ごはん入りの食パン。食育アドバイザーが伝える会津の魅力/福島

ごはん入りの食パン。食育アドバイザーが伝える会津の魅力/福島

2019/03/15

会津産の食材をふんだんに使った他では食べられない味と食感が人気。パンを通して会津の魅力を届けている。(「シティ情報ふくしま」)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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赤ちゃんでも食べられる、ご飯が入った食パンは売り切れるほど人気

会津産コシヒカリのご飯が混ぜ込まれた「会津コシヒカリしっとり食パン」1本(3斤)840円。1本で購入する場合は、2日前までに電話確認がおすすめ

6年前にオープンした「會(あい)・マチエール」。他では食べることができないパンが買えると、遠方から買いに来る人もいる話題のパン屋だ。毎朝、会津産の食材をふんだんに使ったパンが店頭に並ぶ。

上級食育アドバイザーの資格を持つ店主の馬場正佳(まさよし)さんは、パン教室や食育体験などを通して、会津産の食材の魅力も伝えている。

一つ一つのパンに会津の食材への想いが込もっている

2013年、会津若松市にオープン

大通りから一本中に入ると住宅街の一角にオレンジ色の店舗が見える

馬場さんは高校卒業後、大手製パンメーカーに勤務後、栃木県の行列のできるパン屋で5年間修業した。その後、地元にUターンしてパン屋をオープン。

「會・マチエール」とは、ふるさと会津の「會」と、フランス語で素材、原料を意味する「Matériel(マティエール)」を、「食材」ととらえ組み合わせた店名。馬場さんの「会津の食材」への想いが込められている。

店主の馬場さん。会津産の食材の魅力を伝えるために、上級食育アドバイザーの資格を取得した
店主 馬場さん
店主 馬場さん
「お店で使っている食材の60%以上が会津産なんです」

県外に出て気付いたふるさとの良さ

こだわりのパンが手頃な価格から購入できる

馬場さんが、野菜や果物など会津産の食材にこだわったパンを作るのには理由がある。今では野菜の美味しさを伝えている馬場さんだが、子どもの頃は野菜がキライでほとんど食べなかったそう。それでも、就職のために一人暮らしを始めた際、健康のためにスーパーで野菜を買った時のこと。

馬場さん
馬場さん
「買った野菜が美味しくなくて……。子どもの時に食べた、近所で採れた完熟トマトの美味しさを思い出しました」

その時初めて、ふるさと会津で子どもの頃から食べてきた野菜がとても美味しかったということを感じた馬場さん。それがきっかけとなり、地元でパン屋をオープンした際は地元の野菜を使いたいと思うようになった。自分が県外に出て初めて気付いた地元野菜の美味しさを、パンを通して子どもたちに伝えたい、と考えたからだ。

大人気ふわもち食パンの秘密

パン生地には会津産のコシヒカリのご飯がたっぷり混ぜ込んである

「會・マチエール」で売り切れる日があるほど定番で人気の食パン。こだわりは、たっぷりと混ぜ込まれた会津産コシヒカリ。米粉パンと思われがちだが、北海道産小麦100%に「ご飯」とオリーブオイルが練り込まれた食パンだ。低温長時間発酵(一晩熟成)させた同じパン生地を、温度を変えて焼き上げることで、全く違う2種類の味と食感が楽しめる。

「香る食パン」(左)と「会津コシヒカリしっとり食パン」(右)各1斤280円

高温で一気に焼き上げた、外皮はカリッ、中身はもっちもっちの「香る食パン」と、超低温で焦げ目をつけずにじっくり焼いた耳まで同じ食感の「しっとり食パン」。どちらも一度食べれば、そのしっとり柔らかな食感とお米の風味がクセになる。ぜひ一度食べてみてほしい。

会津伝統野菜との出会い

自ら収穫した雪下キャベツ。食材は地元の顔見知りの生産者から購入している

店頭には初めて聞く名前の野菜を使ったパンがいくつも並んでいる。「立川牛蒡(ごぼう)」、「会津丸茄子」、「会津小菊南瓜(こぎくかぼちゃ)」……「会津伝統野菜」と呼ばれるものだ。「会津小菊南瓜」は、NHK大河ドラマ「八重の桜」でも登場し、籠城戦になった際に会津の人々の命をつないだともいわれており、歴史とともに語られる野菜。伝統野菜は途絶えたともいわれており、馬場さんにとっても身近ではなかったが、近所で伝統野菜を作っている生産者の存在を知ったそう。

