世界が注目する鹿児島の陶器「薩摩焼」を体験できる喫茶室

世界が注目する鹿児島の陶器「薩摩焼」を体験できる喫茶室

2019/02/04

2018年、鹿児島県歴史資料センター黎明館内にオープンした「チンジュカンポタリー喫茶室」。日本陶器の代名詞とまで言われた薩摩焼の総帥『沈壽官窯』と『ランドスケーププロダクツ』が共同で運営する喫茶室。生活をより楽しくするこのプロジェクトにかける想いについて迫ります。

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海外に、「薩摩=焼き物」のイメージを根付かせた職人がいた。

「薩摩」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?「サツマイモ」「西郷隆盛」といった語句が挙げられるのではないでしょうか。しかし欧州では、「SATSUMA」=「SATSUMA WARE」、つまり「薩摩焼」という焼き物に結びつくといいます。そのイメージを根付かせたのは、1873年のウィーン万博にて薩摩焼の美しさと高度な技術を広く海外に知らしめた第十二代沈壽官。薩摩藩焼物製造細工人としての家系をたどり、日本陶器の代名詞とまで言われた薩摩焼の総帥です。

薩摩焼は釉に細かいひびの入った「貫入」が特徴的だ。

歴史的な節目に、新たなスタートを切った。

2018年、鹿児島県歴史資料センター黎明館内にオープンした「チンジュカンポタリー喫茶室」。この不思議な名前の「チンジュカン」こそ、沈壽官のことです。「チンジュカンポタリー<CHIN JUKAN POTTERY>」は、沈壽官窯とランドスケーププロダクツが共同で制作する陶器のシリーズ。その直営店は、これまで鹿児島市呉服町などでテナントやショップインショップとして運営してきましたが、明治維新150周年という歴史的な節目のタイミングで移転。鹿児島の歴史、考古、民俗、美術・工芸を紹介する総合博物館内に、喫茶室を併設し新たに生まれ変わったのです。

韓国文化の代表的な青磁色を基調とした内装デザイン。
鹿児島県歴史資料センターは鹿児島城(鶴丸城)の本丸跡地に建つ。
ギャラリーのように器が展示されている。購入可。

歴史に向き合い、窯の火を守ることを決めた十五代・沈壽官。

この斬新な発想で窯の新時代を切り開いたのは、十五代沈壽官氏。初代は豊臣秀吉の二度目の朝鮮出征から帰国の際に「捕虜」という身分で連行された職人。以降、藩の御用窯として窯の火を420年守り続けてきました。そんな家に生まれ、「若い頃は家を継ぐという事に漠然とした不安と嫌悪を感じていました」と十五代は明かします。初代は見知らぬ薩摩の地に降り立った優れた手仕事により藩に認められ、祖先達もその技を継いできました。時にはいわれのない偏見に耐えながら。彼らが真っ直ぐに父祖の業を守ってきたことを偲ぶことで、心を整えることができたといいます。「私にとって我家の伝統は私を縛るものではなく、私にとってかけがえのない宝となり、それは同時に私の向かうべき道になったのです」。

喫茶室は基本的にセルフサービス。のんびりくつろげる。

沈壽官窯伝統の「白薩摩」を現代のスタイルに。

沈壽官窯の代名詞といえる「白薩摩」は、桜島の火山灰により黒っぽい土ばかり採れる鹿児島では珍しい、白い土を使った陶器。初代達が7年の歳月をかけて探した白土で作った器が当時の島津家に気に入られ、以降も沈壽官窯の伝統として受け継がれています。この薩摩を代表する焼き物と、家具製作を中心に人々の生活をより楽しくするプロダクトを探究する『ランドスケーププロダクツ』が生み出した新時代の「サツマウエア」。それは、韓国の陶芸家キム・ヘジョン氏をデザイナーに迎えた「Half Moon」や、本物のリンゴのように見えるほどリアルなフォルムのシュガーポット「APPLES」など、薩摩焼の特徴を踏襲しながら現代的なデザインを取り入れたものばかりです。

今までの薩摩焼にはない赤い釉薬辰砂(しんしゃ)も魅力的な「APPLES」。
レモンケーキを、月の輪を象ったお皿「Half Moon」に載せて。
イギリスで紅茶が飲まれ始めた時代の型をベースに作られた「Tea things」シリーズ。

薩摩の器で、薩摩のふだんの味を楽しむ。

「チンジュカンポタリー喫茶室」では、薩摩紅茶や韓国のけせん茶、ふくれ菓子、レモンケーキなど地元のお茶やお菓子をこの器でいただくことができます。もちろん、購入も可能。喫茶で使い心地を確かめながら、暮らしの中にどう取り入れるかを考えるのも楽しそうですね。

ところてんも、花の形をイメージした「Bloom」シリーズで供される。
貝殻をイメージした「Pearl」を「Half Moon」に重ねる。こんな用法も提案。
スタッフの柔らかなもてなしも心地いい。薩摩という土地を体感できる場所だ。

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