創業100年の京都・大正製パン所。全国から注文が入るというカレーパンは、熱々はもちろん冷めても美味しいと評判です。(「Leaf」)
Yahoo!ライフマガジン編集部
地元・西陣で愛され続けて100年、今や全国的に知られる人気店に
創業は大正8年。パンの消費量日本一ともいわれる京都で揺るぎない人気を誇る名店、「大正製パン所(たいしょうせいパンしょ)」。中でも人気のカレーパンは、3種あわせて1日100個近く焼き上げるほど人気で、TVや雑誌の取材でもおなじみです。今回は、カリッとした食感と、国産ヒレ肉のジューシー感がたまらないカツカレーパンをご紹介します。
コシのあるパンとカレー、カツの黄金比率! 名物カツカレーパン
大正製パン所のカレーパンは、約40年前に誕生。初代店主が発売して以来人気で、現在3代目になる店主と妻・晴美さんが改良を重ねてきました。熱々はもちろん、時間がたっても美味しいカレーパンの秘訣は、「焼いてから揚げる」。そうすることでパンに油が入りにくくなり、パリッとしたカレーパンが出来上がるのだそうです。
- 河戸さん
- 河戸さん
- 「焼いてから揚げる作り方にしたのは、約18年前、当初博多に勤めていた息子に、『カレーパンを友人が食べたいと言うから送って』と言われたのがきっかけ。遠方に送っても美味しいカレーパンを作るために試行錯誤したところから生まれたんですよ」
下ごしらえは前日からスタート!
カレーパン作りには2日間の手間がかけられています。まず、パンは低温長時間発酵させたイースト生地を使います。じっくり発酵させた生地はしっかりとしたコシと粘りがあり、小麦本来の甘みが味わえます。
- 河戸さん
- 河戸さん
- 「イーストは生き物なので、とにかく温度や湿度に気を使います。夏は氷で冷やしたり、冬は温めたり、雨の日はこね方や水の配分を変えたりと、天気には常に気を付けていますね」
タマネギやジャガイモなどの野菜をベースに、約8〜10種のスパイスをブレンドしたカレーは、野菜の甘みとピリッとしたスパイスの辛みが調和した本格カレーの味。肉厚で柔らかく、うま味のあるカツは国産ヒレ肉を使用し、毎朝店で揚げています。
- 河戸さん
- 河戸さん
- 「カレーパンは、カレーとパンのバランスが大切。カツに使うお肉は、モモ肉やロースなどいろいろな部位を試しましたが、うちのパンにちょうど合うヒレ肉にしました」
香ばしさの秘密は「パン粉」と「焼いて揚げる」手間にあり
カリッとした食感にするため、表面にパン粉をたっぷりまぶします。その後45分間発酵室へ。発酵させたパンを取り出し、約10分間、キツネ色になる手前まで焼きます。そのままでも十分美味しそうですが、焼いた日に揚げると、中身が飛び出したり、変形したりしてしまうことがあるので、なんとさらに一晩冷蔵庫で寝かせて、翌日に揚げるのだそうです。
- 河戸さん
- 河戸さん
- 「焼いただけの状態のパンを、ご希望の方にお売りすることもできます。家で揚げてもいいし、ヘルシー嗜好の方はオーブンやトーストでもう一度焼いても美味しいですよ!」
ボリュームはあるのにペロリと食べられる!
仕上げは翌日。パーム油で3~4分揚げます。カラッと揚げたカツカレーパンは、驚くほど油っこさがなく、サクサクとした食感で何個でも食べられそうな美味しさです。
カレーパンは全3種あり、甘口は子どもにも人気。中辛は、一口食べるとまず甘みを感じ、後からうま味と辛さがじわっと広がってきます。ヒレカツだけ食べたいという方には、自家製ブレンドソースをかけたヒレカツサンド(335円)もオススメ。
- 河戸さん
- 河戸さん
- 「やはりカレーパンは揚げたてが一番なので、1日数回に分けて揚げたてをお出ししています」
自家製クリームが人気のクリームパンなどバリエ豊富にスタンバイ
店内にはクリームパンやクロワッサン、総菜パンなど種類豊かなパンがズラリ。年配の方から子どもたちにまで愛される秘訣は、「できるところまで自分のところで手をかけたい」という心意気。香料や着色料、添加物はできるだけ使わず、パンの中に入れる具やソースも可能な限り自家製にこだわります。昔から変わらない品質と、お客様とのコミュニケーションのなかで生まれるアイデアや革新が、「毎日食べても美味しいパン」を作り上げます。
- 河戸さん
- 河戸さん
- 「受験生の親子のお客様と話しているうちに、絵馬形パンを作ってみようと思い立ったり、『少量でいいのだけど』とおっしゃるお客様に食パンを半斤でお売りしたり。常にお客様の声に耳を傾けて、『顔の見える商売』だからこそできるパン作りを続けていきたいですね」
取材メモ/昔ながらの人気店でありながら、さらなる美味しさを常に追求する姿勢に脱帽。持ち帰ったパンをアドバイス通りレンジで20秒、トーストで2分温めると焼きたての味がよみがえり、さらに感動しました。もちろんそのままでも美味しいのでお土産にも最適ですよ!
取材・文=清水浩子 撮影=中尾若菜