群馬和食界のベテランが手がける県産食材たっぷり鍋/群馬

特集

【特集・第3回】地元人が推薦! グルメ甲子園 〜 鍋 編 〜

2019/01/11

群馬和食界のベテランが手がける県産食材たっぷり鍋/群馬

群馬食材を使った鍋を供する「東一条 やたい家」で、群馬食材の魅力や大将のちょっと変わった経歴を聞いてきました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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城下町の名残りを感じながら「やたい家」を訪問

高崎駅の西側は、高崎城の城下町として栄えたエリアです。駅前通りを高崎城址公園に向かって歩いてみると、碁盤の目のように整備された昔ながらの町屋には寺が点在し、かつて多くの人でにぎわったであろう風情が今も残ります。その一角で2014年に誕生した「東一条 やたい家」は、つねに予約の絶えない和食居酒屋。さっそく中を覗いてみました。

京町屋をイメージしたという店のエントランス。落ち着いた大人の風情が漂います

20代前半で夢をあきらめ、料理の世界で生きていくことを決意

時刻は午後1時過ぎ。仕込みで慌ただしい中、出迎えてくれた大将の佐野誠さんは1973年生まれの45歳。ここから1ブロックほど駅寄りの場所で32歳のときに店を持ち、2014年にこの場所へと移転しました。割烹着の上からでも分かるガッシリとした体格は、およそ和食料理人とは思えません。学生時代は柔道でも? と聞くと、意外な答えが返ってきました。

土壁や天然木で仕上げた内装は佐野さんがこだわったポイントだそう
大将 佐野さん
大将 佐野さん
「じつは、若い頃に競輪選手を目指していましてね。沢山お金を稼いだら、いずれは飲食をやろうって。まぁ結局のところ夢やぶれて選手にはなれず、24歳くらいでこの世界に飛び込んだんです」

競輪選手への道をあきらめた佐野さんは、うどん割烹の店に弟子入りして包丁の使い方や出汁の引き方など、和食の基礎を学びます。法事客の利用もある大型の店舗だったこともあり、料理人としての心得をそこでみっちりと習得しました。

修業先に放置されていた1台の軽トラが出発点だった

来る日も来る日も厨房で精を出していた佐野さんは、ずっと駐車場の隅に放置されたままの軽トラックが気になっていました。あのトラックを使って屋台をやりたい。そう親方に相談すると「おう、使っていいぞ」のふたつ返事。30万円で親方から買い取り、手を加えて週末イベントなどに出店しはじめました。

「やたい家」の草創期を支えた、佐野さんのかつての相棒
佐野さん
佐野さん
「自分がまだ酒も飲めない年頃によく見かけた、屋台ラーメンやおでんの記憶が蘇えりまして。休みの日はこの軽トラでイベント会場に行き、カレーやおでん、時にはピザなんかも生地から作って販売していました

親方公認で始めた軽トラ屋台では、和食に限らずいろいろな食事を提供していました。その後、独立した佐野さんは路面店の開店資金を得るために、2年半ほど軽トラで営業を続けました。

屋台から始まったから「やたい家」。予約の取りづらい店へと成長

「やたい家」の宴会コースは飲み放題付きで5000円~。会社の忘新年会やグループ利用から、夫婦やカップルといった少人数での利用もOKです。じつはこちらの店、市内でも屈指の“予約の取りづらい店”。仕込み中もひっきりなしに店の電話が鳴ります。この日の営業に向け、仕込みに追われる午後2時過ぎ。シェフの竹澤さんがやって来ました。

鍋のベースになるのはカツオの厚削りでとった出汁。丁寧にアクを取り除きながら半日かけてじっくりと炊きます
シェフを務める竹澤嘉介さんが加わり、仕込み作業もペースアップ

群馬県産の豚肉と野菜、おふくろが畑で作った野菜もプラス

夕刻。カツオの出汁が完成する頃、佐野さんは手際よく野菜をカットしていきます。シュンギク、ハクサイ、それに下仁田のネギ。肉はもちろん県産の豚肉です。毎年11~2月まで、宴会コースの主役にこの和風鍋が登場します。