馬場さん
馬場さん
「歴史ある伝統野菜が今こうしてあるのは、そうした生産者さんの苦労のおかげです」

「こだわりを持ち、丁寧に野菜を作ってきた生産者さんの想いを伝えたい」と思った馬場さんは、さまざまな会津伝統野菜をパンに取り入れている。

パンとともに伝える会津産食材の魅力

「会津地鶏ごまみそ親子パン半熟月見仕立て」(左・280円)、「立川ごぼうゴーダクリームチーズ」(右・200円)、「会津コシヒカリ入り・ゴマ塩・安納芋ロール」(上・120円)

使っている食材の60%以上、さらに野菜に関しては100%が会津産だ。こだわりは、いくつもの食材を組み合わせて一つのパンにすること。たとえば、写真の「会津地鶏ごまみそ親子パン半熟月見仕立て」だと、会津産の「とろねぎ」や地鶏、ショウガ、大豆・麹から手作りの熟成味噌、酒粕がどれも生産者の顔が見えるこだわりの食材ばかりだ。

面白いのは具材の味付けだ。「ごぼうのきんぴら風」「ごまみそ味」など、会津伝統野菜を引き立てる味はパンにもぴったり。おかずとしてのレシピも公開している。

馬場さん
馬場さん
「ご飯に合うおかずはパンにも合うんですよ」

会津伝統野菜も、こうして料理すれば手軽に家庭でも取り入れられる。そして、かつての自分のように野菜嫌いの子どもたちにも親しみがわき、ワクワクするようなパンを工夫して作っている。

身体にやさしいパンを届ける

低温長時間発酵のため仕込みは全て前日に行い一晩おく

馬場さんは、ショートニングや動物性油脂を一切使わない。 

数年前、パンがあまり売れず、試行錯誤していた時があった。その中で、購入し続けてくれたのは、身体に良いものをこだわって取り入れている方だったそう。同じ頃、他のお客さんからも「安心して毎日食べられる食材を使ったパンを食べたい」という要望が何度もあった。その時、自分の進むべき方向が見えたという馬場さんは、オリーブオイル、太白ごま油、べに花油を主原料としたマーガリンなどの植物由来の油脂のみでパンを作り始めた。

馬場さん
馬場さん
「子どもたちが大好きなパンを安心してたくさん食べることができるようにしよう」

味付けもできるだけ薄味にするようにしているそうだ。しかし、食べてみるとしっかりと味がし、食べ応えがある。その理由は、一晩素材を寝かせるなど、調理法を工夫し、小麦や野菜などそれぞれの持つ味を引き出しているから。こうして、身体にやさしい会津産野菜たっぷりのパンは、子どもや地域の方が毎日でも安心して食べることができるヘルシーなパンになっていった。

食育アドバイザーとして

今年も6月に落花生の種まき体験を行う予定

昨年からは、「子どもたちに地元の食材を身近に感じてもらおう」と、生産者とコラボして食農体験も始めた。落花生の種まきや収穫、ピーナッツバター作りに工場見学、ブルーベリー狩り、全ての体験会に参加する家族がいるほど好評だ。

馬場さん
馬場さん
「畑での体験を楽しむ子どもたちの笑顔を見ることができることが、何よりもうれしいです」

子どもの頃に体験したこと、食べたもの、過ごした環境……それは、成長基盤となる。馬場さんがそうだったように、たとえ野菜が苦手だったとしても、その美味しさや生産者の想いを知っているかどうかは、その後の人生を大きく変えるに違いない。こうした活動を通して人とふれあい、地元を知っていくことで、伝統野菜や農業なども含め、地元にあるものの素晴らしさに気付くことができる大人になっていくのではないかと思う。

会津を好きになる人が増えたらうれしい

店は父親(右)と家族で切り盛りしている。少人数経営のため、時間にゆとりを持って来店したい

「會・マチエール」で販売されているパンは食材へのこだわりとボリュームから見て、どれもリーズナブルに感じた。そのワケを馬場さんに伺うと、「子どもたちが500円を持って来ていっぱい買えるように」という想いがあるのだそう。

馬場さん
馬場さん
「子どもたちや会津に訪れた人たちが、パンを通して会津の食材に気軽に親しんでほしいです。そして、会津を好きになってもらえたらうれしいし、楽しいなと思います」

お米のように毎日食べても飽きがこない。「會・マチエール」のパンにはそんな魅力がある。2020年4月にはリニューアルも予定しているそう。会津若松へ訪れたら、ぜひパンを通して豊かな会津を感じてほしい。

売り切れることも多いので予約がオススメ。その際は前日14:00までに連絡を

取材メモ/ふるさと会津と生産者さんへの愛にあふれたお店でした。「パン屋だけどご飯が好きです」と言う馬場さんの作るパンは、どこか懐かしく、でも新しく、またすぐに食べたくなってしまいました。会津若松へ行く楽しみがまた一つ増えました。

取材・文・撮影=Mayuko Nitta

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