【対談】小山薫堂×嶋浩一郎が語る深すぎる「ナポリタン愛」

特集

ナポリタンが大好き!

2016/06/30

【対談】小山薫堂×嶋浩一郎が語る深すぎる「ナポリタン愛」

子どもの頃によく食べたナポリタン。最近はめっきりご無沙汰……という方も多いだろう。しかし、「ナポリタンは、仕事に頑張る大人こそ、ぜひ食べるべき」と力説するのが、放送作家・脚本家の小山薫堂さんと博報堂ケトルCEOでクリエイティブディレクター・編集者の嶋浩一郎さんのお二人だ。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

今回、Yahooライフマガジン編集部はナポリタンを愛してやまない小山薫堂さんと嶋浩一郎さんのお二人に直撃。美味しいナポリタンが食べられるワインバーとして知られる東京・中目黒の「monopole(モノポール)」にて、アツい「ナポリタン論」を大いに語ってもらった!

世紀のナポリタン対談が行われた中目黒の路地裏に佇む「モノポール」

ナポリタンを食べると少年時代に戻れる

嶋浩一郎(以下、嶋)
嶋浩一郎(以下、嶋)
「モノポール」って、オムライスとナポリタンが美味しいお店っていうことで、薫堂さんが連れてきてくれたんですよ。10年前くらいだったと思うけど。
小山薫堂(以下、薫堂)
小山薫堂(以下、薫堂)
僕が連れてきました?
そうです。夜12時を過ぎても、オムライスが食べられる店(※2019年6月現在、フードLOは23時30分です)っていう触れ込みで。薫堂さんは『dancyu』で連載を持ってるから、そういう夜中の一人飯、かなり詳しいですよね。
薫堂
薫堂
詳しい、っていうか好きで行ってたね。特に、あの頃は真夜中の炭水化物に取り憑かれたように、いろんなお店を開拓してました。
その、“真夜中の炭水化物界”の中でも、このお店はかなり上位ランキングに入る……?
薫堂
薫堂
うん、トップクラス。
深夜に食べるものっていうとラーメンを思い浮かべる人が多いじゃないですか。それもいいんですが、パスタのいいところはゆっくり食べられるところにあると思うんですよ。
薫堂
薫堂
あと、ワインとも合わせられる。
そうです。ワインと合わせられるのは大きい。ちょっと仕事のスイッチをオフにしたい、企画書づくりに入れ込んでる中で落ち着きを取り戻したいっていうことは、きっと誰にもありますよね? そんなときは、軽くワインを飲みながらパスタを食べる、というのを10年ほど前に薫堂さんから教えてもらいました。
薫堂
薫堂
真夜中の炭水化物は「アイデア戦士のご褒美」ですよね。
その通りです。薫堂さんは、いろいろなパスタがある中で、ナポリタンを推す理由は何でしょう?
薫堂
薫堂
少年に戻れるところじゃないかな。ナポリタンって海外から入ってきたのではなく、メイドインジャパンのものだから「和製パスタ」という部分に着目されがち。ゆえに一般的には“亜流”のイメージもあるけど、それでも僕はカルボナーラみたいな本格的なものより、ナポリタンの方が食べたくなるんです。なぜかといえば、いいアイデアを出したいときって、少年の、ピュアな気持ちになってるときの方がいいわけだから。
たしかに。ナポリタンには男の子の気持ちをリセットさせてくれる魔力がありますよね。
薫堂
薫堂
あと今、「和製パスタ」と言いましたが、そんなナポリタンをイタリア・ナポリに里帰りさせるっていう動画もつくったんですよ(そう言って、ノートパソコンで動画を開く薫堂さん)。
すごい……ナポリタン愛に溢れています。これはどういう経緯でつくられたんですか?
薫堂
薫堂
テレビ熊本で、「映像の力でいろいろなものを応援しよう」という番組があったんですが、そこで制作したものです。僕の弟子の内田和久二(うちだ わくわく)がナポリまで撮りに行きました。
歌っているのは?
薫堂
薫堂
コロッケさん。作詞・作曲はさだまさしさんです。
豪華ですね(笑)。ナポリの人たちも実際に食べていましたが、どんな感想でしたか?
薫堂
薫堂
「うまい」って喜んでくれた。“日本人が考案した”ナポリのパスタを、本場・ナポリに持って行って評価してもらえる――それって、すごく感動的だなと。
感動的です。
薫堂
薫堂
スタジオで見せたら、みんな泣いてました。「なんでナポリタンで泣いてるんだろう」って。

深夜にチーズを「大人がけ」この罪悪感がたまらない

熱いナポリタン論が交わす2人の前に、ついにモノポールの名物・ナポリタンが! 

