでしょうね。同じ酒でもこんなに変化するものかと驚きました

そこから一気に日本酒の奥深い世界へ引き込まれ、福岡や九州をはじめとした蔵の杜氏や蔵人、日本酒に精通している「住吉酒販」「とどろき酒店」といった酒販店とも一層交流を深めていった小吉さん。2008年2月14日に、日本酒を看板に据えた『酒肆ちろり』を開店させた。

「開店当時の福岡は、焼酎ブームの勢いもまだまだ残っていて、酒=焼酎が主流の時代でしたね」と当時を振り返る
店主の小吉さん
店主の小吉さん
「約11年前、福岡には“純米酒”(※1)を専門に扱う店が数軒ほどしかなかった。もっと気軽に日本酒に親しんでもらいたい、日本酒好きを増やしたい、そんな思いで店造りを行いました。メニュー表は<九州・山口の酒><全国の酒>に分類し、酒の特徴もわかりやすく明記。“日本酒って高い”そんなイメージも根強かったので、1杯は基本400円台からと手頃な価格を心がけました。19時までは、日替りの日本酒を1人1杯限定342円で提供するサービス酒も用意しています」

(※1)純米酒=醸造アルコールを添加せず、水・米・米麹だけで造られた日本酒のこと

写真は、今季から壱岐に新たな蔵を造り、新生「横山五十」の製造をスタートした「重家酒造」見学の様子

「うまい純米酒と気の利いた一品を良心価格で楽しめる」。そんな評判は瞬く間に広がり、あっという間に福岡のグルメ好き、日本酒好きが集う人気店へ。
また、常連さんを連れて酒蔵見学や蔵びらきへ出かけたり、日本酒イベントへ積極的に参加したりと、日本酒をお客さんとともに楽しむことにも精力的。「ちろりがきっかけで日本酒に目覚めた」というファンも多い。

オススメの銘酒と逸品、いただきます!

\若波 純米酒 生酒/

1杯594円。青いバナナ香を爽やかに感じる、女性にも人気の一杯

さて、それでは早速、小吉さんオススメの銘酒と逸品を味わおう。

店主の小吉さん
店主の小吉さん
「こちらは最初の一杯にもオススメな、福岡県大川市にある『若波酒造』の純米酒。柔らかくみずみずしい口当たりで、透明感のある上品なうまみと、軽やかなキレが特徴です。今村姉弟に九代目杜氏も加わり、近年味にますます磨きがかかっていますよ」

\福田 純米吟醸 無濾過生原酒/

1杯702円。フルーティな香りと爽やかに広がる旨味がたまらない。好みのお猪口を選べるのも楽しい
店主の小吉さん
店主の小吉さん
「続いては、若き福田兄弟が中心となって酒造り励む長崎県平戸市『福田酒造』29BY(※2)より平戸産山田錦・全量使用に変わり、デザインも一新されたこの一本は今年さらに酒質が進化。味のまとまりがずば抜けてよく、綺麗で洗練された味わいをぜひ楽しんでほしいです」

\ちろりのおでん/

写真は人気の組み合わせである「鶏軟骨ツクネ」「春菊」(各378円)、「山芋トロロ」(108円)

香りよい日本酒を楽しんだ後は、人気メニュー「ちろりのおでん」に舌つづみ。

店主の小吉さん
店主の小吉さん
「これは長時間煮込む通常のおでんとは異なり、注文が入ってから出汁で具材をサッと炊き上げるオリジナルのおでん。カキやアサリむき身といった魚介系、ベーコンなどの肉系、旬野菜などの具材があり、小鍋のような感覚で好きな具材を組み合わせて楽しめます

サッと火を通した香りと食感の良い春菊、むっちりとした鶏軟骨ツクネ、何よりトロトロの山芋がとけた旨味たっぷりの出汁が格別だ。この出汁だけでもお酒がぐんぐん進む

「具材を複数選ぶと出汁の旨味が深まりますし、この出汁をつまみに酒を飲むのが最高なんですよ」と、小吉さんもにっこり。

\田中六五 糸島産山田錦純米酒/

1杯594円。地元、糸島産の山田錦を全量使用。こちらは貴重な「なま 30BY」
店主の小吉さん
店主の小吉さん
「クルーズトレイン「ななつ星」でも提供され、福岡を代表する蔵となった『白糸酒造』の看板酒。『ハネ木搾り』といった伝統の技法と最新の技術を合わせて醸す酒は、飲む度にさまざまな表情を見せてくれます。米の旨味がきちんと生きており、料理にも合わせやすいですよ」

\古伊万里 前 純米酒/

1杯540円。小吉さんと忽那杜氏はかねてより交流が深く、左は『酒肆ちろり』10周年記念として特別に作られた非売品のボトル。よく見るとロゴがカタカナの「チロリ」に!
店主の小吉さん
店主の小吉さん
「4代目の蔵元夫妻が盛り立てる佐賀の蔵『古伊万里酒造』の人気シリーズ「前(さき)。2017年より気鋭の忽那(くつな)杜氏が加わり、酒質はますますキレイに磨かれています。『ちろり』では『前』の『吟醸』を定番で置いていますが、これは今の季節にオススメの『純米酒』。冷でも、燗でも、実に旨いです

\カニ味噌貝焼き/

一皿864円。お酒が進みすぎる、危険な(でも最高の)逸品
店主の小吉さん
店主の小吉さん
「純米酒や燗をつけた酒には、うちの創業当時からの人気No.1メニュー『カニ味噌貝焼き』をぜひ。カニ味噌とたっぷりのカニの身を合わせ貝がらにのせて焼き、最後に表面をバーナーで炙ってお出ししています」

このカニ味噌をちびり、次いで上燗の酒をクイッ。舌の上で酒と味噌をゆっくり溶かせば、もう至福。酒飲みに生まれてよかったと思える瞬間だ。

『ちろり』は、2019年2月で12年目を迎える。同業者からの支持も厚い小吉さん
店主の小吉さん
店主の小吉さん
「そろえている日本酒は常時20〜25種ほど。固定で置いている定番酒もあれば、その時にしか出会えない限定の1本もあります。若い杜氏さんや地元の頑張っている蔵を、これからも応援していきたいですね。注目の酒と季節の素材で作るアテ、旬の味を楽しんでもらえたらうれしいです」
10周年記念にお客さんがプレゼントしてくれたという“とっくり型”の提灯

「ザル豆腐の揚げたて厚揚げ」や自家製の「紀州南高梅の梅干しの燻製」、あったらラッキーな「ごまサバサンド」「生からすみ丼」など。アテからシメまで、まだまだ魅力的なメニューは盛りだくさん。個性豊かな日本酒とともに、心ゆくまで美味に酔いしれてほしい。

Yahoo!ロコ酒肆ちろり
住所
福岡県福岡市中央区渡辺通2-3-32 三角市場内

地図を見る

アクセス
薬院駅[1]から徒歩約3分
薬院駅[中央口]から徒歩約4分
渡辺通駅[1]から徒歩約4分
電話
092-771-1339
営業時間
17:00〜24:00(最終入店22:30、LO23:00)、土曜〜23:00(最終入店、LO22:00)
定休日
毎週日曜日、祝日
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

取材メモ/日本酒のセレクトはもちろんですが、素材の組み合わせや味付けなど、とにかく料理のセンスも素晴らしい。日本酒好き、酒場好きは絶対に訪れてほしい一軒です。

構成=シーアール 取材・文=森絵里花(écris.m) 撮影=藤野拓人

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