アイスの魔術師「ヨシノリアサミ」が描くお菓子の方程式とは

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My スイーツ メモリー

2019/01/03

アイスの魔術師「ヨシノリアサミ」が描くお菓子の方程式とは

フランスで13年修行し、名だたる賞を受賞、MOFで外国人初のファイナリストという栄誉にも輝いたパティシエ浅見欣則が、日本に帰国し巣鴨に店を開いてから3年。スイーツを志したきっかけ、そして浅見シェフの作るスイーツがなぜ愛されるのか、その秘密に迫ります。

廣田祐典05

廣田祐典05

海外で輝かしい実績を残す浅見シェフのパティスリーへようこそ!

「パティスリーヨシノリアサミ」は巣鴨駅から徒歩5分ほどの閑静な住宅街にあります

前回の「エクラデジュール」中山洋平シェフからバトンを受けた浅見欣則シェフは、とげぬき地蔵で有名な巣鴨に3年前にパティスリーを構えました。国内はもちろんフランスでも輝かしい実績を残している日本を代表するシェフにスイーツを志したきっかけを教えてもらいましょう。

浅見欣則シェフ

浅見欣則シェフ

「パティスリー ヨシノリアサミ」オーナーシェフ


\推薦者のエクラデジュール中山洋平シェフからのひとこと/

「エクラデジュール」中山洋平シェフ
「エクラデジュール」中山洋平シェフ
「フランスのアルザスの名店で働き、MOFグラシエの日本人唯一のファイナリストに。技術はもちろんテクノロジックな要素も含めたお菓子作りは広く注目されています。アルザスの伝統を伝える日本を代表する素晴らしい職人です!」

柔和な笑顔が印象的な浅見シェフ。日本を代表するパティシエの一人です

国際コンクールで入賞や、MOFの日本人唯一のファイナリストなどの輝かしい実績を持つ浅見シェフ。パティスリーをオープンしてから3年が経ちましたが、なぜ巣鴨に開店したのでしょうか。

浅見シェフ
浅見シェフ
「小さい頃から祖母ととげぬき地蔵にお参りに来ていたので馴染みがあったんです。フランスにいた時は地蔵の絵が書かれたお札をずっと財布に入れていました。自分にとって幸運の土地なんです」

サラリーマン=新橋のように巣鴨にはお年寄りが多いイメージがありますが、都内中心部へのアクセスがいいとあって、実は若い世代が多く住んでいることが出店の決め手となったといいます。

フランスの菓子店をイメージした店内。昼時は子育て中のお母さんの憩いの場となります

総料理長だった叔父の影響で料理の道を志す

小さい頃シェフが好きだった「ままどおる」

小さい頃から料理人に憧れていたという浅見シェフ。叔父さんがニューオータニの総料理長をしており、コック帽を被って指示を出すその姿は、浅見少年にはヒーローのように映ったといいます。

浅見シェフ
浅見シェフ
「いつかホテルで働くのが夢でした。製菓学校を出て就職した先は明治記念館。当時から結婚式場として人気で、目の回るような忙しい日々を過ごしていました」
「専門学校を出た頃はヨーロッパからスターシェフたちが帰国してスイーツ界が盛り上がっている時期でもありました」

転機となったフランス旅行

ホテルで働くことが自分のゴールだとずっと思い続けていた浅見シェフでしたが、「ジャパンケーキショウ」というコンクールで準優勝したことが人生を変えました。

浅見シェフ
浅見シェフ
「その副賞としてヨーロッパへの研修旅行に招待してもらったんです。ベルギー・スイス・フランス・オーストリア。イースター直前の店ではチョコのオブジェが飛ぶように売れていました」

当時は日本の菓子文化は未成熟でしたが、洋菓子の本場ヨーロッパの現状を目の当たりにしたシェフは、近い将来、日本もチョコに対する見方も、変わるに違いないと確信しました。

店内に飾られたアルザス地方の工芸品が本場を彷彿とさせます。「向こうのパティスリーではパンでも惣菜でもなんでも売っているんです」
浅見シェフ
浅見シェフ
「パティスリーの基本は お客さんと向き合うことなんだ って気が付いたんです。これまで企業の中で、お客の顔を見ないで仕事をしてきたけど、それって本来のお菓子屋とは違うのではないかと疑問が湧いたんです」

このままでは来るべき時代に取り残される。そんな不安にかられたシェフはすぐに行動に移しました。

フランス修行の始まり

フランス修行に行く旨を告げ職場を辞めた浅見シェフが最初に目指したのは、パリからはるか遠く離れたスイスに近いオート・サヴォワにある「パトリック・シュバロ」というパティスリーでした。パリを目指さなかったのはなぜでしょうか。

浅見シェフ
浅見シェフ
「確かにみんなからはパリに行けって言われました。でも、パリの有名店に入っても、日本人は勤勉だから下働きしか任されない。履歴書には残るかもしれないけど、自分の身にはならないし、帰ったら恥をかくだけだって思ったんです」
「アルザス地方にはピエールエルメなど、有名なお菓子屋や料理人が多い。生活の根底にある食文化を感じたかったんです」