「モノポール」のナポリタン。嶋さんは「懐かしさを感じるナポリタンを、美味しいワインと一緒に、程よくお洒落な空間で食べられるのがモノポールのいいところ」と話す
薫堂
薫堂
これこれ! いつ見ても美味しそうだ。
それじゃ薫堂さん、まずはワインで乾杯しましょうか。
薫堂
薫堂
はい、乾杯。
19年前、あるワインメーカーのプロモーション企画で「シャトークンドウ」というワインをつくった時に出会った2人
薫堂
薫堂
(ワインを一口飲んだ後、ナポリタンにフォークをつけながら)ここのナポリタンのいいところはね、まず麺が硬いところ。ちゃんと炒めてあるぞ、っていう食感がたまりません。それに加えて、ちょっと甘めな味も最高です。僕の場合は、タバスコを濃い目にかけます。
薫堂さんはタバスコをかけつつも、「初めてのお店でナポリタンを食べるときは、タバスコ・チーズをかけず、まずはそのままの味を楽しみます。あと、具と麺のバランスを考えながら食べるといいですね」と教えてくれた
「赤ワイン」「タバスコ」そして「ナポリタン」の“赤いトライアングル”ですね(笑)
薫堂
薫堂
タバスコの真髄って「辛み」じゃなくて「酸味」にあると思うんですよ。「甘み×辛み」では中和するだけですが、「甘み×酸味」だとひと味加わる感じ。嶋さんはチーズをいっぱいかけるよね。
「雪山のようにチーズを盛りたい」(嶋さん)、「僕は薄めにかけるけど、その分、一口ごとにかける」(薫堂さん)と、チーズのかけ方にもそれぞれこだわりがあるという
はい、「大人買い」ならぬ「大人がけ」で(笑)。
mod['contents3']
大好きなナポリタンを食べながら話が止まらない様子の薫堂さん

「子どものころって、チーズもタバスコも、大人がけはできない。遠慮する子もいれば、親御さんに怒られるからっていう人もいて、理由はそれぞれかもしれないけど」(薫堂さん)

mod['contents3']
夜中に食べるナポリタンをこよなく愛しているという嶋さん

「大人になって、『深夜の楽しみ』としてナポリタンを食べる。そして、チーズをたくさんかけるという、この『リミッターを外す』っていうのが、いい」(嶋さん)

薫堂
薫堂
僕が行き着いた「チーズをかける意味」は、罪悪感ですね。夜中にこっそり悪いことをしてるぞ、っていう。
それも少年っぽいですね。(「モノポール」店主の)野崎さん、メニューにナポリタンを入れたのは、なんでですか?
薫堂
薫堂
野崎さん自身が好きだからでしょ?(笑)
「モノポール」店主の野崎厚夫さん。同店では、今回紹介したナポリタンやオムライスをはじめとした料理はもちろん、豊富な種類のワインも提供する
野崎
野崎
それももちろんありますが、以前に「今週のおすすめ」メニューを何品かつくっていたんです。パスタは週替りのメニューで、あるときナポリタンを出したんですよ。そうしたら、多くのお客さまに喜んでもらえて。
薫堂
薫堂
やはり、そうでしょうね。
野崎
野崎
ええ、それで定番メニューになりました。あと、ケチャップの味も気に入ってもらえたみたいです。
薫堂
薫堂
何か特別なケチャップを?
野崎
野崎
「カントリーハーベスト」というものを使っています。オーガニックな素材を使ったケチャップで、埼玉のタカハシソースという会社が出しています。都内では成城石井などで売っているので、手に入らない代物ではありません。そのケチャップに三温糖を一振りするのがポイントだったりします。
薫堂
薫堂
それが甘みの秘密だ!
野崎
野崎
ええ。もともとのケチャップの味が若干酸っぱいんです。そこに三温糖を一振りすると、いい具合になりますね。