コースのメインで供される「上州豚の和風鍋」。カツオの出汁が効いています

豚肉は近くの精肉店から、野菜は県産のものを中心に。ハクサイとシュンギクは佐野さんのお母さんが畑で育てたものだそう。佐野さんのお母さんはレンタル農園での野菜作りが好きで、そこで取れた野菜をよく店でも使うといいます。

契約農家から仕入れる下仁田ネギ。佐野さん曰く「うちの鍋には欠かせない食材」
佐野さん
佐野さん
「毎朝、市場で見つけた食材から『今日はこんな献立にしよう』というイメージを膨らませます。お客様にはなるべく生産者の気持ちを伝えたいですね。我々は工業製品を作っているわけではないですから、時季の野菜や魚なども自分の目で見て間違いないと思った食材しか買いません」

営業中には今日はどこで獲れた魚だとか、どこの野菜だとか、食材の素性を説明するそう。生産者がどんな思いでこの食材を作ってきたかに意識を向けると、料理はおのずとおいしく感じるというのが佐野さんの考えです。

利き酒師の顔も持つ佐野さんが厳選したおいしい日本酒も

「やたい家」のもうひとつの魅力は、日本酒が充実している点です。佐野さんは30歳のときに「磯自慢」という静岡の酒と出合い、日本酒の魅力に取りつかれたそう。その後、32歳で利き酒師の資格まで取得します。

佐野さんが日本酒に開眼した「磯自慢」はじめ、おすすめの3銘柄がこちら
佐野さん
佐野さん
「20代の頃は酒ならなんでも飲むというタイプでした(笑)。それが30歳で『磯自慢』を飲んで衝撃を受けまして。このお酒は食中酒にうってつけです。あと群馬で醸造されている『巖』や『結人』なども皆さんにおすすめしています」

夢中になったものをとことん極める性格の佐野さん。店には日本酒のほか、焼酎やオーガニックワインなど、佐野さんこだわりの銘柄が並びます。

和食の世界に飛び込んで20年。長年愛用する包丁を巧みにあやつり、魚をさばいていきます
仕込みの合間に竹澤さんとその日の献立を打ち合わせ。まるで兄弟のような仲の良さです

厨房を任されるのは、伊勢崎市出身の竹澤さん。実家がイタリアンレストランを経営していたことからこの世界に入り、現在は佐野さんのもとで腕を振るっています。2人の出会いは高崎市場。毎朝のように顔を合わせるうちに意気投合し、そこから長年の付き合いです。

シェフ 竹澤さん
シェフ 竹澤さん
「佐野さんはとにかく天才肌ですよ。料理の腕やセンスはもちろん、お客様やスタッフへの接し方も申し分なくて。そんな佐野さんの魅力にひかれて、この店にお世話になることにしたんです」

佐野さんがイメージした献立を形にしていく竹澤さん。2人の息の合った連携があってこそ、「やたい家」の味と雰囲気はさらに進化することでしょう。

Yahoo!ロコ東一条 やたい家
住所
群馬県高崎市通町63

地図を見る

アクセス
高崎駅[西口]から徒歩約7分
南高崎駅[出口]から徒歩約19分
北高崎駅[出口]から徒歩約24分
電話
027-321-3882
営業時間
18:00~23:00
定休日
月曜
口コミ・写真など

※この施設の情報はYahoo!ロコから提供されています。

取材メモ/取材の最後、佐野さんは「高崎をもっと盛り上げていきたい」と語りました。県内の飲食店経営者が集まる会合でも、「どうやったら街が盛り上がるか」が専らの話題という。それぞれの店が魅力をもっと発信して、街全体を活気づけていく。佐野さんの言葉には、高崎を背負っていくことへの矜持と飽くなき野望が宿っていました。

取材・文・撮影=吉岡啓雄

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