うまい、たのしい、優しい名護の台所を「ほろほろ」してみた

2019/02/10

うまい、たのしい、優しい名護の台所を「ほろほろ」してみた

日々、沖縄中を所狭しと駆け回る記者とカメラマン。地域に密着した記者、カメラマンだからこそ知り得る街の魅力や隠れ家的スポットなどを、街歩きしながら紹介します。

琉球新報Style

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やかんそばにハブサブレ。大正時代から愛される街の台所には人気フードもいっぱい 名護市市営市場(名護市)

桜が咲き誇り、ピンク色に染まったやんばるの風景に引き込まれる季節だ。桜にちなんだおいしいものもあるに違いない。大正時代から続く名護市の「台所」、名護市営市場と周辺を記者がほろほろ(ふらふら歩く)した。

市場に入った記者たちを迎えてくれたのは、資源活用管理協会(指定管理者)の池間学理事長。「野菜や肉、魚などの生鮮食品から正月やお盆などの行事用の食材、お菓子までそろうのが市場のいいところだ」と語る。市場1階の店舗に肉や魚、色とりどりの野菜が並び、2階には雑貨や土産品店、食堂などがある。

地元の市民でにぎわう市営市場の中

「魚は今が旬。冬場は脂が乗って一番おいしいよ」と威勢よく語るのは「いちろう鮮魚店」の岸本修さん(56)。色鮮やかな刺し身が並ぶショーケースの奥で、15キロもあるロウニンアジをさばいていた。「正月とお盆にはマグロや白身が出る。でも一番忙しいのは小学校の入学式の時期。みんな家族でお祝いするからね」と語る。

いちろう鮮魚店の新鮮刺し身

はす向かいにはブロックの豚肉や牛肉が並ぶ「宮里精肉店」がある。市場に店を構えて40年以上。数十年前から通う常連客には近所の人だけでなく、離島から定期的に訪れる人もいるという。店主の宮里梨枝子さん(60)は「名護から出て行った常連客のお孫さんが、帰省がてら買いに来ることもある。『おばあちゃんは元気?』と聞いたりする」と世代を超えた付き合いも多い。

宮里精肉店

2階に上がると、名護市ややんばるの特産品、工芸品などを集めたセレクトショップ「ナゴグローサリーストア」がある。店内には陶器やガラス、木工などのハンドメード商品や、地元企業こだわりの加工品が所狭しと並ぶ。

ナゴグローサリーストアの店内

スタッフの宮城茉於さん(23)、伊野波すみれさん(26)によると人気商品は「金川紅茶」や「ハブサブレー」など。中でもしっくいの置物「シリケンイモリ」は「入荷するとすぐに売れてしまう。どこで買えるか調べて来てくれる観光客の方もいる」という。

人気の「金川紅茶」と「こはぶちゃん」を紹介するスタッフの2人

市営市場の広場にいると「なかむら製菓」の仲村亨さん(53)に手招きされた。「今日は何してるの」と笑顔でにっこり話しかける仲村さん。愛嬌(あいきょう)あふれる仲村さんに引かれ、ふらっと立ち寄る人も多い。旧公設市場時代から続く創業65年の老舗で、2代目の仲村さんが店主になってからはショーケースに洋菓子がずらりと並ぶ。

いつもにこにこ笑顔で接するなかむら製菓の仲村亨さん

名護の桜をイメージした桜のプリンとロールケーキ、タルトが今のお薦め。桜色で甘塩っぱい味はまさに桜満開。「愛情いっぱい、クリームいっぱい、夢いっぱいで季節感を意識したよ」と笑う。桜の季節の1月中旬から、新学期の始まる4月まで販売している。もともと、かるかんやコンペンなど琉球菓子を扱い、今も店の一角に並ぶ。仲村さんは「いろいろ変えるのも楽しいからね」と、今後も季節限定の新作を作り続けていくつもりだ。

季節限定で名護の桜をイメージしたロールケーキとタルト、プリン

ソーキそばの発祥地と言われる名護は「そばの街」とうたわれるほど名店がたくさん。ほろほろしながら「やかんのおそばはどう?」と提案すると「やかん…?」と首をかしげる2人。

創業44年の「八重食堂」 は地元の人から観光客まで訪れる老舗名店だ。のれんをくぐると、昔から変わらない店内に、どことなく懐かしい雰囲気が漂う。

お昼時間を過ぎてもいつもお客さんがいっぱい

ソーキと三枚肉が乗ったミックスを注文すると、器にはそばと具だけ。一緒に出てきたのは例のやかん。八重そばは、やかんに入っただし汁を自分の好きな量だけ注ぐスタイル。

やかんでスープを注ぐのが「八重そば」スタイル

店主の津波和文さんは(68)は「最初からスープ入れてたら伸びるさぁね。昔は出前をしてたから麺が伸びないように、スープをたくさん飲めるように」とやかんの秘密を明かしてくれた。先代の八重子さんの案だという。あっさりとした味付けに平麺と柔らかいソーキがマッチする。創業時から変わらぬ味とやかんスタイルで、閉店の午後3時までひっきりなしに人が訪れていた。

おいしいおそばを食べた後は、ちょっと一息つきたくなった。歩いているとクッキーのいい香りがどこからともなく流れてくる。
店に入ると船田まきさん(40)がサブレーを焼いていた。「コーヒーとハブサブレーの店 DONABE―COFFEE」 は、コーヒー豆を土鍋で焙煎(ばいせん)するちょっと不思議なお店。夫の弘さん(40)に土鍋で豆を煎る理由を聞いてみた。

コーヒーを煎る自慢の土鍋を抱える船田弘さん(右)と妻のまきさん

「焙煎機が高くて最初買えなくって」となんとも意外な理由。「ご飯を炊く用にもらった土鍋で豆を焙煎してみたらけっこういい感じになった。遠赤外線効果もあっていいかも」と明かし、お客さんからも好評でそのまま続けている。土鍋で煎るとさっぱりして豆自体の甘さも残ったまま。「カフェよりも喫茶店の心をイメージしている」という弘さんは根っからのコーヒー好き。コーヒーに合うお茶受けで始めたハブサブレーは、単体で人気が出て今や店の人気商品になった。深みのあるコーヒーとハブサブレーは名護だけで味わえる逸品だ。

土鍋でゆっくり焙煎した豆を使った自慢のコーヒーとカフェラテ

名護大通りに出てひんぷんガジュマルを過ぎると、名護博物館 がある。やんばるの自然や生活をテーマにした常設展示はほとんどがショーケースを使わず、間近で見られる。さまざまな民具のそばにネコやカラスの剥製もあり、昔ながらの生活の場面が再現されている。ノグチゲラやリュウキュウヤマガメなどの希少動物も展示されている。

名護の歴史や展示物の話をする時は生き生きしている名護博物館学芸員の村田尚史さん

しかし学芸員の村田尚史さん(35)によると、すぐそばにある東江小学校の子どもたちに人気なのは壁面に多種多様な昆虫の標本を集めた展示。「一番下にはゴキブリもあります」と笑う村田さん。さすが生活に密着している。
博物館は新館への移転が予定されており、常設展の一般公開は3月末で終了する。3月の1カ月間は無料で公開される予定だ。

名護の味覚と歴史に触れ、おなかも頭も満たされて帰路に就く記者たちだった。
(2月3日 「琉球新報」掲載)

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