熊本県民にとっての「ナポリタン原体験」とは

モノポールのナポリタンの味の秘密が判明し、ますますその奥深さに引き込まれる薫堂さんと嶋さん。これをきっかけに、2人の会話は再び“ナポリタン論”に……。

なんで、大人になっても僕たちは、ナポリタンに帰ってきちゃうんでしょうね?
薫堂
薫堂
一周回って……というか、味覚の幼児化みたいなものがあるんじゃないかな。ほら、おじいちゃんが死ぬ前になって子どもみたいな言動や態度を取ることってありますが、味覚でも同じことが起こるんだと思う。
なるほど。じゃあ、女子に対しては「(ナポリタンを食べるときは)子どもに戻ってるんだから、話しかけないで」っていうことになる?
薫堂
薫堂
そうだね(笑)。でも逆に、アピールチャンスかもしれないですよ。「この人、実はこんな可愛いところがあったんだ」って思われるかもしれないから。
そう思ってくれない女性だったら?
薫堂
薫堂
そんな少年のロマンをわかってくれない女性は、僕はイヤですね。「ナポリタンより『キャビアのカッペリーニ』の方がいい」っていうのはイヤ。
同感です。
薫堂
薫堂
ナポリタンって、男性から女性を見るときのリトマス試験紙だと思うんです。
なるほど。話は変わりますが、薫堂さんにとって、子どものころのナポリタンの思い出って、なんでしょう?
薫堂
薫堂
ウチの実家ね、貸衣裳業をやってたんですよ。結婚式の衣裳と、それに着付けとかをね。で、結婚式の日に母が行く(出張する)んですけど、式で出たご馳走を持って帰ってくる。たとえば、赤飯とか、尾頭つきの鯛とか、伊勢海老とか。でも僕はそれがイヤでね(笑)。そんなものよりもナポリタンの方がよかった。
伊勢海老よりナポリタン(笑)。
「働く男性にとって、深夜の炭水化物は不可欠。なかでもナポリタンは気持ちを少年のころに戻してくれる効用がある」と話す嶋さん
薫堂
薫堂
あと僕は熊本出身ですが、熊本にはナポリタン味の「ソフト麺」があるんですよ。
ソフト麺って、給食とかにでてたやつですよね?
薫堂
薫堂
そうそう。あれ、販売もしてるんですよ。で、その売ってあるやつを、パリで活躍する熊本出身のシェフにお土産として持っていったら、すごい喜んでくれて。それくらい、熊本県民にとってナポリタンのソフト麺は「心の友」なんです。
へぇー、茹でて食べるんですか?
薫堂
薫堂
茹でてある状態で、パックに入っているので、そのままフライパンで炒めて、付属してる粉末をかける。そうすると、パックの焼きそばの粉ソースと同じ要領で、ナポリタンができあがるわけです。「安っぽい」と感じる人もいるかもしれないけど、熊本県民にとっては、これが“ナポリタン原体験”として深く心に刻まれているんですね。

熊本県民の心の友」とされるソフト麺は、東京・銀座の熊本館などでも購入可能。しかし現在、熊本地震に対する復興支援で多くの人が集まっていることから、ナポリタン味のソフト麺を買い求める客も多く、なかなか入手が難しいという。

そして、話は「ナポリタン好きなら絶対行っておきたいお店」に……。

ナポリタンには「旬」がある!

薫堂さんに、なぜ深夜に1人でナポリタンを食べるのかを聞くと「リセットタイムですよ。仕事を頑張った自分へのご褒美です」と教えてくれた
薫堂
薫堂
さっき(モノポールの)野崎さんがケチャップのこだわりを教えてくれましたが、そういうお店はいいですね。大阪にもあるんですよ、ケチャップづくりに命を懸けてるお店が。
なんていうお店ですか?
薫堂
薫堂
大阪市大正区にある「晃市(こうし)」です。トマトがうまい時期にしかケチャップづくりをしないところで、そのケチャップでつくったナポリタンとかオムライスとか、めちゃくちゃ美味しいです。
そう聞くと行かざるを得ない(笑)。
薫堂
薫堂
僕が前に行ったのは、ちょうど今の時期(5月下旬)ですよ。そのとき舐めさせてもらって、ナポリタンも食べさせてもらいましたが、「これ、めちゃくちゃうまいですね、(ケチャップが)欲しいです」って言ったら、「ケチャップは全部予約制だから、ダメなんですよ」と、売ってもらえなかった。
でも、ナポリタンはそのケチャップを使ったものが……?
薫堂
薫堂
食べられる。というか、そのケチャップをつくる時期しかナポリタンをメニューに出さない。つまりナポリタンに旬があるということです。ナポリタンの特集なら、絶対に行くべきお店ですね。
じゃあ、熊本の「ソフト麺」と大阪「晃市」のナポリタンは、必ず食べてみます!
小山薫堂(こやま くんどう)

小山薫堂(こやま くんどう)

放送作家、脚本家

嶋浩一郎(しま こういちろう)

嶋浩一郎(しま こういちろう)

クリエイティブディレクター、編集者

取材・構成=藤麻迪、撮影=川村将貴

※掲載の内容は2016年6月時点の情報に基づきます。
※2019年6月に店舗(住所、電話番号、営業時間など)、メニュー、料金などの一部情報を更新しました。

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

おすすめのコンテンツ

SERIES