会津の食材を使った絶品イタリアン「フェリーチェ」

2019/02/11

会津の食材を使った絶品イタリアン「フェリーチェ」

福島県会津若松で、本格ナポリピッツァや会津の食材を使った料理が評判の『Pizzeria Felice』。まるで映画の1場面のようなオープンキッチンをメインに味わうパスタやピザは絶品。オーナーの矢澤直之氏に料理へのこだわり、そして会津で店を開くことになった経緯を語って頂きました。

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立ち働く姿が絵になるオープンキッチン。

本格ナポリピッツァや会津の食材を使った料理が評判の『Pizzeria Felice』。ここで、腕を振るうのはオーナーの矢澤直之氏です。
「根っからのイタリア好きで、この店の内装もイタリア人がナポリピッツァの店を開くために西海岸に渡ったはいいけれど、お金がないので工場を借りてオープンしました、みたいな雰囲気にしたかったんです。会津の大工さんは腕がいいから、思いのほか綺麗になっちゃったんですけど(笑)」。そのコンセプトどおり、店外の喫煙スペースとしてPENZOILのドラム缶を使用するなど随所にイタリアの香りが。最もこだわったのは働く姿が絵になるよう設計されたオープンキッチン。「お客様に料理を味わって頂くだけでなく、料理を作る過程で体験したことや作る楽しさを自分の言葉でお伝えしたくて」と矢澤氏。

信条は「料理が人を楽しくする」。ゆえに、矢澤氏の料理は見た目からしてエネルギッシュ。西会津産の椎茸を丸ごと使ったパスタは、惜しげもなく盛られたカラスミを絡めて頂きます。「この料理の肝は椎茸を切らずにそのまま使うこと。お出汁を閉じ込めることができるので、絶対にその方が美味しいじゃないですか。今回、太めのスパゲットーニを合わせたのは、そんなぷりぷりの椎茸と咀嚼回数を合わせるため。食材同士の咀嚼回数を合わせると味が決まるんです」。椎茸から溢れ出るエキスとカラスミの旨味が合わさり、口の中でパスタと絡み合う。幸せな三位一体に自家栽培の味の濃いイタリアンパセリがいい仕事をしてくれます。

「身知らず柿と生ハムのカプレーゼ仕立て」は食べた瞬間、体内を駆け巡る旨味に身をよじってしまうほど。矢澤氏が「会津特産の身知らず柿は、枝が折れるんじゃないかってぐらい重たい実をたわわにつける身のほど知らずだから、その名がついたといわれています」と教えてくれました。焼酎で渋抜きをした柿は、糖度があるのにシャキシャキとした食感。白和えに柿が使われることにヒントを得たひと品です。「柿の白和えはつぶ貝などで脂分を補いますが、そこは生ハムを使って仕上げにパルミジャーノをふりかけ、イタリアンへと着地させました」

まるで映画の1場面のようなオープンキッチン。カウンターに座れば、美食とともに軽快なトークが楽しめる
無垢の木を多用した店内。開放的な空間に、ピッツァの香ばしい香りが漂う
細かな水蒸気が発生する薪で焼くことで、外は香り良くこんがりと、中はもっちりと仕上がる

小麦の香りが鼻に抜ける本格ナポリピッツァ。

「今はイタリアンに軸足を置きつつ、和食や日本の文化のいい所もどんどん取り入れたいと思っています。昔は頑なでしたけど」と矢澤氏。引き算の美学や所作に感じるところがあるそうで、各地に足を運んでは伊と和の垣根を超えた料理人との付き合いを広げています。次なるひと皿は、豪快に骨つきで頂く会津地鶏のもも肉のロースト。「三島町産の会津地鶏は旨味が濃く、締めたてを岩塩でマリネして5~6日寝かせてローストしています。必要な旨味を残しつつ余分な水分を出してやると、味が調うんです」。

次に頂いたのはナポリピッツァ。店内で存在感を放つ大きな薪窯は、門外不出の製法が代々伝わるというナポリの工房に出向き、上下をバラして船便で輸送。乾燥のため店内に積み上げられた杉と松の薪を使い、Pizza職人の林添継聖氏がマルゲリータを焼き上げます。外には香ばしい焼き目がつき、中はもっちり。ひと口食べると小麦の香りが鼻に抜け、モッツァレラとトマト、生地の旨味が口の中に広がります。メリハリの利いた塩味も良く、ついワイングラスに手が伸びてしまいます。思わず頬がゆるむ身知らず柿とゴルゴンゾーラのピッツァは、濃厚で雑味のない桧枝岐(南会津郡の村)の蜂蜜をかけることで深みが増します。

最後に頂いた「ロベルタ」は、塩漬けにした豚の頬肉を熟成させたグアンチャーレの薄切りとたっぷりのルッコラがのった1枚。熱々の生地に薄切り肉をのせれば、その熱で透明になった脂がトロトロに。美味しく頂いていると、店外からシャッターを叩く人物がいます。その人から矢澤氏が受け取ったのは、大きなポリ袋いっぱいに入った新鮮なクレソンでした。1本頂くと、シャキシャキと歯ざわりが良く、瑞々しい苦みが口の中に広がります。「今の方は古いお客様で、喜多方の山奥で新鮮なクレソンを取ってきてくださるんです。お返しはパンとビール。物々交換です(笑)」。