「シュバロ」はフランス屈指の高級リゾート地にあるパティスリーでした。

浅見シェフ
浅見シェフ
「北欧やロシアから、お金持ちがくるから、街には彼らのためのヘリポートもあるんです。ハイシーズンにバンバン売って、それ以外の季節は仕込みに追われます。そこでは本当に鍛えられましたね」
アルザス地方の象徴とも言えるコウノトリは「そこら中にいるので公園で子供が追いかけています」

「キュブレ」で出会った運命の師

「シュバロ」からアルザスにある「ダニエルレベー」を経て、ストラスブールに活躍の場を移した浅見シェフは、老舗パティスリー「キュブレー」でその後10年間勤務することになります。そこで出会ったのがオーナーのアントワーヌ=ヘップ氏でした。MOF(フランス国家最優秀職人章)であるヘップ氏はいち早く浅見シェフの才能を見抜いていました。

浅見シェフ
浅見シェフ
「2006年のサロン・デュ・ショコラで準優勝したことで、僕の腕はある程度認めてくれているとは思っていましたが、ヘップさんはさらに、外国人の僕にMOFの試験を受けろと勧めてくれたんです」
師と慕うヘップ夫妻との貴重な一枚

MOFとはフランス国内で高度の技術をもつ職人に授与される称号です。中でも料理部門は大きな注目を集め、シェフにとって最大の名誉とされています。それまでフランス人以外の職人が挑むことは極めて稀でした。その挑戦からシェフの人生は大きく動き出します。

「直前に外国人の参加条件が緩和されたのも契機となりました」

外国人初の栄誉に輝く

MOFのコンクールは2〜3年の長い期間をかけて技術を競いますが、2011年のMOFコンクールに挑戦した浅見シェフはグラシエ(アイスクリームや氷菓)部門で見事ファイナリストに残るという好成績を残しました。これはフランス人以外で初の快挙でした。

浅見シェフ
浅見シェフ
「サロン・デュ・ショコラで結果を出した時も日本の伊勢丹のバイヤーから声がかかったんですが、MOFで自分でもある程度納得のいく成績を残せたことは大きかったですね」

パリにいながらも作品が日本のデパート催事の目玉になるなど、新進気鋭のパティシエとして知られていた浅見シェフの偉業は、フランスのみならず日本でも大きな話題になりました。

浅見シェフ
浅見シェフ
「これで日本に帰る決心がつきました。フランスにいた僕のことを知っている方が日本にたくさんいたのはとてもありがたいことでしたね」
2013年に帰国した浅見シェフは2年後に巣鴨にパティスリーをオープンします

それではスイーツを作っていただきましょう

今回は人気メニューのパフェを作っていただきます

アイスクリーム作りを何よりも得意とする浅見シェフ。パティシエという職業はアイス・チョコ・洋菓子、その3つができないと成立しない職業だと言います。

浅見シェフ
浅見シェフ
「冬はチョコでも、日本の夏は暑いしアイスが欲しくなりますよね。パティシエはなんでもできないといけない。パフェにはアイス、焼き菓子、クリーム、果物と洋菓子の全てが入っています。フランス語で『完璧』という意味を持つこのスイーツには技術の全てが詰まっているんです」
シャーベットはイチゴとピスタチオの2種類。いちごはあまおうを使用しています

シェフがもっとも自信があると胸を貼るアイス。作る際の計算式が肝心だと言います。

浅見シェフ
浅見シェフ
「お菓子は油、水分、糖分、固形分でできていますが、それを上手に組み合わせると美味しくなるという計算式があります。例えば、ピスタチオの中にもナッツの油分がありますよね。アイスクリームをおいしく作るうえで必要なのは、乳脂肪分や糖度などをきちんと計算することなんです」
イチゴとチョコレートを飾りつけていきます
浅見シェフ
浅見シェフ
「イタリアのジェラートは全てのベースが同じでフレーバーをつけます。だから食感や口溶けは同じでふんわりとしている。ふんわりの秘密は空気です。一方、フランスは材料があくまでメインとして、それに対して最適な方程式があるという考え方。ちゃんとしたフランスのアイスクリームは硬いんです。僕のはその両方のいいところを取り入れています。濃厚さと口どけの軽さが僕のアイスの特徴なんです」
「いちごとピスタチオのパフェ」(1400円)
浅見シェフ
浅見シェフ
「お菓子全般に言えることなんですが、アイスには正解はありません。自分の作るアイスをおいしいと思ってもらえたら嬉しいですね」

最後にシェフにとってスイーツとは

スイーツにとって大事なのは「ストーリー」だという浅見シェフ。スイーツになぜ物語が必要なのでしょうか。

浅見シェフ
浅見シェフ
「おいしそうなものはごまんとあります。だからこそ他との差を出すにはストーリーがないといけない。お客さんは物語を求めているんです」

「僕のスイーツには日本とフランスのこれまで経験がたくさん詰まっている」と笑う浅見シェフ。

浅見シェフ
浅見シェフ
「僕の作るスイーツは僕にしか作れない。僕だけの物語が詰まっているんです」
コウノトリのようにあなたに幸せを運んでくれるスイーツを食べに巣鴨に足を運んではいかがでしょう

取材・文/キンマサタカ(パンダ舎)
撮影/野口 彈

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廣田祐典05

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