3歳の時にはコンロで袋ラーメンを作っていたという矢澤氏。料理への情熱はその頃から!?
かぶりついた瞬間、口中に椎茸のエキスが迸(ほとばし)る「西会津産生しいたけとカラスミのスパゲッティ」2,200円
雪のようにパルミジャーノをふった「身知らず柿と生ハムのカプレーゼ仕立て」1,400円
鶏のエキスがうつった付け合わせの葱もたまらない「会津地鶏の骨付きモモ肉のロースト(1本)」2,400円
イタリア産の小麦粉を使用。Pizza職人の林添氏は『Ristorante Acqua Pazza』時代からの仲間
存在感のあるナポリ製の薪窯。渋い色調のタイルはマダムの未来氏と選んだ
もっちりジューシーなモッツァレラとフレッシュなトマトソースの「マルゲリータ」1,400
「身知らず柿とゴルゴンゾーラチーズ」2,000円。「料理と相性がいいこの柿はリゾットにしても美味しい」と矢澤氏
「ロベルタ」2,200円はルッコラとトマトがふんだんに乗っているので、見た目以上にさっぱり食べられる
鬼才ジャン・フランコ・マンカ氏の「パーネヴィーノ」をはじめ、イタリアの自然派ワインを多く取り扱う

『Pizzeria Felice』の料理には自家栽培の野菜も使われています。「畑がある場所は磐梯山が綺麗に見える場所。『あぁ、会津って盆地なんだな』と実感できますよ」と矢澤氏。

そこで、北会津町にある「しぜん村」にお伺いしました。畑を使わせてもらっているおばあちゃんは、若い就農者に「野菜の気持ちになって考えてみろ!」と叱咤激励する頼もしい人。矢澤氏は彼女から秘伝の肥料のレシピも受け継いでいます。胡麻油かすや無農薬のリンゴ、糖蜜などのミネラル分と自家製酵母菌や麹菌など何十種類もの材料を混ぜ込んで完全発酵させた有機肥料は、どこか甘い香り。これらは12月の寒仕込みに始まり、翌年4月にやっと完成します。

手間暇かけて本気の野菜作りを始めてから、実感していることがあると矢澤氏。「日本には四季があって、昔から旬の野菜を食べてきたじゃないですか。それって本当に利にかなっているんですよね。旬の野菜を食べることは、その季節にかかりやすい病気の予防になりますし、環境に負担をかけないで作られた野菜はノンストレスで、エコにもつながります」と言います。そんなお話を伺いながら矢澤氏が育てたルッコラを1枚食べてみると、ふっくらとした葉には弾力があり、噛みちぎると鮮烈な香りと苦みが体内に流れ込んできました。

「しぜん村」のビニールハウス内で色の濃いイタリアンパセリを収穫する矢澤氏
「ここのところ忙しくて見に来れていなかったんですが、ちゃんと出来てる」と嬉しそう
なるべく自然の状態で野菜を育むようにしているそうで、草や虫ものびのびしていた
自家製発酵肥料の良さが直感的にわかるのか、愛犬のベペが肥料を食べようとして矢澤氏にたしなめられていた
植物の生育に必要なミネラルと菌を土壌に与えてやることで健全な根を張ることができ、深みのある味わいの作物が育つ
健全な環境で育った作物は色が濃い。このトウガラシも冴えたコントラスが美しかった
持つと見た目以上に重く、ぎゅっと実が詰まっていることが実感できる「かぼちゃ」
空と大地の間を磐梯山脈が走る最高のロケーション。思わず深呼吸したくなる
帰路につく矢澤氏と愛犬ベペ。前方にはたわわに実った身知らず柿。本当に枝が折れそうだった

名料理人の腕は世界に通じる最強の武器。

会津産の食材だから使うのではなく、自分が美味しいと思うものを使うようにしていたら、それが会津産の食材だったという矢澤氏。「昔から食べていた身知らず柿なんかにしても、子供の頃は特別美味しいとは思っていませんでした。けれど、料理人になって改めて食べてみて、とても魅力的な食材だと気付いたんです」。

そんな会津の食材について広く知って頂こうと、2018年10月にはかつての修業先である青山の『Ristorante Acqua Pazza』で、日髙良実シェフ総監修のもと、会津にご縁のある5人のシェフとともに1日限りのポップアップディナーを開催。身欠きニシンや会津産馬肉といった食材にイタリアのエスプリが吹き込まれた逸品が供される中、矢澤氏は「つちや農園の亀の尾と松茸のリゾット」と「松本さんの栗の蜂蜜でつくったモンテビアンコ 仁井田本家風」で、多くの方から好評を得ました。

東京とピエモンテ州アルバのひとつ星レストラン『La Ciau del Tornavento』でイタリア料理のみならず、料理人魂を学んだ矢澤氏には、地元である会津に対し歯がゆく思っていることがあります。「会津にはいいものがたくさんあるのに、まだまだ知られていないものが多いんです」。それもあって、いつの日か改めて海外に渡り、世界に向けて発信力を身につけたいとも考えています。「料理ができるって最強の武器を持っているようなものだと思うんです。そんな料理人になったのですから、料理人として意味があることをやっていきたい。僕自身が発信力を持ち、外から会津の食材や文化を伝えていくことができたらと考えています」。

1夜限りのディナーのために、日髙良実シェフ総監修のもと5人の名シェフが集った。(未来氏撮影)
矢澤氏のドルチェ「松本さんの栗の蜂蜜でつくったモンテビアンコ 仁井田本家風」。仁井田本家とは創業300余年の郡山の蔵元。(未来氏撮影)

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